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九百二十一話 探る

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「…………」

(このスケルトン……生前は、相当な腕の持ち主だったようですね)

フローレンスの相手は、闇の力により白い骨が黒に染まった黒色のグレータースケルトン。

スケルトン系のモンスターの中では、珍しく強い接近戦のモンスター。
中にはスケルトンドラゴンといった骨のBランクドラゴンなども存在するが、基本的にはあまり強い接近戦タイプのスケルトンは多くない。

そんな中でも、グレータースケルトンのランクはB。
スケルトンドラゴンと同じであり、闇の力が完全に馴染んだことで骨の色が変化した影響か、骨の堅さはスケルトンドラゴンに負けない程堅い。

相性的にはフローレンスの方が有利なのだが、中々攻めだけに転じるのが難しい戦況であった。

「フッ!!!」

「ッ! ッ!? ッ!! ーーーッ!!!!」

「っ!!?? あなたが、生前……どういった方だったのか、非常に気になりますね!!」

黒色グレータースケルトンが持つ得物はロングソードと盾。
オーソドックスな戦闘スタイル。

ただ……そのオーソドックスなスタイルの練度が並ではなかった。

(Bランクモンスターとの、戦闘が……楽ではない事は、解っています。ただ……ここまでしっかりとした、技術を有していると、なると……あの時戦った、蒼と紅のリザードマン、よりも……強いですね)

これまでフローレンスの実戦経験の中で一番強かったのは、蒼色の鱗を持つ個体と、紅色の鱗を持つ個体のリザードマンだった。

その二体の技量も並の騎士ほどはあったが、現在フローレンスと戦闘中のグレータースケルトンは……間違いなく、それ以上の技量を有していた。

(個人的には、黒色のリザードマンが、闇竜の配下の中で、一番の実力者かと、思っていましたが…………中々どうして、本当に厄介なモンスターたちが、揃っていましたね)

アラッドたちと話していた内容の中でも、最悪と言って良いレベルの内容が的中していた。

トップである闇竜は、現在のランクこそBではあるが、魔力量と魔力操作の技術に関しては完全にAランクレベルに到達している。

そんなトップを筆頭に、幹部クラスが合計で五体。
それぞれが確実にBランクモンスターの中で中堅からトップレベルの実力を有している。

(見間違いでなければ、まだ闇の力が完全に、馴染んでいない個体の中に、メイジらしき個体もいた……本当に、恐ろしい軍団を、造り上げたものです)

まだ完全に馴染んではいない。
しかし、それでも約半分は既に馴染んでいることを考えれば、時間さえあれば残りの個体も闇の力に完全に馴染む可能性が十分にあると言える。

(……アラッドの言う通り、闇竜は自身の闇を授ける個体を、選んでいるでしょう。ただ、闇の馴染むか否かに関して……特に才能は関係無いとなれば……っ!! ひとまず、ヴァジュラがサラマンダーを討伐してくれて良かったですね)

闇竜と他のモンスターたちが、どういった関係から発展し、一応の主従関係になったのかは、まだ解っていない。

ただ、闇竜が闇の力を授けたモンスターの中に、闇竜と同じくランクがBのモンスターが解っているだけでも四体はいる。
当然の事ながら、相手がドラゴンとはいえ、Bランクモンスターたちは同じランク帯のモンスターの軍門にあっさり下るほど、安いプライドは持っていない。

(そういう意味でも、もしかしたらアラッドにとって、初めて相対するタイプのモンスターかも、しれませんね!!!!)

あれこれ考えながら戦うフローレンスに対し、なんとなくではあるが、自分との戦いに集中し切っていない対戦相手にキレることなく、怒りを爆発することはなく、淡々と攻防を繰り返す黒色グレータースケルトン。

既に死んだ個体……ではあるものの、全く感情がないわけではない。

ただ……純粋に、目の前の女性騎士は強いと認めていた。
彼女が有する属性は、自分に……自分たちにとって、確実に相性が悪い。

だからこそ、最悪黒色グレータースケルトンは目の前の女性騎士に勝たなくても良かった。
自分が、光属性を持つ女性騎士を足止めし続ければ、他の闇竜から力を授かった者たちの元へ、天敵となり得る存在を向かわせずに済む。

「ッ!!!!」

「くっ!!」

とはいえ、仕留められるなら仕留めたい存在。

元々人間だったからこそ、解るところがある。
闇竜デネブと会話していた人間が非常に強い人間であることは解る。
戦わずとも解らせるだけの力を有している。

しかし……目の前の女性騎士は、精霊を召喚した。
彼女の両耳は、特に尖ってはいない。
ただの人間が……精霊を召喚した。
しかもただの精霊ではなく、人型の精霊である。

ある程度の知識を有している黒色グレータースケルトンからすれば、自分たちにとって目の前の女性騎士の方がよっぽど危険な存在。

欲を言うのであれば、何故か頭が三つあるオルトロス亜種と黒色ハーピィを呼び、三対一で戦いたかった。

だが、それが叶わないことは黒色グレータースケルトンも理解している。
だからこそ……探る。
時間が許される限り、探って探り続け……どうすれば自分が命を賭すことで、目の前の強者に勝てるかを考える。
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