上 下
64 / 168

第64話 口に出さない優しさ?

しおりを挟む
「んじゃ、行くか」

激闘祭が終了してから約二時間後、すっかり日も沈みはしたが……王都内は、激闘祭に関する熱が全く冷めない状態が続いていた。

そんな中、イシュドたちは激闘祭に参加した生徒たちを労うパーティーに参加する為、とある会場を訪れていた。

イシュドはバイロンに特別試合に参加しただけの自分が参加しても良いのかと尋ねたか、その辺りは既にフラベルト学園の学園長が何とかしていた。

「てか、よく参加しようと思ったな、イシュド」

「美味い料理がたくさん出るんだろ? なら、やっぱり食いてぇじゃん」

イシュドらしい理由に、苦笑いを浮かべながらも納得するフィリップ。

全員が一張羅を身に着け、会場に入場。

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

すると案の定、先に入場して知人友人たちと話していた生徒たちの視線が一気にイシュドたちに……正確には、イシュドに集まった。

「モテモテだな」

「全員俺に喧嘩を売るつもりがあるなら、そうとも言えるかもな」

イシュドが不敵な笑みを浮かべながら周囲を見渡すと、殆どの者たちが慌てて目を逸らした。
特別試合の際、イシュドは強化系のスキルは使っておらず、魔力も所々でしか使用していない。
しかも……使用していたのは、ただの魔力。

イシュドが三次職、変革の狂戦士たる由縁の魔力は使用していなかった。

「イシュド、あまりイジてはダメですよ」

「解ってますって、会長先輩。つか、ガチ綺麗っすね」

金色の長髪は美しく結われており、顔には薄い化粧が施されており、普段以上の美しさが引き出されていた。
水色をメインにしたドレスは可憐さと美しさ、両方を欲張ったデザインであり……イシュドという鬼と悪魔がフュージョンした存在にビビッて目を逸らした男子生徒たちも、チラチラと入場してきた女神を盗み見していた。

「ありがとう、イシュド」

「イシュド!!! クリスティールお姉様を変な眼で見るんじゃありませんわ!!!!!」

「ただ綺麗ですねって褒めただけだろうが。それに比べてお前は…………うん、ちょっと残念になってんな」

「なっ!!!!????」

クリスティールと同じく金色の長髪はいつものように縦ロールではなく、パーティーに参加するために変更され、美しく結われており……ドレスには赤を基調とした、やや大胆なドレスを着用。

こちらも会場内に居る多くの男子生徒の視線を集めてはいるが……イシュドからすればちょっとなという感想だった。

「そ、そそそそれはどう意味なのか、しっかり口で説明出来るのかしら?」

敬愛するクリスティールお姉様が水色のドレスを着用するということで、ミシェラは全く被らない赤色がメインのドレスを選んだ。

これまでパーティーでも赤をメインとしたドレスを着て参加してきたため、自信を持てる格好の一つであった。

だが、目の前の男はそれをちょっと残念だと評した。

「いやぁ~~~、だってなぁ……………………なぁ、フィリップ。俺の考えてる事、なんとなく解るだろ」

「ん? ん~~~~………………あぁ、はいはい、なるほどね。確かに変わるわ~~~~」

「っ!!! ふぃ、フィリップ……あなたも、同じ感想だと」

「うん、そうだな」

「ッ!!!!!!!」

迷いなく即答したフィリップ。
二人はこう思っていた。

綺麗は綺麗なんだけど……夜の綺麗な姉ちゃんたちに雰囲気が寄っちゃってるんだよなぁ、と。

クリスティールも並以上の万乳を有しているが、ミシェラはその一歩先を……いや、二歩先を行く天乳を有している。

ドレスのデザインがクリスティールと被らないようにと、やや、美しさ……セクシーさが強いデザインとなっていた。

そんな感想を口に出来ないと、それは良い意味で紳士的な態度ではあるが、そもそも適当にお世辞を言ってれば良かったという結論に至る。
それが出来ていれば……ミシェラの顔が噴火した火山の如く赤くなることはなかった。

