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第156話 クソ無意味

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「思い出したかデカパイ。お前らはうちで戦ってる間、フルアタッカーの状態で戦い続けてたんだよ」

「…………反論、出来ませんわ」

自分、同級生たちやクリスティール、ダスティンが扱っている武器を再度把握。
今まで自分たちがどれほどバランスの悪い構成で戦っていたのかを思い出し、少し前の自分をぶん殴りたくなった。

「バランスが重要ってのは否定しねぇけど、結局実戦なんざ、最後まで生き残ってた方の勝ちなんだから、別に気にしなくて良いんだよ」

「私も、ミシェラたちの連携の練度を考えれば、フルアタッカーというパーティー構成をそこまで難しく考える必要はないと思います」

イシュドが訓練で行っていた試合で、タイマン勝負だけではなく二対二や三対三などの形式でも試合を行っていた成果もあり、実戦で見事に連携しながら戦えていた。

「五人とも前に出て戦える力があるため、多少の危険はあれど、戦闘を短く終わらせることが出来るでしょう。それはそれで大きな利点になる筈です」

「会長パイセンの言う通りだ。だからデカパイ、いつまでも俯いてんじゃねぇ。胸にソースが付くぞ」

「っ、わ、解ってますわよ!!」

(そこ、髪じゃないんだ)

(やっぱ髪って言わねぇよな)

(髪のことを注意しないのだな)

三人とも同じことを思ったが、敢えて口には出さなかった。

「あっ、あともう一つ。別に俺が一緒に行動するのは良いんだけど、ちゃんとガルフ
たちに評価が入るのか?」

夏休み、結果としてロベルトに本当に多少のダメージしか与えることが出来なかったイシュドだが、自分が同世代の中ではアホみたいに強いことは自覚している。

故に、自分がクエストに参加して……ちゃんと他四人に、特にガルフに評価が付くのかという心配があった。

「学園側としては寧ろイシュド君は同行して欲しいと考えている様なので、そこでくだらない真似はしないかと」

ガルフ、フィリップ、ミシェラ、イブキ。
この四人は来年の激闘祭でも十分上位を……準優勝、優勝を狙える戦力。

加えて、ガルフは平民ではあるが、フィリップは公爵家の令息。
ミシェラは侯爵家の令嬢であり、イブキは他国の留学生であり……その他国では、一応貴族的な家の娘。

クエストを受けるのであれば、万が一の確率を少しでも減らしたい。

「なら良いんだけどよ」

「あ、あの……クリスティール会長、一つ訊いても良いですか」

「えぇ、なんでしょうか、ガルフ君」

「僕がクエストを特別受けられる事に対して、他の生徒からの反発などは……」

ガルフは間違いなく強くなった。
友達には辺境伯と公爵家の令息……一応、侯爵家の令嬢と他国の貴族的の子女もいる。

とはいえ、だからといって権力的な面で自分が強くなったとは思っていない。
故に、実力的に強くなったとしても、ガルフとしてはやはりそこが心配だった。

「おいおい、ガルフ。入学初日に俺があの輩連中に言った内容を忘れたのか?」

「え、えっと……ど、どんな内容だったけ」

「平民が受かったことに文句があるなら、学園に文句を言えよ……的な事を言ったはずだぜ」

この言葉に関して、何も間違っている部分はなく、ミシェラもその通りだと頷いて同意していた。

「仮に本当に文句がある奴らが現れたら、まずは教師たちに文句を垂れろって話だ。つかさ、ガルフは激闘祭でベスト八? になったんだぜ。なのに文句を言うとかおかしい…………って、元々おかしい連中が多いから、入学初日からガルフに暴力振るってた連中がいたのか」

フィリップは特に気にしてないが、ミシェラとクリスティールにとっては非常に気にしてしまう事をサラッと口にしたイシュド。

「どの国でも、ということですね」

「そうなんだよイブキ~~~~、って。大和でもそういったバカは珍しくないのか?」

「……おそらく、この国よりも実力重視な部分はあると思いますが、やはり家柄が自分の実力だと、家の権力が自分の力だと勘違いしてしまっているバカは多少います」

「多少、か。多少ってのを考えると、最低でも……三十三人のバカがいるこの国と比べれば、割とまともかもな」

輩一と二、そして二年生の細剣使い。
一対三十という人数でイシュドに力任せに叩き潰された三十人。

イシュドの中では、最低でも勘違いしているバカが三十三人はいるとカウントしている。

イシュドとぶつかった事があるミシェラに関しては……一応初っ端からイシュドにとってはそこら辺の犬にでも放り投げたい権利ではあるが、勝った時の権利……ミシェラとデート出来るという権利を用意していたため、ぎりぎりバカには入っていなかった。

「色々と文句はあっけど、どうせ無駄って話だしな」

「あら、珍しいわね。もっとそのバカたちに対する暴言を吐き続けると思ったのだけど」

「仮に改善案とか俺が考えたところで、それが実行出来るのかって問題があって、貴族とかその他の権力者たちが受け入れられんのか……他にも問題はあるだろうけど、仮に改革とか新しい教育が進んだところで、どうせ糞過ぎる自己中なバカは消えねぇんだよ」

「………………なぁ、イシュド。もしお前が考えてそうな案を実現したら、もしかして貴族とかそういう存在てか立場? が消える感じか」

「おっ、さすがフィリップ。頭の回転が早いねぇ~~~~」

「「「「っ!!!!!?????」」」」

まさかの内容に、ガルフも含めて他のメンバーは完全に食事の手を止めて驚き固まってしまった。

「? お前ら、面白い顔し過ぎだぞ」

「あ、ああああああなたがい、いきなりバカな事を、言うから」

「あぁ~~~、安心しろ安心しろ。ただの考えだし、それを実行するつもりなんざさらさらねぇ。それに、仮に貴族という立場、存在が亡くなったとしても、各街に、領地を治める人間てのは必要なんだ。貴族という立場を消したところで、また別の権力を持つ存在が生まれる……用意しなきゃならねぇ。だから、結局は何をしようともクソ無意味ってだけだ」

「そ、そう……なのね?」

貴族という立場、存在を消すという内容にあまりにも大き過ぎる衝撃を受けたため、ミシェラだけではなく他三人もイシュドの言葉を直ぐに百パーセント理解出来なかった。
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