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六百五十話 マナー違反は駄目
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多くの冒険者たちが集まる鉱山の頂点。
その頂点に……一本の剣が突き刺さっていた。
「ね、ねぇアラッド……あれって、もしかして」
「ちょっと、待ってくれ」
バクバクと高鳴る心臓に対して「うるせぇ!!!」と思いながら、鑑定を発動。
「……間違いない。あれは、剛柔だ」
「「ッ!!!!」」
アラッドの言葉を聞き、スティームとガルーレの顔にはなんとも言えない嬉しさがこみ上げてきた。
「でも、なんでここに?」
「さぁ……なんでだろうな。それに関しては俺も解らない。ただ、半ダンジョン化した場所だから……と納得するしかないんじゃないか」
「あぁ~~~、なるほど。確かにそれもそうね」
深く、百パーセント納得出来た訳ではない。
ただ……半ダンジョン化した地帯というのは、その存在だけで摩訶不思議な現象として一応納得出来てしまう。
「…………ねぇ、アラッド」
「どうした、スティーム」
「思ったんだけどさ……あの剛柔って、僕達がソルヴァイパーとプロミネンスコブラ、ディーマンバを倒したからこの山頂? に生えてきたんじゃないかな」
「「……確かに」」
ハモったアラッドとガルーレ。
数時間前に起きた大きな揺れは、三人が白蛇、炎蛇、黒蛇を倒した直後に起きた。
まだ半ダンジョン化した地帯の仕組みは良く解ってないが、三人が自分たちのお陰で剛柔が現れたと考えるのは……ごく自然な流れだった。
にもかかわらず、三人はいつの間にかできていた列に並んでいた。
「まぁ、ここで変に前に出るのもな……俺たちがあの三体を倒したから、こうして剛柔が現れた……という証拠は何処にもない。もしかしたら、俺たちと同じ時間帯に他の場所で複数のBランクモンスターを倒したパーティーがいるかもしれない」
「それは、あれだね。一応否定は出来ないってやつだね」
「そうだろ。だから、こうして大人しく順番を待つのが一番ってわけだ……まっ、ちょっと気になることがあるけどな」
その気になることをアラッドは目の前に並んでいる同業者に尋ねた。
「すいません」
「ん、なんだ?」
「今あの剣を引き抜こうとしてる人たちは、それ以外の方法で抜こうとはしなかったんですか?」
「引き抜く以外の抜きかたって……んなもん、なくねぇか?」
「なるほど……そうですよね。ありがとうございます」
「お、おう」
いきなり青年と言える程度の年齢の冒険者に声を掛けられた男は、いったい青年が何を尋ねたかったのか解らなかった。
(つまり、剛柔の周りを切断して、とりあえず不格好な形ではあるが、持ち帰ろうとした人はいないって訳か)
伝説の剣が……かつて勇者と呼ばれた者が扱っていた剣が台座などに突き刺さっており……それを主人公が引き抜く。
そんなありがちなストーリーに対し、アラッドはもっと他にやり方はなかったのかとツッコミたい。
(とはいえ、あの剣が埋まっている周辺は……何か、違う気がするんだよな)
引き抜く以外にも、剛柔を手に入れる方法があるのでは?
アラッドがそう考えていると、何度チャレンジしても剛柔を引き抜けなかった冒険者は……頭から怒りの湯気を吹き出しながら、自身の得物である大斧を持ち出した。
「ふざ、けんな!!!!! ……っ!!!!!!??????」
男は……確かにアラッドと同じ考えに至った。
わざわざ馬鹿正直に引き抜こうとせずとも、突き刺さっている地面を切断してやろうと。
しかし、そんな男の思惑を見抜いていたのか……振りかざされた大夫は見事に弾かれた。
「か、かってぇ~~~~!!! な、なんだよこれ!!!!」
「おらッ!!! 終わったんならとっとと退きやがれ!!!」
ただ引き抜こうとするだけではなく、ご法度……マナー違反では? と思える行動を取った男に対して、後ろに立っていた男は早く退くように急かす。
「ちっ!!! んだよあれ。ぜってぇに抜けねぇだろ」
真面目に引き抜く以外の方法も突発的に試したが、それも失敗に終わった男は唾を吐き飛ばしながら、この場に居る全員が感じていたことを口にし……やっぱりそうなのか、という空気が冒険者たちの間に流れる。
(やっぱり周りを切断してとりあえず持ち帰って、という方法は駄目だったか。そうなると、やっぱり無理矢理引き抜くしかない、か…………全ての強化系スキルを、狂化まで使用して魔力も全開で纏って……引き抜く俺を、更にクロの前足で挟んで引っ張ってもらえば……やれるか?)
ちょっと面白い構図ではあるが、今のアラッドが考えられる最大限の方法であった。
三人の中で一番腕力があるのがアラッドということもあり、抜ける可能性があれば……それはアラッドしかいない。
それはスティームだけではなく、ガルーレも同じ事を考えていた。
「……な、なんかあれだね。本当に抜けるか、凄い心配になってきた」
苦労に苦労を重ねて……という訳ではないが、剛柔を手に入れる為に三十日ほど時間を費やした。
長いか短いかで言えば、三人よりも長い間探し続けている冒険者もおり、なんならエスペラーサ家が何年、何十年といった単位で探し続けている為……まだまだ短いと言われるかもしれない。
「まっ、抜けなかったらそれはそれで仕方ないね~~」
元々は今は亡きエスペラーサ家の英雄、エルス・エスペラーサが使用していた名剣。
エスペラーサ家の血を継ぐ者にしか抜けないという可能性もある。
決してマジなバカではないガルーレはその可能性が頭に浮かんでいた為、そこまでガッカリ感は漂っていなかった。
その頂点に……一本の剣が突き刺さっていた。
「ね、ねぇアラッド……あれって、もしかして」
「ちょっと、待ってくれ」
バクバクと高鳴る心臓に対して「うるせぇ!!!」と思いながら、鑑定を発動。
「……間違いない。あれは、剛柔だ」
「「ッ!!!!」」
アラッドの言葉を聞き、スティームとガルーレの顔にはなんとも言えない嬉しさがこみ上げてきた。
「でも、なんでここに?」
「さぁ……なんでだろうな。それに関しては俺も解らない。ただ、半ダンジョン化した場所だから……と納得するしかないんじゃないか」
「あぁ~~~、なるほど。確かにそれもそうね」
深く、百パーセント納得出来た訳ではない。
ただ……半ダンジョン化した地帯というのは、その存在だけで摩訶不思議な現象として一応納得出来てしまう。
「…………ねぇ、アラッド」
「どうした、スティーム」
「思ったんだけどさ……あの剛柔って、僕達がソルヴァイパーとプロミネンスコブラ、ディーマンバを倒したからこの山頂? に生えてきたんじゃないかな」
「「……確かに」」
ハモったアラッドとガルーレ。
数時間前に起きた大きな揺れは、三人が白蛇、炎蛇、黒蛇を倒した直後に起きた。
まだ半ダンジョン化した地帯の仕組みは良く解ってないが、三人が自分たちのお陰で剛柔が現れたと考えるのは……ごく自然な流れだった。
にもかかわらず、三人はいつの間にかできていた列に並んでいた。
「まぁ、ここで変に前に出るのもな……俺たちがあの三体を倒したから、こうして剛柔が現れた……という証拠は何処にもない。もしかしたら、俺たちと同じ時間帯に他の場所で複数のBランクモンスターを倒したパーティーがいるかもしれない」
「それは、あれだね。一応否定は出来ないってやつだね」
「そうだろ。だから、こうして大人しく順番を待つのが一番ってわけだ……まっ、ちょっと気になることがあるけどな」
その気になることをアラッドは目の前に並んでいる同業者に尋ねた。
「すいません」
「ん、なんだ?」
「今あの剣を引き抜こうとしてる人たちは、それ以外の方法で抜こうとはしなかったんですか?」
「引き抜く以外の抜きかたって……んなもん、なくねぇか?」
「なるほど……そうですよね。ありがとうございます」
「お、おう」
いきなり青年と言える程度の年齢の冒険者に声を掛けられた男は、いったい青年が何を尋ねたかったのか解らなかった。
(つまり、剛柔の周りを切断して、とりあえず不格好な形ではあるが、持ち帰ろうとした人はいないって訳か)
伝説の剣が……かつて勇者と呼ばれた者が扱っていた剣が台座などに突き刺さっており……それを主人公が引き抜く。
そんなありがちなストーリーに対し、アラッドはもっと他にやり方はなかったのかとツッコミたい。
(とはいえ、あの剣が埋まっている周辺は……何か、違う気がするんだよな)
引き抜く以外にも、剛柔を手に入れる方法があるのでは?
アラッドがそう考えていると、何度チャレンジしても剛柔を引き抜けなかった冒険者は……頭から怒りの湯気を吹き出しながら、自身の得物である大斧を持ち出した。
「ふざ、けんな!!!!! ……っ!!!!!!??????」
男は……確かにアラッドと同じ考えに至った。
わざわざ馬鹿正直に引き抜こうとせずとも、突き刺さっている地面を切断してやろうと。
しかし、そんな男の思惑を見抜いていたのか……振りかざされた大夫は見事に弾かれた。
「か、かってぇ~~~~!!! な、なんだよこれ!!!!」
「おらッ!!! 終わったんならとっとと退きやがれ!!!」
ただ引き抜こうとするだけではなく、ご法度……マナー違反では? と思える行動を取った男に対して、後ろに立っていた男は早く退くように急かす。
「ちっ!!! んだよあれ。ぜってぇに抜けねぇだろ」
真面目に引き抜く以外の方法も突発的に試したが、それも失敗に終わった男は唾を吐き飛ばしながら、この場に居る全員が感じていたことを口にし……やっぱりそうなのか、という空気が冒険者たちの間に流れる。
(やっぱり周りを切断してとりあえず持ち帰って、という方法は駄目だったか。そうなると、やっぱり無理矢理引き抜くしかない、か…………全ての強化系スキルを、狂化まで使用して魔力も全開で纏って……引き抜く俺を、更にクロの前足で挟んで引っ張ってもらえば……やれるか?)
ちょっと面白い構図ではあるが、今のアラッドが考えられる最大限の方法であった。
三人の中で一番腕力があるのがアラッドということもあり、抜ける可能性があれば……それはアラッドしかいない。
それはスティームだけではなく、ガルーレも同じ事を考えていた。
「……な、なんかあれだね。本当に抜けるか、凄い心配になってきた」
苦労に苦労を重ねて……という訳ではないが、剛柔を手に入れる為に三十日ほど時間を費やした。
長いか短いかで言えば、三人よりも長い間探し続けている冒険者もおり、なんならエスペラーサ家が何年、何十年といった単位で探し続けている為……まだまだ短いと言われるかもしれない。
「まっ、抜けなかったらそれはそれで仕方ないね~~」
元々は今は亡きエスペラーサ家の英雄、エルス・エスペラーサが使用していた名剣。
エスペラーサ家の血を継ぐ者にしか抜けないという可能性もある。
決してマジなバカではないガルーレはその可能性が頭に浮かんでいた為、そこまでガッカリ感は漂っていなかった。
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