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七百十六話 勝つ意味がある
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SIDE アラッド
(こいつが、精霊剣、か……話だけは、聞いたことが、あるが……なるほど、な。何かあると、思ってたが、思わず意識してしまう、訳だ)
心中、冷静なのは良い事だが、現実問題押され始めたアラッド。
「変わらず、余裕そうな顔、ね。でも、もう少しすれば、崩れるでしょう、ね」
「はっはっは。そいつは、どうだろう、な」
明らかにやせ我慢としか思えない言葉で口にするアラッド。
(ここまで身体能力が、上がるって事は、おそらく……渦雷より、ランクは上か?)
精霊剣とは、鍛冶師が造ろうと思って造れる武器ではなく、錬金術師が協力したとしても、特定の存在がいなければ造るのは不可能。
その特定の存在とは、名前から察せる通り、精霊である。
精霊を封じ込める……もしくは精霊が非常に好意的である場合、どういうの上で武器に憑いてもらうことで、ようやく造り上げることができる。
非常に造り上げることが困難な武器であるため、アラッドも実物を見るのは今回が初めて。
(まぁ、でも……駆ければ良いだけ、だ!!!)
ラディアとの試合が始まってから、アラッドはまだ渦雷が持つ能力を使用していなかった。
(っ!? スピードが、上がった?)
過ぎにアラッドの変化に気付くも、まだややラディアの方が有利な戦況だが……時間が経つにつれ、アラッドに向けて放つ攻撃が徐々に躱されていく。
動けば動き続けるほど加速する。
一歩間違えれば暴走列車になり、逆に良いカウンターを食らってしまいそうだが、アラッドはそんな失敗をしてしまうおっちょこちょいではない。
「随分と、面白い剣を使ってるのですね」
「っ……それはこっちのセリフ、ですよ」
戦況を盛り返せたと思った瞬間、ラディアが精霊剣に封印されている精霊の力を借りるだけではなく、開放して更に強化。
(この感じ、多分魔法使いとしても超強くなってるよな)
ラディアが扱う精霊剣の名はウィルビア。
水の精霊が封印されており、ラディアの得意な属性魔法も水であるため、クレスター家の家宝的な精霊剣を所有することを許された。
(つか、髪が若干逆立って……悟〇がスーパーサ〇ヤ人に変化したみたいな感じ、だな)
心の中であれこれ考えているアラッドだが、実際のところ……あまり余裕はなく、渦雷によって加速したアラッドのスピードに一気に追いつき、所々に切傷が増え始めた。
(っ……参加して、良かったな)
心の底からそう思い、笑みを零し………………狂化を発動した。
「ゥ゛ォォオオオアアアアアアア!!!!!!」
「っ、ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
ほんの一瞬、ほんの一瞬ではあるがアラッドが冷静な剣士の表情から闘志を全開にさせて斬り掛かる戦士へと変貌した様子に圧されたものの、そのまま気圧されることなく前に踏み込み、斬り結ぶ。
「うわああぁ……これ、絶対にお金払ってでも観たい戦いってやつだよね」
「そう、だね…………うん、本当にその通りだと思う」
「観戦費、金貨五枚とかにしても、観客は満足しそうですね」
一つの試合を観るのに金貨五枚を払うなど……基本的に正気の沙汰ではない。
懐に余裕がある冒険者や騎士、傭兵であっても金貨五枚を消費するなら、その金で美味い飯を食べるか娼館で嬢を抱く。
しかし……二人の試合は、アッシュの言う通り観戦費が金貨五枚であっても、観る価値があると多くの者が断言する。
「「………………」」
そんな中、スティームとフローレンスの二人は、途中から口を閉じ……ジッとアラッドとラディアの試合を……羨ましそうな目で見始めた。
(…………っ、羨ましいと、思ってしまう)
(こんな事を考えるのは、非常にナンセンスだと解っていますが……やはり、今アラッドと戦っている方の事が……羨ましく思ってしまいますね)
二人とも、過去にアラッドと本気で戦ったことがある。
そういった過去があるからこそ、もう一度アラッドと本気で戦っていたい、あんな戦いを自分もしたいという気持ちがある。
だからこそ、本日初めて出会って、自国の代表として戦っているラディアに嫉妬するのはおかしい。
それはスティームとフローレンスも解っている、解ってはいるが……胸の内であれこれ考え、時に叫ぶのは二人の自由である。
(っ、本当に、速い!!! しかも雰囲気は荒々しく、なってるのに、振り下ろされる、斬撃は……どれも、的確!!!!)
(見た目で測れないことなんて、解ってるのに……どっから、その力が出てるんだって、ツッコみたく、なるなッ!!!!!!)
二人とも本気モードに入ってから、攻撃魔法による攻撃を一切止め、再び剣戟だけの戦闘スタイルになる。
アラッドは、本来ロングソードだけではなく体技や糸といった別の武器、攻撃方法も戦いに組み込める変態なのだが……あえて、渦雷という相棒だけで戦い続ける。
(使え、そうでは、あるけど……間違い、ない。そこまで差がある、わけではないが、あの時のフローレンスより、上だな)
純粋な剣技の腕、身体能力。
あの頃のフローレンスはまだ精霊同化が未完成ということもあったが、アラッドが本気になったのは間違いなかった。
(だからこそ、クロなしで勝つ意味があるッ!!!!!!)
更に荒ぶるアラッドの姿は……まさに戦鬼。
そんな好敵手に昂りに、ラディアも引かれ……戦いは更に加速。
だが、勝負を終わらせる一振りが…………肉を斬り裂いた。
(こいつが、精霊剣、か……話だけは、聞いたことが、あるが……なるほど、な。何かあると、思ってたが、思わず意識してしまう、訳だ)
心中、冷静なのは良い事だが、現実問題押され始めたアラッド。
「変わらず、余裕そうな顔、ね。でも、もう少しすれば、崩れるでしょう、ね」
「はっはっは。そいつは、どうだろう、な」
明らかにやせ我慢としか思えない言葉で口にするアラッド。
(ここまで身体能力が、上がるって事は、おそらく……渦雷より、ランクは上か?)
精霊剣とは、鍛冶師が造ろうと思って造れる武器ではなく、錬金術師が協力したとしても、特定の存在がいなければ造るのは不可能。
その特定の存在とは、名前から察せる通り、精霊である。
精霊を封じ込める……もしくは精霊が非常に好意的である場合、どういうの上で武器に憑いてもらうことで、ようやく造り上げることができる。
非常に造り上げることが困難な武器であるため、アラッドも実物を見るのは今回が初めて。
(まぁ、でも……駆ければ良いだけ、だ!!!)
ラディアとの試合が始まってから、アラッドはまだ渦雷が持つ能力を使用していなかった。
(っ!? スピードが、上がった?)
過ぎにアラッドの変化に気付くも、まだややラディアの方が有利な戦況だが……時間が経つにつれ、アラッドに向けて放つ攻撃が徐々に躱されていく。
動けば動き続けるほど加速する。
一歩間違えれば暴走列車になり、逆に良いカウンターを食らってしまいそうだが、アラッドはそんな失敗をしてしまうおっちょこちょいではない。
「随分と、面白い剣を使ってるのですね」
「っ……それはこっちのセリフ、ですよ」
戦況を盛り返せたと思った瞬間、ラディアが精霊剣に封印されている精霊の力を借りるだけではなく、開放して更に強化。
(この感じ、多分魔法使いとしても超強くなってるよな)
ラディアが扱う精霊剣の名はウィルビア。
水の精霊が封印されており、ラディアの得意な属性魔法も水であるため、クレスター家の家宝的な精霊剣を所有することを許された。
(つか、髪が若干逆立って……悟〇がスーパーサ〇ヤ人に変化したみたいな感じ、だな)
心の中であれこれ考えているアラッドだが、実際のところ……あまり余裕はなく、渦雷によって加速したアラッドのスピードに一気に追いつき、所々に切傷が増え始めた。
(っ……参加して、良かったな)
心の底からそう思い、笑みを零し………………狂化を発動した。
「ゥ゛ォォオオオアアアアアアア!!!!!!」
「っ、ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
ほんの一瞬、ほんの一瞬ではあるがアラッドが冷静な剣士の表情から闘志を全開にさせて斬り掛かる戦士へと変貌した様子に圧されたものの、そのまま気圧されることなく前に踏み込み、斬り結ぶ。
「うわああぁ……これ、絶対にお金払ってでも観たい戦いってやつだよね」
「そう、だね…………うん、本当にその通りだと思う」
「観戦費、金貨五枚とかにしても、観客は満足しそうですね」
一つの試合を観るのに金貨五枚を払うなど……基本的に正気の沙汰ではない。
懐に余裕がある冒険者や騎士、傭兵であっても金貨五枚を消費するなら、その金で美味い飯を食べるか娼館で嬢を抱く。
しかし……二人の試合は、アッシュの言う通り観戦費が金貨五枚であっても、観る価値があると多くの者が断言する。
「「………………」」
そんな中、スティームとフローレンスの二人は、途中から口を閉じ……ジッとアラッドとラディアの試合を……羨ましそうな目で見始めた。
(…………っ、羨ましいと、思ってしまう)
(こんな事を考えるのは、非常にナンセンスだと解っていますが……やはり、今アラッドと戦っている方の事が……羨ましく思ってしまいますね)
二人とも、過去にアラッドと本気で戦ったことがある。
そういった過去があるからこそ、もう一度アラッドと本気で戦っていたい、あんな戦いを自分もしたいという気持ちがある。
だからこそ、本日初めて出会って、自国の代表として戦っているラディアに嫉妬するのはおかしい。
それはスティームとフローレンスも解っている、解ってはいるが……胸の内であれこれ考え、時に叫ぶのは二人の自由である。
(っ、本当に、速い!!! しかも雰囲気は荒々しく、なってるのに、振り下ろされる、斬撃は……どれも、的確!!!!)
(見た目で測れないことなんて、解ってるのに……どっから、その力が出てるんだって、ツッコみたく、なるなッ!!!!!!)
二人とも本気モードに入ってから、攻撃魔法による攻撃を一切止め、再び剣戟だけの戦闘スタイルになる。
アラッドは、本来ロングソードだけではなく体技や糸といった別の武器、攻撃方法も戦いに組み込める変態なのだが……あえて、渦雷という相棒だけで戦い続ける。
(使え、そうでは、あるけど……間違い、ない。そこまで差がある、わけではないが、あの時のフローレンスより、上だな)
純粋な剣技の腕、身体能力。
あの頃のフローレンスはまだ精霊同化が未完成ということもあったが、アラッドが本気になったのは間違いなかった。
(だからこそ、クロなしで勝つ意味があるッ!!!!!!)
更に荒ぶるアラッドの姿は……まさに戦鬼。
そんな好敵手に昂りに、ラディアも引かれ……戦いは更に加速。
だが、勝負を終わらせる一振りが…………肉を斬り裂いた。
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