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第55話 準決
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一つ目の第一準決勝が終了後、第二準決勝が始まる。
そう……ついに、フィリップとミシェラの試合が始まる。
「っしゃああああああ!!!! フィリップぅうううううう!!! 遠慮する必要はねぇ!!! 腕一本ぐらいぶった斬ったって死なねぇ奴だ、がっつりやっちまえええええええええええええええ!!!!!」
「え、えっと……ど、どっちも頑張れええええええええ!!!!!」
「……イシュド。少しはガルフを見習ったらどうだ」
「俺は変に嘘を付かず、自分の気持ちに素直になってるだけっす!!!!」
応援内容について、担任教師であるバイロンからツッコまれるイシュドだが、本人はけろっとした表情で良いこと言ってる風に答え……再びフィリップだけを応援する。
ガルフとしてはどちらの方が大事と比べることは出来ず、決してイシュドの応援に飲み込まれることはなく、自分の気持ちをそのまま応援に表す。
イシュドもその姿勢に文句などある訳がなく……寧ろその姿勢にガルフの強さすら感じ、小さな笑みを零していた。
当然だが、ミシェラにも多くの声援が送られており、決してイシュドの声援しか聞こえず、ミシェラの心を乱しまくるという展開にはならなかった。
「ふ、ふっふっふ。なんとも言えねぇって顔してんな」
「解っていましたわよ。ただ……こぅまで露骨に扱われると、眉間に皺も寄せたくなりますわ」
「思いっきり寄せたらどうだ? あいつは爆笑するだろうけどよ」
「お忘れかしら? フィリップ、あなたも……あの男と同じぐらいぶった斬りたい相手ですのよ」
「おぉ~~~、そりゃ怖ぇな」
お喋りはそこまでにし、二人は数歩下がって開始地点で構える。
すると、観客席の方からまばらにではあるが、疑問の声が零れ始める。
「……奇策、ではないのでしょうね」
「想像に任せるぜぇ~~」
フィリップはこれまでの試合と違って短剣……だけではなく、もう片方の手に短剣とロングソードの中間ぐらいの剣を装備。
形だけ見れば、ミシェラの双剣と同じ二刀流。
(私と同じ双剣……と、思わない方がよろしいでしょうね)
挑発かもしれない。煽りかもしれない。
はたまた……勝つための侮辱かもしれない。
普段であれば、苛立ちが募るところだが……あのフィリップが、自分の試合にそういった策を持ってきた。
つまり、本気で自分に勝つつもりでいる。
そう思うと、不思議と悪い気分ではなく、既に眉間の皺は完全に消えていた。
「二人共、死に迫る攻撃は控えるように。それでは……始め!!!!」
「「ッ!!!!!」」
既にプライベートで何度も模擬戦を行ってきた二人。
互いの行動パターンなどはある程度読めているため、今更様子見をする必要はないと言わんばかりに駆け出す。
フィリップが短剣ではなく、短剣ともう一つの剣を装備していたとしても、ミシェラにとって下手に悩む必要はなかった。
「おいおい、随分と過激、じゃねぇの?」
「まだまだこれから、ですわよ。付いて来れるかしら?」
言葉通り、ミシェラの動きは更に加速。
双剣のスピードも上がり、旋風を纏った一撃は……絶対に食らいたくない切れ味を有している。
(解っちゃいたが、一級品だな)
心の中で対戦相手であるミシェラに賞賛を送るフィリップ。
本人に、対戦相手に賞賛を送るなんて随分余裕だなと伝えても、本人は否定する。
だが……実際問題として、フィリップの短剣と剣の二刀流による防御と攻撃は様になっていた。
(っ! 私の知らぬ間に訓練を重ねていた……もしくは、元から会得していた。敢えて、私たちの前で使わなかった?)
フィリップの二刀流。
これは観客席で観戦しているイシュドとガルフも見たことがなかった戦闘スタイル。
(おいおい、がっつり様になってるじゃねぇか。つっても、ギリギリで踏ん張ってる……いや、ありゃブラフか?)
(短剣と、刃が少し短いロングソードの二刀流? だよね。フィリップ、あんなことが出来たんだ……けど、攻撃力だけなら、ミシェラさんの方が上?)
当然、友人が自分たちの前で見せたことがない戦闘スタイルを大舞台で披露していることに、二人はテンションが上がっていた。
「っ!? くっ! せあッ!!!!!」
「っと、危ねぇ危ねぇ。ちょっと乱暴なんじゃねぇの?」
「そちらは随分と器用になりましたわね」
「傭兵の器用さを存分に生かしてるだけなんだけどな」
繰り返される激しい攻防の中、フィリップはタイミングを見計らい、左右の武器を持ち換えた。
互いにクロスレンジが狭く、接近戦の中で予想距離を見間違えば、そこから一気に戦況が動く可能性大。
(器用……そんなレベルで行えるものなのですか?)
