上 下
189 / 245

第189話 貢献はしていた

しおりを挟む
(はぁ~~~~……クソつまんね~~~~)

学園からの依頼を受け、達成して戻って来たイシュド。
既に学園関係の研究者に素材を渡し終え、完全に仕事を終えた。

そうなると、当然ながらこれまで通り授業を受けなければならない。

座学は基本的にイシュドの興味が惹かれるものではなく、戦闘訓練に関してもバイロンやシドウと模擬戦が行えるのであればまだしも……タイマン勝負以外の戦い方を学ぶ戦闘訓練の時間もある。

(また依頼を受けてぇな~~。そう簡単にあの鬼竜・尖みてぇなモンスターとは遭遇出来ねぇだろうけど、こうして授業を受けてるよりは…………って、今度はあれか。ガルフたちだけで倒しちまうか)

鬼竜・尖との戦いで、ガルフたちは鬼竜・尖が鼓動のコントロール方法を会得する前までは、十分に討伐出来るチャンスがあった。

(うちの領地に生息してるBランクモンスターじゃなければ、十分可能性もあるもんな)

座学の授業中、一応眠らずに受け切り……楽しい楽しい昼食タイム。

「ねぇ、次はいつ依頼を受けようかな」

フィリップ、ミシェラ、イブキ。
いつもの面子が集まったところで、ガルフはいたって真面目な表情でフィリップたちに尋ねた。

「おいおいガルフ~、ちゃんと休んでるか~? この前依頼を受けて帰ってきたばっかりだろ」

「ちゃんと休んでるし、寝てるよ」

夕食後もがっつり訓練を行っているため、ベッドにダイブすれば直ぐに夢への中へと沈んでいるガルフ。

「でも、次の依頼は……イシュドに頼らず達成したくて、こう……」

「うずうずしてるって感じか、ガルフ」

「う、うん。そんな感じかな」

生意気な事を言ってるかもしれない。
そんな気持ちがあったからか、少し照れた表情を浮かべるも、イシュドはそんなガルフの思いを気に入っていた。

「良いんじゃねぇか。前の戦いでは、別にお前たちがあれぐらいの強さを持つモンスターと戦っても、足りない部分が多過ぎるって訳じゃなかったんだしよ」

そもそもな話、先日受けた依頼は討伐依頼ではなく、生態系調査の依頼。

そのため、仮にイシュドが真っ先に鬼竜・尖と戦っていれば……高い学習能力、肉体の内側の部分をコントロールする力が優れている……といった内容を把握することは出来ずに倒してしまっていた可能性が高い。

詳細を振り返れば、ガルフたち四人はしっかりと依頼達成に貢献していたと言える。

「イシュド、あまり座学を疎かにし過ぎるのは良くないのではなくて?」

「座学ね~~~~……俺にとっちゃクソどうでも良いし、デカパイとかフィリップは既に中等部である程度経験してんだろ? デカパイに関しちゃあ、良い成績取ってたらしいじゃん。なら、別に高等部でもそこまで必死こいて頑張る必要はねぇだろ」

「っ、それは………………」

バカにされたわけではない。寧ろ褒められた。
しかし……ミシェラの中には、常識として好成績を残すという考えある。

ただ、目指す先が騎士である以上、座学がどれほど役に立つのか……イシュドという規格外に出会い、レグラ家で何度も何度も実戦を繰り返し……先日、今度はモンスターの中の規格外である鬼竜・尖と遭遇した。

この短期間で、これまでミシェラの中にあった常識がかなり崩されてきていた。

「領地経営をする訳でもねぇんだ。デカパイが必要な知識なんざ、せいぜい指揮官としての判断とかそこら辺なんじゃねぇの?」

「…………とにかく、私としてはまた依頼を受ける事に関しては賛成ですが、あまり座学を軽視しないようにしたいですわ」

「私も、一応ミシェラの意見に賛成です」

(あらら、イブキがデカパイの意見に賛成派か…………そういえば、文武両道ってことわざがあったな。イブキが良いところの生まれってのを考えれば、そっちを大切にするのは別におかしくねぇか)

二人の意見を完全否定しようとは思わない。
ただ……イシュドは自分たちが特別扱いされていることを思い出し、後で知人とちょっと話をしようと思った。

「まぁでもよ、とりあえずまた依頼を受ける事には賛成なんだろ? んじゃ、今のうちにどういう依頼を受けるか決めとくか?」

「僕は討伐系の依頼が良いかな」

「前回調査系の依頼だったくせに、結局ガチバトルに発展したからな~~~……俺は超変な依頼とかじゃなかったらなんでも良いや」

「…………ガルフと同じく、討伐系の依頼ですわね」

「私もですね」

鬼竜・尖との戦いで悔いが残っていた二人は、ガルフと同じく討伐系の依頼を熱望していた。

「んじゃ、また生徒会室に行くか」

今後の予定が決定。
五人は別の話題について喋りながら食事を続けるが……ここは学園の食堂。

一年生だけではなく、二年生や三年生たちもいる中で、既に依頼について堂々と話している五人に……注目が集まらない訳がない。

(にしても、ガルフの奴……根性が付いてきたってのは違うか。肝が据わってきたって感じか? こんだけ同級生や上級生から視線を向けられてるのに、全くおろおろしてねぇ)

在校生であれば、多くの者たちがガルフ、フィリップ、ミシェラ……そしてイシュドの戦いっぷりを観ていた。

イブキはともかく、四人が強いという事実は証明されている。
ただ……立場的には一年生。
年齢だけしかマウントが取れない輩たちの如く、一年のくせにっ……と、苛立ちを覚えている者もそれなりにいる。

しかし、そんな中でもガルフは特に表情を変えることなく過ごしていた。


「イシュド君、少し残ってもらって良いかしら」

「? はいよ」

放課後、生徒会室受けられる依頼を見せてもらい、数十分ほど悩むも、どの依頼を受けるかは一旦持ち帰りとなった。

そんな時、偶々生徒会室にいたバイロンとクリスティールに呼び留められた。

「何か俺に用っすか? 二年生とか三年生の指導とか嫌っすよ」

「先日、教えてくれたあの言葉、考えだけで十分だ…………いや、とはいえ安心してくれとも言えないな」

バイロンの言葉に不穏を感じたイシュド。
ただ、一先ず遮ることなく、二人の要件を聞き…………盛大にため息を吐き、天を仰いだ。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...