215 / 245
第215話 信じているから
しおりを挟む
「かぁ~~~~、動いた後の酒は美味いな~~~」
「……否定は出来ないけど、今日フィリップは特に働いてないよね?」
夕食の席で、言葉だけ聞けば冒険者となんら変わらないフィリップ。
そんなフィリップの言葉に同意しながらも、アドレアスは「お前は労働と言える労働をしてない癖に酒が美味いのか?」とツッコむ。
「うっせ。そういうお前だって、大して働いてねぇだろう」
「そうだね。それも否定出来ない」
結局、本日遭遇したモンスターの殆どはイブキ一人で倒してしまった。
人型であろうと、四足歩行タイプのモンスターであろうと、綺麗に首を切断。
圧倒的な殺傷力でモンスターを討伐していき、本当に三人の出番は少なかった。
「それにしても、遭遇したモンスターは最初に遭遇したオークと同じく、全員僕たちを食べようという意思が強かったね」
「だな~~~~。それを考えっと、マジでミノタウロスの奴が辺り一帯を支配してんのかもな」
「フィリップ的に、面倒な性格の持ち主かもしれないってことだね」
「そういうこった。つっても、暴力で支配視点なら、まだ全然良いんだけどな」
暴力頼りの暴君であれば、いくらでも戦りようはある。
しかし、フィリップが恐れる点は他にもあった。
「……支配してるだけならまだしも、獣系のモンスターを従えてたら、クソ面倒だ、な!! ぷは~~~~~~。すいません、エールおかわり」
「かしこまりました~~~!!!」
一気に残っていたエールを飲み干すも、まだまだ酔いは回らない。
「ミノタウロスだから、獣系モンスターを従えるか……」
「安直な考えだって言いてぇのか?」
「そんなことないよ。ただ、場合によっては獣系だけではなく、オークなどの人型も可能性としてあり得るかと思って」
「……強い奴だけを傍に置くって考えが出来る奴なら、一部の個体だけを従えてるかもな」
通常種のオークはDランクであり、ミノタウロスはBランクの怪物。
その怪物を討とうとする冒険者たちであれば、一人でもオーク程度であれば余裕で討伐出来る。
(つか、それなら、ミノタウロスの側近? 連中がBランクに近い実力を持ってるかもしれねぇってことかよ………………クソったれが。場合によっちゃあ、前回の鬼竜・尖との戦い以上に勝ち目が薄いんじゃねぇか?)
できれば、フィリップとしては勝ち目が薄い勝負はしたくない。
「であれば、先に私はミノタウロスに従うモンスターの討伐をメインに動いた方が良さそうですね」
「その方が良いかな。そうなると、ミノタウロスは……僕とアドレアス様の二人で抑えるのが最善かな」
「そうだね。それじゃあ、フィリップはイブキさんの援護に回ってもらって、従うモンスターたちの討伐を終えたら、予定通りの陣形でミノタウロスと戦おう」
「………………」
「? どうしたんだい、フィリップ。いつも以上に眉間にしわが寄ってるよ」
「うっせ。お前らのイシュドに負けねぇバーサーカー具合にちょっと呆れてたんだよ」
三人とも、仮にミノタウロスが一部の力を持つ個体のみ傍に従えてた場合、その実力がBランクに近い実力を有している可能性が高い……という考えには至っていた。
だが、それでも一切怯える様子を見せず、仮にその場合はどうやって戦うについて直ぐに考え始めた。
「……ぷっ、あっはっは!!! フィリップ、それはそれで嬉しいけどさ、僕らなんてまだまだだと思うよ」
(いや、別に褒めてねぇんだよ)
声に出してツッコミたいところなのだが、ガルフの中でイシュドに似ている、イシュドに負けてないという言葉は、全て褒め言葉に変換されていると解っているため、無駄だと思って言葉に出さなかった。
「バーサーカー……でしょうか? 私としては、まだ自分たちの負けが決まった訳ではないと思っているので、どう戦うかを考えるのは当然かと」
「鬼竜・尖の話を聞いた限り、本当にミノタウロスが力のある一部のモンスターを従えてたとしても、総合的に見れば鬼竜・尖の方が強いと思えてね。それなら、勝ち目はそこまで低くないと思わないかい」
