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五百九十三話 無駄に出来ない
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「……なぁ、スティーム。こいつは……俺たちだけで、戦らせてくれないか」
つい、言葉が零れた。
どうしようもない戦闘欲を抑えられず、元々分けて戦おうと伝えていた筈なのに……我儘な本音が零れてしまった。
「…………ふぅ~~~、仕方ないね。普通の火竜なら譲れないところだったけど、Aランクが相手だと、ね……でも、次は僕たちが戦えそうな相手を優先的に探すからね」
「あぁ、勿論だ」
スティームとて、恐怖心はありながらも、目の前のドラゴンと戦いたいという思いはある。
アラッドと同じく戦闘欲はあるのだが、成体の雷獣戦がリプレイされるイメージしか浮かばない。
アラッド、クロとファルが最前線で戦い、要所要所で……もしくは最後の一撃を決める。
それだけしか仕事が……出来る事がない。
それが解かっていながら、まさしく怪物同士の戦いに割って入りたい……それはそれで、邪魔になる我儘だと、理解していた。
「ま、待ってくれ!!!」
「……悪いが、待たない。俺は、あんた達水蓮と揉めたくない、実家と悪縁を持たれたくないから、そこら辺の事情を無視して挑まなかった」
正確に……正確に言えば、アラッドたちが先に二体の火竜に挑んではいけないという、絶対に破れない縛りなどはなかった。
それでもアラッドは、迷惑を掛けてしまう我儘を優先はしなかった。
「何があってこうなったのかは知らない。ただ……ここからは俺の時間だ。巻き込まれて死にたくなかったら、下がっててくれ」
追い付いた水蓮のメンバーたちは、持ってきていたポーションなどを使い尽くし、傷は癒えていた。
だが、傷は癒えても体力、気力までは回復しきっていない。
下手に介入しようとすれば、命の保証はなかった。
「すまない、待たせてしまった」
「…………」
「見たところ、その佇まい程の余裕はないだろう」
「…………」
Aランクに進化したこともあって、知能もレベルアップした轟炎竜は目の前の人間の言葉が、おおよそ解っていた。
「安心してほしい。くだらない真似をするつもりはない。ただ、全力をぶつけ合おう」
「…………ゴォォォォォオオオオァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」
轟炎竜を喜びの咆哮を上げた。
敵は一人だけではなく、後方の巨狼も含まれている。
Aランクという、正真正銘……怪物と呼ばれる者たちの領域に達したからこそ、より深く解る。
人間一人が相手でもリスクはある。
そこに巨狼が加われば、間違いなく自分は死ぬ。
上がった知能と本能、両方が訴えかけたが……竜のプライドが、野性がそれを振り払った。
(っ!!!!! 燃え滾らせて、くれるじゃないか!!!!!)
轟炎竜が放った方向には……純粋な竜としてのプライドに加えてアラッドとクロに対する敬意が含まれていた。
アラッドが口にした通り、今まで一緒に暴れ回ってきた同族を食らい、上の次元に登ることが出来た。
そのお陰で傷は癒えた……しかし、水蓮のメンバーと同じく、体力と気力までは回復していなかった。
「ッシャァァァアアアアアアアアッ!!!!!」
「グルルゥアアアアアッ!!!!!」
先程宣言した通り、アラッドはくだらない真似をするつもりは一切ない。
開始直後から強化系スキルと狂化を同時に使用。
クロも同じく自身を強化し、闇の魔力を全身に纏った。
アラッドは渦雷を抜剣し、文字通り最初からクライマックス状態で挑む。
「ギィイイイアアアアアッ!!!!!」
開幕から数秒後に放たれたブレスは火竜の時と比べ、格段に熱さが増しており、範囲も広い。
「ファル!!!!」
ファルは主人の言葉に乗せられた意図を正確に読み取り、全力で翼を扇いだ。
アリファが熱を食らえることを考えれば、そこまで全て対応しなくても良いのだが、スティームも彼女たちが万全ではないことは把握していた。
(これで、まだ多分本気じゃない……Aランクに成り立てとはいえ、まさに災害だ)
悔しさがこみ上げてくる。
今の自分の実力では……本当の意味で戦いに加わることは出来ない。
それが解かっているからこそ、自身の我儘を押し通さなかった……もっと言えば、我儘を押し通す力がなかった。
仕方ない。
そんな言葉で納得出来ないが、納得しなければならない。
だからこそ、スティームは目の前で繰り広げられる攻防……特に轟炎竜の動きに注視し続けた。
今の攻撃、自分ならどう捌くか。
あの攻撃をどう避け、どういったカウンターを叩き込むか。
今の自分では対処しきれない攻撃だと判断すれば、どう成長すれば対処出来るかを考える。
目の前の光景から得られる情報を全て無駄にしたくない。
その姿勢は……紛れもなく、成長という名の壁を上っているのだと……後ろの者たちに解らせた。
解らせたが、彼らが全員その姿勢を理解出来たか否かは別だった。
努力出来るのも才能。
中々に意見が別れる内容である。
確かに人には才能という成長するのに大きな要素である。
だが、成長という現象に欠かせない行動に、努力という要素もある。
互いに意味が違う言葉である。
そんな努力という目に見えるものは……目に見えない才能という要素の一部なのか?
冒険者の様に、上に登るには何かしらの努力は欠かせない職業に就いている彼ら。
努力と才能は別物だと割り切り、ここまで登ってきたが……目の前で行われている激闘は、そんな彼らに努力出来るのも……才の一つなのではないかと思わせるほど、常識から外れたものだった。
つい、言葉が零れた。
どうしようもない戦闘欲を抑えられず、元々分けて戦おうと伝えていた筈なのに……我儘な本音が零れてしまった。
「…………ふぅ~~~、仕方ないね。普通の火竜なら譲れないところだったけど、Aランクが相手だと、ね……でも、次は僕たちが戦えそうな相手を優先的に探すからね」
「あぁ、勿論だ」
スティームとて、恐怖心はありながらも、目の前のドラゴンと戦いたいという思いはある。
アラッドと同じく戦闘欲はあるのだが、成体の雷獣戦がリプレイされるイメージしか浮かばない。
アラッド、クロとファルが最前線で戦い、要所要所で……もしくは最後の一撃を決める。
それだけしか仕事が……出来る事がない。
それが解かっていながら、まさしく怪物同士の戦いに割って入りたい……それはそれで、邪魔になる我儘だと、理解していた。
「ま、待ってくれ!!!」
「……悪いが、待たない。俺は、あんた達水蓮と揉めたくない、実家と悪縁を持たれたくないから、そこら辺の事情を無視して挑まなかった」
正確に……正確に言えば、アラッドたちが先に二体の火竜に挑んではいけないという、絶対に破れない縛りなどはなかった。
それでもアラッドは、迷惑を掛けてしまう我儘を優先はしなかった。
「何があってこうなったのかは知らない。ただ……ここからは俺の時間だ。巻き込まれて死にたくなかったら、下がっててくれ」
追い付いた水蓮のメンバーたちは、持ってきていたポーションなどを使い尽くし、傷は癒えていた。
だが、傷は癒えても体力、気力までは回復しきっていない。
下手に介入しようとすれば、命の保証はなかった。
「すまない、待たせてしまった」
「…………」
「見たところ、その佇まい程の余裕はないだろう」
「…………」
Aランクに進化したこともあって、知能もレベルアップした轟炎竜は目の前の人間の言葉が、おおよそ解っていた。
「安心してほしい。くだらない真似をするつもりはない。ただ、全力をぶつけ合おう」
「…………ゴォォォォォオオオオァアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!」
轟炎竜を喜びの咆哮を上げた。
敵は一人だけではなく、後方の巨狼も含まれている。
Aランクという、正真正銘……怪物と呼ばれる者たちの領域に達したからこそ、より深く解る。
人間一人が相手でもリスクはある。
そこに巨狼が加われば、間違いなく自分は死ぬ。
上がった知能と本能、両方が訴えかけたが……竜のプライドが、野性がそれを振り払った。
(っ!!!!! 燃え滾らせて、くれるじゃないか!!!!!)
轟炎竜が放った方向には……純粋な竜としてのプライドに加えてアラッドとクロに対する敬意が含まれていた。
アラッドが口にした通り、今まで一緒に暴れ回ってきた同族を食らい、上の次元に登ることが出来た。
そのお陰で傷は癒えた……しかし、水蓮のメンバーと同じく、体力と気力までは回復していなかった。
「ッシャァァァアアアアアアアアッ!!!!!」
「グルルゥアアアアアッ!!!!!」
先程宣言した通り、アラッドはくだらない真似をするつもりは一切ない。
開始直後から強化系スキルと狂化を同時に使用。
クロも同じく自身を強化し、闇の魔力を全身に纏った。
アラッドは渦雷を抜剣し、文字通り最初からクライマックス状態で挑む。
「ギィイイイアアアアアッ!!!!!」
開幕から数秒後に放たれたブレスは火竜の時と比べ、格段に熱さが増しており、範囲も広い。
「ファル!!!!」
ファルは主人の言葉に乗せられた意図を正確に読み取り、全力で翼を扇いだ。
アリファが熱を食らえることを考えれば、そこまで全て対応しなくても良いのだが、スティームも彼女たちが万全ではないことは把握していた。
(これで、まだ多分本気じゃない……Aランクに成り立てとはいえ、まさに災害だ)
悔しさがこみ上げてくる。
今の自分の実力では……本当の意味で戦いに加わることは出来ない。
それが解かっているからこそ、自身の我儘を押し通さなかった……もっと言えば、我儘を押し通す力がなかった。
仕方ない。
そんな言葉で納得出来ないが、納得しなければならない。
だからこそ、スティームは目の前で繰り広げられる攻防……特に轟炎竜の動きに注視し続けた。
今の攻撃、自分ならどう捌くか。
あの攻撃をどう避け、どういったカウンターを叩き込むか。
今の自分では対処しきれない攻撃だと判断すれば、どう成長すれば対処出来るかを考える。
目の前の光景から得られる情報を全て無駄にしたくない。
その姿勢は……紛れもなく、成長という名の壁を上っているのだと……後ろの者たちに解らせた。
解らせたが、彼らが全員その姿勢を理解出来たか否かは別だった。
努力出来るのも才能。
中々に意見が別れる内容である。
確かに人には才能という成長するのに大きな要素である。
だが、成長という現象に欠かせない行動に、努力という要素もある。
互いに意味が違う言葉である。
そんな努力という目に見えるものは……目に見えない才能という要素の一部なのか?
冒険者の様に、上に登るには何かしらの努力は欠かせない職業に就いている彼ら。
努力と才能は別物だと割り切り、ここまで登ってきたが……目の前で行われている激闘は、そんな彼らに努力出来るのも……才の一つなのではないかと思わせるほど、常識から外れたものだった。
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