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第199話 ベストバウト
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「久しぶりだな」
「そうだな。元気にやってたっすか、ダスティンパイセン」
サンバル学園の二年生であるダスティン・ワビルに食事を誘われたイシュド。
最近よく人から食事に誘われるなと思いながらも、ダスティンの事は嫌いではないため、断ることなく誘いに乗った。
「好きな様に頼んでくれ」
「良いんすか? 結構食べるぞ」
「お前が食べることは解っている。だが、今は懐に余裕があるんだ」
余裕があるのならばと思い、イシュドは遠慮することなくメニュー表を見始めた。
「良い依頼でも受けて、モンスターの素材が高く売れて懐が潤った感じ?」
「そんなところだ。先日、同じ二年生たちと依頼を受けていてな。受けた依頼に関してはCランクモンスターを複数体討伐するというものだったんだが、結果的にBランクのモンスターと遭遇してしまってな」
「完全に予想外のイレギュラーに遭遇した訳だ。んで、結局ダスティンパイセン一人で討伐してしまったと」
「…………まぁ、そんなところだ」
イシュドは夏前に開かれた激闘祭トーナメントでの試合を全て観戦していた。
友人知人以外の試合にはそこまで興味が湧かないものの、試合を観ること自体は好きであり、激闘祭トーナメントの様な学生たちが未来の為に己の全てを懸けて戦う試合などはそう簡単に見られるものではなく……退屈な時間ではなかった。
故に、サンバル学園の生徒の中ではダスティンとディムナ以外はほんの少しでも期待出来るほどの何かを持っていないと知っていた。
「そういえば、あいつはどうしてんすか?」
「ディムナの事か。あいつは……夏休みが開けた際、わざと同学年の者たちを挑発し、その挑発に乗った者たちと全員戦った」
「ほぅ………………いやなんで???」
納得出来るようで出来ない情報に思わず首を傾げる。
「色々と確認したかったことがあるのかもしれないな」
「は、はぁ……もしかして、挑発に乗った連中と連戦し続けたのか?」
「挑発に乗った者たちの中には二人、三人で組んで挑む者もいた。勿論、ディムナはそれを了承していた。了承していたうえで……あいつは全員を叩き潰した」
もさかの全戦全勝。
その結果に、イシュドはそこまで驚くことはなかった。
ディムナの実力を考えれば、無理な話ではない。
そう……無理な話ではないが、容易な話でもない。
「ちなみに、挑発に乗った者たちは三十人以上はいたな」
「連戦でそいつらを全員叩き潰したとなれば、ぐうの音も出ねぇ結果だな、んで、あいつはその後どうしたんだ?」
「元々同世代の者たちと絡むことが少なかったが、その一件で更に関わることが減った。代わりに、よく教師たちに話しかけている」
「模擬戦の相手になってくれって頼んでるってことか」
「その通りだ。とはいえ、教師たちも毎日付き合えるわけではない」
教師たちには教師の仕事があり、他の生徒たちからも授業に関する質問をされる。
ディムナは確かにサンバル学園の中でも特別存在と言えるものの、そこで特別扱いしてはいけなかった。
「だからか、休日はよく俺のところに来る」
(いじめられ子のボッチ……つー訳ではなく、ただただ孤高……隣に立とうとする奴すらいねぇって感じか)
アドレアスに似ている。
しかし、アドレアスの直ぐ傍には、イシュドがいた。
そしてイシュドの傍にはガルフ、フィリップ、ミシェラ、イブキ……同世代の競い合える最高のライバルたちがいる。
「んで、毎回付き合ってあげてるって訳だ」
「ふっふっふ。まぁそう言われてもおかしくないが、俺は俺であいつとの訓練は役立っている。しっかりと、俺の血肉になっている」
重戦士であるダスティンの得物は大斧。
鈍間ではないが、力で叩き潰す典型的なブルドーザータイプ。
対して、細騎士であるディムナが使用する得物は細剣。
スピードとテクニックの二軸で標的を仕留める。
そこに得意魔法である光魔法が食われれば、まさに閃光となる。
ダスティンにとって、もっとも苦戦するタイプであり、将来を考えれば……本格的に戦場で動く前に克服しなければならない。
それはディムナにとっても同じであり、ダスティンに一撃……大斧ではなくとも、その剛拳が辺りさえすれば戦況をひっくり返される。
最悪の場合、それで終わらせられる可能性がある破壊力を有している。
「そういえば、そっちはどうだ。依頼を受けられるようになったのだろう。こっちでも噂になっているぞ」
「あぁ、それな」
イシュドが真っ先に話したのは、鬼竜・尖に関するガルフたちの戦闘、そして実体験だった。
「……その様なモンスターがいるのだな」
注文を頼み終えた。
本来であれば届く料理の味に胸を躍らせるタイミングところだが、ダスティンの頭は鬼竜・尖の事で一杯だった。
「あんなモンスター、俺も会ったことなかったぜ。んと……最高だったぜ」
「はっはっは、流石だな。その様な相手と戦って笑えるのは、学生ではお前ぐらいのものだ…………ふぅーーーー、良い環境が、揃っているな」
「…………なんか、らしくねぇ悩みでも抱えてるのか?」
「先程、ディムナの話をしただろう」
「同世代の連中を連続で叩きのめしたって話だろ。それがどうしたんだ?」
「実はな、うちの学園でもまだ一年生ではあるが、ディムナにも依頼を受けさせて良いのではという話が出たんだ」
激闘祭トーナメントでは、結果として平民の学生であるガルフとぶつかり合い、ダブルノックアウトという結果になった。
平民の学生に負けた……その結果だけ見れば、貴族として恥と捉えられる。
だが、人々の記憶に強烈に刻まれた試合だった。
あの激闘祭トーナメントで行われた試合の中でベストバウトはどの試合かと問われれば、半分以上…………殆どの者が、ガルフとディムナの試合だったと答える。
イシュドの変則試合?
レグラ家の人間が公式の場で強烈な力を見せ付け、確かに鮮烈な試合であったのは間違いない。
しかし、戦闘を……実戦を知っている者が観れば、あれはある種の虐殺と言える試合だった。
「ただ、あいつにはガルフたちの様に、共に戦える仲間がいない」
二年生であるダスティンと組めば良いのではないか。
それも一つの手ではあるが、今のダスティンは激闘祭トーナメント二年生の部で優勝を果たし、二年生の長に……このまま行けば、サンバル学園の学生の長となる。
故に、教師たちと同じくディムナだけを贔屓目する訳にはいかなかった。
「そうだな。元気にやってたっすか、ダスティンパイセン」
サンバル学園の二年生であるダスティン・ワビルに食事を誘われたイシュド。
最近よく人から食事に誘われるなと思いながらも、ダスティンの事は嫌いではないため、断ることなく誘いに乗った。
「好きな様に頼んでくれ」
「良いんすか? 結構食べるぞ」
「お前が食べることは解っている。だが、今は懐に余裕があるんだ」
余裕があるのならばと思い、イシュドは遠慮することなくメニュー表を見始めた。
「良い依頼でも受けて、モンスターの素材が高く売れて懐が潤った感じ?」
「そんなところだ。先日、同じ二年生たちと依頼を受けていてな。受けた依頼に関してはCランクモンスターを複数体討伐するというものだったんだが、結果的にBランクのモンスターと遭遇してしまってな」
「完全に予想外のイレギュラーに遭遇した訳だ。んで、結局ダスティンパイセン一人で討伐してしまったと」
「…………まぁ、そんなところだ」
イシュドは夏前に開かれた激闘祭トーナメントでの試合を全て観戦していた。
友人知人以外の試合にはそこまで興味が湧かないものの、試合を観ること自体は好きであり、激闘祭トーナメントの様な学生たちが未来の為に己の全てを懸けて戦う試合などはそう簡単に見られるものではなく……退屈な時間ではなかった。
故に、サンバル学園の生徒の中ではダスティンとディムナ以外はほんの少しでも期待出来るほどの何かを持っていないと知っていた。
「そういえば、あいつはどうしてんすか?」
「ディムナの事か。あいつは……夏休みが開けた際、わざと同学年の者たちを挑発し、その挑発に乗った者たちと全員戦った」
「ほぅ………………いやなんで???」
納得出来るようで出来ない情報に思わず首を傾げる。
「色々と確認したかったことがあるのかもしれないな」
「は、はぁ……もしかして、挑発に乗った連中と連戦し続けたのか?」
「挑発に乗った者たちの中には二人、三人で組んで挑む者もいた。勿論、ディムナはそれを了承していた。了承していたうえで……あいつは全員を叩き潰した」