「ぼ、僕はミシェラさんのドレス姿もとても綺麗だと思うよ!!!」

「っ………………まぁ、良いですわ。後でぶった斬るので」

平民であるガルフに気を遣われてしまった。
ここで怒りを爆発させるのはみっともないと思い、グッと漏れ出したマグマを押し込んだ。

「……二人は本当に素直過ぎますね」

「裏表のない人間ってのは素晴らしいと思うっすよ」

相変わらず口(屁理屈)が上手いと思いながら小さくをため息を吐くクリスティール。

「全く、君はもう少し令息らしく真摯な対応が出来ないのか」

「だってあれっすよインテリメガネ先輩。俺、実家じゃそういうのを褒めるより、身に付けてる武器や防具、筋肉を褒めることが殆どだったんっすよ」

「むっ…………それなら仕方ないと納得出来ない部分は残っているが……」

インテリメガネ先輩と呼ばれることを諦めた生徒会役員、ネルス・アサーム。

彼も激闘祭に参加していたので、イシュドたちと共に会場に入場していた。

「さてと、ガルフ! 美味い飯たらふく食べようぜ!!」

「う、うん!!!」

まだ用意された一張羅姿に慣れないガルフは友人の後に付いて行き、取った皿に料理を乗せていく。

「……イシュド、少しガルフを自由にさせたらどうですの?」

「ん? どういうこった???」

肉料理を頬張りながら首を傾げるイシュド。

「一応、ガルフにとっては縁を作る機会ではあるのですのよ」

「…………あぁ、はいはいなるほどね。言いたい事は解るぞ、クソデカパイ」

「っ! いい加減その呼び方は止めてもらってもよろしくて」

「けどな、結局どいつもこいつも根っこの部分は変ってねぇだろ」

無視して持論を続ける。

「俺に勝てないと解ってながらも、所詮は辺境の蛮族、強いだけじゃ意味がないとかクソみたいな方向に逃げようとする。ガルフに関しても同じだ。三回戦より下で終わったくせにそれでも自分は貴族だから、どう足掻いても平民には負けないとか、意味不明過ぎるプライドを捨てきれてねぇ」

「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」

図星だった面子の方がブルリと震える。

「あなたねぇ……少しずばずば言い過ぎですわ。実際に話してるところに遭遇したわけではないのに」

「言いがかりだってか? 俺は観客席にいたから良く解るんだよ。バカ共がどう考えてたか…………環境のせいってのもあるだろうけど、それでも根っこが変わらねぇようなクソ連中とガルフが絡む必要はねぇよ」

自分勝手、自己中……そう思われる様な言葉を遠慮なしに口にするが、結果として全て的を得ていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ニセ聖女と呼ばれ、婚約破棄されました。しかし、若い宰相さんが私を拾ってくれました

hikari
恋愛
ターニアは自分を養子にしてくれたウラ子爵家の令息、アンドレイと婚約した。しかし、アンドレイは幼馴染のフォスティ男爵令嬢ケイトに浮気をしていた。ターニアは「ニセ聖女」と言われ、婚約破棄されてしまう。 その後ターニアは修道院の運営する孤児院に行く。ターニアは孤児院出身で、ウラ子爵家と養子縁組した。自分と同じ孤児を支援していく。 そこに、リュシフォン王国の若き宰相で伯爵のナポレオンが孤児院を視察した。それが、ターニアとナポレオンとの邂逅となった。そして、ナポレオンはターニアに一目惚れし、求婚をする。 アンドレイと浮気相手のケイトはその後キスニンの森で魔物アトポスの呪いにあう。 ※血圧上昇、心拍数上昇が見込まれますが、自己責任でお願いします。

【完結】些細な呪いを夫にかけ続けている妻です

ユユ
ファンタジー
シャルム王国を含むこの世界は魔法の世界。 幼少期あたりに覚醒することがほとんどで、 一属性で少しの魔力を持つ人が大半。 稀に魔力量の大きな人や 複数属性持ちの人が現れる。 私はゼロだった。発現無し。 政略結婚だった夫は私を蔑み 浮気を繰り返す。 だから私は夫に些細な仕返しを することにした。 * 作り話です * 少しだけ大人表現あり * 完結保証付き * 3万5千字程度

【R18】俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※2024/7/7本編完結 ※7/20後日談連載開始。数話完結予定。→総悟が執拗なため長引いてます…… (昼夜問わずに桃花と一緒に過ごせて幸せな総悟だったけど、獅童が最近夜グズるようになったので、夜の時間が削られてしまい…強硬手段に出る話) ※獅童も一緒に竹芝夫婦と遊園地に遊びに行く後日談も後日投稿予定です。  二年前に一度だけ身体の関係になった二階堂総悟。二階堂財閥の御曹司であり、新進気鋭のCEOとなっている彼とは、梅小路桃花は一生会うつもりがなかった。けれども、彼の部下が現れて、多額の報酬を渡す代わりに、すっかりやさぐれてしまった総悟の専属秘書に戻ってほしいと依頼される。お金に困っていた桃花は、総悟との間に出来た子どもを産んで育てているという秘密を隠したまま、彼の専属秘書として再び働くことになり……?  俺様御曹司・二階堂総悟(27) × 生真面目な専属秘書・梅小路桃花(22)   とある事情で離れざるを得なかったワケありな2人が再会して、子どもと一緒に家族皆で幸せになるまでの物語。 ※R18には※ ※アルファポリス先行作品。 (ムーンライトノベルズには7月以降に投稿)

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。

青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。 彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・ これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。 おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

処理中です...