712 / 1,006
七百十一話 炎上するぞ
しおりを挟む
「そこまで!!! 勝者、アッシュ・パーシブルっ!!!!!!!!!!」
審判がアッシュの勝利宣言を行うと、直ぐにアラッドとアルバース国王が拍手を行い、他の観客たちもそれに続いて両者に拍手を行った。
「やったねアラッド!! 弟君の大勝利、圧勝だったね!!!」
「そうだな…………ぱっと見は、圧勝と言えはするか」
相手の攻撃を一度も食らうことはなく、自分はいくつもの斬撃を与えて肌を……肉を刻んできた。
そして最後は首を斬るのではなく、首筋に剣先を添えるという余裕までみせた。
(首を少しでも斬るのではなく、剣先を添えたのは確かにアッシュの余裕と言えるかもしれないが、もし……あのまま勝負を続けられたとしたら、危なかっただろうな)
アラッドは弟が本当は結構ギリギリだという事を見抜いていた。
アッシュの人間のリミッターを無理矢理外す荒業も、永続して使い続けることは出来ず、時間制限付き。
あれ以上戦闘時間が伸びていれば、結果は逆だったかもしれない……そんな可能性まで考えるも、それでもアラッドのアッシュに対する超高評価は変わらなかった。
「待ちなさい」
「? なんでしょうか」
呼び留められたアッシュは気だるげな顔をしながらも、振り返って立ち止まった。
「名前は……アッシュでしたね」
「はい、そうですが」
「あなた、今婚約者はいるの?」
「????? いえ、いませんが……何故???」
頭の上に大量の疑問符が浮かぶアッシュ。
「では、アッシュ。私と婚約しましょう!!!!!!」
「めんどくさそうなのでお断りさせていただきます。では」
「………………えっ」
予想外過ぎる返答に固まってしまうリエラ。
だが、それは観客席にいる両国王やアラッドたちも同じであり……ツッコミどころが多過ぎて、数秒間の間……完全に空気が凍り付いてしまった。
「……ぷっ、ふ……ふっふっふ。や、やっぱり……さすが、アッシュ、だな」
小さな笑い声を零したのは、兄であるアラッド。
それを皮切りに、笑い声だけではないが、会場にいるそれぞれ目の前で起きた光景に関して言葉を交わし合う。
「ま、待ちなさい!!!!!!!」
リエラは顔を真っ赤にしながらアッシュを追いかけようとするが、ナルターク王国側の騎士にがっしり両肩を掴まれ、無理矢理リングから降ろされ……反対方向へと消えていった。
「おつかれ、アッシュ」
「勝ったよ、アラッド兄さん」
「あぁ、ちゃんと観てたぞ。ナイスファイトだった…………ぷっ、でもお前……あれどうするんだよ」
リングへ向かう途中で、観客席に向かっていたアッシュに遭遇。
良い笑顔で短時間ではあったが、見応えのある試合だったと伝えるも、そのあ谷リエラから「私と婚約しましょう!!!!」と伝えられた光景を思い出し、思い出し笑いが零れる。
「私と婚約しませんかというやつですか? おそらく、試合でテンションが変な方向に振り切れてしまったのでしょう。落ち着けば、自分がどれだけ意味不明な発言をしたのか理解するかと」
「アッシュ、お前…………まぁ、それがお前らしいと言えばらしいんだが…………俺の予想では、多分激しい試合でテンションが昂ってしまったからという理由ではないと思うぞ」
「そうなのですか? しかし、僕にあの人が婚約を申し込む理由が特にないかと」
自分の事に関しては中々に無頓着であり、碌に考えようともしないアッシュ。
代わりに兄であるアラッドが、どれだけアッシュ自身に価値があるかを伝えた。
「よく考えてみろ。まず、第一にお前はあの令嬢を一人で倒した。騎士の道を目指し、代表戦に出たことを考えれば、将来の相手に強さを重視するのは当然だろ」
「ふむ……言われてみれば、それは確かに納得出来ますね」
「加えて、まだ身長はそこまでないが、まだまだこれから成長期ってことを考えれば、身長は伸びていく。そして面も良い」
「……そうなんですか?」
(………………前世だったら、絶対にネットで炎上した会話内容だろうな)
ダウナー気味ではあるが、アッシュの容姿は間違いなく美男子に分類される。
全くもって本人にその気がなくとも……モテない男子の前で面が良い、顔のレベルが高いという言葉に対して疑問を感じる言葉を口にすれば、完全に喧嘩を売っていると思われてしまう。
「アッシュ。お前の父さんと母さんの見た目はどうだ?」
「…………なるほど。アラッド兄さんが何を言いたいのか解りました。確かに、客観的に見ればそれなりの部類に当てはまるかもしれません。しかし、あちらの方も侯爵家か公爵家のご令嬢ですよね? でしたら、もっと良い方を選べると思うのですが」
「そこにさっき言った様に、強さが絡まってくるんだ。あのご令嬢がそこら辺の令息に負けると思うか?」
「あまり多くの方と模擬戦をしたことはありませんが、おそらく負けないかと」
「だろ。そういった理由も含めて、あのご令嬢はアッシュと婚約したいと思ったんだよ」
「……でも、僕断りましたよね?」
「ふっふっふ……それで諦めてくれると良いな」
アラッドの予想では、全く諦めるようには思えなかった。
審判がアッシュの勝利宣言を行うと、直ぐにアラッドとアルバース国王が拍手を行い、他の観客たちもそれに続いて両者に拍手を行った。
「やったねアラッド!! 弟君の大勝利、圧勝だったね!!!」
「そうだな…………ぱっと見は、圧勝と言えはするか」
相手の攻撃を一度も食らうことはなく、自分はいくつもの斬撃を与えて肌を……肉を刻んできた。
そして最後は首を斬るのではなく、首筋に剣先を添えるという余裕までみせた。
(首を少しでも斬るのではなく、剣先を添えたのは確かにアッシュの余裕と言えるかもしれないが、もし……あのまま勝負を続けられたとしたら、危なかっただろうな)
アラッドは弟が本当は結構ギリギリだという事を見抜いていた。
アッシュの人間のリミッターを無理矢理外す荒業も、永続して使い続けることは出来ず、時間制限付き。
あれ以上戦闘時間が伸びていれば、結果は逆だったかもしれない……そんな可能性まで考えるも、それでもアラッドのアッシュに対する超高評価は変わらなかった。
「待ちなさい」
「? なんでしょうか」
呼び留められたアッシュは気だるげな顔をしながらも、振り返って立ち止まった。
「名前は……アッシュでしたね」
「はい、そうですが」
「あなた、今婚約者はいるの?」
「????? いえ、いませんが……何故???」
頭の上に大量の疑問符が浮かぶアッシュ。
「では、アッシュ。私と婚約しましょう!!!!!!」
「めんどくさそうなのでお断りさせていただきます。では」
「………………えっ」
予想外過ぎる返答に固まってしまうリエラ。
だが、それは観客席にいる両国王やアラッドたちも同じであり……ツッコミどころが多過ぎて、数秒間の間……完全に空気が凍り付いてしまった。
「……ぷっ、ふ……ふっふっふ。や、やっぱり……さすが、アッシュ、だな」
小さな笑い声を零したのは、兄であるアラッド。
それを皮切りに、笑い声だけではないが、会場にいるそれぞれ目の前で起きた光景に関して言葉を交わし合う。
「ま、待ちなさい!!!!!!!」
リエラは顔を真っ赤にしながらアッシュを追いかけようとするが、ナルターク王国側の騎士にがっしり両肩を掴まれ、無理矢理リングから降ろされ……反対方向へと消えていった。
「おつかれ、アッシュ」
「勝ったよ、アラッド兄さん」
「あぁ、ちゃんと観てたぞ。ナイスファイトだった…………ぷっ、でもお前……あれどうするんだよ」
リングへ向かう途中で、観客席に向かっていたアッシュに遭遇。
良い笑顔で短時間ではあったが、見応えのある試合だったと伝えるも、そのあ谷リエラから「私と婚約しましょう!!!!」と伝えられた光景を思い出し、思い出し笑いが零れる。
「私と婚約しませんかというやつですか? おそらく、試合でテンションが変な方向に振り切れてしまったのでしょう。落ち着けば、自分がどれだけ意味不明な発言をしたのか理解するかと」
「アッシュ、お前…………まぁ、それがお前らしいと言えばらしいんだが…………俺の予想では、多分激しい試合でテンションが昂ってしまったからという理由ではないと思うぞ」
「そうなのですか? しかし、僕にあの人が婚約を申し込む理由が特にないかと」
自分の事に関しては中々に無頓着であり、碌に考えようともしないアッシュ。
代わりに兄であるアラッドが、どれだけアッシュ自身に価値があるかを伝えた。
「よく考えてみろ。まず、第一にお前はあの令嬢を一人で倒した。騎士の道を目指し、代表戦に出たことを考えれば、将来の相手に強さを重視するのは当然だろ」
「ふむ……言われてみれば、それは確かに納得出来ますね」
「加えて、まだ身長はそこまでないが、まだまだこれから成長期ってことを考えれば、身長は伸びていく。そして面も良い」
「……そうなんですか?」
(………………前世だったら、絶対にネットで炎上した会話内容だろうな)
ダウナー気味ではあるが、アッシュの容姿は間違いなく美男子に分類される。
全くもって本人にその気がなくとも……モテない男子の前で面が良い、顔のレベルが高いという言葉に対して疑問を感じる言葉を口にすれば、完全に喧嘩を売っていると思われてしまう。
「アッシュ。お前の父さんと母さんの見た目はどうだ?」
「…………なるほど。アラッド兄さんが何を言いたいのか解りました。確かに、客観的に見ればそれなりの部類に当てはまるかもしれません。しかし、あちらの方も侯爵家か公爵家のご令嬢ですよね? でしたら、もっと良い方を選べると思うのですが」
「そこにさっき言った様に、強さが絡まってくるんだ。あのご令嬢がそこら辺の令息に負けると思うか?」
「あまり多くの方と模擬戦をしたことはありませんが、おそらく負けないかと」
「だろ。そういった理由も含めて、あのご令嬢はアッシュと婚約したいと思ったんだよ」
「……でも、僕断りましたよね?」
「ふっふっふ……それで諦めてくれると良いな」
アラッドの予想では、全く諦めるようには思えなかった。
153
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる