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第114話 折れず、勝機を
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「ヌゥウウウアアアアアアアッ!!!!」
「ゴォオオオアアアアアアアアッ!!!!」
早速始まったダスティンとサイクロプスの戦い。
「……つかさ、イシュド。マジでダスティンパイセン一人に任せて良かったのか?」
「本人が一人で戦りたいって言ったんだ。別に構わないだろ。なんだ、心配なのか」
「そりゃなぁ…………だってよ、あのサイクロプス、マジで強いだろ」
レグラ家の領地周辺に生息しているモンスターは、他の地域に生息しているモンスターよりも明らかに強い。
それは昼食時までの数時間で、身に染みて解っていた。
フィリップたちからすれば、EランクやDランクモンスターであれば、よほど油断していなければ怖くない相手というイメージを持っていたが……この数時間で遭遇したモンスターは、どれもある程度の緊張感は持っていなければならなかった。
そして現在ダスティンが対峙しているCランクモンスターのサイクロプスは、巨人の名に相応しい巨大な体を有している。
「そうか? 力自慢なダスティンパイセンにとっちゃ、自分の力が今どれぐらいなもんなのか試せる、丁度良い相手じゃねぇか」
ザ・脳筋な考えを口にするイシュド。
フィリップはさすがにそんな事はと、否定しようとするが……今のところ、目の前で行われている戦闘を観る限り、ダスティンはあまりサイクロプスという凶悪な腕力を有する相手に技術で対抗しようとはしていなかった。
「…………ダスティンパイセンも、同じ事を考えてるみてぇだな」
「だろ~~~。まっ、さすがに死にそうになったら助けに入るけど、死ぬ一歩手前ぐらいまでは好きにさせるさ」
「死ぬ一歩手前って、普通にヤバくねぇか?」
「ん~~~~……別に死んではいねぇんだぜ。ぶっちゃけた話、片腕は片足が吹き飛んだとしても、なんとか出来なくはねぇ。それに何かあっても後は俺がなんとかする。それはダスティンパイセンも解ってるだろうから、そんな気にしてねぇんじゃないか?」
イシュドの言葉から、どれだけ死ぬ一歩手前の状態を軽く見てるのかが解る。
「あなた、それが普通ですの?」
「何を聞きたいのかちょっと分からねぇけど、死ぬ一歩手前ってことは死んでねぇんだ。怪我をしてたら俺らがポーションをぶっかけるし、何もビビる必要はねぇだろ」
「……そういえばあなた、道具さえあれば死んでも構わない人間でしたわね」
イブキの兄であるシドウに殺しありの試合を挑み、結果として綺麗に切断されたことを思い出し……納得? したミシェラ。
「別にあれだぜ、あの戦いで死ぬつもりは全くなかったぜ。ただ、そういう精神で
過ごしてるだけだ」
「…………あなたがおかしいのか、それともレグラ家の方々が全員こうなのか……
お二人はどう思いますか」
視線の先には、二人の若き狂戦士と狂魔術師候補。
「結構皆こんな感じだと思うかな~。俺だって、結構骨のヒビとか気にせず戦うし、骨が折れてても、戦いが終わってから気付くとか珍しくないし」
「……怪我は、なるべく避けた方が良いとは思っています。ただ、生温い道を進んでいては、目指すべきところに……頂きに届くことはありません。故に誠に必要なのは、怪我を避ける危機察知能力ではなく、折れずに勝機を探し続ける気力かと」
二人の言葉から、本当にレグラ家の者たちは色々とおかしいのだと理解したミシェラたち。
しかし、本当の強者と思えてしまう者が多数存在するレグラ家。
その者たちが同じような精神で今現在の強さを手に入れたと思うと……常識外れ過ぎるとバカにし、呆れることは出来ない。
「二人ともまだ若いのにご立派ですね……イシュド君、二人を中等部から入学しても良いと、ほんの少しぐらい考えてたりしませんか?」
