728 / 1,006
七百二十七話 男も女も関係無い
しおりを挟む
「だが、最後……あの岩男の斬撃に拳をかますのは、漢気があって良かったと思うぞ」
「っ……ふふ、そうですか」
「アラッド、解ってるとは思うけど、フローレンスさんは女性だよ」
「バカだな~、スティーム。漢気ってのに、性別は関係無いんだよ」
漢気に性別は関係無い。
そんな友人の言葉に……スティームは解る様な解らないような顔になる。
アッシュもいまいち解っておらず、三人の中ではガルーレだけがアラッドの言葉を理解しており、何度もうんうんと頷いていた。
「何はともあれ、良い試合だった」
「……あなたにそう言われるのは、騎士として……一人の戦いを生業とする者として、心の底から嬉しいと感じますね」
「…………アホか、大袈裟過ぎだ。そういうのは、陛下から言われたりした場合の話だろ」
フローレンスが心の底から嬉しいと思っていると、本心を顔に出していることで、アラッドは顔を背けながらそれは違うだろと否定した。
「そうですね。しかしそれはそれ、これはこれというものです。アラッド、あなたは自身が騎士の爵位を得ていることを忘れてしまっていませんか」
「……確かに忘れていたな。だが、それがどうした」
「同じ騎士として、上に居る者に褒められるのは、誰だって嬉しいものですよ」
フローレンスが序列、地位ではなく実力を指しているのは解る。
それは解るが、アラッドとしては色々と勘弁してほしいという思いが顔に表れていた。
「看板してくれ。お前がどう思うが、それはお前の自由だが、あまり大きな声で口に出すなよ」
「えぇ、解っていますよ」
古い友人、腐れ縁。
そんな雰囲気を醸し出す二人を見て……ソルとルーナは嫉妬の視線を向けることしか出来なかった。
(……やっぱり、割と合ってるのかな)
アッシュは基本的に恋愛云々に興味はない。
自分の恋愛にも、他人の恋愛にも興味がない。
唯一興味があるとすれば、一番身近な人物である双子のシルフィーぐらいなもの。
だが、自分が敬意を持つ兄、アラッドがいったい誰と結ばれるのか……それはそれで気になる恋愛だった。
パッと見ではアラッドが一方的に避けている、好いていないように見えるが、外から観ていると、決して悪い雰囲気とは思えない。
「三人とも、見事であった!!!!!!」
「「「「「「「っ!!??」」」」」」
いつの間にか特別観客席から移動していたアルバース国王。
直ぐにアラッドたちは膝を付こうとするが、直ぐに立ったままで構わないと制する。
「よいよい、今はただお前たちの活躍を祝いたいだけだ。三人とも……良く戦ってくれた」
アッシュが先程口にした通り、結果だけ見れば三戦三勝……完勝と言える結果である。
しかし、アッシュはリエラが騎士としてのプライドを捨て、負けを認めなければ破れた可能性は十分あり得る。
アラッドとフローレンスも……死の危機を感じた瞬間はあった。
内容を見れば、とても完勝とは言えず、それをアルバース国王も解っていたからこそ、心の底から三人を労いたかった。
「アラッド兄さんとフローレンスさんは圧倒に近かったですが、僕なんかは本当にギリギリでしたが」
「何を言うか、アッシュよ。お前はまだ十三だったか。対戦相手のリエラ・カルバトラは十八。通常、その差は才に溢れる者であっても容易に埋められるものではない。だが、お前はその差を粉砕した……思うところはあるだろう。しかし、紛れもない偉業を果たしたことに変わりはない」
「……有難きお言葉です」
国王という、国のトップからここまで褒められては、素直に受け入れるしかない。
それが解らない程、アッシュは一般常識が抜けてはいなかった。
(本当に、素晴らしき偉業を果たした…………この少年は、おそらくその価値を解っていないだろう。それはそれでアラッドの弟らしくはあるが)
アルバース国王が思う通り、アッシュは国王からの褒め言葉を受け入れるも、とりあえず高価なモンスターの素材を手に入れることが出来て嬉しい!! としか思っていなかった。
中等部の二年生が、他国の学生最強である高等部の三年生をタイマン勝負で倒した。
その価値を、衝撃を……正確に理解出来ていなかった。
仮にアッシュがアラッドの弟であり、フールの息子でなければ……各騎士団が、なんとしてでも自分の団に入団してもらおうと動く。
それほどの価値が……アッシュの才に、力にはある。
だが、よほどのバカでなければ、無理矢理動こうとすればAランクモンスターという怪物をほぼソロで倒したスーパーユーティリティーファイターのアラッドと、烈火の剣豪であるフールが本気で潰しに来ると解る。
「これより数時間後には祝勝会を開く。それまでゆっくり休んでいてくれ」
勝者たちにそう伝えると、アルバース国王は何処かに行ってしまった。
「休む、ねぇ……どうする、お前ら」
「アラッド兄さん、僕はもう少し王都のマジックアイテムが売っている店が見たいです」
「そうか。なら、少しだけ出掛けるか」
激闘を終えた後だというのに、怪物兄弟は驚くほど元気だった。
「っ……ふふ、そうですか」
「アラッド、解ってるとは思うけど、フローレンスさんは女性だよ」
「バカだな~、スティーム。漢気ってのに、性別は関係無いんだよ」
漢気に性別は関係無い。
そんな友人の言葉に……スティームは解る様な解らないような顔になる。
アッシュもいまいち解っておらず、三人の中ではガルーレだけがアラッドの言葉を理解しており、何度もうんうんと頷いていた。
「何はともあれ、良い試合だった」
「……あなたにそう言われるのは、騎士として……一人の戦いを生業とする者として、心の底から嬉しいと感じますね」
「…………アホか、大袈裟過ぎだ。そういうのは、陛下から言われたりした場合の話だろ」
フローレンスが心の底から嬉しいと思っていると、本心を顔に出していることで、アラッドは顔を背けながらそれは違うだろと否定した。
「そうですね。しかしそれはそれ、これはこれというものです。アラッド、あなたは自身が騎士の爵位を得ていることを忘れてしまっていませんか」
「……確かに忘れていたな。だが、それがどうした」
「同じ騎士として、上に居る者に褒められるのは、誰だって嬉しいものですよ」
フローレンスが序列、地位ではなく実力を指しているのは解る。
それは解るが、アラッドとしては色々と勘弁してほしいという思いが顔に表れていた。
「看板してくれ。お前がどう思うが、それはお前の自由だが、あまり大きな声で口に出すなよ」
「えぇ、解っていますよ」
古い友人、腐れ縁。
そんな雰囲気を醸し出す二人を見て……ソルとルーナは嫉妬の視線を向けることしか出来なかった。
(……やっぱり、割と合ってるのかな)
アッシュは基本的に恋愛云々に興味はない。
自分の恋愛にも、他人の恋愛にも興味がない。
唯一興味があるとすれば、一番身近な人物である双子のシルフィーぐらいなもの。
だが、自分が敬意を持つ兄、アラッドがいったい誰と結ばれるのか……それはそれで気になる恋愛だった。
パッと見ではアラッドが一方的に避けている、好いていないように見えるが、外から観ていると、決して悪い雰囲気とは思えない。
「三人とも、見事であった!!!!!!」
「「「「「「「っ!!??」」」」」」
いつの間にか特別観客席から移動していたアルバース国王。
直ぐにアラッドたちは膝を付こうとするが、直ぐに立ったままで構わないと制する。
「よいよい、今はただお前たちの活躍を祝いたいだけだ。三人とも……良く戦ってくれた」
アッシュが先程口にした通り、結果だけ見れば三戦三勝……完勝と言える結果である。
しかし、アッシュはリエラが騎士としてのプライドを捨て、負けを認めなければ破れた可能性は十分あり得る。
アラッドとフローレンスも……死の危機を感じた瞬間はあった。
内容を見れば、とても完勝とは言えず、それをアルバース国王も解っていたからこそ、心の底から三人を労いたかった。
「アラッド兄さんとフローレンスさんは圧倒に近かったですが、僕なんかは本当にギリギリでしたが」
「何を言うか、アッシュよ。お前はまだ十三だったか。対戦相手のリエラ・カルバトラは十八。通常、その差は才に溢れる者であっても容易に埋められるものではない。だが、お前はその差を粉砕した……思うところはあるだろう。しかし、紛れもない偉業を果たしたことに変わりはない」
「……有難きお言葉です」
国王という、国のトップからここまで褒められては、素直に受け入れるしかない。
それが解らない程、アッシュは一般常識が抜けてはいなかった。
(本当に、素晴らしき偉業を果たした…………この少年は、おそらくその価値を解っていないだろう。それはそれでアラッドの弟らしくはあるが)
アルバース国王が思う通り、アッシュは国王からの褒め言葉を受け入れるも、とりあえず高価なモンスターの素材を手に入れることが出来て嬉しい!! としか思っていなかった。
中等部の二年生が、他国の学生最強である高等部の三年生をタイマン勝負で倒した。
その価値を、衝撃を……正確に理解出来ていなかった。
仮にアッシュがアラッドの弟であり、フールの息子でなければ……各騎士団が、なんとしてでも自分の団に入団してもらおうと動く。
それほどの価値が……アッシュの才に、力にはある。
だが、よほどのバカでなければ、無理矢理動こうとすればAランクモンスターという怪物をほぼソロで倒したスーパーユーティリティーファイターのアラッドと、烈火の剣豪であるフールが本気で潰しに来ると解る。
「これより数時間後には祝勝会を開く。それまでゆっくり休んでいてくれ」
勝者たちにそう伝えると、アルバース国王は何処かに行ってしまった。
「休む、ねぇ……どうする、お前ら」
「アラッド兄さん、僕はもう少し王都のマジックアイテムが売っている店が見たいです」
「そうか。なら、少しだけ出掛けるか」
激闘を終えた後だというのに、怪物兄弟は驚くほど元気だった。
151
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる