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第235話 あり得ない
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「改まって何の用っすか、バイロン先生」
よく部屋に呼び出されるなと思う今日この頃。
今日は担任のバイロンに呼び出されていたイシュド。
「あれっすか、もしかして俺たちじゃなく、俺個人に受けてほしい依頼でも来てるんすか」
学園に届く依頼。
仮に本当に自分を名指しで指名している依頼であれば、割と期待出来る内容かもしれないと考えるも……バイロンが伝えたい話は、依頼関係ではなかった。
「受けてほしい、そこは間違ってないな。ただ、依頼ではない」
「受けてほしいけど、依頼ではない? ……もしかして、二年生や三年生に戦闘に関して色々と教えてやってほしいってことっすか? 前に心構え的なものを教えたじゃないっすか。それで勘弁してくれないっすか」
「安心してくれ。そういった内容ではない……………………イシュド、お前は信仰している宗教などあるか」
「えっ………………主教勧誘っすか?」
まさか、あのバイロン先生が!!?? といった感じで、イシュドは本気で信じられない驚いた。
「違う。そういった事ではない。世間話として受け取ってくれれば良い」
「そ、そうっすか」
本気で驚くも、本人が即否定してくれたことで、ほっと一安心。
学園に入学したイシュドにとって、バイロンは数少ない信用出来る大人であるため、割と本気で焦った。
「信仰して宗教かぁ……特にないっすね。強いて言うなら、暴力じゃないっすか」
「そ、そうか………………」
力を信仰している。
元騎士であるバイロンは、現役時代にイシュドに近い考えを……パワーこそ全てをなぎ倒し、破壊し……結果民を助けると考えている脳筋騎士の知人を思い出した。
宗教として存在すると思われている神ではなく、現象を……もしくは目に見える何かしらの力を信仰している者がいるという例外的な存在は知っている。
だが、それが暴力だと返ってくるとは予想していなかった。
「なんだかんだ、追い詰められた時に冷静さも大事っすけど、暴れ回ってでも敵をぶっ潰せる力が大事だと思うんすよね」
「なるほど……そういう事か…………そうだな。それは、理解出来る部分はある。しかし、それ以外の宗教などには興味すらない、か」
「そっすね。特に興味ないっすね」
世間話として振られた内容に関して「特に興味ないっすね」と言ってぶった切ってしまうのは如何なものかと思わなくもないが、嘘を付いて語れるほど……本当に宗教に関して興味がなかった。
「つか、うちの家の人たちは基本的に興味ないっすよ。自分の力と、同じ環境で育った人間たちを信用してるんで」
「っ……そういった考えも、あるか…………イシュド。実はな、他国の学園から、交流戦の申し込みが来てる」
特に興味がない。
その理由を聞き、それはそれで納得出来ると思った……だからといって、伝えなくて良い理由にはならず、意を決してバイロンは本題に入った。
「その中に、カラティール神聖国の学園から申し込みがきている」
「カラティール神聖国……カラティール神聖国……………………なんか、チラッとだけ聞いたことがあるようなないような……名前からして、宗教が生活の中心? みたいになってる国っすよね」
「その認識で合っている」
知らない。
それがポーズではなく、本気であると解かる。
貴族として、細かくは知らずとも、多少の知識は持ってて当然の国。
だが、バイロンはイシュドがフラベルト学園に入学しなければ、基本的に領地内で一生を終えるつもりだった人間であることを思い出し、下手に説教を始めることはなく話を続けた。
「フラベルト学園として……なにより、バトレア王国としても、中々断り辛い国だ」
「……宗教国家だからっすか?」
「その通りだ」
「はぁ~~~~~~~~~…………クソ怠いっすね」
教師の前で、堂々と……あからさまに怠い、面倒という態度を出し、口にした。
予想通りとはいえ、バイロンとしては苦い反応。
何が苦いと言えば……イシュドの表情に、ただ面倒という感情だけではなく、若干の嫌悪感が浮かんでいること。
