549 / 1,006
五百四十八話 無敵感
しおりを挟む
(こりゃあ……しっかり、狂化には狂化で返さないとな!!!!!!!!)
過剰攻撃になるかもしれないと容易に想像がつくも……アラッドは強化を発動し、迅罰を構える。
「一切惜しむことなく、お前の全て振り絞れ!!! 絞り尽くせッ!!!!!!」
「ダマレェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」
まだ冷静さが残っていれば、折角偶然が重なって手に入れたスキルは既に敵も会得しており、練度で敵わないと解ったかもしれない。
だが……流れで初めて狂化を使用することになった頭領にそんな冷静さがある訳がなく、アラッドの言葉など知ったことではないが……文字通り己の全てを賭して最後の一撃を放った。
そしてアラッドはその一撃を避けることはなく、全力で迅罰を振るった。
結果…………頭領の大斧は刃の部分が大きく凹み、頭領自身は後方の壁に叩きつけられ、その衝撃でアジトが揺れた。
「ガ、ふっ……なん、なんだよ……てめぇ、らは」
覚えたての狂化だったこと、肉体の損傷があまりに激しかったことなどが重なり、発動から一分も立たずに狂化状態が解けた。
「……あんた、同じことをあんた達に襲われた商人、冒険者たちも考えたと思わないか? なんで俺たちを狙うんだって。なんで、お前らみたいな存在が居るんだってな」
「へ、っ……俺ら、みたいな、連中は……殺されて、当然、ってか」
「あんたにどんな過去があったかなんて知らないが、一方的に大量殺人を行ったんだ……逆に殺されない理由がると思うか?」
答えを聞かず、剣先で喉を貫いた。
(ったく、あれだけ相棒を殺されたことで怒れるなら、もう少しまともな生き方を出来たと思うんだけどな…………まっ、過ぎた事をこれ以上悩むのは止めよう)
そういえば、と思ったタイミングでホワイトタイガーの生首がとんできた。
(……普通に考えて、ホラー的な流れなんだろうけど、慣れって怖いな)
顔を上に向けると、そこには良い笑顔をしたスティームがいた。
「いやぁ~~~~~、本当に強かったよ。流石Bランクモンスターって感じだったね!!!」
「そうか……とりあえず解体は後にして、回収出来る物を回収してしまおう」
スティームは今回の戦闘で……見事赤雷を使わず、強敵を相手に勝利を収めた。
とはいえ、圧勝ではなく辛勝。
体には幾つもの裂傷が刻まれていた。
「スティーム、お前は休んでろ」
「いやいや、そういう訳にはいかないよ。まだ残党が残ってるしね!」
「良いから休んでろって。お前……今、凄いハイな状態だろ」
「ハイな状態って言うと、凄い興奮してる状態?」
「そうそう、そんな感じ。とにかく一仕事終えたんだ、今は休んでろ」
説明をめんどくさがりながらも、アラッドはとにかく休めと伝えた。
本人としては確かに体は傷だらけ。
しかし、スタミナに関してはまだまだ暴れ回れるほど有り余っている……と、錯覚した状態。
まだ数分は本当にトップギアの状態を維持出来ても、どこかのタイミングでプツンと切れてしまう。
魔力はまだ残っているため、スティームが特別強い盗賊以外に負けるとは思わないが、その一瞬の隙が命取りになる可能性は十分にある。
「それに、残党に関してはクロとファルがなんとかするだろ」
「そういえば、全員向こう側に逃げて行ったってことは……ちゃんと逃げ道を用意してたってことだよね」
「だな。元からもう一本の出入り道があったのか、それともテイムした従魔に掘らせたのか……まっ、どっちでも良い話か」
やる事を全て終わらせた後、二人はアジトから少し離れた場所でホワイトタイガーとマウンテングリズリーの解体を開始。
ちなみに、逃げた残党はクロとファルが一人残らず仕留めた。
「……マウンテングリズリーの肉、美味しそうだね」
「Bランクだかな。多分美味いだろう……街に戻ったら、宿の料理人にこいつを使った料理を作ってもらうか」
解体終了後は寄り道することなく帰還。
「終わらせてきました」
「は、はい……えっと」
二人は先程担当してもらった受付嬢に盗賊団討伐成功を報告。
(やっぱり、俺たちが厄介な盗賊団を一つ倒したって事実が信じられないんだろうな)
それはそうだろうと思い、アラッドはどう証明すれば良いか尋ねた。
「この場に頭領の生首でも出せば良いですか?」
「そ、それは止めてください!」
「ははは、冗談ですよ」
この場に出す、と言うのはジョークであり、生首はその盗賊団のトップを討伐したという確かな証明となる。
「それじゃ、これでどうですか」
「ッ、こちらは……マウンテングリズリーの魔石ですね。ですが、こちらは……ほ、ホワイトタイガーっ!!??」
ギルドは頭領が好んで使うモンスターとして、マウンテングリズリーがいるのは把握していた。
しかし、ホワイトタイガーという二体目のBランクモンスターをテイムしている事までは把握できていなかった。
とはいえ、ホワイトタイガーに関してはここ最近頭領がマウンテングリズリーと共に戦い、従えたニューフェイスだったこともあり、それも仕方がなかった。
