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第64話 口に出さない優しさ?

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「んじゃ、行くか」

激闘祭が終了してから約二時間後、すっかり日も沈みはしたが……王都内は、激闘祭に関する熱が全く冷めない状態が続いていた。

そんな中、イシュドたちは激闘祭に参加した生徒たちを労うパーティーに参加する為、とある会場を訪れていた。

イシュドはバイロンに特別試合に参加しただけの自分が参加しても良いのかと尋ねたか、その辺りは既にフラベルト学園の学園長が何とかしていた。

「てか、よく参加しようと思ったな、イシュド」

「美味い料理がたくさん出るんだろ? なら、やっぱり食いてぇじゃん」

イシュドらしい理由に、苦笑いを浮かべながらも納得するフィリップ。

全員が一張羅を身に着け、会場に入場。

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

すると案の定、先に入場して知人友人たちと話していた生徒たちの視線が一気にイシュドたちに……正確には、イシュドに集まった。

「モテモテだな」

「全員俺に喧嘩を売るつもりがあるなら、そうとも言えるかもな」

イシュドが不敵な笑みを浮かべながら周囲を見渡すと、殆どの者たちが慌てて目を逸らした。
特別試合の際、イシュドは強化系のスキルは使っておらず、魔力も所々でしか使用していない。
しかも……使用していたのは、ただの魔力。

イシュドが三次職、変革の狂戦士たる由縁の魔力は使用していなかった。

「イシュド、あまりイジてはダメですよ」

「解ってますって、会長先輩。つか、ガチ綺麗っすね」

金色の長髪は美しく結われており、顔には薄い化粧が施されており、普段以上の美しさが引き出されていた。
水色をメインにしたドレスは可憐さと美しさ、両方を欲張ったデザインであり……イシュドという鬼と悪魔がフュージョンした存在にビビッて目を逸らした男子生徒たちも、チラチラと入場してきた女神を盗み見していた。

「ありがとう、イシュド」

「イシュド!!! クリスティールお姉様を変な眼で見るんじゃありませんわ!!!!!」

「ただ綺麗ですねって褒めただけだろうが。それに比べてお前は…………うん、ちょっと残念になってんな」

「なっ!!!!????」

クリスティールと同じく金色の長髪はいつものように縦ロールではなく、パーティーに参加するために変更され、美しく結われており……ドレスには赤を基調とした、やや大胆なドレスを着用。

こちらも会場内に居る多くの男子生徒の視線を集めてはいるが……イシュドからすればちょっとなという感想だった。

「そ、そそそそれはどう意味なのか、しっかり口で説明出来るのかしら?」

敬愛するクリスティールお姉様が水色のドレスを着用するということで、ミシェラは全く被らない赤色がメインのドレスを選んだ。

これまでパーティーでも赤をメインとしたドレスを着て参加してきたため、自信を持てる格好の一つであった。

だが、目の前の男はそれをちょっと残念だと評した。

「いやぁ~~~、だってなぁ……………………なぁ、フィリップ。俺の考えてる事、なんとなく解るだろ」

「ん? ん~~~~………………あぁ、はいはい、なるほどね。確かに変わるわ~~~~」

「っ!!! ふぃ、フィリップ……あなたも、同じ感想だと」

「うん、そうだな」

「ッ!!!!!!!」

迷いなく即答したフィリップ。
二人はこう思っていた。

綺麗は綺麗なんだけど……夜の綺麗な姉ちゃんたちに雰囲気が寄っちゃってるんだよなぁ、と。

クリスティールも並以上の万乳を有しているが、ミシェラはその一歩先を……いや、二歩先を行く天乳を有している。

ドレスのデザインがクリスティールと被らないようにと、やや、美しさ……セクシーさが強いデザインとなっていた。

そんな感想を口に出来ないと、それは良い意味で紳士的な態度ではあるが、そもそも適当にお世辞を言ってれば良かったという結論に至る。
それが出来ていれば……ミシェラの顔が噴火した火山の如く赤くなることはなかった。

「ぼ、僕はミシェラさんのドレス姿もとても綺麗だと思うよ!!!」

「っ………………まぁ、良いですわ。後でぶった斬るので」

平民であるガルフに気を遣われてしまった。
ここで怒りを爆発させるのはみっともないと思い、グッと漏れ出したマグマを押し込んだ。

「……二人は本当に素直過ぎますね」

「裏表のない人間ってのは素晴らしいと思うっすよ」

相変わらず口(屁理屈)が上手いと思いながら小さくをため息を吐くクリスティール。

「全く、君はもう少し令息らしく真摯な対応が出来ないのか」

「だってあれっすよインテリメガネ先輩。俺、実家じゃそういうのを褒めるより、身に付けてる武器や防具、筋肉を褒めることが殆どだったんっすよ」

「むっ…………それなら仕方ないと納得出来ない部分は残っているが……」

インテリメガネ先輩と呼ばれることを諦めた生徒会役員、ネルス・アサーム。

彼も激闘祭に参加していたので、イシュドたちと共に会場に入場していた。

「さてと、ガルフ! 美味い飯たらふく食べようぜ!!」

「う、うん!!!」

まだ用意された一張羅姿に慣れないガルフは友人の後に付いて行き、取った皿に料理を乗せていく。

「……イシュド、少しガルフを自由にさせたらどうですの?」

「ん? どういうこった???」

肉料理を頬張りながら首を傾げるイシュド。

「一応、ガルフにとっては縁を作る機会ではあるのですのよ」

「…………あぁ、はいはいなるほどね。言いたい事は解るぞ、クソデカパイ」

「っ! いい加減その呼び方は止めてもらってもよろしくて」

「けどな、結局どいつもこいつも根っこの部分は変ってねぇだろ」

無視して持論を続ける。

「俺に勝てないと解ってながらも、所詮は辺境の蛮族、強いだけじゃ意味がないとかクソみたいな方向に逃げようとする。ガルフに関しても同じだ。三回戦より下で終わったくせにそれでも自分は貴族だから、どう足掻いても平民には負けないとか、意味不明過ぎるプライドを捨てきれてねぇ」

「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」

図星だった面子の方がブルリと震える。

「あなたねぇ……少しずばずば言い過ぎですわ。実際に話してるところに遭遇したわけではないのに」

「言いがかりだってか? 俺は観客席にいたから良く解るんだよ。バカ共がどう考えてたか…………環境のせいってのもあるだろうけど、それでも根っこが変わらねぇようなクソ連中とガルフが絡む必要はねぇよ」

自分勝手、自己中……そう思われる様な言葉を遠慮なしに口にするが、結果として全て的を得ていた。

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