「……会長パイセンは、会長らしく良く他の連中のことを考えるな。別にそれが悪ぃことだは思ってねぇが、そういう決定権は俺にはねぇ。二人が望むならあれだが……どうだ、ヴァルツ、リュネ」
「ん~~~~……イシュド兄さんってさ、フィリップさんとダスティンさん、クリスティールさんの三人と同時に戦って勝ったんだよね」
「激闘祭のエキシビションマッチだな。そうだな、一対三で戦って俺が勝った」
一対三で戦って勝った。
相変わらずその言葉だけで聞けば、頭を捻りたくなる内容である。
「………………俺は、行かなくていいかな~~。行っても、あまり楽しそうじゃなさそうだし」
ヴァルツは、兄であるイシュドが特別であると認識している。
追い付きたい目標だとも思っており、まだ自分が目標であるイシュドと同等であるとは考えていない。
それでも、王都の学園に入学したところで、自身が望む戦いが出来るとは思えなかった。
「申し訳ありませんが、私も同感です。学園の教師たちといつでも戦えるのであればまだしも、それであればレグラ家に仕えている騎士や魔術師たちが相手でも同じこと……あまりメリットを感じません」
リュネも、自分がイシュド程レグラ家の中でもとび抜けた存在だとは思えない。
しかし……クリスティール、フィリップ、ダスティンの三人が束になって挑んでも、イシュドには敵わなかった。
単純な話ではあるが、であれば自分たちと同じ歳の学生たちは、三人より遥かに弱いということになる。
本人たちの前で口にすれば喧嘩待ったなしであり、最終的に二人が屍の山を築き上げることになる。
「って訳だ、会長パイセン。まぁ……二人が欲しいものとか用意したら、入学はしないだろうけど、特別試合ぐらいは行えるかもな」
「……年に一度、二人と戦えるチャンス、ということでしょうか」
「そんな感じだな。今年、俺がエキシビションマッチで三人を纏めて倒したんだ。そんな奴の弟か妹と戦えるってのは、下の奴らにとって名を売れるチャンスなんじゃね
ぇか」
イシュドからの提案に、クリスティールはダスティンとサイクロプスとの戦闘から視線を逸らし……生徒会長という立場を担う者として、真剣に考え込んだ。
「ゴォオオオアアアアアアアアッ!!!!」
早速始まったダスティンとサイクロプスの戦い。
「……つかさ、イシュド。マジでダスティンパイセン一人に任せて良かったのか?」
「本人が一人で戦りたいって言ったんだ。別に構わないだろ。なんだ、心配なのか」
「そりゃなぁ…………だってよ、あのサイクロプス、マジで強いだろ」
レグラ家の領地周辺に生息しているモンスターは、他の地域に生息しているモンスターよりも明らかに強い。
それは昼食時までの数時間で、身に染みて解っていた。
フィリップたちからすれば、EランクやDランクモンスターであれば、よほど油断していなければ怖くない相手というイメージを持っていたが……この数時間で遭遇したモンスターは、どれもある程度の緊張感は持っていなければならなかった。
そして現在ダスティンが対峙しているCランクモンスターのサイクロプスは、巨人の名に相応しい巨大な体を有している。
「そうか? 力自慢なダスティンパイセンにとっちゃ、自分の力が今どれぐらいなもんなのか試せる、丁度良い相手じゃねぇか」
ザ・脳筋な考えを口にするイシュド。
フィリップはさすがにそんな事はと、否定しようとするが……今のところ、目の前で行われている戦闘を観る限り、ダスティンはあまりサイクロプスという凶悪な腕力を有する相手に技術で対抗しようとはしていなかった。
「…………ダスティンパイセンも、同じ事を考えてるみてぇだな」
「だろ~~~。まっ、さすがに死にそうになったら助けに入るけど、死ぬ一歩手前ぐらいまでは好きにさせるさ」
「死ぬ一歩手前って、普通にヤバくねぇか?」
「ん~~~~……別に死んではいねぇんだぜ。ぶっちゃけた話、片腕は片足が吹き飛んだとしても、なんとか出来なくはねぇ。それに何かあっても後は俺がなんとかする。それはダスティンパイセンも解ってるだろうから、そんな気にしてねぇんじゃないか?」
イシュドの言葉から、どれだけ死ぬ一歩手前の状態を軽く見てるのかが解る。
「あなた、それが普通ですの?」
「何を聞きたいのかちょっと分からねぇけど、死ぬ一歩手前ってことは死んでねぇんだ。怪我をしてたら俺らがポーションをぶっかけるし、何もビビる必要はねぇだろ」
「……そういえばあなた、道具さえあれば死んでも構わない人間でしたわね」
イブキの兄であるシドウに殺しありの試合を挑み、結果として綺麗に切断されたことを思い出し……納得? したミシェラ。
「別にあれだぜ、あの戦いで死ぬつもりは全くなかったぜ。ただ、そういう精神で
過ごしてるだけだ」
「…………あなたがおかしいのか、それともレグラ家の方々が全員こうなのか……
お二人はどう思いますか」
視線の先には、二人の若き狂戦士と狂魔術師候補。
「結構皆こんな感じだと思うかな~。俺だって、結構骨のヒビとか気にせず戦うし、骨が折れてても、戦いが終わってから気付くとか珍しくないし」
「……怪我は、なるべく避けた方が良いとは思っています。ただ、生温い道を進んでいては、目指すべきところに……頂きに届くことはありません。故に誠に必要なのは、怪我を避ける危機察知能力ではなく、折れずに勝機を探し続ける気力かと」
二人の言葉から、本当にレグラ家の者たちは色々とおかしいのだと理解したミシェラたち。
しかし、本当の強者と思えてしまう者が多数存在するレグラ家。
その者たちが同じような精神で今現在の強さを手に入れたと思うと……常識外れ過ぎるとバカにし、呆れることは出来ない。
「二人ともまだ若いのにご立派ですね……イシュド君、二人を中等部から入学しても良いと、ほんの少しぐらい考えてたりしませんか?」
「……会長パイセンは、会長らしく良く他の連中のことを考えるな。別にそれが悪ぃことだは思ってねぇが、そういう決定権は俺にはねぇ。二人が望むならあれだが……どうだ、ヴァルツ、リュネ」
「ん~~~~……イシュド兄さんってさ、フィリップさんとダスティンさん、クリスティールさんの三人と同時に戦って勝ったんだよね」
「激闘祭のエキシビションマッチだな。そうだな、一対三で戦って俺が勝った」
一対三で戦って勝った。
相変わらずその言葉だけで聞けば、頭を捻りたくなる内容である。
「………………俺は、行かなくていいかな~~。行っても、あまり楽しそうじゃなさそうだし」
ヴァルツは、兄であるイシュドが特別であると認識している。
追い付きたい目標だとも思っており、まだ自分が目標であるイシュドと同等であるとは考えていない。
それでも、王都の学園に入学したところで、自身が望む戦いが出来るとは思えなかった。
「申し訳ありませんが、私も同感です。学園の教師たちといつでも戦えるのであればまだしも、それであればレグラ家に仕えている騎士や魔術師たちが相手でも同じこと……あまりメリットを感じません」
リュネも、自分がイシュド程レグラ家の中でもとび抜けた存在だとは思えない。
しかし……クリスティール、フィリップ、ダスティンの三人が束になって挑んでも、イシュドには敵わなかった。
単純な話ではあるが、であれば自分たちと同じ歳の学生たちは、三人より遥かに弱いということになる。
本人たちの前で口にすれば喧嘩待ったなしであり、最終的に二人が屍の山を築き上げることになる。
「って訳だ、会長パイセン。まぁ……二人が欲しいものとか用意したら、入学はしないだろうけど、特別試合ぐらいは行えるかもな」
「……年に一度、二人と戦えるチャンス、ということでしょうか」
「そんな感じだな。今年、俺がエキシビションマッチで三人を纏めて倒したんだ。そんな奴の弟か妹と戦えるってのは、下の奴らにとって名を売れるチャンスなんじゃね
ぇか」
イシュドからの提案に、クリスティールはダスティンとサイクロプスとの戦闘から視線を逸らし……生徒会長という立場を担う者として、真剣に考え込んだ。
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