過剰攻撃になるかもしれないと容易に想像がつくも……アラッドは強化を発動し、迅罰を構える。
「一切惜しむことなく、お前の全て振り絞れ!!! 絞り尽くせッ!!!!!!」
「ダマレェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」
まだ冷静さが残っていれば、折角偶然が重なって手に入れたスキルは既に敵も会得しており、練度で敵わないと解ったかもしれない。
だが……流れで初めて狂化を使用することになった頭領にそんな冷静さがある訳がなく、アラッドの言葉など知ったことではないが……文字通り己の全てを賭して最後の一撃を放った。
そしてアラッドはその一撃を避けることはなく、全力で迅罰を振るった。
結果…………頭領の大斧は刃の部分が大きく凹み、頭領自身は後方の壁に叩きつけられ、その衝撃でアジトが揺れた。
「ガ、ふっ……なん、なんだよ……てめぇ、らは」
覚えたての狂化だったこと、肉体の損傷があまりに激しかったことなどが重なり、発動から一分も立たずに狂化状態が解けた。
「……あんた、同じことをあんた達に襲われた商人、冒険者たちも考えたと思わないか? なんで俺たちを狙うんだって。なんで、お前らみたいな存在が居るんだってな」
「へ、っ……俺ら、みたいな、連中は……殺されて、当然、ってか」
「あんたにどんな過去があったかなんて知らないが、一方的に大量殺人を行ったんだ……逆に殺されない理由がると思うか?」
答えを聞かず、剣先で喉を貫いた。
(ったく、あれだけ相棒を殺されたことで怒れるなら、もう少しまともな生き方を出来たと思うんだけどな…………まっ、過ぎた事をこれ以上悩むのは止めよう)
そういえば、と思ったタイミングでホワイトタイガーの生首がとんできた。
(……普通に考えて、ホラー的な流れなんだろうけど、慣れって怖いな)
顔を上に向けると、そこには良い笑顔をしたスティームがいた。
「いやぁ~~~~~、本当に強かったよ。流石Bランクモンスターって感じだったね!!!」
「そうか……とりあえず解体は後にして、回収出来る物を回収してしまおう」
スティームは今回の戦闘で……見事赤雷を使わず、強敵を相手に勝利を収めた。
とはいえ、圧勝ではなく辛勝。
体には幾つもの裂傷が刻まれていた。
「スティーム、お前は休んでろ」
「いやいや、そういう訳にはいかないよ。まだ残党が残ってるしね!」
「良いから休んでろって。お前……今、凄いハイな状態だろ」
「ハイな状態って言うと、凄い興奮してる状態?」
「そうそう、そんな感じ。とにかく一仕事終えたんだ、今は休んでろ」
説明をめんどくさがりながらも、アラッドはとにかく休めと伝えた。
本人としては確かに体は傷だらけ。
しかし、スタミナに関してはまだまだ暴れ回れるほど有り余っている……と、錯覚した状態。
まだ数分は本当にトップギアの状態を維持出来ても、どこかのタイミングでプツンと切れてしまう。
魔力はまだ残っているため、スティームが特別強い盗賊以外に負けるとは思わないが、その一瞬の隙が命取りになる可能性は十分にある。
「それに、残党に関してはクロとファルがなんとかするだろ」
「そういえば、全員向こう側に逃げて行ったってことは……ちゃんと逃げ道を用意してたってことだよね」
「だな。元からもう一本の出入り道があったのか、それともテイムした従魔に掘らせたのか……まっ、どっちでも良い話か」
やる事を全て終わらせた後、二人はアジトから少し離れた場所でホワイトタイガーとマウンテングリズリーの解体を開始。
ちなみに、逃げた残党はクロとファルが一人残らず仕留めた。
「……マウンテングリズリーの肉、美味しそうだね」
「Bランクだかな。多分美味いだろう……街に戻ったら、宿の料理人にこいつを使った料理を作ってもらうか」
解体終了後は寄り道することなく帰還。
「終わらせてきました」
「は、はい……えっと」
二人は先程担当してもらった受付嬢に盗賊団討伐成功を報告。
(やっぱり、俺たちが厄介な盗賊団を一つ倒したって事実が信じられないんだろうな)
それはそうだろうと思い、アラッドはどう証明すれば良いか尋ねた。
「この場に頭領の生首でも出せば良いですか?」
「そ、それは止めてください!」
「ははは、冗談ですよ」
この場に出す、と言うのはジョークであり、生首はその盗賊団のトップを討伐したという確かな証明となる。
「それじゃ、これでどうですか」
「ッ、こちらは……マウンテングリズリーの魔石ですね。ですが、こちらは……ほ、ホワイトタイガーっ!!??」
ギルドは頭領が好んで使うモンスターとして、マウンテングリズリーがいるのは把握していた。
しかし、ホワイトタイガーという二体目のBランクモンスターをテイムしている事までは把握できていなかった。
とはいえ、ホワイトタイガーに関してはここ最近頭領がマウンテングリズリーと共に戦い、従えたニューフェイスだったこともあり、それも仕方がなかった。
166
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる