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第143話 普通は笑わない
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「ほぅ、別種のキング種のモンスターが三体……しかも、群れを連れていなかったのか」
「はい。これまで出会ったことがないタイプのモンスター達でした」
夕食時、王であることを捨てた三体のキングたちについて聞かされた現レグラ家の当主であるアルバはほんの少しだけ難しい顔になった。
(やっぱ、あれはさすがにレグラ家の人間でも、驚く内容なんだな)
アルバの表情を見て、さすがにキング種三体が同時に行動するのが、レグラ家の領地では当たり前ではないのだと思い……何故かホッとした。
「それで、楽しかったか」
「はい!! とても楽しめました!!!! 割と本気で死ぬかと思いました!!」
笑顔で答える内容ではない。
ただ、割と本気で死ぬかと思ったというイシュドの感想は、決して大袈裟ではなかった。
リザードマンキングが仕掛けた咄嗟のブレスは……バーサーカーソウル状態のイシュドであっても、飛んでくると解り……しっかり迎撃態勢を取れた状態でなければ、頭部を貫かれていた。
「ふっふっふ、そうかそうか。それは良かったな」
息子が死にかけたというのに、それは良かったとはこれ如何に?
ガルフたち全員が首を傾げるも、これがレグラ家の日常であった。
「ねぇ、イシュド。キングのモンスターが同時に三体も現れるって言うのは、そこまでレグラ家の領地では珍しくないことなの?」
夕食を食べ終わり夜の訓練時、疑問に思っていたことを尋ねたガルフ。
「いや、そんな事はねぇと思うぞ。三体も同時で、しかもその三体がキングのくせに同族を引き連れてねぇって話は聞いたことがねぇ。あっ、でも別種のキングが二体、群れを混ぜて行動してたことはあったんだったか?」
イシュドが思い出した内容を耳にした面子はギョッとした表情を浮かべた。
他の領地で起これば、その領地の歴史に残る大問題として残る。
「? おいおい、お前らびっくりし過ぎだろ」
「……色々と解ったつもりになってましたけど、本当に常識が違いますわね」
「そうですね。イシュド君、世間一般では歴史に残る大事件ですよ」
「そうか? まぁ、うちがおかしいだけって言えばそうなのかもしれねぇけど」
「なぁイシュド。ここだと他にどんなぶっ飛んだモンスターが現れたりするんだ」
面白半分で尋ねたフィリップだったが、イシュドから帰って来た内容は……どれも信じられない内容ばかりだった。
「お前らの世間一般的な意味で、ぶっ飛んだモンスターってことだろ? ……冬でもねぇのに、雪竜とか氷竜が現れたりとかか?」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
一応バトレア王国にも四季はあるが、レグラ家周辺は比較的寒くはならない。
なので、気候的に雪竜や氷竜が現れることは、まずない。
流れのドラゴンであったとしても、レグラ家周辺に腰を下ろそうとは思わない。
ドラゴンと言えばモンスターの食物連鎖の頂点に君臨する存在だが……レグラ家周辺に生息しているモンスターが相手だと、そうもいかない。
「後、リザードマン……いや、コボルトだったか? 確か、六本腕の人型モンスターが現れたこともあったか」
「ろ、六本腕? そ、それ……じゃ、邪魔になりませんの?」
「知らん。俺はそのモンスターと戦ってないからな。確か、うちに属してる騎士が戦ったんだったか? 普通に六本の腕は自由自在に使ってたらしいぞ。死にかけたって笑いながら言ってたような…………うん、多分笑ってたな」
死にかけたのに、その事を笑いながら話す。
そこに関しても……もう誰もツッコまなかった。
「元からそうだったとは思わねぇけど、何かしらの過程を得てそう進化したなら、元から適応してたんじゃねぇのか」
「六本の腕を自由自在に扱える、か。恐ろしい存在だな」
「はっはっは! そりゃそうだろうな。単純な計算で俺たちよりも手数が三倍なんだからな」
自由自在に扱えるのであれば、その単純計算は間違っておらず、攻撃に受け方を間違えれば即死に繋がる。
「他にも、ワイバーンのくせに頭が二つ、翼が四つあるイミフな個体もいたな」
「それは……珍しくないのだろうか」
「そう、だな。珍しいっちゃ珍しいけど、そいつとは俺も戦ったことがあるな」
まだまだイシュド基準で、世間一般ではぶっ飛んだモンスターの説明が続き……ガルフたちはやや過食気味になった。
とはいえ、レグラ家周辺が改めて魔境だと解ったところで、彼らの意欲が削がれることはなく、実家に帰る時まで鍛錬と実戦を繰り返し続けた。
「いや、お前らも帰れよ」
「僕は一度実家に、王家に帰ったからもう一度顔を出さなくても問題無いよ」
「俺もアドレアスと同じだ」
ガルフも含め、フィリップも嫌々ながら無理矢理クリスティールに連れられて実家に帰省した中……途中から参加したアドレアスとディムナだけは、六人が帰った後もレグラ家に残っていた。
「……つか、お前ら良く実家が許したよな」
「父上……国王陛下は、色々と理解してるからじゃないかな?」
「俺も、似た様なものだろう」
「理解があるのはありがてぇけど……まっ、いいや。んじゃあ、今日は…………」
「「ッ」」
急に自分たちの方を向いて、ニヤッと……凶悪な笑みを浮かべられれば、二人が無意識に震えてしまうのも無理はない。
「せっかくだ……二対一で掛かって来い。勿論、殺す気でな」
明らかに二人を嘗めてる発言だが、アドレアスとディムナはレグラ家に来てから……いや、それよりも前に、激闘祭のエキシビションマッチを観てからイシュドの底知れない恐ろしさを理解していた。
理解していたうえで、そんな魔人と同格の猛者がごろごろといる家に脚を向けた。
「良いね。言われた通り本気で、殺す気でいかせてらうよ、ねっ、ディムナ」
「そうだな…………殺す」
「はっはっは!!!!! その意気だ、チ〇カスども」
遠慮を知らない二人のガチ殺気に満足気な笑みを浮かべるイシュド。
その後、朝からガチバトルが行われた。
「う~~~~っし、こんなもんだな。とりあえず回復してもらえ~~」
片腕、方足が使い物にならなくなったところで、死合い? 終了。
結果……当然といえば当然だが、王子と侯爵家の令息がボロ雑巾状態にされた。
「はい。これまで出会ったことがないタイプのモンスター達でした」
夕食時、王であることを捨てた三体のキングたちについて聞かされた現レグラ家の当主であるアルバはほんの少しだけ難しい顔になった。
(やっぱ、あれはさすがにレグラ家の人間でも、驚く内容なんだな)
アルバの表情を見て、さすがにキング種三体が同時に行動するのが、レグラ家の領地では当たり前ではないのだと思い……何故かホッとした。
「それで、楽しかったか」
「はい!! とても楽しめました!!!! 割と本気で死ぬかと思いました!!」
笑顔で答える内容ではない。
ただ、割と本気で死ぬかと思ったというイシュドの感想は、決して大袈裟ではなかった。
リザードマンキングが仕掛けた咄嗟のブレスは……バーサーカーソウル状態のイシュドであっても、飛んでくると解り……しっかり迎撃態勢を取れた状態でなければ、頭部を貫かれていた。
「ふっふっふ、そうかそうか。それは良かったな」
息子が死にかけたというのに、それは良かったとはこれ如何に?
