転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第116話 根は変わらず

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「あっ、お帰りなさい、イシュド様」

「ただいま~~~」

「えっと……その、ご友人の方たちは大丈夫でしょうか?」

「大丈夫大丈夫~~~。ただちょっと疲れてるだけだから」

街に戻ってきたイシュド達。

当然と言えば当然だが、誰一人欠けることなく戻って来た。
しかし……全員、大なり小なり差はあれど、疲労が色濃く顔に表れていた。
ヴァルツやリュネも例外ではない。

「ほら、お前らシャキッとしろよ。屋敷に戻れば、直ぐに温かくて美味い飯が食えるぜ」

今回の狩りで、イシュドは一度も戦うことがなかった。
それを考えればイシュドが全く疲れてないのは当然であるが……それに関して、とやかく言う者は一人もいなかった。

何故なら、遭遇したモンスターと戦う気満々だったガルフたち。
元々自分たちがメインで戦う決めており、ギリギリの危機感を感じさせる相手であっても、イシュドに共に戦って欲しいということはなく……全員、かなりギリギリの戦いを体験した。

ガルフたちは約一か月前に行われた激闘祭の際、基本的に相手を殺してはならないといったルールの中で戦ってはいたが、イブキと参加していた約一名を除き……不幸な事故が起こってしまっても仕方ない。
そんな覚悟を持ちながら、全ての試合に臨んでいた。

だが、今日対峙した者たちは人間ではなくモンスター。
当たり前だが、ガルフたちを殺すつもりで襲い掛かってくる。
モンスターと戦うのが初めてではないガルフたちだが……それでも、どのモンスター
も自分が知っている同じ個体よりも強い。

Cランクのモンスターに至っては、本当にCランクのなのか? と疑いたくなることもあった。

「……イシュドは、毎日こんな生活を、送ってたんだね」

「ん? そうだな。マジで倒しても潰しても殺しても減らないからな。訓練で培った経験を試すには、最高の場だろ!!!!」

この言葉に、クリスティールは苦笑いを浮かべながらも頷いた。
完全に武家出身であるイブキも……非常に疲労が溜まってはいるものの、その考えは解る。
ダスティンは……やっぱりイシュドの考え方はあれだなこれだな、といった事が思い浮かぶことはなく、ただ本日体験した戦闘に対して、非常に満足していた。
だからこそ、顔には笑みが浮かんでいた。

しかし、ガルフたち三人の表情は、やっぱりこいつはバーサーカーなのだと、戦闘バカだと言いたげだった。

「やはり、こういったイシュド兄さんのような考え方を持つ人は、非常に珍しいようですね」

そんな中、リュネは同じく疲労が濃い状態でありつつも、冷静にミシェラたちの表情を観察していた。

「リュネさん……解るのですね!!!」

「は、はい。一応」

同士を得た、そんな顔でぐっと迫られ、後退る。
いきなりキラキラとした顔になるミシェラだが、リュネは……ミシェラたちの考えが解っただけである。

「ですが、訓練で培った技術を実戦で試す。これに関しては、私もイシュド兄さんに同意です」

「りゅ、リュネさんも楽しいと」

「事前に考えていたプランが上手くいった時に得る嬉しさは、至高の快感かと」

「むむ…………それは、否定出来ませんね」

作戦が上手くいった。
ミシェラはそこまで細かく作戦を考え、実行に移したりするタイプではないが、それでも相手がこうくれば自分はこう動こう、といったことぐらいは考えて戦っている。

そういった小さな予想であっても、上手くハマって敵を倒すことが出来れば……体が震える快感を得られる。
それは遠い昔の日だけではなく、なんなら今日の戦いの中でも感じた。

「リュネは相変わらず細かいこと考えてんな」

「ヴァルツ、あなたは考える事が出来るのですから、もう少し考えて動こうとしたらどうですか」

「そりゃ超ヤベ状況とかならともかく、一人で戦ってる時とかならなぁ…………こう、体が勝手に動く衝動? みたいなもんに身を任せるのが俺には合ってるつーか」

「…………人それぞれ、と納得するのが一番ですね」

体が勝手に動こうとする感覚に身を任せる。
時としてそれが一番の選択肢になることを……まだ十歳であるリュネは解っていた。

魔術師系統の道を進む彼女だが……根っこは、やはりレグラ家の人間。
過去にヴァルツのいう衝動の言う通りに身を動かした経験があり、否定できる要素は皆無だった。


「よろしく、お願いします」

疲労が濃い状態であるからこそ、ガルフたちの体は栄養満点の料理を求めた、食欲という本能が肉を欲した。

食べて食べて食べまくって……満腹になったところで、ガルフたちは爆睡することはなく、三十分後には体を起こして訓練場へ向かっていた。

そんな中、ガルフは帰ってきていたアレックスに頼み、先日と同じく自分に稽古を付けてほしいと頼み込んでいた。

「俺の記憶が正しければ、今日はイシュドたちと狩りに行っていたと思うが?」

「はい、その通りです。とても良い経験が出来ました」

強がりではないことが、表情を通して解る。
非常にアレックス好みの強さを有している。

しかし、ちょっとイってるところがある熱血タイプのアレックスだが、弟であるイシュドから念を押されていることもあって、冷静にガルフの身体状況等を把握していた。

(気持ちは買う! やはり卒業後はうちに来てほしいと思うが、明日が休みではないのだろ?)

イシュドから正確に、明日は訓練を行うのか、それとも連続で狩りに行くのか聞いていない。
ただ、休むことはないのは確かだった。

「それと同時に……やはり、自分とイシュドにはまだまだ、埋まらない差があると実感しました」

今日、イシュドは結局一度もガルフたちの戦いに参加することはなかった。
それはガルフたちにとって良いことではあった。

ただ、どんなモンスターと遭遇しても、イシュドの表情が変わることはなく、普段通りのままだった。

ダスティンだけではなく、ガルフも今日……戦闘中に何度も自分の首に、心臓に何度も刃が迫りくる戦いを体験した。

(駄目だ、駄目なんだ……驕るつもりは毛頭ない。でも、でも……このままでは、絶対に追い付けない!!!!!)

瞳の奥に宿っていた覚悟の炎が、更に燃え上がる。

「お願いします!!!! 今日も、僕に稽古を付けてください!!!!!」

「……ふっ、はっはっは!!!!!! 解った、良いぞ!!! それじゃあ付いて来い!!!!!!」

同じ男が、漢が覚悟を決めた眼をしている。
それが解った以上、再度身を心配するような言葉を掛けるのは、無粋であった。
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