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第202話 可能性は十分
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「うっげ~~~~……バイロン先生、それマジで言ってるんですか」
「大マジだ…………しかしフィリップ、お前イシュドに似てきたな」
先日、似た様なやり取りをしたなと思いながら、バイロンはガルフ、フィリップ、イブキ、アドレアスの四人に対して再度軽く説明を行った。
「っという訳で、今回はお前たちだけで依頼を達成してもらう」
今回は生徒会長であるクリスティールも同席しており、テーブルには多数の依頼書が並べられている。
イシュドたちが鬼竜・尖という特殊過ぎるモンスターを討伐し、それ以降に受けた依頼も全て達成しているという情報が広まり、フラベルト学園には多くの依頼が舞い込んでいた。
その中から、クリスティールとバイロン、シドウたちが悩み考え、今の四人ならばと考えた依頼書が並べられている。
「俺たち四人だけでねぇ~~~……クソ面倒だなぁ、ガルフ」
「そうかな? 僕は悪くないと思うよ。イシュドの力を頼らずに依頼を達成するのも、一つの壁を越える感じ? だと思うから」
鬼竜・尖との戦い以降、依頼を受けた際にイシュドが戦うことは殆どなかった。
ただ、移動する際にはイシュドが所有している空飛ぶ絨毯を使用して圧倒的な移動速度で目的の街へと移動し、王都に戻る際も苦労せず帰還している。
そういった部分も含めると、確かに依頼達成にはイシュドの力が大きく関わっていると言える。
「へーへー、そうかよ。まぁいずれこんな感じの指令? みたいなのが来るとは予想してたけどよ。んで、どの依頼を受けんだ?」
一応バイロンからの説明には納得したフィリップ。
共に依頼を受けるメンバーがガルフ以外に、イブキとアドレアスということもあり、戦力や性格の相性的にもそこまで不満はなかった。
「ん~~~…………やっぱり、討伐依頼が良いかなって思う」
実力を示す、という意味であれば討伐系の依頼が良いという判断は間違いない。
並べられている依頼書には鬼竜・尖の時のように調査系の依頼もあるが、ガルフの記憶にはその時の戦闘などが強く残っていた。
(そうなると決まっている訳ではないけど、警戒するに越したことはないよね)
場合によっては、逃げていると捉えられるかもしれない。
だが、今回依頼を受ける名目は、イシュドがいなくとも本当に戦えると、戦果を出すこと。
強くなる為には冒険しなければならない。
ただ……今はその時ではないと判断した。
「私もそれで良いかと」
「私もだね。そうなると、どんなモンスターを討伐する?」
「討伐系で決定かよ……別に良いけどよ」
声には出さないが、フィリップもガルフと同じく、調査系や採集系の依頼は討伐系よりもイレギュラーが起こる確率が高いのではと考えていた。
「私としては、Cランクのモンスターを複数討伐する形となる討伐依頼でも構わないと思っていますが……」
Cランクのモンスターであっても十分危険な討伐依頼なのだが、複数体……十体近くの討伐で、ようやく四人にとって仕事をしたといった感覚になる。
「……皆、どうする」
「今回はあれだろ、俺たちがイシュド抜きでも十分戦えるってのを証明するだけで良いんだろ。そんなら、Cランクモンスターを……五体ぐらい討伐する形になる依頼を受ければ良いんじゃねぇの?」
本当の強敵と戦うのはめんどくさいという思いもあり、フィリップはクリスティールと同じ考えを示す。
「今の私たちであれば、イシュドの実家周辺に生息しているBランクモンスターはともかく、別の場所に生息しているBランクモンスターであれば戦えなくないと思います」
「私も同意見かな。イシュドが同行してなくとも戦えると示すのであれば、何度か同じ事を繰り返すことになる可能性を考慮して、Bランクモンスターを討伐すべきだと思う」
「………………チッ!!」
アドレアスの考えが解るからこそ、フィリップは反論せず舌打ちだけした。
クリスティールとバイロンもその可能性があると解っているからこそ、小さな溜息を吐くだけで二人の考えを否定はしなかった。
「イシュドから聞いたけど、ミシェラと組んで四人と例の鬼竜・尖という例外的なモンスターと戦ったそうじゃないか」
「いや、それ最終的に倒したのはイシュドの奴だぞ」
「勿論、それは知っているよ。でも、あまりにも出鱈目な強化術を使うまでは互角の勝負を行っていた。あのまま勝てる可能性は十分にあったとイシュドが語っていたよ」
共に行動するようになってから、アドレアスは一度だけイシュドと二人で夕食を食べたことがあった。
それなりに貯金が吹き飛んだものの、それだけの価値があるディナーと言えた。
その際に、アドレアスは前々から気になっていた話を尋ね、酒が入ったイシュドは友人たちの自慢話ということもあり、ちょっと四人を持ち上げ気味で鬼竜・尖との戦いについて語った。
「つまり、私がミシェラに負けない活躍をすれば、Bランクモンスターに勝てる可能性は十分だと思うんだ」
「…………はぁ~~~~~。んじゃあガルフ、お前はどうしてぇんだ?」
今のところ、Cランクモンスターを複数体討伐で良いだろうという意見が一、戦力的には申し分ないのだからBランクモンスターを討伐しようという意見が二。
まだ答えを出していないガルフの意見によって、決定……もしくは話し合いが延長することになる。
「勿論、今すぐにどの依頼を受けるかを決める必要はない」
「けどよ、バイロン先生。二年生になる前には結果を出さなきゃならねぇだろ。つか、俺的には冬休みが始まる前には終わらせときてぇ」
そもそも一年生でありながら、本当にイシュドの力を借りずに依頼を達成出来るのかを検証したい。
故に、二年生に上がってからでは意味がない。
「……とりあえず、一旦持ち帰ろうかな。どれを受けるかは……三日以内に決めます」
イシュドとしても、冬休みに入る前には依頼を受けて達成し、自身の実力を疑う者たちに本物だと示しておきたかった。
「大マジだ…………しかしフィリップ、お前イシュドに似てきたな」
先日、似た様なやり取りをしたなと思いながら、バイロンはガルフ、フィリップ、イブキ、アドレアスの四人に対して再度軽く説明を行った。
「っという訳で、今回はお前たちだけで依頼を達成してもらう」
今回は生徒会長であるクリスティールも同席しており、テーブルには多数の依頼書が並べられている。
イシュドたちが鬼竜・尖という特殊過ぎるモンスターを討伐し、それ以降に受けた依頼も全て達成しているという情報が広まり、フラベルト学園には多くの依頼が舞い込んでいた。
その中から、クリスティールとバイロン、シドウたちが悩み考え、今の四人ならばと考えた依頼書が並べられている。
「俺たち四人だけでねぇ~~~……クソ面倒だなぁ、ガルフ」
「そうかな? 僕は悪くないと思うよ。イシュドの力を頼らずに依頼を達成するのも、一つの壁を越える感じ? だと思うから」
鬼竜・尖との戦い以降、依頼を受けた際にイシュドが戦うことは殆どなかった。
ただ、移動する際にはイシュドが所有している空飛ぶ絨毯を使用して圧倒的な移動速度で目的の街へと移動し、王都に戻る際も苦労せず帰還している。
そういった部分も含めると、確かに依頼達成にはイシュドの力が大きく関わっていると言える。
「へーへー、そうかよ。まぁいずれこんな感じの指令? みたいなのが来るとは予想してたけどよ。んで、どの依頼を受けんだ?」
一応バイロンからの説明には納得したフィリップ。
共に依頼を受けるメンバーがガルフ以外に、イブキとアドレアスということもあり、戦力や性格の相性的にもそこまで不満はなかった。
「ん~~~…………やっぱり、討伐依頼が良いかなって思う」
実力を示す、という意味であれば討伐系の依頼が良いという判断は間違いない。
並べられている依頼書には鬼竜・尖の時のように調査系の依頼もあるが、ガルフの記憶にはその時の戦闘などが強く残っていた。
(そうなると決まっている訳ではないけど、警戒するに越したことはないよね)
場合によっては、逃げていると捉えられるかもしれない。
だが、今回依頼を受ける名目は、イシュドがいなくとも本当に戦えると、戦果を出すこと。
強くなる為には冒険しなければならない。
ただ……今はその時ではないと判断した。
「私もそれで良いかと」
「私もだね。そうなると、どんなモンスターを討伐する?」
「討伐系で決定かよ……別に良いけどよ」
声には出さないが、フィリップもガルフと同じく、調査系や採集系の依頼は討伐系よりもイレギュラーが起こる確率が高いのではと考えていた。
「私としては、Cランクのモンスターを複数討伐する形となる討伐依頼でも構わないと思っていますが……」
Cランクのモンスターであっても十分危険な討伐依頼なのだが、複数体……十体近くの討伐で、ようやく四人にとって仕事をしたといった感覚になる。
「……皆、どうする」
「今回はあれだろ、俺たちがイシュド抜きでも十分戦えるってのを証明するだけで良いんだろ。そんなら、Cランクモンスターを……五体ぐらい討伐する形になる依頼を受ければ良いんじゃねぇの?」
本当の強敵と戦うのはめんどくさいという思いもあり、フィリップはクリスティールと同じ考えを示す。
「今の私たちであれば、イシュドの実家周辺に生息しているBランクモンスターはともかく、別の場所に生息しているBランクモンスターであれば戦えなくないと思います」
「私も同意見かな。イシュドが同行してなくとも戦えると示すのであれば、何度か同じ事を繰り返すことになる可能性を考慮して、Bランクモンスターを討伐すべきだと思う」
「………………チッ!!」
アドレアスの考えが解るからこそ、フィリップは反論せず舌打ちだけした。
クリスティールとバイロンもその可能性があると解っているからこそ、小さな溜息を吐くだけで二人の考えを否定はしなかった。
「イシュドから聞いたけど、ミシェラと組んで四人と例の鬼竜・尖という例外的なモンスターと戦ったそうじゃないか」
「いや、それ最終的に倒したのはイシュドの奴だぞ」
「勿論、それは知っているよ。でも、あまりにも出鱈目な強化術を使うまでは互角の勝負を行っていた。あのまま勝てる可能性は十分にあったとイシュドが語っていたよ」
共に行動するようになってから、アドレアスは一度だけイシュドと二人で夕食を食べたことがあった。
それなりに貯金が吹き飛んだものの、それだけの価値があるディナーと言えた。
その際に、アドレアスは前々から気になっていた話を尋ね、酒が入ったイシュドは友人たちの自慢話ということもあり、ちょっと四人を持ち上げ気味で鬼竜・尖との戦いについて語った。
「つまり、私がミシェラに負けない活躍をすれば、Bランクモンスターに勝てる可能性は十分だと思うんだ」
「…………はぁ~~~~~。んじゃあガルフ、お前はどうしてぇんだ?」
今のところ、Cランクモンスターを複数体討伐で良いだろうという意見が一、戦力的には申し分ないのだからBランクモンスターを討伐しようという意見が二。
まだ答えを出していないガルフの意見によって、決定……もしくは話し合いが延長することになる。
「勿論、今すぐにどの依頼を受けるかを決める必要はない」
「けどよ、バイロン先生。二年生になる前には結果を出さなきゃならねぇだろ。つか、俺的には冬休みが始まる前には終わらせときてぇ」
そもそも一年生でありながら、本当にイシュドの力を借りずに依頼を達成出来るのかを検証したい。
故に、二年生に上がってからでは意味がない。
「……とりあえず、一旦持ち帰ろうかな。どれを受けるかは……三日以内に決めます」
イシュドとしても、冬休みに入る前には依頼を受けて達成し、自身の実力を疑う者たちに本物だと示しておきたかった。
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