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第229話 見様見真似
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(っ!! 来ますわ!!!!)
フィリップの目つきが変わった……本格的に試合に入り込んだ。
それを察知したミシェラは攻めから一転、後方に飛んでどこから攻撃が来ても大丈夫な様にどっしりと構えた。
「…………………………」
(……………………どういうつっ!!!!????)
雰囲気を変えただけで、攻撃してこない。
どういうつもりなのかと心の中で叫ぼうとした瞬間、まるで心の内を見透かすように駆け出し、大振りに短剣を振るう。
普段であれば、大振りに振るわれた短剣など躱せないことはないが、完全に呼吸を外されたタイミングで振るわれたこともあって、ガードという選択肢しか取れなかったミシェラ。
「がっ!?」
咄嗟の判断だったこともあり、双剣を二振りとも使ってガードした。
双剣士と傭兵……職業上、やや傭兵の方が腕力の上昇値が優れている。
女性と男性によって起こる体格差も含め、寧ろのその判断は正しかったと言える。
腕には、本当にフィリップの体から放たれた攻撃なのかと疑いたくなる程の衝撃を受け、痺れを感じた。
ただ、両腕を使ってしまうと、次に飛んでくる攻撃を対処する手段が限られてしまい……もろに腹への前蹴りが叩き込まれてしまった。
「お、らッ!!!!!」
「ッ!!!!!!!!!」
本気で終わらせるつもりで放った前蹴りを食らって後方へ吹っ飛んだミシェラ。
そんな彼女に間髪入れず飛び掛かり、短剣から斬撃刃を放つも……ミシェラは自身の体が地面に付いた瞬間、全力で転がった。
それは美しく倒すという姿勢を目標にしているミシェラにとっては不本意な行動。
それでも、思考の中に吹っ飛ばされて地面に着地した瞬間、必ず左右どちらかに転がる。
吹っ飛ぶ要因となった攻撃のダメージなど気にせず、その行動を行うと思考に叩きこんでいた。
「刃ァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
フィリップの斬撃刃を躱すことが出来た。
だが、実際のところ前蹴りをもろに食らったダメージは大きく、本来であれば時間稼ぎをして少しでもダメージを抜きたい。
(ここで日和れば、負ける!!!!!!!!)
何故、先程フィリップの大振りの斬撃を受け止めた際、予想以上の痺れを感じたのか。
それは………………自分が先程まで訓練を行い、イシュドと試合を行っていたから。
といった、当たり前過ぎる理由で体力や魔力を消費していたことを思い出すことに成功。
バカ過ぎると言えばバカ過ぎるのだが、ここでその事に気付けたのは大きかった。
完全に攻守が逆転し、フィリップにスイッチが入り、完全に攻守が逆転してしまうと、全ての動きを見透かされる。
過去の経験から、防御だけに回ってはならないことは学習済み。
(ここだッ!!!!!)
「っ!?」
乱撃を対処していく……と見せかけ、数秒だけ斬り結んだ直後、右足に力を込めて後方に下がりながら、思いっきり短剣をぶん投げた。
距離とスピードを計算すると、回避は無理だと判断し、左手に持つ双剣で弾いた。
「っ、しゃッ!!!!!!!!」
右足に力を込めて後方に下がったフィリップは、今度は左足に力を込めて前に跳び……ミシェラの懐に潜り込んだ。
そして左手を腹に添え、右手で左脚の太ももを掴んだ。
「っ!!!!!!??????」
後一瞬……後ほんのコンマ数秒で双剣の刃がフィリップの肩に届いてた。
だが、次の瞬間には視界が急に傾き、頭部が地面に激突。
「はぁ、はぁ……俺の、勝ちだな」
地面に押し倒されても、ミシェラは両手に持つ双剣から手を放していなかった。
だが、それらを動かすよりも先に、腹に添えていたフィリップの右手がミシェラの喉元を抑えた。
「~~~~~~~~ッ!!!! …………参りましたわ」
完全なチェックメイト。
ここから双剣が届くのが先か、首を絞めるのが先かを論ずるのはナンセンス。
それが解らないミシェラではなかった。
「二人ともお疲れ~~~~」
「イシュドぉ~~、なんで止めてくれなかったんだよ~~~」
「なっはっはっは!! すまんすまん。でも、勝ったんだから良いじゃねぇか」
「いやいや、そういう問題じゃねぇっての」
途中から本気になったとはいえ、それでも普段行う試合とはまた状況が違ったため、文句の一つや二つぐらい言いたかった。
「デカパイもお疲れさん。俺と戦り合った後ってのを考えたら、割と戦れたんじゃねぇか?」
「関係ありませんわ。疲れている事に関しては、依頼から戻って来たフィリップも同じでしょう」
自分が負けたのは、イシュドとの試合で疲れていたからだ……それは確かに一つの理由にはなるが、元を辿ればフィリップの失礼な発言があったとはいえ、勝負を申し込んだのはミシェラから。
それを忘れるほど熱くなり過ぎてはいなかった。
「私の負け、それは変りませんわ……それにしても、良くあんな攻撃を方法を取りましたわね」
「あんな鬼の形相で双剣を振り回されたら、勢いで押し切られそうだったからな。いつだったか、イシュドが偶に寝技? てのを仕掛けたら結構効くって言ってたのを思い出したんだよ」
(っ、そういえばそんな事を言った記憶はあるっちゃあるが……別に、詳しい仕掛け方とか教えてなかったよな?)
自身の隠し玉として教えたくなかった?
そういったある意味大事な理由ではなく、単純に寝技に関しては教える意味がない。
素手同士の対決であればまだしも、全体的に見ても戦闘者の中で徒手格闘をメインに戦う者は多くない。
得物を扱う者同士での戦闘では、不意に仕掛ければ背中からグサリと刺されてしまいかねない。
(やっぱ、センスって部分に関しちゃ本当にズバ抜けてんな)
見様見真似、想像の範疇を出ない倒し方ではあったが、それでも咄嗟に成功させたという事実は変わらない。
そして数時間後、四人がバイロンから金貨一枚ずつ貰っていたため、全員で依頼達成の祝勝会を王都の店で行った。
そんな中、時折ミシェラ……ではなく、フィリップがボーっとしていることがあった。
フィリップの目つきが変わった……本格的に試合に入り込んだ。
それを察知したミシェラは攻めから一転、後方に飛んでどこから攻撃が来ても大丈夫な様にどっしりと構えた。
「…………………………」
(……………………どういうつっ!!!!????)
雰囲気を変えただけで、攻撃してこない。
どういうつもりなのかと心の中で叫ぼうとした瞬間、まるで心の内を見透かすように駆け出し、大振りに短剣を振るう。
普段であれば、大振りに振るわれた短剣など躱せないことはないが、完全に呼吸を外されたタイミングで振るわれたこともあって、ガードという選択肢しか取れなかったミシェラ。
「がっ!?」
咄嗟の判断だったこともあり、双剣を二振りとも使ってガードした。
双剣士と傭兵……職業上、やや傭兵の方が腕力の上昇値が優れている。
女性と男性によって起こる体格差も含め、寧ろのその判断は正しかったと言える。
腕には、本当にフィリップの体から放たれた攻撃なのかと疑いたくなる程の衝撃を受け、痺れを感じた。
ただ、両腕を使ってしまうと、次に飛んでくる攻撃を対処する手段が限られてしまい……もろに腹への前蹴りが叩き込まれてしまった。
「お、らッ!!!!!」
「ッ!!!!!!!!!」
本気で終わらせるつもりで放った前蹴りを食らって後方へ吹っ飛んだミシェラ。
そんな彼女に間髪入れず飛び掛かり、短剣から斬撃刃を放つも……ミシェラは自身の体が地面に付いた瞬間、全力で転がった。
それは美しく倒すという姿勢を目標にしているミシェラにとっては不本意な行動。
それでも、思考の中に吹っ飛ばされて地面に着地した瞬間、必ず左右どちらかに転がる。
吹っ飛ぶ要因となった攻撃のダメージなど気にせず、その行動を行うと思考に叩きこんでいた。
「刃ァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
フィリップの斬撃刃を躱すことが出来た。
だが、実際のところ前蹴りをもろに食らったダメージは大きく、本来であれば時間稼ぎをして少しでもダメージを抜きたい。
(ここで日和れば、負ける!!!!!!!!)
何故、先程フィリップの大振りの斬撃を受け止めた際、予想以上の痺れを感じたのか。
それは………………自分が先程まで訓練を行い、イシュドと試合を行っていたから。
といった、当たり前過ぎる理由で体力や魔力を消費していたことを思い出すことに成功。
バカ過ぎると言えばバカ過ぎるのだが、ここでその事に気付けたのは大きかった。
完全に攻守が逆転し、フィリップにスイッチが入り、完全に攻守が逆転してしまうと、全ての動きを見透かされる。
過去の経験から、防御だけに回ってはならないことは学習済み。
(ここだッ!!!!!)
「っ!?」
乱撃を対処していく……と見せかけ、数秒だけ斬り結んだ直後、右足に力を込めて後方に下がりながら、思いっきり短剣をぶん投げた。
距離とスピードを計算すると、回避は無理だと判断し、左手に持つ双剣で弾いた。
「っ、しゃッ!!!!!!!!」
右足に力を込めて後方に下がったフィリップは、今度は左足に力を込めて前に跳び……ミシェラの懐に潜り込んだ。
そして左手を腹に添え、右手で左脚の太ももを掴んだ。
「っ!!!!!!??????」
後一瞬……後ほんのコンマ数秒で双剣の刃がフィリップの肩に届いてた。
だが、次の瞬間には視界が急に傾き、頭部が地面に激突。
「はぁ、はぁ……俺の、勝ちだな」
地面に押し倒されても、ミシェラは両手に持つ双剣から手を放していなかった。
だが、それらを動かすよりも先に、腹に添えていたフィリップの右手がミシェラの喉元を抑えた。
「~~~~~~~~ッ!!!! …………参りましたわ」
完全なチェックメイト。
ここから双剣が届くのが先か、首を絞めるのが先かを論ずるのはナンセンス。
それが解らないミシェラではなかった。
「二人ともお疲れ~~~~」
「イシュドぉ~~、なんで止めてくれなかったんだよ~~~」
「なっはっはっは!! すまんすまん。でも、勝ったんだから良いじゃねぇか」
「いやいや、そういう問題じゃねぇっての」
途中から本気になったとはいえ、それでも普段行う試合とはまた状況が違ったため、文句の一つや二つぐらい言いたかった。
「デカパイもお疲れさん。俺と戦り合った後ってのを考えたら、割と戦れたんじゃねぇか?」
「関係ありませんわ。疲れている事に関しては、依頼から戻って来たフィリップも同じでしょう」
自分が負けたのは、イシュドとの試合で疲れていたからだ……それは確かに一つの理由にはなるが、元を辿ればフィリップの失礼な発言があったとはいえ、勝負を申し込んだのはミシェラから。
それを忘れるほど熱くなり過ぎてはいなかった。
「私の負け、それは変りませんわ……それにしても、良くあんな攻撃を方法を取りましたわね」
「あんな鬼の形相で双剣を振り回されたら、勢いで押し切られそうだったからな。いつだったか、イシュドが偶に寝技? てのを仕掛けたら結構効くって言ってたのを思い出したんだよ」
(っ、そういえばそんな事を言った記憶はあるっちゃあるが……別に、詳しい仕掛け方とか教えてなかったよな?)
自身の隠し玉として教えたくなかった?
そういったある意味大事な理由ではなく、単純に寝技に関しては教える意味がない。
素手同士の対決であればまだしも、全体的に見ても戦闘者の中で徒手格闘をメインに戦う者は多くない。
得物を扱う者同士での戦闘では、不意に仕掛ければ背中からグサリと刺されてしまいかねない。
(やっぱ、センスって部分に関しちゃ本当にズバ抜けてんな)
見様見真似、想像の範疇を出ない倒し方ではあったが、それでも咄嗟に成功させたという事実は変わらない。
そして数時間後、四人がバイロンから金貨一枚ずつ貰っていたため、全員で依頼達成の祝勝会を王都の店で行った。
そんな中、時折ミシェラ……ではなく、フィリップがボーっとしていることがあった。
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