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少年期[261]溢れる感情

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「相変わらず魔物の咆哮はシャレにならないな。その気が無くとも気持ちが押されてスピードが緩んでしまう。っと、考察している場合じゃないな。アレナ、ルウナ。二人の代わりにサポートを頼む。いいか、討伐じゃなくてもサポートだからな!!」

アレナは実力はあれど、戦闘凶ではない為心配していないがルウナは完全にバトルジャンキーなので倒したいという気持ちが先走り、思わず本気を出して倒してしまわないかゼルートは心配だった。

「分かってるわ。勢い余って殺さないでねルウナ」

「勿論だ・・・・・・と言いたいところだが少し心配だな。まぁ、セフィーレの覚悟を無駄にしない様に動こう」

若干心配に思うが、後半部分の言葉を信じてゼルートは壁に打ち付けられたローガスの元へ向かう。

「ラル、カネルさんにポーションを渡してくれ。頼んだぞ」

「グルルゥ!!」

ゼルートから渡されたポーションを器用にキャッチしたラルは、ポーションの入った瓶を割らない様にカネルの元へ走る。

ゼルートも再びローガスの方へ向かおうとするが、違和感に気付いてその場で立ち止まる。

「ローガスの雰囲気が・・・・・・変わった?」






オーガジェネラルの一撃で壁に叩き付けられたローガスの意識は朦朧としており、意識が混乱していた。

(・・・・・・私は何故地面に座っている? 何故、これほどまでに痛いみを感じる?)

意識が混乱しているローガスは自分が戦っている理由も思い出せなくなっており、押し込めていたどす黒い感情が漏れ出す。

(何故貴族である私が地に尻をついている・・・・・・どうしてこれほどまでの屈辱を感じている? 何故だ、家の為にセフィーレ様の為に研鑽を積んできたこの私が、どうしてこのような無様に倒れ伏している?)

セフィーレの顔に泥を塗ってはならない、恥をかかせてはならない、機嫌を損ねてはならないと心の奥底に沈めていた黒い感情が自身を覆い尽くす。

(私は・・・・・・高貴なる血を引く貴族、冒険者等を職業としている野蛮な者に後れを取ってはならない。セフィーレ様の従者として常に強くなくてはならない!!!)

まだ意識がはっきりとしないローガスはあふれ出て来た黒い感情の影響で、一度プライドを粉々に砕かれた事を思い出す。

(その私が、負けた。セフィーレ様の従者として、貴族として強くなくてはならないこの私が負けた)

自分を・・・・・・殺す気で倒しに行った相手に、完膚なきまでに負けた。
だが、その相手は思い出せない。

(まだ成人でも無い子供の冒険者に負けた、本気で殺しに行ったのにも関わらず負けた。名前は・・・・・・なんだった?)

どす黒い感情は考えを自分の良いように無理やり捻じ曲げてしまう。
残っていた理性が傲慢なプライドに潰されてしまった。

(名前は、姿はそういったものだった? そいつが、そいつさえいなければ私はこのような屈辱な状況にはなってしない!!)

そんな事はあり得ない。ゼルートで出会っていようがいまいが、ローガスがこうしてオーガジェネラルの剛腕によって吹き飛ばされたという事実は変わらない。

しかしそれを理性が塗りつぶされたローガスは理解しようとしない。
今こうして壁に叩き付けられ、倒れ伏しているのは自分のせいでは無く、貴族である自分に反抗してきた子供の冒険者のせいだと黒い感情がローガスに言い聞かせる。

そしてゼルートがローガスにポーションを渡す為に走ってくるが、視界に入ったゼルートをローガスは完全に思い出す。

(そうだ・・・・・・こいつが、こいつさえいなければ!!!! 全て、全て・・・・・・貴様のせいだああああああ!!!!!)

ため込まれていたどす黒い感情は体の外にまで溢れ出す。
自身がゼルートに敵意を持っていると、明確にゼルートへ伝わってしまうほどに。

「死ねぇぇえええええええええええ!!!!!!!!!」

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