もさかの全戦全勝。
その結果に、イシュドはそこまで驚くことはなかった。
ディムナの実力を考えれば、無理な話ではない。
そう……無理な話ではないが、容易な話でもない。
「ちなみに、挑発に乗った者たちは三十人以上はいたな」
「連戦でそいつらを全員叩き潰したとなれば、ぐうの音も出ねぇ結果だな、んで、あいつはその後どうしたんだ?」
「元々同世代の者たちと絡むことが少なかったが、その一件で更に関わることが減った。代わりに、よく教師たちに話しかけている」
「模擬戦の相手になってくれって頼んでるってことか」
「その通りだ。とはいえ、教師たちも毎日付き合えるわけではない」
教師たちには教師の仕事があり、他の生徒たちからも授業に関する質問をされる。
ディムナは確かにサンバル学園の中でも特別存在と言えるものの、そこで特別扱いしてはいけなかった。
「だからか、休日はよく俺のところに来る」
(いじめられ子のボッチ……つー訳ではなく、ただただ孤高……隣に立とうとする奴すらいねぇって感じか)
アドレアスに似ている。
しかし、アドレアスの直ぐ傍には、イシュドがいた。
そしてイシュドの傍にはガルフ、フィリップ、ミシェラ、イブキ……同世代の競い合える最高のライバルたちがいる。
「んで、毎回付き合ってあげてるって訳だ」
「ふっふっふ。まぁそう言われてもおかしくないが、俺は俺であいつとの訓練は役立っている。しっかりと、俺の血肉になっている」
重戦士であるダスティンの得物は大斧。
鈍間ではないが、力で叩き潰す典型的なブルドーザータイプ。
対して、細騎士であるディムナが使用する得物は細剣。
スピードとテクニックの二軸で標的を仕留める。
そこに得意魔法である光魔法が食われれば、まさに閃光となる。
ダスティンにとって、もっとも苦戦するタイプであり、将来を考えれば……本格的に戦場で動く前に克服しなければならない。
それはディムナにとっても同じであり、ダスティンに一撃……大斧ではなくとも、その剛拳が辺りさえすれば戦況をひっくり返される。
最悪の場合、それで終わらせられる可能性がある破壊力を有している。
「そういえば、そっちはどうだ。依頼を受けられるようになったのだろう。こっちでも噂になっているぞ」
「あぁ、それな」
イシュドが真っ先に話したのは、鬼竜・尖に関するガルフたちの戦闘、そして実体験だった。
「……その様なモンスターがいるのだな」
注文を頼み終えた。
本来であれば届く料理の味に胸を躍らせるタイミングところだが、ダスティンの頭は鬼竜・尖の事で一杯だった。
「あんなモンスター、俺も会ったことなかったぜ。んと……最高だったぜ」
「はっはっは、流石だな。その様な相手と戦って笑えるのは、学生ではお前ぐらいのものだ…………ふぅーーーー、良い環境が、揃っているな」
「…………なんか、らしくねぇ悩みでも抱えてるのか?」
「先程、ディムナの話をしただろう」
「同世代の連中を連続で叩きのめしたって話だろ。それがどうしたんだ?」
「実はな、うちの学園でもまだ一年生ではあるが、ディムナにも依頼を受けさせて良いのではという話が出たんだ」
激闘祭トーナメントでは、結果として平民の学生であるガルフとぶつかり合い、ダブルノックアウトという結果になった。
平民の学生に負けた……その結果だけ見れば、貴族として恥と捉えられる。
だが、人々の記憶に強烈に刻まれた試合だった。
あの激闘祭トーナメントで行われた試合の中でベストバウトはどの試合かと問われれば、半分以上…………殆どの者が、ガルフとディムナの試合だったと答える。
イシュドの変則試合?
レグラ家の人間が公式の場で強烈な力を見せ付け、確かに鮮烈な試合であったのは間違いない。
しかし、戦闘を……実戦を知っている者が観れば、あれはある種の虐殺と言える試合だった。
「ただ、あいつにはガルフたちの様に、共に戦える仲間がいない」
二年生であるダスティンと組めば良いのではないか。
それも一つの手ではあるが、今のダスティンは激闘祭トーナメント二年生の部で優勝を果たし、二年生の長に……このまま行けば、サンバル学園の学生の長となる。
故に、教師たちと同じくディムナだけを贔屓目する訳にはいかなかった。
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