「それ、向こうがこっちに来るんじゃなくて、俺らが向こうに行かなきゃなんないんすか」
「向こうの要望としてはな」
「チッ! クソ高慢ちき共が……神ごとぶっ殺すぞ」
「……………………」
これがイシュドの本音である。
そんな生徒の本音を聞いた瞬間、バイロンは心の中で悲鳴を上げた。
あぁ……不味い、不味い不味い不味い。
ぶつかるのは、必至。
そうなっても、大事にならない様に進めようとは考えている。
それでも、今しがたイシュドが口にした「神ごとぶっ殺すぞ」などと口にすれば、学生の……子供の戯言だと見逃すことが出来ない。
「交流戦つってもなぁ……バイロン先生。その交流戦を提案してきた学園の中に、面白そうな奴はいるんすか?」
交流戦。
行う場所は他国。
面倒であることに変わりはないが、それでもそこに興味が惹かれる何かがあれば、話は別である。
「お前と同じ一年生で、聖騎士に就いている学生がいる」
「っ!? ってことは…………レベルが五十を越えてるのか、っすか」
思わず教師に対する敬語を忘れかける。
学園に入学した際、自分以外にそのレベルの者がいなかったこともあり、驚きを隠せなかった。
「いや、三次職には就いてない」
「つまり……二次職で、既に聖騎士に就いている、ってことっすか」
「そうだ」
聖騎士とは、本来三次職に到達する際に転職することが出来る高位職。
二次職に転職する際に聖騎士に転職することは、まずあり得ない。
イシュドが一次職の時点で魔戦士に就いたこと同等レベルのあり得なさ。
もっと言うと……魔戦士に関しては、血統と本人のセンスや才……それらが完全に混ざり合っていれば、まだ…………納得は出来る事例。
しかし、二次職で聖騎士の職に就いた者は歴史上、片手の指で数えられる程の人間しかいない。
強い、判断力がある、魔力……そして信仰心。
そのどれもが高水準に達していたとしても、二次職の時点で転職できる領域ではない。
(……やはり、そこには惹かれてくれるか)
先程までクソ面倒、ふざけんな、宗教なんざクソ喰らえだという思いを一切隠していなかった顔に泣く子も黙るどころではなく、恐怖で失禁失神しかねない狂戦士の満面な笑みが現れた。
よく部屋に呼び出されるなと思う今日この頃。
今日は担任のバイロンに呼び出されていたイシュド。
「あれっすか、もしかして俺たちじゃなく、俺個人に受けてほしい依頼でも来てるんすか」
学園に届く依頼。
仮に本当に自分を名指しで指名している依頼であれば、割と期待出来る内容かもしれないと考えるも……バイロンが伝えたい話は、依頼関係ではなかった。
「受けてほしい、そこは間違ってないな。ただ、依頼ではない」
「受けてほしいけど、依頼ではない? ……もしかして、二年生や三年生に戦闘に関して色々と教えてやってほしいってことっすか? 前に心構え的なものを教えたじゃないっすか。それで勘弁してくれないっすか」
「安心してくれ。そういった内容ではない……………………イシュド、お前は信仰している宗教などあるか」
「えっ………………主教勧誘っすか?」
まさか、あのバイロン先生が!!?? といった感じで、イシュドは本気で信じられない驚いた。
「違う。そういった事ではない。世間話として受け取ってくれれば良い」
「そ、そうっすか」
本気で驚くも、本人が即否定してくれたことで、ほっと一安心。
学園に入学したイシュドにとって、バイロンは数少ない信用出来る大人であるため、割と本気で焦った。
「信仰して宗教かぁ……特にないっすね。強いて言うなら、暴力じゃないっすか」
「そ、そうか………………」
力を信仰している。
元騎士であるバイロンは、現役時代にイシュドに近い考えを……パワーこそ全てをなぎ倒し、破壊し……結果民を助けると考えている脳筋騎士の知人を思い出した。
宗教として存在すると思われている神ではなく、現象を……もしくは目に見える何かしらの力を信仰している者がいるという例外的な存在は知っている。
だが、それが暴力だと返ってくるとは予想していなかった。
「なんだかんだ、追い詰められた時に冷静さも大事っすけど、暴れ回ってでも敵をぶっ潰せる力が大事だと思うんすよね」
