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七百四十三話 それはそれで
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「あなた達、ちゃんと私たちの話を聞いてますの?」
「あぁ……聞いてるよ聞いてる。似合ってると思うぞ」
動き回っている訳でもないのに、疲れたと感じる。
何故なのか? と考えても、明確な理由が思い浮かぶことはない。
「適当な褒め言葉で、女性が喜ぶと思ってるの?」
「そんな事言われてもな…………お前らは元が良いんだ」
リエラたちがあれでもないこうでもないと悩んでいる服に目を向けた。
「……どんな服を着ても、似合うことには似合うんだ」
「ふむ…………悪い気はしないけど、それはそれでどうなのかしら」
「そりゃあ、それだけ多く服があれば……どれかが一番、これしかないって思える服はあるだろうな。ただ、別にそういう服じゃなく……寧ろ、普段着ないように思える服であっても、それはそれで似合うって思ってしまうだろ」
それはそれで、という言葉を返されたリエラは言い返そうとするのではなく、アラッドが口にした言葉をじっくりと考え込み……悪くない、といった表情を浮かべた。
「なるほどね。それがあなたの本音を考えると、上手く褒め言葉を出そうとしないのは、逆に紳士的な対応なのかしら」
「いや、それは……まぁ、好きなように解釈してくれ」
どういった服を着ても、似合うことには似合う。
その言葉に嘘はないが、とりあえずまだ昼飯前だというのに疲れが押し寄せてきており、言葉を訂正する気力を完全に失っていた。
「それじゃあ、次の店に行きましょうか」
(……またあぁいった時間が続くのか)
何だかんだでガルーレたちが楽しんでいる為、ここでごちゃごちゃ言うのは良い空気に水を差す。
そう思い、不満を押し殺したアラッド。
しかし、次にリエラが案内した店は……意外にも、武器や防具、マジックアイテムが売っている店だった。
加えて……リエラは一般客が訪れることが出来ない、VIPエリアにアラッドたちを案内した。
「男性は女性の買い物に付き合えば、普段の五倍は疲れる。お兄様たちからそれぐらい教えてもらっているから、安心しなさい」
「良い兄さんだな。にしても…………ふふ、ワクワクする空間だ。なぁ、アッシュ」
「はい……とても、ワクワクします」
VIPエリアに置かれている商品は、全て特注のケースに入っている。
アラッドやアッシュだけではなく、スティームやガルーレたちにとっても、非常に心が躍る空間である。
(そういえば…………だ、駄目だ。こういうのは考えるだけであれだ)
ショーケースに入っている高価な商品。
その光景を前にして、アラッドは先日の……眼を奪われた刀、羅刹の一件を思い出し、直ぐに考えることを止めた。
フラグなんて、ただ不都合な出来事に理由を付けただけと思う者もいるだろう。
だが、当事者たちからすれば、本当にたまたま偶然であり……何故自分が思って、口にしてしまったタイミングで!!! と、誰に何にぶつければ良いのか解らない怒りがこみ上げてくる。
「ん? こいつは……」
と思っていると、一つのネックレスがアラッドの目に留まった。
「そちらはドラゴンハート、Aランクドラゴンの心臓が素材として使用されたマジックアイテムとなります」
「え、Aランクドラゴンの心臓が……なるほど、納得の存在感と言いますか」
従業員の説明を聞き、アラッドは何故か急に意識を吸い寄せられたことに納得。
(……マジックアイテムに、なってるんだよな???)
ドラゴンハートは既に素材と使用されており、目の前にあるのはネックレスのタイプのマジックアイテム。
ドラゴンハートがある訳ではないのに……アラッドはそのネックレスから、素材となったドラゴンの圧を感じ取った。
「あら、Aランクドラゴンの心臓が使われたマジックアイテムは珍しいですね」
「っ………………綺麗、ですね」
リエラとアッシュもまじまじと眺め始めた。
「………………」
「どうした、アッシュ。惚れたか?」
「惚れた、ですか…………この眼を奪われたような感覚を例えるなら、その言葉が相応しいでしょう」
兄の問いに対して、おそらくその通りだと認めた。
それを隣で聞いたリエラは……アホ過ぎるバカではないため、マジックアイテムに嫉妬することはなかった。
ただ……少しでも気を引けるよう、購入してプレゼントしようかと考えて値段が書かれている札を見て……思いっきり固まってしまった。
「ん? どうしたんだ、リエラ嬢。ちょっと面白い顔になってるぞ」
「い、いえ。その……や、やはりドラゴンハートを素材として使ってるだけあって、中々の金額だと思って」
「あぁ、そういう事か。まぁ、そうだな……大金を持ってる人でも、そう簡単に手を出せない金額だな」
ドラゴンハートが使用されたマジックアイテムのネックレスは、別の店でアラッドが購入した刀、羅刹と……壊してしまったショーケースの弁償代を入れても、全く足りない。
「ん~~~? なになに、アラッドそのネックレスを買うの? アラッドなら買えそうだけど、ちょっと高いんじゃない」
「「「っ!!!???」」」
