上 下
534 / 1,019

五百三十三話 どんな人?

しおりを挟む
野郎たちが野郎の会話で盛り上がっている中、エリナを中心とした女性陣たちも一か所に集まっていた。

本当はアラッドたちの会話を盗み聞きしたいところだが、もし……仮にその様な行為がバレたとなれば、おそらくアラッドはどうこうする事はないだろう……しかし、エリナたちが罪悪感で潰れてしまうかもしれない。

という事でアラッドたちの会話を盗み聞きこそしないが、エリナたちはエリナたちで一か所に集まり、神妙な顔をしながらあの一件について話し合っていた。

「アラッド様の初めてのお相手となった方……いったいどんな方なのでしょうか」

「はいはい!! やっぱり、強い人だと思う!!!!」

確信を持った表情で断言するレオナ。
まず大前提の条件として、強い人。
これには司会を務めるエリナも同意だった。

「そうですね。アラッド様は以前、惚れた相手であればあまり見た目は問わないと言っていましたが、やはりそれは
戦闘力的な強さを持っている方……もしくはとても強い芯を持ってる方というのが前提条件でしょう」

「アラッド様の初めてのお相手かぁ~~~……いやぁ~~、確かに気になる話題だね」

リンはあわよくば自分がその相手として……なんて考えを持っていないタイプであり、その初めての相手に対して嫉妬心などは全くもっていない。
ただ純粋に、いったいどんな人物なのか気になっていた。

「そういえば、アラッド様は以前から四人のご令嬢と交友関係を持っているとお聞きしましたが」

進言したのは孤児院に努めるシスターのうちの一人、ラターシャ。
彼女もアラッドが女性に興味がないわけではない、という事は知っていたが、そういう浮ついた話は全く耳にしたことがなかった。

だが、幼い頃から幾人かの令嬢と付き合いがあるということは耳にしていた。

「確かにアラッド様からお話を聞く限り、その四人は並の令息たちよりも遥かに強いと仰っていましたが……今、アラッド様の隣にいるのは友人で仲間であるスティーム様。初めての相手であろう女性はいません」

「姉さん、つまりアラッド様はその初めての方と、恋仲なった訳ではないということですか?」

「おそらくそうでしょう。仮にその四人のうち、誰かとそういう関係になったのであれば、まず私たちの耳にも入ってくる筈です」

当然のことながら、学園に通う様な貴族の令嬢は淫らに異性と体の関係を持つことはまずない。
そういった行為によって受けてしまうデメリットがあまりにも多く、痛過ぎる。

「ふ~~~ん。だったら、初めての相手はフットワーク? が軽い人って事なのかな」

「おそらく、異性と関係を持ったとしても、今後の活動に支障がない方なのでしょう」

「…………ねぇねぇ。もしかしてだけど、アラッド様の初めての相手って……お店の人だったりするのかな」

「「「「「「っ!!!!」」」」」」

レオナのまさか過ぎる発言に、何人かは直ぐに反論しようと口を開こうとしたが、寸でのところで止まった。

アラッドは強面寄りの顔ではあるものの、十分イケメンに入る部類の青年。
性格は比較的まともであり、コミュニケーション能力もそれなりに高いのだが……決してチャラ男ではない。

一般的な女性が相手では、自らそういった流れに持っていけない可能性は十分にあり得る。
加えて、娼館で働く女性はそれが仕事であるため、初めの男性をリードするのはお手の物。

初めての体験で色々と失敗してしまうと、色々と自信を失ってしまう可能性がある為、初めての相手をプロに任せるというのは決して悪手ではない。

「えっと、あの、アラッド様はその方と波長が合うとおっしゃてたので、おそらくお店の女性ではないと思います」

「そ、そうでしたね。確かにその様な会話をしていました」

「あ~~、そういえばそうだったかも? そうなると……やっぱりあれかな、同業者が相手かな」

「……無難ではありますが、それが一番可能性が高そうですね」

当然のことながら、女性冒険者全員性に対して意識が緩いわけではない。

冒険の最中には男に負けず劣らず勢い良く武器を振り回し、モンスターをぶっ潰す。
男顔負けの腕力を持つ者もそれなりにいるが、彼女たちが完全に女を捨てているかと言えば……そういうわけではない。

「現役の冒険者かな? それとも引退した冒険者かな?」

「アラッド様は歳上の方を好む傾向がありますが、そこまでこう……おかしな方向に向いてはいないので、お相手の方は二十代前半から二十代後半ぐらいが妥当でしょう」

「ん~~、二十代後半ぐらいなら、もしかしたら引退してるかもな?」

「引退した女性冒険者って、ギルドから受付嬢としてスカウトされるって聞いたことがあるけど、そういう繋がりとかかな?」

リンの言葉にピンときたエレナたち。

元冒険者となれば、アラッドが好む強さを有していても不思議ではない。
加えて、受付嬢というギルド職員の華とも言える職に誘われるということは、それなりの容姿を持っているのが当然。

「私としては、アラッド様が安心してそういう事が出来る方と巡り合えただけで、色々とホッと一安心だわ~」

孤児院のマザーであるアルリアは好々婆な笑みを浮かべており、リンと同様常に余裕……というより、楽しそうな顔をしていた。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

殿下、恋はデスゲームの後でお願いします

真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた! いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。 自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。 そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!! 王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!? 短編なのでさらっと読んで頂けます! いつか長編にリメイクします!

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...