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五百四十話 お披露目

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主にベテラン冒険者たちと呑んで呑んで呑みまくってから約十日後……リンに頼んでいた物が出来上がった。

「おはようございます、アラッド様」

「……おぅ、おはよう」

「先日の夜、アラッド様がお眠りになった後に、リンがご注文の武器を造り上げたらしいです」

「ッ!!!???」

あまり朝には強くないアラッドだが、エリナからの報告で一気に覚醒。

「それは本当か!!」

「えぇ、本当でございます。チラッと見せてもらいましたが、それはもう……惚れ惚れする出来上がりでした」

エリナが素直に、直球に褒めたとなれば期待も膨れ上がるというもの。
しかし……まずは朝食を食べなければならない。
スティームと合流し、朝から割とガッツリとした朝食をべろりと平らげる。

そして、ダッシュで鍛冶場に向かったのだが……まだ制作者であるリンがいなかった。

「あの、アラッド様。リンはおそらく昼手前までは寝ているかと」

「あぁ~~~…………完全に忘れていた」

アラッドと同じく、リンはあまり朝に強くない。
加えて、渾身の一作が出来上がった時は疲労度が違い、同じ時間に寝ても睡眠時間が目に見えて増える。

「すまん、スティーム。変にワクワクさせてしまった」

「いや、大丈夫だよ。新しい武器が出来上がったって知れただけでも本当に嬉しいから」

アラッドの実家でお世話になっている間、何度もリンが造り上げた武器を見てきた。
そこまで交流はないものの、既にその腕が信用に値するレベルなのは理解していたため、特に心配はしていない。

「それじゃ、リンさんが起きてくるまで模擬戦でもして待ってようか」

「はは、悪いな」

数時間後、起きて朝食も食べて眼が覚めている筈なのだが……まだまだ眠そうな顔のまま鍛冶場に到着した工房の主。

「お待たせしたっす~~~」

「全然待ってないぞ。もうちょい寝ときたかったか?」

「いや、大丈夫っす。あんまり寝過ぎると体痛くなるんで」

「はっはっは!! それは解る」

基本的に毎日動いて動いて動いての日々を送っていたアラッドだが、偶に昼過ぎまでダラダラとベッドで転がり続けたい日がある。

転がってる際は超幸せ気分なのだが、これ以上は寝る気になれないと思ったタイミングで体を起こすと……いつの間にか得体の知れないダメージが入っている。

「んじゃ、今取り出すっすね」

リンの魔力にしか反応しない特別なマジックアイテムの箱の封が開き、中から二つの木箱が取り出された。

「それじゃ、まずはスティーム様の双剣から」

蓋が開けられると……二振りの剣の刃は鋭さと荒々しさを感じさせ、一目で斬れるというイメージをスティームたちに与えた。
加えて柄の部分には雷獣の毛が使用されており、全体的に強さを象徴する見た目となっていた。

柄などの装飾部分などに関しては、実際にスティームが赤雷を使って戦う場面を見て、着想を得た。

「その……凄く子供っぽい感想なのは解ってますけど……カッコイイですね」

「スティーム様が本気で戦う様をイメージして造ったっす」

「そ、そうなんですね」

そう言われては照れるしかない。

「この子の名は万雷です」

「万雷……ッ」

改めて力を込めて握ると、内に宿る雷獣の強さを感じ取る。

「意図した訳じゃないんですけど、こいつは遠距離攻撃もそこそこ得意っす」

「そうなんですか?」

「論より証拠ってやつで説明した方が良いっすよね。それでは、ちょっと外に出ましょう」

外に出たリンは何もない場所に土魔法を使用し、岩の塊を生み出した。

「あの岩を狙って、雷を落すイメージで万雷を振ってくださいっす」

「わ、分かりました」

リンに言われた通りに右手に持つ万雷を振り下ろした結果……岩の真上から雷が落ち、完全に砕け散った。

「おぉ~~~~~!!!! こいつは中々の威力だな」

お世辞ではなく、心の底から驚き、万雷の力に感心。
アラッドは無意識に拍手を送り、直ぐにそれは周り人伝播した。

万雷を振るったスティーム、万雷を造ったリンの二人はともに照れた。

そして万雷は他にも使用者の雷の魔力コントロール技術を飛躍的に向上させる。
後は単純ではあるものの、使用者の脚力が大幅に強化される。

「……なぁ、リン。もしかしてだけど、そいつを全力で振るえば大量の雷を落すことが出来るのか?」

「鋭いですね、アラッド様。勿論出来ます。それこそ……万雷の如き轟雷を降り注がせることが」

「は、ははは……なるほどな。確かに中々遠距離攻撃が得意な牙だ」

「…………リンさん。因みに、それを赤雷で行った場合、どうなりますか」

やはり訊いておきたい攻撃内容。

リンが説明してくれた攻撃範囲を考えれば、よっぽど大量の敵がまばらに動いていない限り、文字通り一網打尽に出来る遠距離攻撃。
そこに赤雷が加わればいったいどうなるか……関係のないアラッドやエリナたちまでその光景を想像し、思わず震えた。

「……………………」

「あ、あの?」

「魔力が満タン、もしくはほぼ満タンな状態で、一回だけっすね」

じっくりとスティームが体内に有する魔力量を計り、規定回数を伝えた。

「多分……多分ですけど、それ以下の魔力量で行うと、あっという間に気絶するか、負荷か反動? で体のいたるところから血が噴き出るかと」

「ッ!!!??? わ、分かりました。肝に銘じておきます」

「お願いするっす」

スティームはスティームで嫌な光景を想像してしまい、悪い意味で体が震えた。
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