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五百四十二話 今だけは許してくれ
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「……解ってはいたが、相手にならないな」
「そ、そうだね」
現在、二人は自分たちが討伐したモンスターの死体を解体していた。
二人が街を出てから討伐したモンスターの強さは、決して雑魚とは言い難い。
しかし……元々二人が強いということに加えて、新たに手に入れた武器の性能があまりにも高かった。
「しょうがねぇ……鉱山の方に行くか」
「良いのかい? ガルシアさんたちには伝えてないんだろ」
「もうガキじゃねぇんだ。一日や二日帰ってこないぐらいで…………いや、しょうがない。遅くても明日には帰ろう」
自身を慕ってくれている者たちは、やや心配性である。
それに気付かない程アラッドは鈍感ではない。
嬉しく思う分、今回みたいな場合は……ちょっと面倒と思ってしまうが、その思いを口に出すことはない。
「でも、あれだね。リンさんが造ってくれた武器を十分に試す相手ってなると、レベル三十後半から四十代のCランクモンスターや、Bランクモンスターじゃないと多分無理だよな」
「残念ながら、そういうことになるな」
決して狩場としては悪くない場所を歩く二人だが、同行しているファルやクロとしてもあまり適した獲物はいない。
その結果、二人は従魔に乗って鉱山へと向かった。
「あれ、アラッドとスティームじゃねぇか。鉱山での依頼でも受けたのか?」
鉱山の入り口付近で三十代のベテラン冒険者が二人に声を掛ける。
彼は仲間と採掘依頼を受けており、彼も含めて複数人のメンバーが頑丈なツルハシを背負っていた。
「いや、今日はプライベートです。うちの鍛冶師が最高の武器を造ってくれたんで、そいつの試運転に来たんです」
「はっはっは!! 武器の試運転で鉱山まで来るか。本当にぶっ飛んでるな。んじゃ、気を付けてな」
「うっす」
何名かの冒険者はその光景に首を傾げるが、二人は軽装のまま鉱山の中へと入った。
「おっ、らッ!!!!」
「ッ!!??」
「ははっ!!! こいつは、本当に、すげぇなッ!!!!」
鉱山に入って早々、Cランクのモンスター、アイアンゴーレムに遭遇。
発見するなりアラッドは一人で駆け出し、迅罰を振るう。
アイアンゴーレムを相手にするには、サイズ的に物足りなさがあるものの……迅罰が触れた部分は大きく凹み、三分も立たずにアイアンゴーレムの体はボコボコ状態になり、最後は魔石を斬り取られた。
「あれだけアイアンゴーレムをぶっ叩いて、全く凹んでない……使われてる素材を考えれば当然かもしれないが、やっぱり凄いな」
最後の斬撃以外は、殆ど技術を使っていない。
腕力だけの攻撃であったにもかかわらず、迅罰は鋼鉄の体に一切負けることはなかった。
「は、ははは!! まるで、綿を斬ってるみたいだよ!!!」
スティームが相対するモンスターは先程アラッドが戦っていたアイアンゴーレムと同じく、Cランクのモンスター……ロックゴーレム。
周囲が鉱山という環境もあり、四肢を斬り落としたとしても油断は出来ない。
ただ、今のスティームの心は……完全に慢心状態だった。
つい数時間前、万雷という最高の相棒に頼るだけの戦い方をしてはならない……そう胸に誓ったばかりだが、今だけはその誓いを破るのを許してほしい……自分のプライドに頼み込んだ。
(うんうん、そういう顔になってしまうよな。解かる……解かるぞ、スティーム)
友の顔を見て、先程まで戦っていた自分も、あのような顔になっていたのだろうと、素直に認める。
普段のスティームであっても、ソロでロックゴーレムを一体倒すことは難しくない。
それこそ、ファルの力を借りずとも討伐が可能。
ただ、使う得物が刃物ということもあり、闇雲に武器を振るうことなど絶対に出来ない。
しかし、今はどうだ?
向かってくる攻撃にただ反応するだけで良い。
斬ろうとすれば、抵抗感を一切感じることなく切断できる。
スティームが快感を感じ続けて数分、ようやくアラッドと同じく魔石を斬り取り、戦闘を終えた。
「お疲れさん。どうだった、新しい双剣の感触は」
「……控えめに言って最高過ぎるね」
「はっはっは!!! それ、帰ってからちゃんとリンに伝えてやれよ」
「勿論伝えるさ。ただ、これだけ強いと……うん、ある意味危機感を感じる」
「言いたい事は解る。俺も同じ気持ちだ」
胸に誓った内容を忘れてはいない。
忘れてはいないが……使い続ければ、いずれ本当に忘れそうなほど……万雷の恐ろしい程に優れた斬れ味を有していた。
「俺も体術や糸ばかりを使ってるとな……まっ、そこも含めてリンに報告だな。というか、多分あいつはこうなることも予想してたはずだ」
その後も出会ったモンスターを片っ端から叩き、斬り続け……結局二人が屋敷に戻ったのは夕食の時間が過ぎてからだった。
「はっはっは! そう言ってもらえると光栄っす。安心してください、ちゃんと普段使える得物も用意してるんで」
夕食を食べる前に鍛冶場へ案内され、二人の前に一本のロングソードと双剣が置かれた。
「どうぞ」
「ありがとな、リン。ちゃんと金は払うよ」
「いえいえ、そんな貰えないっすよ」
「そう言うなって……それじゃ、今日倒してきたモンスターの素材を全部渡す。それならどうだ?」
「う~~~ん…………分かったっす」
常識的に考えて、そちらの方が合計金額的には上なのだが、二人の価値観的に問題無い取引であった。
「そ、そうだね」
現在、二人は自分たちが討伐したモンスターの死体を解体していた。
二人が街を出てから討伐したモンスターの強さは、決して雑魚とは言い難い。
しかし……元々二人が強いということに加えて、新たに手に入れた武器の性能があまりにも高かった。
「しょうがねぇ……鉱山の方に行くか」
「良いのかい? ガルシアさんたちには伝えてないんだろ」
「もうガキじゃねぇんだ。一日や二日帰ってこないぐらいで…………いや、しょうがない。遅くても明日には帰ろう」
自身を慕ってくれている者たちは、やや心配性である。
それに気付かない程アラッドは鈍感ではない。
嬉しく思う分、今回みたいな場合は……ちょっと面倒と思ってしまうが、その思いを口に出すことはない。
「でも、あれだね。リンさんが造ってくれた武器を十分に試す相手ってなると、レベル三十後半から四十代のCランクモンスターや、Bランクモンスターじゃないと多分無理だよな」
「残念ながら、そういうことになるな」
決して狩場としては悪くない場所を歩く二人だが、同行しているファルやクロとしてもあまり適した獲物はいない。
その結果、二人は従魔に乗って鉱山へと向かった。
「あれ、アラッドとスティームじゃねぇか。鉱山での依頼でも受けたのか?」
鉱山の入り口付近で三十代のベテラン冒険者が二人に声を掛ける。
彼は仲間と採掘依頼を受けており、彼も含めて複数人のメンバーが頑丈なツルハシを背負っていた。
「いや、今日はプライベートです。うちの鍛冶師が最高の武器を造ってくれたんで、そいつの試運転に来たんです」
「はっはっは!! 武器の試運転で鉱山まで来るか。本当にぶっ飛んでるな。んじゃ、気を付けてな」
「うっす」
何名かの冒険者はその光景に首を傾げるが、二人は軽装のまま鉱山の中へと入った。
「おっ、らッ!!!!」
「ッ!!??」
「ははっ!!! こいつは、本当に、すげぇなッ!!!!」
鉱山に入って早々、Cランクのモンスター、アイアンゴーレムに遭遇。
発見するなりアラッドは一人で駆け出し、迅罰を振るう。
アイアンゴーレムを相手にするには、サイズ的に物足りなさがあるものの……迅罰が触れた部分は大きく凹み、三分も立たずにアイアンゴーレムの体はボコボコ状態になり、最後は魔石を斬り取られた。
「あれだけアイアンゴーレムをぶっ叩いて、全く凹んでない……使われてる素材を考えれば当然かもしれないが、やっぱり凄いな」
最後の斬撃以外は、殆ど技術を使っていない。
腕力だけの攻撃であったにもかかわらず、迅罰は鋼鉄の体に一切負けることはなかった。
「は、ははは!! まるで、綿を斬ってるみたいだよ!!!」
スティームが相対するモンスターは先程アラッドが戦っていたアイアンゴーレムと同じく、Cランクのモンスター……ロックゴーレム。
周囲が鉱山という環境もあり、四肢を斬り落としたとしても油断は出来ない。
ただ、今のスティームの心は……完全に慢心状態だった。
つい数時間前、万雷という最高の相棒に頼るだけの戦い方をしてはならない……そう胸に誓ったばかりだが、今だけはその誓いを破るのを許してほしい……自分のプライドに頼み込んだ。
(うんうん、そういう顔になってしまうよな。解かる……解かるぞ、スティーム)
友の顔を見て、先程まで戦っていた自分も、あのような顔になっていたのだろうと、素直に認める。
普段のスティームであっても、ソロでロックゴーレムを一体倒すことは難しくない。
それこそ、ファルの力を借りずとも討伐が可能。
ただ、使う得物が刃物ということもあり、闇雲に武器を振るうことなど絶対に出来ない。
しかし、今はどうだ?
向かってくる攻撃にただ反応するだけで良い。
斬ろうとすれば、抵抗感を一切感じることなく切断できる。
スティームが快感を感じ続けて数分、ようやくアラッドと同じく魔石を斬り取り、戦闘を終えた。
「お疲れさん。どうだった、新しい双剣の感触は」
「……控えめに言って最高過ぎるね」
「はっはっは!!! それ、帰ってからちゃんとリンに伝えてやれよ」
「勿論伝えるさ。ただ、これだけ強いと……うん、ある意味危機感を感じる」
「言いたい事は解る。俺も同じ気持ちだ」
胸に誓った内容を忘れてはいない。
忘れてはいないが……使い続ければ、いずれ本当に忘れそうなほど……万雷の恐ろしい程に優れた斬れ味を有していた。
「俺も体術や糸ばかりを使ってるとな……まっ、そこも含めてリンに報告だな。というか、多分あいつはこうなることも予想してたはずだ」
その後も出会ったモンスターを片っ端から叩き、斬り続け……結局二人が屋敷に戻ったのは夕食の時間が過ぎてからだった。
「はっはっは! そう言ってもらえると光栄っす。安心してください、ちゃんと普段使える得物も用意してるんで」
夕食を食べる前に鍛冶場へ案内され、二人の前に一本のロングソードと双剣が置かれた。
「どうぞ」
「ありがとな、リン。ちゃんと金は払うよ」
「いえいえ、そんな貰えないっすよ」
「そう言うなって……それじゃ、今日倒してきたモンスターの素材を全部渡す。それならどうだ?」
「う~~~ん…………分かったっす」
常識的に考えて、そちらの方が合計金額的には上なのだが、二人の価値観的に問題無い取引であった。
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