ガルフたち全員が首を傾げるも、これがレグラ家の日常であった。
「ねぇ、イシュド。キングのモンスターが同時に三体も現れるって言うのは、そこまでレグラ家の領地では珍しくないことなの?」
夕食を食べ終わり夜の訓練時、疑問に思っていたことを尋ねたガルフ。
「いや、そんな事はねぇと思うぞ。三体も同時で、しかもその三体がキングのくせに同族を引き連れてねぇって話は聞いたことがねぇ。あっ、でも別種のキングが二体、群れを混ぜて行動してたことはあったんだったか?」
イシュドが思い出した内容を耳にした面子はギョッとした表情を浮かべた。
他の領地で起これば、その領地の歴史に残る大問題として残る。
「? おいおい、お前らびっくりし過ぎだろ」
「……色々と解ったつもりになってましたけど、本当に常識が違いますわね」
「そうですね。イシュド君、世間一般では歴史に残る大事件ですよ」
「そうか? まぁ、うちがおかしいだけって言えばそうなのかもしれねぇけど」
「なぁイシュド。ここだと他にどんなぶっ飛んだモンスターが現れたりするんだ」
面白半分で尋ねたフィリップだったが、イシュドから帰って来た内容は……どれも信じられない内容ばかりだった。
「お前らの世間一般的な意味で、ぶっ飛んだモンスターってことだろ? ……冬でもねぇのに、雪竜とか氷竜が現れたりとかか?」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
一応バトレア王国にも四季はあるが、レグラ家周辺は比較的寒くはならない。
なので、気候的に雪竜や氷竜が現れることは、まずない。
流れのドラゴンであったとしても、レグラ家周辺に腰を下ろそうとは思わない。
ドラゴンと言えばモンスターの食物連鎖の頂点に君臨する存在だが……レグラ家周辺に生息しているモンスターが相手だと、そうもいかない。
「後、リザードマン……いや、コボルトだったか? 確か、六本腕の人型モンスターが現れたこともあったか」
「ろ、六本腕? そ、それ……じゃ、邪魔になりませんの?」
「知らん。俺はそのモンスターと戦ってないからな。確か、うちに属してる騎士が戦ったんだったか? 普通に六本の腕は自由自在に使ってたらしいぞ。死にかけたって笑いながら言ってたような…………うん、多分笑ってたな」
死にかけたのに、その事を笑いながら話す。
そこに関しても……もう誰もツッコまなかった。
「元からそうだったとは思わねぇけど、何かしらの過程を得てそう進化したなら、元から適応してたんじゃねぇのか」
「六本の腕を自由自在に扱える、か。恐ろしい存在だな」
「はっはっは! そりゃそうだろうな。単純な計算で俺たちよりも手数が三倍なんだからな」
自由自在に扱えるのであれば、その単純計算は間違っておらず、攻撃に受け方を間違えれば即死に繋がる。
「他にも、ワイバーンのくせに頭が二つ、翼が四つあるイミフな個体もいたな」
「それは……珍しくないのだろうか」
「そう、だな。珍しいっちゃ珍しいけど、そいつとは俺も戦ったことがあるな」
まだまだイシュド基準で、世間一般ではぶっ飛んだモンスターの説明が続き……ガルフたちはやや過食気味になった。
とはいえ、レグラ家周辺が改めて魔境だと解ったところで、彼らの意欲が削がれることはなく、実家に帰る時まで鍛錬と実戦を繰り返し続けた。
「いや、お前らも帰れよ」
「僕は一度実家に、王家に帰ったからもう一度顔を出さなくても問題無いよ」
「俺もアドレアスと同じだ」
ガルフも含め、フィリップも嫌々ながら無理矢理クリスティールに連れられて実家に帰省した中……途中から参加したアドレアスとディムナだけは、六人が帰った後もレグラ家に残っていた。
「……つか、お前ら良く実家が許したよな」
「父上……国王陛下は、色々と理解してるからじゃないかな?」
「俺も、似た様なものだろう」
「理解があるのはありがてぇけど……まっ、いいや。んじゃあ、今日は…………」
「「ッ」」
急に自分たちの方を向いて、ニヤッと……凶悪な笑みを浮かべられれば、二人が無意識に震えてしまうのも無理はない。
「せっかくだ……二対一で掛かって来い。勿論、殺す気でな」
明らかに二人を嘗めてる発言だが、アドレアスとディムナはレグラ家に来てから……いや、それよりも前に、激闘祭のエキシビションマッチを観てからイシュドの底知れない恐ろしさを理解していた。
理解していたうえで、そんな魔人と同格の猛者がごろごろといる家に脚を向けた。
「良いね。言われた通り本気で、殺す気でいかせてらうよ、ねっ、ディムナ」
「そうだな…………殺す」
「はっはっは!!!!! その意気だ、チ〇カスども」
遠慮を知らない二人のガチ殺気に満足気な笑みを浮かべるイシュド。
その後、朝からガチバトルが行われた。
「う~~~~っし、こんなもんだな。とりあえず回復してもらえ~~」
片腕、方足が使い物にならなくなったところで、死合い? 終了。
結果……当然といえば当然だが、王子と侯爵家の令息がボロ雑巾状態にされた。
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