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少年期[307]酒の魔力

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街へと辿り着いたゼルート達は日が落ちきる前に宿を取り、その後情報が集まりそうな酒場へと向かった。
酒場の規模は中々大きく、四人組の冒険者達が何もないという程小さくは無い街だとゼルートは感じた。

そしてゼルート達が酒場の中へ入ると、ゼルート達に気が付いた客の数人が顔を向ける。
普段であれば直ぐに興味を失い、直ぐに仲間との会話に戻るのだがそうはならず視線がゼルート達の方へ釘付けられていた。

それを疑問に思った仲間や他の客が同じ方向を向くと、同じように顔の方向が固まってしまう。

結果、ゼルート達が酒場に入ってから数十秒程で殆どの客は同じ方向を向く事になる。

街に美人な女性がいない訳では無いのだが、ルウナとアレナのレベルは街の男達が殆ど見た事が無い次元の物だった為、ゼルート達が酒場に入ってから少し前までの喧騒が消えてしまった。

そしてそんな二人の美女を放っておけるほど男達は我慢強くは無い。
数人のグループが立ち上がって二人をナンパしようとする。

断って直ぐに諦める様であればゼルートも手を出す事は無かったが、一度断った程度で酔いが回っている男達が諦める事は無く、何度もしつこく誘って来る。
そして男達は自分がそこそこ凄いんだという事を知って貰おうと、ゼルートを踏み台にするような発言をする。

その発言にゼルートは勿論、アレナやルウナの額に青筋が立つ。
しかし、喧嘩を売るような発言に対してそれをゼルートが買う前にゲイルとラルにラームの三人が一発死なない程度の重い攻撃を入れてから気絶させた。

「酒を飲んで酔いが回っているとはいえ、我が主への侮辱は許さん」

「ゲイルさんと同じく、弱い奴がゼルート様に絡もうとしないで欲しいものね」

「酒場って面倒な人が多いんだね」

ゲイルは風貌からある程度の強さを持っているのは理解出来ても、見た目が大人では無いラルとラームが自分より大きな成人男性をダウンさせた事実を、周囲の客は中々理解できていない。
中には飲み過ぎて目の前で起こった事件が夢なのではと思う者もいる。

「お前ら、別に手が早い事を怒らないけど、最初の重い一撃は要らなかったんじゃないか?」

「? それはどういう意味で・・・・・・ああ、なるほど。確かに不必要な攻撃だったかもしれません」

三人が重い一撃を腹部に決めた事で、ラストの一撃で意識を落とされるも溜まった酒と共に床へリバースしてしまう。

「これぐらいいつもの事なんで大丈夫ですよ。床は私達が掃除しておきますのでゆっくりしていてください」

酒場の店員が慣れた手つきで掃除を始める。
当然の報いを与える為とはいえ、少し自分達にも非があると感じた三人は店員へ頭を下げた。

「にしても、いきなり絡んでくるのは・・・・・・想定内ではあったが、ゲイルがいても絡んでくるとはな」

ゼルートとしては人間態のゲイルがいる事でああいった輩が絡んでくる確率が激減すると考えていたのだが、現実はそう上手くいかなかった。

「確かにゲイルの様な見た目の物がいれば下心を隠さずに絡んでくるのは厳しいと思えるが・・・・・・まぁ、そこが酒の持つ恐ろしい魔力と言ったところか」

「言いたい事は解るわ。普段冷静な人でも酒を飲んで一定のラインを超えれば性格が激変するなんてよくある事だし」

アレナは過去の出来事を思い出し、耐えきれず小さな声で笑う。
その反応を見たゼルートはアレナは酒で酔いつぶれる事はあまりないのかもしれないと考えた。

(過去を思い出した時、恥ずかしい事の印象が強ければ苦い表情をする筈・・・・・・でもそうならず他人の失敗を笑ってるって事は酒に強いから失敗が無いのか、それとも上手い事飲む量をコントロール出来ているかの二つか)

出来れば自分は酒に強いタイプだと良いなと思いながらゼルートは注文を頼む。
そしてゼルート達が注文を頼み終わった後に男女で二人組の冒険者がゼルート達に声を掛けて来た。

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