「なるほど……そういう事か…………そうだな。それは、理解出来る部分はある。しかし、それ以外の宗教などには興味すらない、か」
「そっすね。特に興味ないっすね」
世間話として振られた内容に関して「特に興味ないっすね」と言ってぶった切ってしまうのは如何なものかと思わなくもないが、嘘を付いて語れるほど……本当に宗教に関して興味がなかった。
「つか、うちの家の人たちは基本的に興味ないっすよ。自分の力と、同じ環境で育った人間たちを信用してるんで」
「っ……そういった考えも、あるか…………イシュド。実はな、他国の学園から、交流戦の申し込みが来てる」
特に興味がない。
その理由を聞き、それはそれで納得出来ると思った……だからといって、伝えなくて良い理由にはならず、意を決してバイロンは本題に入った。
「その中に、カラティール神聖国の学園から申し込みがきている」
「カラティール神聖国……カラティール神聖国……………………なんか、チラッとだけ聞いたことがあるようなないような……名前からして、宗教が生活の中心? みたいになってる国っすよね」
「その認識で合っている」
知らない。
それがポーズではなく、本気であると解かる。
貴族として、細かくは知らずとも、多少の知識は持ってて当然の国。
だが、バイロンはイシュドがフラベルト学園に入学しなければ、基本的に領地内で一生を終えるつもりだった人間であることを思い出し、下手に説教を始めることはなく話を続けた。
「フラベルト学園として……なにより、バトレア王国としても、中々断り辛い国だ」
「……宗教国家だからっすか?」
「その通りだ」
「はぁ~~~~~~~~~…………クソ怠いっすね」
教師の前で、堂々と……あからさまに怠い、面倒という態度を出し、口にした。
予想通りとはいえ、バイロンとしては苦い反応。
何が苦いと言えば……イシュドの表情に、ただ面倒という感情だけではなく、若干の嫌悪感が浮かんでいること。
「それ、向こうがこっちに来るんじゃなくて、俺らが向こうに行かなきゃなんないんすか」
「向こうの要望としてはな」
「チッ! クソ高慢ちき共が……神ごとぶっ殺すぞ」
「……………………」
これがイシュドの本音である。
そんな生徒の本音を聞いた瞬間、バイロンは心の中で悲鳴を上げた。
あぁ……不味い、不味い不味い不味い。
ぶつかるのは、必至。
そうなっても、大事にならない様に進めようとは考えている。
それでも、今しがたイシュドが口にした「神ごとぶっ殺すぞ」などと口にすれば、学生の……子供の戯言だと見逃すことが出来ない。
「交流戦つってもなぁ……バイロン先生。その交流戦を提案してきた学園の中に、面白そうな奴はいるんすか?」
交流戦。
行う場所は他国。
面倒であることに変わりはないが、それでもそこに興味が惹かれる何かがあれば、話は別である。
「お前と同じ一年生で、聖騎士に就いている学生がいる」
「っ!? ってことは…………レベルが五十を越えてるのか、っすか」
思わず教師に対する敬語を忘れかける。
学園に入学した際、自分以外にそのレベルの者がいなかったこともあり、驚きを隠せなかった。
「いや、三次職には就いてない」
「つまり……二次職で、既に聖騎士に就いている、ってことっすか」
「そうだ」
聖騎士とは、本来三次職に到達する際に転職することが出来る高位職。
二次職に転職する際に聖騎士に転職することは、まずあり得ない。
イシュドが一次職の時点で魔戦士に就いたこと同等レベルのあり得なさ。
もっと言うと……魔戦士に関しては、血統と本人のセンスや才……それらが完全に混ざり合っていれば、まだ…………納得は出来る事例。
しかし、二次職で聖騎士の職に就いた者は歴史上、片手の指で数えられる程の人間しかいない。
強い、判断力がある、魔力……そして信仰心。
そのどれもが高水準に達していたとしても、二次職の時点で転職できる領域ではない。
(……やはり、そこには惹かれてくれるか)
先程までクソ面倒、ふざけんな、宗教なんざクソ喰らえだという思いを一切隠していなかった顔に泣く子も黙るどころではなく、恐怖で失禁失神しかねない狂戦士の満面な笑みが現れた。
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