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五百七十六話 ホッと一安心?
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「な、なんだか凄いことになったね」
ハリスたちとの会話を終えた後、宿の部屋で木竜とのあれこれについて、軽くパーティーメンバーであるスティームにも伝えた。
「冒険者の中でAランクモンスターを従魔にした人はいるにはいるらしいけど、一時的にとはいえ二体も従魔にする人は……アラッドが初めてになるんじゃないかな」
「マジか…………ダメだ、直ぐ思考がネガティブになる。光栄なことだと思わないとな」
一時的にとはいえ、Aランクの木竜を従魔にするというのは、確かに光栄で誇れることではある。
なんなら……昔はアラッドに、今はパーシブル侯爵家に世話になっているオーアルドラゴンが……悪ノリしてくる可能性もある。
そうなれば、同時に三体のAランクモンスターを従魔として従えることになり……これに関しては、本当に歴史上初の偉業となりうる。
「でも、ゴリディア帝国との一件でも大事なのに、木竜がアラッドの下に付くってなれば、これまた一大事になっちゃうね」
「国内に限っての話だが…………何人かの貴族は、面倒な考えを膨らませるだろうな」
起こった出来事に対してどう評価するのか、第三者の自由ではある。
それが荒唐無稽な話であっても……確かに、考えを膨らませるのは個人の自由。
「多分、これっきりの話ではあると思うけど、その何人かは木竜がアラッドの味方になった。侯爵家の戦力になったって考えるよね」
「寧ろそう考えるのが妥当だろうな。俺が同じ立場なら声には出さないけど、そう考えてしまう」
木竜もアラッドも、従魔と主といった関係になるのはその時限りだと決めている。
だが……そもそも相手に対して好意、もしくは敬意を持っていなければAランクのドラゴンが一時的にとはいえ、人間の下に付くわけがない。
「まぁ、それでも面と向かって喧嘩は売らない……よね?」
「さぁ~~~、どうだろうな。そこら辺に関してはあんまり詳しくないからな」
本当にそういった貴族間での攻防戦は詳しくない。
(とはいえ……三つか四つ、五つぐらいの家が手を組めば……解らなくなりそうだな)
トップを公爵家が務めた場合……解らなくなる可能性が、ゼロとは言えない。
(まぁ、父さんは味方も多いだろうから、俺がそこまで心配する必要はないか)
本当に……本当にその通りであり、アラッドが思ってるよりもパーシブル侯爵家の地盤は固い。
ちょっとやそっとの襲撃で崩れることは無く……加えてこの時アラッドは忘れていたが、国王陛下はアラッドから特製のキャバリオンを売ってもらった恩を忘れていない。
アラッドとしてはただの商売ではあるが……本気の特製キャバリオンをアラッドから造ってもらった人物の中で二人目。
国王陛下はそれを恩と捉えていた。
「どうする。これからまた新しい目的地を探す?」
「…………すまん。今はちょっと探す気にならないな」
そもそも上から返答がくるまでジバルからは動けない。
「それなら、今度はサンディラの樹海を純粋に楽しんでみる?」
「あぁ~~~~……そう、だな。うん、それが良さそうだな」
冒険者にとってサンディラの樹海は面白い……興味が尽きない場所ではあることを思い出し、今回の一件で病まずに済んだ。
SIDE 国王陛下
「…………私の代になって、くるか」
執務室で仕事を行っていた国王の元に、複数の書類が届いた。
書類の内容は、サンディラの樹海に生息していた木竜が消失した件について、ゴリディア帝国の者が関わっていたというもの。
「下手なことは言えませんが、これは明らかに嫌がらせの範囲を大きく超えています」
「覚悟しなければならない、ということだな」
同じく書類仕事を行っていた宰相の言葉を聞き、国王は再度自身の元に届けられた報告書を睨みつける。
(……そちらがそのつもりなら、こちらとて容赦は出来ん)
今回の一件……結果として人や街に被害が及ぶことはなかった。
だが、仮に木竜が逆鱗状態になり、暴れ回れば……ジバルが崩壊していた可能性は十分にあり得る。
ジバルの無事を知った国王はホッと一安心したが、そのあり得た可能性に関して忘れることは無い。
「むっ……はっはっは!!!!!!」
「どうしたのですか?」
「ほれ、見ろ」
「…………彼は、常に厄介事の中心にいるのでしょうか?」
「どうやら、元々気にはなっていたからこそジバルに向かっていたようだ」
報告書には、急に現れた木竜を抑えるのに一役買った人物として、アラッドと最近共に行動をしているスティームの名が記載されていた。
(ふっふっふ。本当に面白い子だ……待てよ。今回の功績を考慮して爵位を与えるのはありか?)
第三王女の娘がアラッドと親交があり、娘が気になっている人物ということもあって……国王は密かにどうくっ付けるかを考えていた。
しかし、そんな未来の妄想が膨らむよりも先に……思わず紅茶を吹き出してしまうような内容がもう一枚の報告書類に記されていた。
「ゴホっ、ゴホっ、ゴホっ……な、なんだと!!!???」
「どうされました、か…………なっ!!!???」
その内容に、国王だけではなく宰相までもが表情を崩した。
ハリスたちとの会話を終えた後、宿の部屋で木竜とのあれこれについて、軽くパーティーメンバーであるスティームにも伝えた。
「冒険者の中でAランクモンスターを従魔にした人はいるにはいるらしいけど、一時的にとはいえ二体も従魔にする人は……アラッドが初めてになるんじゃないかな」
「マジか…………ダメだ、直ぐ思考がネガティブになる。光栄なことだと思わないとな」
一時的にとはいえ、Aランクの木竜を従魔にするというのは、確かに光栄で誇れることではある。
なんなら……昔はアラッドに、今はパーシブル侯爵家に世話になっているオーアルドラゴンが……悪ノリしてくる可能性もある。
そうなれば、同時に三体のAランクモンスターを従魔として従えることになり……これに関しては、本当に歴史上初の偉業となりうる。
「でも、ゴリディア帝国との一件でも大事なのに、木竜がアラッドの下に付くってなれば、これまた一大事になっちゃうね」
「国内に限っての話だが…………何人かの貴族は、面倒な考えを膨らませるだろうな」
起こった出来事に対してどう評価するのか、第三者の自由ではある。
それが荒唐無稽な話であっても……確かに、考えを膨らませるのは個人の自由。
「多分、これっきりの話ではあると思うけど、その何人かは木竜がアラッドの味方になった。侯爵家の戦力になったって考えるよね」
「寧ろそう考えるのが妥当だろうな。俺が同じ立場なら声には出さないけど、そう考えてしまう」
木竜もアラッドも、従魔と主といった関係になるのはその時限りだと決めている。
だが……そもそも相手に対して好意、もしくは敬意を持っていなければAランクのドラゴンが一時的にとはいえ、人間の下に付くわけがない。
「まぁ、それでも面と向かって喧嘩は売らない……よね?」
「さぁ~~~、どうだろうな。そこら辺に関してはあんまり詳しくないからな」
本当にそういった貴族間での攻防戦は詳しくない。
(とはいえ……三つか四つ、五つぐらいの家が手を組めば……解らなくなりそうだな)
トップを公爵家が務めた場合……解らなくなる可能性が、ゼロとは言えない。
(まぁ、父さんは味方も多いだろうから、俺がそこまで心配する必要はないか)
本当に……本当にその通りであり、アラッドが思ってるよりもパーシブル侯爵家の地盤は固い。
ちょっとやそっとの襲撃で崩れることは無く……加えてこの時アラッドは忘れていたが、国王陛下はアラッドから特製のキャバリオンを売ってもらった恩を忘れていない。
アラッドとしてはただの商売ではあるが……本気の特製キャバリオンをアラッドから造ってもらった人物の中で二人目。
国王陛下はそれを恩と捉えていた。
「どうする。これからまた新しい目的地を探す?」
「…………すまん。今はちょっと探す気にならないな」
そもそも上から返答がくるまでジバルからは動けない。
「それなら、今度はサンディラの樹海を純粋に楽しんでみる?」
「あぁ~~~~……そう、だな。うん、それが良さそうだな」
冒険者にとってサンディラの樹海は面白い……興味が尽きない場所ではあることを思い出し、今回の一件で病まずに済んだ。
SIDE 国王陛下
「…………私の代になって、くるか」
執務室で仕事を行っていた国王の元に、複数の書類が届いた。
書類の内容は、サンディラの樹海に生息していた木竜が消失した件について、ゴリディア帝国の者が関わっていたというもの。
「下手なことは言えませんが、これは明らかに嫌がらせの範囲を大きく超えています」
「覚悟しなければならない、ということだな」
同じく書類仕事を行っていた宰相の言葉を聞き、国王は再度自身の元に届けられた報告書を睨みつける。
(……そちらがそのつもりなら、こちらとて容赦は出来ん)
今回の一件……結果として人や街に被害が及ぶことはなかった。
だが、仮に木竜が逆鱗状態になり、暴れ回れば……ジバルが崩壊していた可能性は十分にあり得る。
ジバルの無事を知った国王はホッと一安心したが、そのあり得た可能性に関して忘れることは無い。
「むっ……はっはっは!!!!!!」
「どうしたのですか?」
「ほれ、見ろ」
「…………彼は、常に厄介事の中心にいるのでしょうか?」
「どうやら、元々気にはなっていたからこそジバルに向かっていたようだ」
報告書には、急に現れた木竜を抑えるのに一役買った人物として、アラッドと最近共に行動をしているスティームの名が記載されていた。
(ふっふっふ。本当に面白い子だ……待てよ。今回の功績を考慮して爵位を与えるのはありか?)
第三王女の娘がアラッドと親交があり、娘が気になっている人物ということもあって……国王は密かにどうくっ付けるかを考えていた。
しかし、そんな未来の妄想が膨らむよりも先に……思わず紅茶を吹き出してしまうような内容がもう一枚の報告書類に記されていた。
「ゴホっ、ゴホっ、ゴホっ……な、なんだと!!!???」
「どうされました、か…………なっ!!!???」
その内容に、国王だけではなく宰相までもが表情を崩した。
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