「アドレアス様の言う通りだよ、フィリップ。僕は……このメンバーで、負けるとは思えないよ」
ガルフの言葉を聞き、フィリップは一年も経たず、人はここまで変われるのかと、ほんの少し驚いた。
何故なら……現在、フィリップたちが食事をしている場所は酒場。
つまり、周りには冒険者たちがいる。
先日、フィリップたちにバカ絡みをしようとして、結果としてハーフ巨人のギルド職員にボコボコのメタメタにされた阿呆たちはいないが、現在レブラ周辺の森に生息しているミノタウロスに関して知っている者は多い。
このメンバーなら、ミノタウロスを相手に負けるとは思えない。
そんな事をほざくガキ共がいれば、調子に乗ってるんじゃないぞと暴言が飛んできてもおかしくない。
「……はっはっは!!!! ったく、本当に頼もしくなったんじゃねぇの」
「そ、そうかな。でも、学園に入学してイシュドに出会ってから、それまで以上に頑張ったし……なにより、フィリップたちが強いのは知ってるからさ」
学園に入学するまで頑張った自分、入学してからイシュドという友人と出会い、更に頑張った自分の努力を、意志を……ガルフは信じていた。
なにより、共に切磋琢磨して頑張っているフィリップたちの実力は、日々の手合せで実感しており、自分の実力以上に信じている。
(…………将来騎士とか魔術師を目指してる令息や令嬢連中の中で、こういう考えを出来る奴が、いったい何人いることやら)
狙っている、狙ってないは関係無かった。
味方の士気を上げることを狙ってそういう事を言えるのも、リーダーとしての資質があると言える。
(イシュドの強さを見て、強さを求める姿勢が変わった連中が少しいるみてぇだが、ぶっちゃけイシュドよりガルフを見習うべきだよなぁ……絶対にバカ真面目に頷く奴はいねぇだろうけど)
良き友人の、素晴らしいリーダーの言葉を聞き、少し……フィリップの中の不安や面倒という気持ちが薄れた。
「……否定は出来ないけど、今日フィリップは特に働いてないよね?」
夕食の席で、言葉だけ聞けば冒険者となんら変わらないフィリップ。
そんなフィリップの言葉に同意しながらも、アドレアスは「お前は労働と言える労働をしてない癖に酒が美味いのか?」とツッコむ。
「うっせ。そういうお前だって、大して働いてねぇだろう」
「そうだね。それも否定出来ない」
結局、本日遭遇したモンスターの殆どはイブキ一人で倒してしまった。
人型であろうと、四足歩行タイプのモンスターであろうと、綺麗に首を切断。
圧倒的な殺傷力でモンスターを討伐していき、本当に三人の出番は少なかった。
「それにしても、遭遇したモンスターは最初に遭遇したオークと同じく、全員僕たちを食べようという意思が強かったね」
「だな~~~~。それを考えっと、マジでミノタウロスの奴が辺り一帯を支配してんのかもな」
「フィリップ的に、面倒な性格の持ち主かもしれないってことだね」
「そういうこった。つっても、暴力で支配視点なら、まだ全然良いんだけどな」
暴力頼りの暴君であれば、いくらでも戦りようはある。
しかし、フィリップが恐れる点は他にもあった。
「……支配してるだけならまだしも、獣系のモンスターを従えてたら、クソ面倒だ、な!! ぷは~~~~~~。すいません、エールおかわり」
「かしこまりました~~~!!!」
一気に残っていたエールを飲み干すも、まだまだ酔いは回らない。
「ミノタウロスだから、獣系モンスターを従えるか……」
「安直な考えだって言いてぇのか?」
「そんなことないよ。ただ、場合によっては獣系だけではなく、オークなどの人型も可能性としてあり得るかと思って」
「……強い奴だけを傍に置くって考えが出来る奴なら、一部の個体だけを従えてるかもな」
通常種のオークはDランクであり、ミノタウロスはBランクの怪物。
その怪物を討とうとする冒険者たちであれば、一人でもオーク程度であれば余裕で討伐出来る。
(つか、それなら、ミノタウロスの側近? 連中がBランクに近い実力を持ってるかもしれねぇってことかよ………………クソったれが。場合によっちゃあ、前回の鬼竜・尖との戦い以上に勝ち目が薄いんじゃねぇか?)
できれば、フィリップとしては勝ち目が薄い勝負はしたくない。
「であれば、先に私はミノタウロスに従うモンスターの討伐をメインに動いた方が良さそうですね」
「その方が良いかな。そうなると、ミノタウロスは……僕とアドレアス様の二人で抑えるのが最善かな」
「そうだね。それじゃあ、フィリップはイブキさんの援護に回ってもらって、従うモンスターたちの討伐を終えたら、予定通りの陣形でミノタウロスと戦おう」
「………………」
「? どうしたんだい、フィリップ。いつも以上に眉間にしわが寄ってるよ」
「うっせ。お前らのイシュドに負けねぇバーサーカー具合にちょっと呆れてたんだよ」
三人とも、仮にミノタウロスが一部の力を持つ個体のみ傍に従えてた場合、その実力がBランクに近い実力を有している可能性が高い……という考えには至っていた。
だが、それでも一切怯える様子を見せず、仮にその場合はどうやって戦うについて直ぐに考え始めた。
「……ぷっ、あっはっは!!! フィリップ、それはそれで嬉しいけどさ、僕らなんてまだまだだと思うよ」
(いや、別に褒めてねぇんだよ)
声に出してツッコミたいところなのだが、ガルフの中でイシュドに似ている、イシュドに負けてないという言葉は、全て褒め言葉に変換されていると解っているため、無駄だと思って言葉に出さなかった。
「バーサーカー……でしょうか? 私としては、まだ自分たちの負けが決まった訳ではないと思っているので、どう戦うかを考えるのは当然かと」
「鬼竜・尖の話を聞いた限り、本当にミノタウロスが力のある一部のモンスターを従えてたとしても、総合的に見れば鬼竜・尖の方が強いと思えてね。それなら、勝ち目はそこまで低くないと思わないかい」
「アドレアス様の言う通りだよ、フィリップ。僕は……このメンバーで、負けるとは思えないよ」
ガルフの言葉を聞き、フィリップは一年も経たず、人はここまで変われるのかと、ほんの少し驚いた。
何故なら……現在、フィリップたちが食事をしている場所は酒場。
つまり、周りには冒険者たちがいる。
先日、フィリップたちにバカ絡みをしようとして、結果としてハーフ巨人のギルド職員にボコボコのメタメタにされた阿呆たちはいないが、現在レブラ周辺の森に生息しているミノタウロスに関して知っている者は多い。
このメンバーなら、ミノタウロスを相手に負けるとは思えない。
そんな事をほざくガキ共がいれば、調子に乗ってるんじゃないぞと暴言が飛んできてもおかしくない。
「……はっはっは!!!! ったく、本当に頼もしくなったんじゃねぇの」
「そ、そうかな。でも、学園に入学してイシュドに出会ってから、それまで以上に頑張ったし……なにより、フィリップたちが強いのは知ってるからさ」
学園に入学するまで頑張った自分、入学してからイシュドという友人と出会い、更に頑張った自分の努力を、意志を……ガルフは信じていた。
なにより、共に切磋琢磨して頑張っているフィリップたちの実力は、日々の手合せで実感しており、自分の実力以上に信じている。
(…………将来騎士とか魔術師を目指してる令息や令嬢連中の中で、こういう考えを出来る奴が、いったい何人いることやら)
狙っている、狙ってないは関係無かった。
味方の士気を上げることを狙ってそういう事を言えるのも、リーダーとしての資質があると言える。
(イシュドの強さを見て、強さを求める姿勢が変わった連中が少しいるみてぇだが、ぶっちゃけイシュドよりガルフを見習うべきだよなぁ……絶対にバカ真面目に頷く奴はいねぇだろうけど)
良き友人の、素晴らしいリーダーの言葉を聞き、少し……フィリップの中の不安や面倒という気持ちが薄れた。
195
お気に入りに追加
1,777
あなたにおすすめの小説
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる