537 / 1,019
五百三十六話 そう呼びたくなる
しおりを挟む
「「「「「「「「「はぁ、はぁ、はぁ……」」」」」」」」」
「まっ、こんなところか。それなりに楽しかったぞ」
自分たちの猛攻に対し、それなりに楽しかったという言葉だけで済ませた。
その事実に悔しさを覚える者が殆ど。
「後な……俺だったから良かったけど、あんまり貴族出身の冒険者にちょっかいをかけるのは止めとけよ。いや、お前らが今よりももっと強くなって立場が上がれば話は別かもしれないが、プライドが高い連中は本当にプライドが高いんだ。最悪、殺されるぞ」
何人かのルーキーは背筋が震えた。
目の前の人物は自分たちを殺すつもりなど一切ない。
それは解るが、貴族出身であるアラッドの口から「下手すれば殺されてもおかしくないぞ」と伝えれたのだ。
平民出身の彼らが震えるのも無理はない。
「はぁ、はぁ……そんなの、気にして……られねぇな。そんな事気にしてちゃ、強くなれねぇだろうが!!」
「……その闘志は称賛に値するが、お前が無理に動いた結果……お前の両親や友人が手をかけられても良いのか?」
「ッ」
「両親、家族がいなくても冒険者を続けてれば知人、仲間は出来るだろ。屑な連中は本当に屑だ。だからこそ、その闘争心は消す必要がないと思うが、もう少し考えて……動け」
「…………」
「それに、俺は何も屑な権力者に絡まれても、やり返すなって言ってる訳じゃない。考えて動けって言っただろ」
「???」
最初のバカは本当にややバカ寄りであるため、アラッドの助言があまり理解出来ていなかった。
「お疲れ様、アラッド」
「悪いな、スティーム。待たせた」
「あっという間だったよ。それにしても……あれだよね。貴族出身のアラッドがそれを言っちゃっても良いの? って感じだね」
スティームの言葉に観戦していた同業者たちも首を縦に振る。
「あぁ~~~……まっ、確かに良くはないかもな。でも、世の中屑は居るんだ。屑は今までの行いが自分に降りかからないと理解出来ないんだよ。だったら、きっちり潰さないと駄目だろ」
「はっはっは!! アラッドらしい回答だね」
同じ貴族であろうと、社交界の場でダル絡からみしてきた馬鹿をパンツ一丁にした男は言う事が違う。
「…………やっべぇな」
二人が訓練場から出た後、最初のバカ……ボルガンはポツリと呟いた。
「そうね……ぶっちゃけ、もう少しやれると思って」
「俺もだ。噂通りの実力だったとしても、俺たちが全力で戦えば傷ぐらいを負わせられると思ってたが……触れることすら敵わなかったな」
「はぁ~~~~。ちょっと強過ぎないって思うぬにゃ。なんか訳解からないタイミングで転ぶし」
「多分あれが噂の糸よね」
「あの人……アラッドさんの切り札かにゃ? それなら、ウチらはその切り札を使わせたぐらいには強い……とははらないにゃ」
語尾が「にゃ」の猫人族はアラッドが自分たちを相手に糸を使ったことに対し、馬鹿正直に受け止めることはなかった。
「遊ばれてた……ってことか」
「そういう事になるだろうな。実際に、俺たち十人がBランクモンスターに挑んだとしても、おそらく倒すことは不可能だ」
何人かのルーキーはその言葉に反論したかったが、自分たちの現在の力量的に、Cランクが数体であればまだしも……Bランクはさすがに無理だと本能が理解していた。
「つまり、本当にあの人にとって私たちは遊び相手だったってことね」
「…………兄貴って、呼んでも良いかな」
「「「「「はっ?」」」」」
最初のバカ、オルガンの言葉に何人かのルーキーが素っ頓狂な声を上げる。
しかし、他何名……彼らの会話を聞いていたベテラン達は、ボルガンの気持ちが解らなくもなかった。
自分たちを纏めて相手にしても圧勝。
それでいて嫌な、上から目線な態度で話すことはなく、こちらの対応を気遣う様なアドバイスまでしてくれた。
その強者との格にオルガンは惚れた。
「やっぱりアラッドは優しいね」
「どこかだ?」
「普通はあぁいった絡み方をしてきた相手にアドバイスなんてしないよ」
「あぁ、それか……言われなくても解ってるとは思うが、負けた相手からの忠告なら聞くだろ。あいつがこの先どんな冒険者人生を歩むかは知らないが、それなりに見どころがある奴だったからな」
「それは僕も同意だね。外見は野生児みたいな印象だけど、大剣の扱いは……技術は二級品ぐらいかな? 更に磨けば一級品になるのは間違いないね」
自分もうかうかしていられない。
スティームがそう思う程、アラッドに挑んだルーキーたちの実力、潜在能力は高かった。
「あっ、そういえばまだスティームに紹介してない人がいたな」
「?」
訓練場から出た後、二人は適当な討伐依頼を受けた。
当然、冒険者としてその依頼を達成しなければならないのだが、アラッドをそれを無視してとある場所へスティームを連れて行った。
「…………アラッド、こんな場所に人がいるのかい?」
「ん? あぁ、そうだよ。正確には人じゃないけどな」
「え?」
数分後……スティームの前には確かに人ではない強大な力を持つ生物がいた。
「まっ、こんなところか。それなりに楽しかったぞ」
自分たちの猛攻に対し、それなりに楽しかったという言葉だけで済ませた。
その事実に悔しさを覚える者が殆ど。
「後な……俺だったから良かったけど、あんまり貴族出身の冒険者にちょっかいをかけるのは止めとけよ。いや、お前らが今よりももっと強くなって立場が上がれば話は別かもしれないが、プライドが高い連中は本当にプライドが高いんだ。最悪、殺されるぞ」
何人かのルーキーは背筋が震えた。
目の前の人物は自分たちを殺すつもりなど一切ない。
それは解るが、貴族出身であるアラッドの口から「下手すれば殺されてもおかしくないぞ」と伝えれたのだ。
平民出身の彼らが震えるのも無理はない。
「はぁ、はぁ……そんなの、気にして……られねぇな。そんな事気にしてちゃ、強くなれねぇだろうが!!」
「……その闘志は称賛に値するが、お前が無理に動いた結果……お前の両親や友人が手をかけられても良いのか?」
「ッ」
「両親、家族がいなくても冒険者を続けてれば知人、仲間は出来るだろ。屑な連中は本当に屑だ。だからこそ、その闘争心は消す必要がないと思うが、もう少し考えて……動け」
「…………」
「それに、俺は何も屑な権力者に絡まれても、やり返すなって言ってる訳じゃない。考えて動けって言っただろ」
「???」
最初のバカは本当にややバカ寄りであるため、アラッドの助言があまり理解出来ていなかった。
「お疲れ様、アラッド」
「悪いな、スティーム。待たせた」
「あっという間だったよ。それにしても……あれだよね。貴族出身のアラッドがそれを言っちゃっても良いの? って感じだね」
スティームの言葉に観戦していた同業者たちも首を縦に振る。
「あぁ~~~……まっ、確かに良くはないかもな。でも、世の中屑は居るんだ。屑は今までの行いが自分に降りかからないと理解出来ないんだよ。だったら、きっちり潰さないと駄目だろ」
「はっはっは!! アラッドらしい回答だね」
同じ貴族であろうと、社交界の場でダル絡からみしてきた馬鹿をパンツ一丁にした男は言う事が違う。
「…………やっべぇな」
二人が訓練場から出た後、最初のバカ……ボルガンはポツリと呟いた。
「そうね……ぶっちゃけ、もう少しやれると思って」
「俺もだ。噂通りの実力だったとしても、俺たちが全力で戦えば傷ぐらいを負わせられると思ってたが……触れることすら敵わなかったな」
「はぁ~~~~。ちょっと強過ぎないって思うぬにゃ。なんか訳解からないタイミングで転ぶし」
「多分あれが噂の糸よね」
「あの人……アラッドさんの切り札かにゃ? それなら、ウチらはその切り札を使わせたぐらいには強い……とははらないにゃ」
語尾が「にゃ」の猫人族はアラッドが自分たちを相手に糸を使ったことに対し、馬鹿正直に受け止めることはなかった。
「遊ばれてた……ってことか」
「そういう事になるだろうな。実際に、俺たち十人がBランクモンスターに挑んだとしても、おそらく倒すことは不可能だ」
何人かのルーキーはその言葉に反論したかったが、自分たちの現在の力量的に、Cランクが数体であればまだしも……Bランクはさすがに無理だと本能が理解していた。
「つまり、本当にあの人にとって私たちは遊び相手だったってことね」
「…………兄貴って、呼んでも良いかな」
「「「「「はっ?」」」」」
最初のバカ、オルガンの言葉に何人かのルーキーが素っ頓狂な声を上げる。
しかし、他何名……彼らの会話を聞いていたベテラン達は、ボルガンの気持ちが解らなくもなかった。
自分たちを纏めて相手にしても圧勝。
それでいて嫌な、上から目線な態度で話すことはなく、こちらの対応を気遣う様なアドバイスまでしてくれた。
その強者との格にオルガンは惚れた。
「やっぱりアラッドは優しいね」
「どこかだ?」
「普通はあぁいった絡み方をしてきた相手にアドバイスなんてしないよ」
「あぁ、それか……言われなくても解ってるとは思うが、負けた相手からの忠告なら聞くだろ。あいつがこの先どんな冒険者人生を歩むかは知らないが、それなりに見どころがある奴だったからな」
「それは僕も同意だね。外見は野生児みたいな印象だけど、大剣の扱いは……技術は二級品ぐらいかな? 更に磨けば一級品になるのは間違いないね」
自分もうかうかしていられない。
スティームがそう思う程、アラッドに挑んだルーキーたちの実力、潜在能力は高かった。
「あっ、そういえばまだスティームに紹介してない人がいたな」
「?」
訓練場から出た後、二人は適当な討伐依頼を受けた。
当然、冒険者としてその依頼を達成しなければならないのだが、アラッドをそれを無視してとある場所へスティームを連れて行った。
「…………アラッド、こんな場所に人がいるのかい?」
「ん? あぁ、そうだよ。正確には人じゃないけどな」
「え?」
数分後……スティームの前には確かに人ではない強大な力を持つ生物がいた。
150
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる