696 / 1,019
六百九十五話 ちゃんと伝えている
しおりを挟む
(クソッ!!! この距離まで気付かなかったとは……夕食中とはいえ、不覚だ!!!)
アラッドだけではなく、クロも同じ気持ちであった。
誰かに言われたわけではない。
それでも……クロの中で、自分の第一の役割は接近者の発見だと思っていた。
(敵意や殺気は、ない? けど、この感じ…………間違いなく強い!!!!)
やはり野営は野営で面倒なことになったと思いつつ、冷静に接近者の出方を窺う。
現在、アラッドたちの役割は接近者を倒すことではなく、国王を第一に守ること。
接近者の殲滅は二の次。
「安心するんだ。争うつもりはない」
「ッ!? その、声は」
茂みの奥から現れた人物は妙齢のダンディな男。
中華風の服装を身に付けており、こう歳を取りたいと思う理想を体現していた。
「も、もしや…………木竜殿、でしょうか」
「うむ、その通りだ」
「「「「「「「「っ!!??」」」」」」」」」」
国王は当然知っており、現在護衛中の騎士や宮廷魔術師たちも話だけは聞いたことがある。
「この間ぶりだな、アラッド、クロ。そしてスティーム、ファルよ」
「お、お久しぶりです」
スティームも木竜の声には聞き覚えがあり、直ぐに万雷をしまった。
「国王陛下。こちらは以前、手紙でお伝えさせていただいた木竜殿です」
「サンディラの樹海を住処とし、一度消えたという……」
「怪しむのは当然であろう。であれば、元の姿に戻ってみようか?」
「いや、大丈夫だ。実際に出会ったアラッドとスティームが認めているのだ。必要以上に怪しむ必要はない」
国王が出来ではない断言したため、騎士たちも得物を一応下ろした。
「同席しても良いか?」
「っ、えっと…………も、勿論です」
この場で決定権があるのは自分ではない。
そう思って国王に視線を向けるが、帰って来た答えはアラッドが決めてくれというもの。
アラッドとしても来客を断れる存在ではないため、同席を許可した。
「それで、木竜殿は何故此処に?」
とりあえずそこを訊かなければ始まらないと思い、交流があるアラッドが訪ねた。
「参加させてらうとなれば、まずはアラッドの上司? とやらに当たる人物に礼を言っておかねばと思ってな。私なりに考えた結果、国王という結論に至った」
「…………っ、なるほど。そういう事でしたか」
この木竜の言葉だけでは、全員が何を言ってるのか理解出来ない。
しかし、ある程度事情を知っているスティームと国王だけは理解出来た。
「なるほど。そうであったか。しかし……話を聞いた限り、あなたは今でもサンディラの樹海を住処としていると聞いているが」
木竜があの一件に関して、直々に礼を言いに来た。
一国の王と言えど、相手はAランクの正真正銘、ドラゴン。
ほんの少し嬉しさがある……だが、明確な住処を持っているドラゴンが移動したとなれば、それだけで騒ぎが起きるというもの。
やはり王としては、まずそこが気になった。
「安心しろ。確か…………クランの名前は、緑焔だったか。そこのトップであるハリスという男に話は付けてきている」
見た目(人間態)通り、猪突猛進ではない。
自分が別空間に消えたことで、人間の世界に及ぼした影響は忘れておらず、出発前にどうやって騒がれず人間に少しの間移動すると伝えようか、しっかりと考えていた。
(良かった~~~~。勝手にここまで来てたら……いや、別に木竜殿は誰かの従魔ではない訳だから、誰かの許可なしにあそこから移動する必要はないんだけども、とりあえず本当に知恵というか人間界の常識があるドラゴンで助かる)
今回、木竜が自分たちに会いに来た一件、特に問題はない。
そう思ったアラッドだったが……一つ、頭の中に疑問が浮かんだ。
(……もし、陛下が相手国に行く予定がなく、王城から出る予定がなかった場合……どうやって会いに来るつもりだったんだ?)
もしかしたら、アラッドの気配を負って見つけ、アラッドを経由して国王に挨拶しようと考えていたのかもしれない。
そうであれば、特に問題はない。
ただ……人間界の常識を持っていれど、ドラゴンはドラゴン。
Aランクの超猛者であるため……面倒な部分は端折る可能性も否定出来ない。
(…………き、聞かないでおこう)
ここで素直に木竜が国王への接近方法を語れば、それはそれで問題になりそうだと予想したアラッドは、大人しく肉料理を摘まむ。
「ところでアラッド、スティーム。お前たちは何故、国王と共に行動してるのだ? 私の記憶が正しければ、お前たちは冒険者として行動していた筈だが」
国王に感謝の気持ちを伝え終えた後、木竜は直ぐに気になっていたことを尋ねた。
「え、えっとですね。実は……」
木竜が相手となれば、特に隠すこともない。
国王ともアイコンタクトで確認を行い、アラッドは何故国王や騎士、宮廷魔術師たちと共に行動しているかを伝えた。
「なるほど。そういう理由だったか…………」
理由を聞いて納得した木竜。
ただ、納得はしたものの、アラッド以外の代表戦に参加した者を見渡し……思わず口にしてしまった。
「その代表戦とやら、やる意味はあるのか?」
アラッドだけではなく、クロも同じ気持ちであった。
誰かに言われたわけではない。
それでも……クロの中で、自分の第一の役割は接近者の発見だと思っていた。
(敵意や殺気は、ない? けど、この感じ…………間違いなく強い!!!!)
