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九百八十九話 それは自己責任
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(……あの牛飢鬼の登場に、影響はないみたいだな)
虎竜を叩き潰そうと現れた牛飢鬼だったが、その前にアラッドが反応し、乱入阻止に成功。
その後は虎竜と戦えなかった代わりに、クロが牛飢鬼の相手をすることになった。
距離的には離れているが、それでも牛飢鬼の圧倒的な存在感は、虎竜とディーナも感じ取っていた。
普段であれば牛飢鬼の様な強敵が襲いかかってくることは大歓迎だが、まだ……目の前の人間と決着を付けられていない。
仮に目の前の人間と強い存在感を放つ個体から同時に襲われれば、虎竜といえど一方的な敗北を感じずにはいられない。
そして……ディーナとしても、牛飢鬼の乱入をアラッドたちが止めてくれたことは、非常に有難かった。
もし、牛飢鬼が乱入し、虎竜を狙い……結果的に最後は止めを刺せたとしても、変なしこりが残ってしまう。
「…………四割……いや、五割ぐらい、あるかな」
「そうだね…………どっちが勝ってもおかしくない域に、達してると思う」
牛飢鬼の存在には、両者とも一瞬だけ気を取られてしまったため、そこで差が生まれることはなかった。
それでも、どちらもダメージを積み重ねていき、後数分後には……両者共に倒れている可能性が高い。
「……ねぇ、ディーナ…………あんまり、拳を使わないね」
「薙刀? を使ってるからね。使い慣れてるとは思うけど、薙刀に拳を混ぜるのは無理じゃないかな」
「下手に混ぜなくてもさ、一瞬だけ手放して拳でラッシュを仕掛ければ、不意を突ける……と思わない?」
ガルーレにしては、珍しく考えている内容であり、アラッドとスティームも直ぐに彼女の考えを否定することはなかった。
「…………それは、一個のプランにあるだろうな」
「それなら……もしかして、今使うべきじゃないって考えてるのかな」
「その可能性はある。確かにガルーレの言う通り、不意を突ける一手ではあるが、それでも一回使ってしまえば、その戦闘では二度と使えない手札だ」
勝率は互いに五分五分。
そう判断したアラッドたちではあるが、まだ……まだ終わりは見えない。
奇策を使うにしても、今ではない。
(とはいえ……同レベルの冒険者の中でもスタミナがありそうに思えるディーナにも、疲れが現れ始めている。虎竜が何かを焦っている様に感じるが……動きにキレがなくなれば、いつ引き裂かれて食われてもおかしくない)
アラッドは先程牛飢鬼の進行を止める為に取り出した迅罰を、まだアイテムバッグに戻していなかった。
もしかしたら……ディーナは自身がこのままでは死ぬといったところまで追い込まれたとしても、助けられることを望んでいないかもしれない。
それでも、アラッドとしては目の前で見ている以上……知人が死ぬところを、黙って見ていることは出来ない。
それはガルーレやスティームも同じく、スティームなどいつでも赤雷を纏えるように構えていた。
「ッ、ハッ!!!!!」
避け、振るい、躱し、潜り込み……また振るう。
もう数十分経ったのか、それともまだ数分しか経っていないのか、ディーナは全く解っていなかった。
ただ……ただただ、目の前の強敵を、両親の仇を討ち取る為に、薙刀を振るい続ける。
「ぜぇえええあああああアアアッ!!!!!」
「っ!!! ルゥゥアアアアアアッ!!!!!」
ディーナが攻めれば、虎竜も攻める。
明確に当れば堅い鱗を切り裂くディーナの薙刀と同じく、当たれば金剛を使えど……ディーナの肌を引き裂く虎竜の爪撃。
加えて、虎竜には爪撃だけではなく咬みつき、加えて鋭い尾を使った一撃もある。
(この、機会を、逃すなッ!!!!!!!!!!!!)
なんとなく……なんとなく、解る。
おそらく、虎竜は本調子ではない。
ディーナは何も知らなかった……その場にいても何も出来なかったころと比べて、遥かに強くなった。
それでも、未だに両親の強さを覚えているからこそ、今の自分が一人で挑んだとしても……互角に渡り合うことは難しく、それでも形勢逆転の一手は狙える……と予想していた。
だが……理由は解らないが、それでも冒険者としての勘が告げている。
虎竜は調子が良くないと。
ディーナとしては、良く解らんとりあえず存在感は強いモンスターが乱入してくるのはまだしも、調子が悪い云々は自己責任だと考えているため……容赦なく叩き潰そうと、この機会を逃すまいと、更に闘志を燃え上がらせる。
「ハァァアアアアア゛ア゛ッ!!!!!」
「ッッッッッ!!!!」
鬼火を纏った槍技、螺旋突き……爪技、クラッシュクロウがぶつかり合い、牛飢鬼とクロの攻撃がぶつかり合う衝突音に負けない音がディラーズフォレストにぶつかり合う。
(ッ、もう、もたないか!!!)
螺旋突きとクラッシュクロウが衝突した結果は、相殺。
互いに後方へ押されるも、ディーナの薙刀にひびが入った。
しかしそれは虎竜も同じく、数本の爪が欠けてしまった。
(上、等ッ!!!!!!!)
今こそ、このタイミングで戦闘中に使用していなかった打撃を叩き込む……そう思い、構え……駆け出そうとした瞬間、意識の外から尾が迫る。
虎竜を叩き潰そうと現れた牛飢鬼だったが、その前にアラッドが反応し、乱入阻止に成功。
その後は虎竜と戦えなかった代わりに、クロが牛飢鬼の相手をすることになった。
距離的には離れているが、それでも牛飢鬼の圧倒的な存在感は、虎竜とディーナも感じ取っていた。
普段であれば牛飢鬼の様な強敵が襲いかかってくることは大歓迎だが、まだ……目の前の人間と決着を付けられていない。
仮に目の前の人間と強い存在感を放つ個体から同時に襲われれば、虎竜といえど一方的な敗北を感じずにはいられない。
そして……ディーナとしても、牛飢鬼の乱入をアラッドたちが止めてくれたことは、非常に有難かった。
もし、牛飢鬼が乱入し、虎竜を狙い……結果的に最後は止めを刺せたとしても、変なしこりが残ってしまう。
「…………四割……いや、五割ぐらい、あるかな」
「そうだね…………どっちが勝ってもおかしくない域に、達してると思う」
牛飢鬼の存在には、両者とも一瞬だけ気を取られてしまったため、そこで差が生まれることはなかった。
それでも、どちらもダメージを積み重ねていき、後数分後には……両者共に倒れている可能性が高い。
「……ねぇ、ディーナ…………あんまり、拳を使わないね」
「薙刀? を使ってるからね。使い慣れてるとは思うけど、薙刀に拳を混ぜるのは無理じゃないかな」
「下手に混ぜなくてもさ、一瞬だけ手放して拳でラッシュを仕掛ければ、不意を突ける……と思わない?」
ガルーレにしては、珍しく考えている内容であり、アラッドとスティームも直ぐに彼女の考えを否定することはなかった。
「…………それは、一個のプランにあるだろうな」
「それなら……もしかして、今使うべきじゃないって考えてるのかな」
「その可能性はある。確かにガルーレの言う通り、不意を突ける一手ではあるが、それでも一回使ってしまえば、その戦闘では二度と使えない手札だ」
勝率は互いに五分五分。
そう判断したアラッドたちではあるが、まだ……まだ終わりは見えない。
奇策を使うにしても、今ではない。
(とはいえ……同レベルの冒険者の中でもスタミナがありそうに思えるディーナにも、疲れが現れ始めている。虎竜が何かを焦っている様に感じるが……動きにキレがなくなれば、いつ引き裂かれて食われてもおかしくない)
アラッドは先程牛飢鬼の進行を止める為に取り出した迅罰を、まだアイテムバッグに戻していなかった。
もしかしたら……ディーナは自身がこのままでは死ぬといったところまで追い込まれたとしても、助けられることを望んでいないかもしれない。
それでも、アラッドとしては目の前で見ている以上……知人が死ぬところを、黙って見ていることは出来ない。
それはガルーレやスティームも同じく、スティームなどいつでも赤雷を纏えるように構えていた。
「ッ、ハッ!!!!!」
避け、振るい、躱し、潜り込み……また振るう。
もう数十分経ったのか、それともまだ数分しか経っていないのか、ディーナは全く解っていなかった。
ただ……ただただ、目の前の強敵を、両親の仇を討ち取る為に、薙刀を振るい続ける。
「ぜぇえええあああああアアアッ!!!!!」
「っ!!! ルゥゥアアアアアアッ!!!!!」
ディーナが攻めれば、虎竜も攻める。
明確に当れば堅い鱗を切り裂くディーナの薙刀と同じく、当たれば金剛を使えど……ディーナの肌を引き裂く虎竜の爪撃。
加えて、虎竜には爪撃だけではなく咬みつき、加えて鋭い尾を使った一撃もある。
(この、機会を、逃すなッ!!!!!!!!!!!!)
なんとなく……なんとなく、解る。
おそらく、虎竜は本調子ではない。
ディーナは何も知らなかった……その場にいても何も出来なかったころと比べて、遥かに強くなった。
それでも、未だに両親の強さを覚えているからこそ、今の自分が一人で挑んだとしても……互角に渡り合うことは難しく、それでも形勢逆転の一手は狙える……と予想していた。
だが……理由は解らないが、それでも冒険者としての勘が告げている。
虎竜は調子が良くないと。
ディーナとしては、良く解らんとりあえず存在感は強いモンスターが乱入してくるのはまだしも、調子が悪い云々は自己責任だと考えているため……容赦なく叩き潰そうと、この機会を逃すまいと、更に闘志を燃え上がらせる。
「ハァァアアアアア゛ア゛ッ!!!!!」
「ッッッッッ!!!!」
鬼火を纏った槍技、螺旋突き……爪技、クラッシュクロウがぶつかり合い、牛飢鬼とクロの攻撃がぶつかり合う衝突音に負けない音がディラーズフォレストにぶつかり合う。
(ッ、もう、もたないか!!!)
螺旋突きとクラッシュクロウが衝突した結果は、相殺。
互いに後方へ押されるも、ディーナの薙刀にひびが入った。
しかしそれは虎竜も同じく、数本の爪が欠けてしまった。
(上、等ッ!!!!!!!)
今こそ、このタイミングで戦闘中に使用していなかった打撃を叩き込む……そう思い、構え……駆け出そうとした瞬間、意識の外から尾が迫る。
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