絶対に不可能ではないが、素人がやればまず死ぬ。
多少器用程度の人物でも死ぬ。
双剣使いの中でも風を纏い、更に加速したミシェラを相手にする行動ではない。
「それじゃ、まだまだ踊ろうぜ」
「ッ!!」
これ以上休ませるつもりはなく、イシュドは仕留めるつもりで挑むが……ミシェラの
防御、回避技術も並ではない。
反応速度も傭兵のフィリップよりも上であるため、多少無茶をしても攻撃を回避して攻撃に繋げられる。
(でも、このままでは、埒が明かきませんわ!!!!)
無茶でも一歩踏み込まねば拮抗が崩れない。
今のミシェラにとって……それは決して難しいことではなかった。
(今……ここ)
徐々に、徐々に剣速を下げていった。
わざと……そうバレない程度に下げた結果、誘発に成功。
「疾ッ!!! セアッ!!!!!!!」
「ぐっ!!!!!」
短剣と剣を持ち帰る瞬間、短剣を宙で弾き、残った双剣を振るう。
本当にギリギリのタイミングではあったが、剣を盾にして……跳んだ。
「一……二……三」
「っと、いやぁ~~~、罠だったか。そういうの、出来るようになってたのかよ~~。あんまらしくねぇやり方じゃねぇの?」
「あなたはとてもらしい行動でしたわね」
フィリップは旋風を纏った斬撃をガードした瞬間、流れに身を任せるように軽く地面を蹴った。
わざと大袈裟に飛んだことでリングの外に跳んだ。
リングの外に出てしまえば追撃されることはなく、弾かれてしまった短剣を回収することが出来る。
(剣速が少しずつ遅くなってたか? やっぱりミシェラレベルの相手だとそういのされっと、咄嗟に判断出来ねぇな)
(おそらく、私が何をしたのか気付かれたでしょう)
同じ手は二度通じない。
それを理解しているミシェラのやる事は……変らなかった。
対して、ダルそうな顔をしながらも、既にフィリップの腹も決まっていた。
そう……ついに、フィリップとミシェラの試合が始まる。
「っしゃああああああ!!!! フィリップぅうううううう!!! 遠慮する必要はねぇ!!! 腕一本ぐらいぶった斬ったって死なねぇ奴だ、がっつりやっちまえええええええええええええええ!!!!!」
「え、えっと……ど、どっちも頑張れええええええええ!!!!!」
「……イシュド。少しはガルフを見習ったらどうだ」
「俺は変に嘘を付かず、自分の気持ちに素直になってるだけっす!!!!」
応援内容について、担任教師であるバイロンからツッコまれるイシュドだが、本人はけろっとした表情で良いこと言ってる風に答え……再びフィリップだけを応援する。
ガルフとしてはどちらの方が大事と比べることは出来ず、決してイシュドの応援に飲み込まれることはなく、自分の気持ちをそのまま応援に表す。
イシュドもその姿勢に文句などある訳がなく……寧ろその姿勢にガルフの強さすら感じ、小さな笑みを零していた。
当然だが、ミシェラにも多くの声援が送られており、決してイシュドの声援しか聞こえず、ミシェラの心を乱しまくるという展開にはならなかった。
「ふ、ふっふっふ。なんとも言えねぇって顔してんな」
「解っていましたわよ。ただ……こぅまで露骨に扱われると、眉間に皺も寄せたくなりますわ」
「思いっきり寄せたらどうだ? あいつは爆笑するだろうけどよ」
「お忘れかしら? フィリップ、あなたも……あの男と同じぐらいぶった斬りたい相手ですのよ」
「おぉ~~~、そりゃ怖ぇな」
お喋りはそこまでにし、二人は数歩下がって開始地点で構える。
すると、観客席の方からまばらにではあるが、疑問の声が零れ始める。
「……奇策、ではないのでしょうね」
「想像に任せるぜぇ~~」
フィリップはこれまでの試合と違って短剣……だけではなく、もう片方の手に短剣とロングソードの中間ぐらいの剣を装備。
形だけ見れば、ミシェラの双剣と同じ二刀流。
(私と同じ双剣……と、思わない方がよろしいでしょうね)
挑発かもしれない。煽りかもしれない。
はたまた……勝つための侮辱かもしれない。
普段であれば、苛立ちが募るところだが……あのフィリップが、自分の試合にそういった策を持ってきた。
つまり、本気で自分に勝つつもりでいる。
そう思うと、不思議と悪い気分ではなく、既に眉間の皺は完全に消えていた。
「二人共、死に迫る攻撃は控えるように。それでは……始め!!!!」
「「ッ!!!!!」」
既にプライベートで何度も模擬戦を行ってきた二人。
互いの行動パターンなどはある程度読めているため、今更様子見をする必要はないと言わんばかりに駆け出す。
フィリップが短剣ではなく、短剣ともう一つの剣を装備していたとしても、ミシェラにとって下手に悩む必要はなかった。
「おいおい、随分と過激、じゃねぇの?」
「まだまだこれから、ですわよ。付いて来れるかしら?」
言葉通り、ミシェラの動きは更に加速。
双剣のスピードも上がり、旋風を纏った一撃は……絶対に食らいたくない切れ味を有している。
(解っちゃいたが、一級品だな)
心の中で対戦相手であるミシェラに賞賛を送るフィリップ。
本人に、対戦相手に賞賛を送るなんて随分余裕だなと伝えても、本人は否定する。
だが……実際問題として、フィリップの短剣と剣の二刀流による防御と攻撃は様になっていた。
(っ! 私の知らぬ間に訓練を重ねていた……もしくは、元から会得していた。敢えて、私たちの前で使わなかった?)
フィリップの二刀流。
これは観客席で観戦しているイシュドとガルフも見たことがなかった戦闘スタイル。
(おいおい、がっつり様になってるじゃねぇか。つっても、ギリギリで踏ん張ってる……いや、ありゃブラフか?)
(短剣と、刃が少し短いロングソードの二刀流? だよね。フィリップ、あんなことが出来たんだ……けど、攻撃力だけなら、ミシェラさんの方が上?)
当然、友人が自分たちの前で見せたことがない戦闘スタイルを大舞台で披露していることに、二人はテンションが上がっていた。
「っ!? くっ! せあッ!!!!!」
「っと、危ねぇ危ねぇ。ちょっと乱暴なんじゃねぇの?」
「そちらは随分と器用になりましたわね」
「傭兵の器用さを存分に生かしてるだけなんだけどな」
繰り返される激しい攻防の中、フィリップはタイミングを見計らい、左右の武器を持ち換えた。
互いにクロスレンジが狭く、接近戦の中で予想距離を見間違えば、そこから一気に戦況が動く可能性大。
(器用……そんなレベルで行えるものなのですか?)
絶対に不可能ではないが、素人がやればまず死ぬ。
多少器用程度の人物でも死ぬ。
双剣使いの中でも風を纏い、更に加速したミシェラを相手にする行動ではない。
「それじゃ、まだまだ踊ろうぜ」
「ッ!!」
これ以上休ませるつもりはなく、イシュドは仕留めるつもりで挑むが……ミシェラの
防御、回避技術も並ではない。
反応速度も傭兵のフィリップよりも上であるため、多少無茶をしても攻撃を回避して攻撃に繋げられる。
(でも、このままでは、埒が明かきませんわ!!!!)
無茶でも一歩踏み込まねば拮抗が崩れない。
今のミシェラにとって……それは決して難しいことではなかった。
(今……ここ)
徐々に、徐々に剣速を下げていった。
わざと……そうバレない程度に下げた結果、誘発に成功。
「疾ッ!!! セアッ!!!!!!!」
「ぐっ!!!!!」
短剣と剣を持ち帰る瞬間、短剣を宙で弾き、残った双剣を振るう。
本当にギリギリのタイミングではあったが、剣を盾にして……跳んだ。
「一……二……三」
「っと、いやぁ~~~、罠だったか。そういうの、出来るようになってたのかよ~~。あんまらしくねぇやり方じゃねぇの?」
「あなたはとてもらしい行動でしたわね」
フィリップは旋風を纏った斬撃をガードした瞬間、流れに身を任せるように軽く地面を蹴った。
わざと大袈裟に飛んだことでリングの外に跳んだ。
リングの外に出てしまえば追撃されることはなく、弾かれてしまった短剣を回収することが出来る。
(剣速が少しずつ遅くなってたか? やっぱりミシェラレベルの相手だとそういのされっと、咄嗟に判断出来ねぇな)
(おそらく、私が何をしたのか気付かれたでしょう)
同じ手は二度通じない。
それを理解しているミシェラのやる事は……変らなかった。
対して、ダルそうな顔をしながらも、既にフィリップの腹も決まっていた。
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