やはり野営は野営で面倒なことになったと思いつつ、冷静に接近者の出方を窺う。
現在、アラッドたちの役割は接近者を倒すことではなく、国王を第一に守ること。
接近者の殲滅は二の次。
「安心するんだ。争うつもりはない」
「ッ!? その、声は」
茂みの奥から現れた人物は妙齢のダンディな男。
中華風の服装を身に付けており、こう歳を取りたいと思う理想を体現していた。
「も、もしや…………木竜殿、でしょうか」
「うむ、その通りだ」
「「「「「「「「っ!!??」」」」」」」」」」
国王は当然知っており、現在護衛中の騎士や宮廷魔術師たちも話だけは聞いたことがある。
「この間ぶりだな、アラッド、クロ。そしてスティーム、ファルよ」
「お、お久しぶりです」
スティームも木竜の声には聞き覚えがあり、直ぐに万雷をしまった。
「国王陛下。こちらは以前、手紙でお伝えさせていただいた木竜殿です」
「サンディラの樹海を住処とし、一度消えたという……」
「怪しむのは当然であろう。であれば、元の姿に戻ってみようか?」
「いや、大丈夫だ。実際に出会ったアラッドとスティームが認めているのだ。必要以上に怪しむ必要はない」
国王が出来ではない断言したため、騎士たちも得物を一応下ろした。
「同席しても良いか?」
「っ、えっと…………も、勿論です」
この場で決定権があるのは自分ではない。
そう思って国王に視線を向けるが、帰って来た答えはアラッドが決めてくれというもの。
アラッドとしても来客を断れる存在ではないため、同席を許可した。
「それで、木竜殿は何故此処に?」
とりあえずそこを訊かなければ始まらないと思い、交流があるアラッドが訪ねた。
「参加させてらうとなれば、まずはアラッドの上司? とやらに当たる人物に礼を言っておかねばと思ってな。私なりに考えた結果、国王という結論に至った」
「…………っ、なるほど。そういう事でしたか」
この木竜の言葉だけでは、全員が何を言ってるのか理解出来ない。
しかし、ある程度事情を知っているスティームと国王だけは理解出来た。
「なるほど。そうであったか。しかし……話を聞いた限り、あなたは今でもサンディラの樹海を住処としていると聞いているが」
木竜があの一件に関して、直々に礼を言いに来た。
一国の王と言えど、相手はAランクの正真正銘、ドラゴン。
ほんの少し嬉しさがある……だが、明確な住処を持っているドラゴンが移動したとなれば、それだけで騒ぎが起きるというもの。
やはり王としては、まずそこが気になった。
「安心しろ。確か…………クランの名前は、緑焔だったか。そこのトップであるハリスという男に話は付けてきている」
見た目(人間態)通り、猪突猛進ではない。
自分が別空間に消えたことで、人間の世界に及ぼした影響は忘れておらず、出発前にどうやって騒がれず人間に少しの間移動すると伝えようか、しっかりと考えていた。
(良かった~~~~。勝手にここまで来てたら……いや、別に木竜殿は誰かの従魔ではない訳だから、誰かの許可なしにあそこから移動する必要はないんだけども、とりあえず本当に知恵というか人間界の常識があるドラゴンで助かる)
今回、木竜が自分たちに会いに来た一件、特に問題はない。
そう思ったアラッドだったが……一つ、頭の中に疑問が浮かんだ。
(……もし、陛下が相手国に行く予定がなく、王城から出る予定がなかった場合……どうやって会いに来るつもりだったんだ?)
もしかしたら、アラッドの気配を負って見つけ、アラッドを経由して国王に挨拶しようと考えていたのかもしれない。
そうであれば、特に問題はない。
ただ……人間界の常識を持っていれど、ドラゴンはドラゴン。
Aランクの超猛者であるため……面倒な部分は端折る可能性も否定出来ない。
(…………き、聞かないでおこう)
ここで素直に木竜が国王への接近方法を語れば、それはそれで問題になりそうだと予想したアラッドは、大人しく肉料理を摘まむ。
「ところでアラッド、スティーム。お前たちは何故、国王と共に行動してるのだ? 私の記憶が正しければ、お前たちは冒険者として行動していた筈だが」
国王に感謝の気持ちを伝え終えた後、木竜は直ぐに気になっていたことを尋ねた。
「え、えっとですね。実は……」
木竜が相手となれば、特に隠すこともない。
国王ともアイコンタクトで確認を行い、アラッドは何故国王や騎士、宮廷魔術師たちと共に行動しているかを伝えた。
「なるほど。そういう理由だったか…………」
理由を聞いて納得した木竜。
ただ、納得はしたものの、アラッド以外の代表戦に参加した者を見渡し……思わず口にしてしまった。
「その代表戦とやら、やる意味はあるのか?」
134
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる