転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
上 下
79 / 273

第79話 並じゃ意味がない

しおりを挟む
「イシュド、私も君たちの訓練に参加させてくれないか」

全ての授業が終わり、放課後。
放課後や休日、イシュドはガルフたちと訓練を行っていると聞いていたため、イブキは頭を下げてその訓練に参加させてほしいと頭を下げた。

「おぅ、良いぞ!」

「っ……………」

「あ、ありがとう!!」

即座にイブキの頼みを了承したイシュド。
そんなイシュドの対応にやや不満げな表情を浮かべる人物がいた。

(そうなるだろうと思っていましたけど、やはりムカつくものはムカつきますわね)

ミシェラはイシュドたちの訓練に参加する際、高級料理店の食事一回分を奢らなければならなかった。
勿論、それは初対面の時にミシェラの方から咬みついたからである。

あの場面で単純にミシェラがレグラ家の人間の強さに興味がある。
だから自分と戦って欲しいと頼み込む様な形であれば……イシュドはこんな令嬢もいるのだなと面白さを感じ、訓練に参加させてほしいと頼み込む際に何かを要求してくることもなかった。

実際のところ、レグラたちの訓練には多くの生徒たちが興味を持っている。
開催されている訓練に、強くなる為の秘密が隠されているのではないのかと。

しかし、殆どの生徒たちは一度イシュド……レグラのことをバカにしていた。
仮にそれ相応の何かを用意したとしても、それを素直にイシュドが受け取るとは限らない。

「そういえば、イシュドの訓練に参加する者たちは、いつもこのメンバーなのか?」

「入学当初は色々あったからなぁ~~~」

「盛大に潰して潰してぶっ潰してって感じだったな。今では大人しくなったつーか、大人しくならざるを得なかったって感じか。まっ、そもそも参加したところでって話でもあるか」

ガルフは激闘祭でベスト8まで上がり、ミシェラはフィリップに負けたがベスト4。
フィリップは一年の激闘祭を制した優勝者。

イシュドの学生離れした実力は一旦置いておき、そんな彼らの相手が出来る生徒は……まず同級生にはいない。

隠れた逸材がいるかもしれない可能性はイシュドも否定しないが、わざわざ探そうとは思わない。


「んじゃ、軽く始めようか」

準備運動終了後、早速訓練スタート。

とはいえ、行う内容は殆ど模擬戦。
イシュド以外のメンバーと模擬戦を行う時は木製の武器で行い、イシュドが相手であれば真剣で行う。

「お疲れ、イブキ。どうだった、三人と戦ってみて」

一通り全員が全員と戦い終え、一旦休憩タイム。
疲れてからが本番というのは間違いないが、ぶっ倒れたらそのぶっ倒れている時間が勿体ない……というのがイシュドの考え。
※自分の成果を全て出し切りたい戦いは別。

「イシュド程ではないが、三人共非常にハイレベルだ。正直なところ、留学する前まで……少々天狗になっていた」

「はっはっは!!!! それもしょうがないんじゃねぇか? だって、それぐらいの強さがあるのは間違いねぇわけだし」

自身が生まれ育った領地を出て、基本的な世の中の平均レベルが解ってきたイシュド。
どの程度の強さを有していれば自分は天才だ、怪物だ、他の連中は雑魚ばかり……なんて天狗になってしまう者たちの強さも解ってきた。

「そう言ってくれると、有難い。個人的には……いや、優劣は付け難い。ガルフはまさか闘気を会得しているとはという驚きが強かった」

大和にも闘気を会得している者は存在するが、それでも決して多くはない。

「だが、それ以前にまだ戦闘スタイルが明確には確立されていない……あれでまだ確立していないというのは、非常に末恐ろしく感じる」

「だろ。俺の一押しだ」

「フィリップに関しては……苦手なタイプ、の一言に尽きる」

「戦り辛さマックスってことだな」

言動、態度などが軽薄。
その辺りに関して、イブキはそこまで気にしない。

イシュドも似た様なタイプであるが、忌避感などは一切抱いていない。
言動や態度が軽薄であっても、基本的に他者を見下し侮辱することはないと解っているからこそ、人として嫌うことはない。

加えるならば……実際のところ、一年の最強を決めるトーナメントで優勝するだけの実力がある。
であれば、イブキにとって尚更嫌う要素はなかった。

「ミシェラはやはり双剣による連撃に強さを感じた。大和にもそういったスタイルはあるが……あれは私や兄さん、侍たちの領分ではない」

「そう言うと………………あれか! 忍者の領分か!!」

「っ、そうなんだが……イシュドは、本当に大和のことを色々と知っているんだな」

「大和出身の人にそう言ってもらえると嬉しいね。でも、そうだな……二つの武器を使ってる時点で手数が他よりも多い。つか、ミシェラの場合は割と力がある方だからな。最近若干ではあるけど剣速上がってきてるっぽいしな」

ただ狂ってる様に思えてバカみたいに狂ってないのがイシュド。

毎日手合わせしている三人がどう成長しているのか、しっかり把握している。

「へいへい、お二人さん。何話してるんだよ」

「イブキが三人をどう思ってるか?」

「そりゃ怖い話だな。まっ、俺は面倒だろ」

「……自分の事をよく理解してるのですね」

「俺は今のガルフみたいにがっつり攻めれたり、ミシェラみてぇに速い攻撃を連続でぶっ放して勝つ!! みたいな戦法はねぇからな」

(根っこを隠すのも、またフィリップらしいね~~~~)

フィリップが自分の事をイブキに伝えた内容は……一応間違ってはいない。

ただ、戦闘センスや発想が二人よりも頭一つか二つ、抜けていることは伝えなかった。

「それでもとりあえず負けたからな~~~~。なぁ、イシュド。イブキの相手はイシュドか……会長パイセンが適任じゃねぇか?」

「会長…………??? 学園の、長?」

「正式な名称は生徒会長。学生たちを纏める立場? 的な人がいるんだよ。俺が激闘祭の特別試合で戦った三人のうちの一人だ」

「ほぅ、それは確かに気になる人物だな」

「おっ、マジ? なら、訓練終わりに挨拶にでも行くか」

約二時間後、イシュドたちは本当にアポなしで役員たちが仕事中の会長室へ向かった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...