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第63話 最有力候補は

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「てか、盛り上がってるとこあれだが、俺来年も激闘祭で試合する分かんねぇぞ」

「…………ど、どうしてですの!!!!????」

ミシェラとしては、来年こそ大舞台で憎きクソ狂戦士を倒すつもりだった。
各学年の優勝者が揃って三人がかりで挑むという点には目を瞑って、全力でぶった斬るつもりだった。

「どうしてっつわれてもな。俺が、俺の実家がやべぇだろってのは、もうあの試合で証明できたし」

「「っ!」」

「確かにな~~~」

フィリップは通常運転ではあるが、クリスティールとダスティンにとっては苦い結果であることに変わりはないため、少々表情が歪んだ。

「ら、来年や再来年はどうなるのか解らないじゃないですの!!!!」

「可能性がゼロとは言わねぇけど……今回は手加減して戦ったが、接戦になったらなったで、負けるつもりはねぇから色々と開放するぞ?」

イシュドのメイン武器は、戦斧の二刀流。
武器以外にも強化系のスキル、武器スキル……狂戦士の代名詞であるバーサーカーソウル。

楽しい戦いをしたいという思いがある反面、決して負けたい訳ではない負けず嫌いない気持ちも持ち合わせている。

「イシュドがバーサーカーソウル使ったら、どんだけ頑張っても瞬殺だろうなぁ……つかよ、イシュド。お前途中からわざと俺らのギリギリ狙ってなかったか」

「はっはっは!! やっぱり良い眼、感覚を持ってんな、フィリップ。つっても、あれが俺の素の状態のマックスみたいなもんだったから、良い感じにかみ合ったってだけなんだけどな」

「本当かね~~~、ったく。マジ鬼だな」

クソドS変態野郎。

思い出した感覚の答え合わせをし、頭の中にそんな暴言が浮かんだ。

「そりゃ褒め言葉ってもんだな。まっ、俺に勝ちたかったらとりあえず三次職に転職するんだな。三次職が三人……は、さすがに無理か。って考えると二次職が一人で三次職が二人……それぐらいなら、バーサーカーソウルを使っても良いかもな」

学生の間に三次職まで上り詰めた人物は……歴史上、数えるほどしかいない。

付け加えると、入学する前に三次職になっている人物は、歴史上イシュドただ一人。

「……イシュド君、それはさすがに酷ですよ」

「それぐらい解ってますよ」

学生の間に三次職になれ。
二次職が一人と三次職が二人という対戦相手を仮定した場合、二年生の間に三次職という領域に到達しなければならない。

ハッキリ言って、死ねと言っているのと同じである。

加えて、退学になっても良い覚悟を持たなければ……レベルを上げるための時間が確保できない。

「それでも、二次職の中でも良い戦いが出来そうなのを考えると………………今んとこ、ガルフは最有力候補かな」

「……えっ」

友の言葉に戸惑うガルフ。

試合を観れてはいなかったが、何となく事情を察したフィリップはいつも通りの表情……に加えて、少し嬉しさが零れていた。

そしてミシェラは…………驚き全開の表情から、ライバル視全開の視線をガルフに向けた。

「イシュド君。おそらくですが、ガルフ君と戦ったのはディムナ君、ですよね」

「そうっすよ。あのクソ生意気な面した令息っす」

ディムナも多分、お前には言われたくない筈。

と、この場にいる人間の殆どが同じことを心の中で呟いた。

「あの令息もまぁ、戦闘力だけならそこそこだったっすからね」

「先程、彼を相手にダブルノックアウトに持ち込んだと聞きましたが」

「闘気を取得したみたいっすからね。純粋な身体能力に限れば、同世代の中でも頭一つ抜けた状態になった筈っすよ」

友人を持ち上げ過ぎている訳ではない。

闘気という力は、接近職の者だからといって、誰でも会得出来る力ではない。

(それに、ガルフの場合…………いや、さすがにあれは偶々か。ゾーンに入ってたからいきなり出来ちゃいましたって感じだろうな)

イシュドは決して見逃さなかった。
ガルフが闘気を会得しただけでは終わらず、その先に足を踏み入れかけた瞬間を。

(……ってのを考えると、やっぱりあのクソ生意気面の令息は良い感じにそこそこ強かったってことになるか……いや、ガルフが最初から闘気を使えていれば…………ダメだ。さすがにそれはタラればが過ぎるな)

二人のが全てを出し切った試合にあれこれケチを付けるのはよろしくないと思い、そこで一旦考えることを止めたイシュド。

「とりあえず、俺が来年も激闘祭で参加するかは知らん」

「ぐぬぬぬぬ…………はぁ~~~~。今はそれで構いませんわ。ところでイシュド、
あなた……絶対に来るであろうお誘いに対して、どう答えるのですの?」

「お誘い? あぁ、騎士団からか。んなもん、全部断るに決まってんだろ」

「レグラ家と縁を、という意味でもたくさん来るはずですわ」

「その考えは理解出来るが、その行為自体がレグラ家に喧嘩を売る様なもんだ」

イシュドが他家の騎士団、国の騎士団に属することなどあり得ない。

これは強制や見えない鎖による縛りではなく、ただイシュドの心が決定しており、それを家族や家に仕える者たちが理解しているだけ。

そんなイシュドを無理矢理引き抜こうものなら……内戦待ったなしである。

「んな度胸がある家はねぇだろうし、国もそれは望まねぇだろ。だって、亜神に挑む様なもんだしな」

「………………半分神、の人間がいると言いましたの?」

「その解釈で合ってるぞ。まだ実家の領地の問題? みたいなのが解決できてないから、恐れ多くも神とは言えねぇけど、あの強さを考えるとな……亜神って名乗っても許されると思うぜ」

信じられないという顔をする者が殆ど。

だが、ミシェラたちは直ぐにこれまでの記憶を振り返り、その信じられない存在が
既に目の前にいるのだと……心を落ち着かせることに成功。

「……イシュドよ。君が亜神と評する人物は……どれほど強いのだ」

「おっ、やぱり気になるっすか、マッチョ先輩」

「う、うむ。そうだな」

まだその呼び名に慣れないダスティン。

「簡単に説明すると、俺が本気の本気を出しても……殺しにいっても殺せない人っすね」

「こ、ころ……殺しにいっても、か」

「俺の全てをぶつけても無理っすね。兄さんや姉さんたちと一緒に戦えば…………ん~~~~~。それでも勝つのは無理か。せいぜい、良い勝負が出来るかもって感じか?」

理解不能な怪物が倒せない存在。

それは確かに……半分神、亜神と呼べる存在なのかもしれない。
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