高いが、買えない金額ではない……そんな言葉を耳にしたリエラ達三人は大なり小なり驚き、従業員は目をキラリと光らせた。
「あぁ……聞いてるよ聞いてる。似合ってると思うぞ」
動き回っている訳でもないのに、疲れたと感じる。
何故なのか? と考えても、明確な理由が思い浮かぶことはない。
「適当な褒め言葉で、女性が喜ぶと思ってるの?」
「そんな事言われてもな…………お前らは元が良いんだ」
リエラたちがあれでもないこうでもないと悩んでいる服に目を向けた。
「……どんな服を着ても、似合うことには似合うんだ」
「ふむ…………悪い気はしないけど、それはそれでどうなのかしら」
「そりゃあ、それだけ多く服があれば……どれかが一番、これしかないって思える服はあるだろうな。ただ、別にそういう服じゃなく……寧ろ、普段着ないように思える服であっても、それはそれで似合うって思ってしまうだろ」
それはそれで、という言葉を返されたリエラは言い返そうとするのではなく、アラッドが口にした言葉をじっくりと考え込み……悪くない、といった表情を浮かべた。
「なるほどね。それがあなたの本音を考えると、上手く褒め言葉を出そうとしないのは、逆に紳士的な対応なのかしら」
「いや、それは……まぁ、好きなように解釈してくれ」
どういった服を着ても、似合うことには似合う。
その言葉に嘘はないが、とりあえずまだ昼飯前だというのに疲れが押し寄せてきており、言葉を訂正する気力を完全に失っていた。
「それじゃあ、次の店に行きましょうか」
(……またあぁいった時間が続くのか)
何だかんだでガルーレたちが楽しんでいる為、ここでごちゃごちゃ言うのは良い空気に水を差す。
そう思い、不満を押し殺したアラッド。
しかし、次にリエラが案内した店は……意外にも、武器や防具、マジックアイテムが売っている店だった。
加えて……リエラは一般客が訪れることが出来ない、VIPエリアにアラッドたちを案内した。
「男性は女性の買い物に付き合えば、普段の五倍は疲れる。お兄様たちからそれぐらい教えてもらっているから、安心しなさい」
「良い兄さんだな。にしても…………ふふ、ワクワクする空間だ。なぁ、アッシュ」
「はい……とても、ワクワクします」
VIPエリアに置かれている商品は、全て特注のケースに入っている。
アラッドやアッシュだけではなく、スティームやガルーレたちにとっても、非常に心が躍る空間である。
(そういえば…………だ、駄目だ。こういうのは考えるだけであれだ)
ショーケースに入っている高価な商品。
その光景を前にして、アラッドは先日の……眼を奪われた刀、羅刹の一件を思い出し、直ぐに考えることを止めた。
フラグなんて、ただ不都合な出来事に理由を付けただけと思う者もいるだろう。
だが、当事者たちからすれば、本当にたまたま偶然であり……何故自分が思って、口にしてしまったタイミングで!!! と、誰に何にぶつければ良いのか解らない怒りがこみ上げてくる。
「ん? こいつは……」
と思っていると、一つのネックレスがアラッドの目に留まった。
「そちらはドラゴンハート、Aランクドラゴンの心臓が素材として使用されたマジックアイテムとなります」
「え、Aランクドラゴンの心臓が……なるほど、納得の存在感と言いますか」
従業員の説明を聞き、アラッドは何故か急に意識を吸い寄せられたことに納得。
(……マジックアイテムに、なってるんだよな???)
ドラゴンハートは既に素材と使用されており、目の前にあるのはネックレスのタイプのマジックアイテム。
ドラゴンハートがある訳ではないのに……アラッドはそのネックレスから、素材となったドラゴンの圧を感じ取った。
「あら、Aランクドラゴンの心臓が使われたマジックアイテムは珍しいですね」
「っ………………綺麗、ですね」
リエラとアッシュもまじまじと眺め始めた。
「………………」
「どうした、アッシュ。惚れたか?」
「惚れた、ですか…………この眼を奪われたような感覚を例えるなら、その言葉が相応しいでしょう」
兄の問いに対して、おそらくその通りだと認めた。
それを隣で聞いたリエラは……アホ過ぎるバカではないため、マジックアイテムに嫉妬することはなかった。
ただ……少しでも気を引けるよう、購入してプレゼントしようかと考えて値段が書かれている札を見て……思いっきり固まってしまった。
「ん? どうしたんだ、リエラ嬢。ちょっと面白い顔になってるぞ」
「い、いえ。その……や、やはりドラゴンハートを素材として使ってるだけあって、中々の金額だと思って」
「あぁ、そういう事か。まぁ、そうだな……大金を持ってる人でも、そう簡単に手を出せない金額だな」
ドラゴンハートが使用されたマジックアイテムのネックレスは、別の店でアラッドが購入した刀、羅刹と……壊してしまったショーケースの弁償代を入れても、全く足りない。
「ん~~~? なになに、アラッドそのネックレスを買うの? アラッドなら買えそうだけど、ちょっと高いんじゃない」
「「「っ!!!???」」」
高いが、買えない金額ではない……そんな言葉を耳にしたリエラ達三人は大なり小なり驚き、従業員は目をキラリと光らせた。
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