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五百二話 認識の違い
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(俺から見て、一回戦と準決勝も本気じゃないようには見えなかった……そうなんだよ。あの時本気だったのは間違いないが、次の試合でその本気が更新されたというか……いや、無理があるか)
一回戦や準決勝と比べて、決勝戦のスティームは明らかに本気の度合いが違った。
圧倒的な集中力からくる読みを発揮し、最後の最後には赤雷を発現。
スティームはあそこで初めて赤雷を発現したのだが、他の参加者たちからすれば、そんな知ったことではない。
圧倒的な切り札があるのに、自分との試合では使わなかった。
つまりそういう事なのだろう!!!!! というのがレイピア使いの心の内。
ぶっちゃけな話、アバックもそういった気持ちがなかった訳ではないが、それでも彼のメンタルは一味違った。
「……まっ、あれだ。スティーム……今回の一件、そこまでお前が気にする必要はない」
「いや、でも……本当に、そうなのかな」
クスリを使用してしまったことが世間にバレ、親元に報告される。
同じ貴族の令息であるからこそ、その後の対応……周りからの反応を考えてしまい、スティームはいつも以上に冷静さがなかった。
「…………スティーム。俺がある物語を読んで……改めてその通りだなって思った言葉がある。戦争しか知らない子供と、平和しか知らない子供の価値観は違う」
「…………」
ぶっ飛び過ぎてて理解が追い付かない。
追い付かないが、それでも友の言葉を聞き逃さない様に集中する。
「ちょっと極端過ぎるかもしれないが、それだけあのレイピア使いが受けた衝撃……そしてそれを外側から見ていた俺としては、捉え方が違う」
「捉え方が、違う…………それは、アラッドが強いからという事かな?」
「強さ、立場、それらの要素諸々関係してるかもしれないな。でもな……同じスティームに負けた相手であっても、アバックの奴はどうだ? ぶっちゃけ、あの人からすればお前よりも俺が憎い筈だ。自分が手に入れ筈だった雷槍を俺が手に入れたんだからな」
アラッドがいきなりトーナメントに参加すると決めた事で、アバックの実家としてはプランが大幅に崩れた。
そしてアラッドとしては賄賂を受け取るという手段もあったのだが……それは面白くないという、非常に私情を優先した答えを出した。
それでもアラッドがアバックに恨まれる理由はないに等しいのだが……アバックの立場を考えれば、一理ぐらいはなくもないと多くの者が一応納得出来る。
「でもどうだ? あいつはエレインと一緒に俺たちの元へ来て和気あいあいと話して、仕事で戻るまで数回だけだが、軽くて手合わせもしてきた……別に俺だから意見が違うって訳じゃない」
「それはそう……だね。一番は、やっぱり心の強さということなんだね」
「おいおい、何今更解かった様な顔してるんだ」
「えっ?」
意地悪で、どこかスティームを褒める様な笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「お前がどんな状況でも諦めずに、集中力を研ぎらせずに攻め続けてきたからこそ……俺を焦らせるまで追い込んだんだろ」
「ッ!!」
スティームが赤雷を発現した瞬間、アラッドは本気で焦った。
その焦りは理性をぶち壊し、本能に呼びかけ……結果、使うと決めていなかった狂化を使用した。
「あれはお前の何が何でも俺に勝つという心の強さが魅せた結果だ……違うか?」
「いや、それは……まぁ、そうかな。正直、狂化を使わせたいと思ってた。後、欲を言えば渦雷を使わせたかった」
「はっはっは!!! そこまで本気を出してたら、終わり方は……命こそ奪ってないと思うが、腕や脚の一本は飛んでたかもしれないな」
昼過ぎの穏やかな空気に似合わない発言に、周囲の客たちはギョッとした顔になる。
「……レイピア使いからすれば、俺は当然としてスティームも理不尽な存在に見えたんだろうな。それこそ、堕ちでもしないと倒せないと」
「それは、誇っても良いことなのかな」
「向こうがそれだけこっちの実力を評価してるんだ。一応誇っても良いとは思うぞ。ただ今回の一件は、色んな意味で向こうのメンタルが脆かった。そもそもな……今回の一件を忘れて、また冒険者としての道を進めば良かったんだ。別に俺やスティームを殺せなかったからといって、あの人の人生が不幸になる訳じゃないんだ」
あれこれ考えてるうちに……レイピア使いに対してやや辛辣になり始めたアラッド。
「というか、そこはあんまりメンタル云々関係無いように思えてきたな……ただ、あの人の嫉妬とかそういう感情が爆発しただけなんじゃないかって思えてきた」
「そ、そんなことはないと思うけどな。あ、ほら。精神に作用するマジックアイテムを使われたかもしれないでしょ」
「むっ……確かにその可能性は否定出来ないな。けど、それなら……うちの弟の方が、メンタルはよっぽど強いな」
おそらく同じ関係者に誘われたであろうにも関わらず、鋼の精神で誘惑を弾き飛ばし、己の道を突き進む男、ドラング。
そんな自分に対しては辛辣な弟を思い出し、攻めて嫌われるならあぁいう感じが良いよなということについて会話内容が変わったアラッドとスティームだった。
一回戦や準決勝と比べて、決勝戦のスティームは明らかに本気の度合いが違った。
圧倒的な集中力からくる読みを発揮し、最後の最後には赤雷を発現。
スティームはあそこで初めて赤雷を発現したのだが、他の参加者たちからすれば、そんな知ったことではない。
圧倒的な切り札があるのに、自分との試合では使わなかった。
つまりそういう事なのだろう!!!!! というのがレイピア使いの心の内。
ぶっちゃけな話、アバックもそういった気持ちがなかった訳ではないが、それでも彼のメンタルは一味違った。
「……まっ、あれだ。スティーム……今回の一件、そこまでお前が気にする必要はない」
「いや、でも……本当に、そうなのかな」
クスリを使用してしまったことが世間にバレ、親元に報告される。
同じ貴族の令息であるからこそ、その後の対応……周りからの反応を考えてしまい、スティームはいつも以上に冷静さがなかった。
「…………スティーム。俺がある物語を読んで……改めてその通りだなって思った言葉がある。戦争しか知らない子供と、平和しか知らない子供の価値観は違う」
「…………」
ぶっ飛び過ぎてて理解が追い付かない。
追い付かないが、それでも友の言葉を聞き逃さない様に集中する。
「ちょっと極端過ぎるかもしれないが、それだけあのレイピア使いが受けた衝撃……そしてそれを外側から見ていた俺としては、捉え方が違う」
「捉え方が、違う…………それは、アラッドが強いからという事かな?」
「強さ、立場、それらの要素諸々関係してるかもしれないな。でもな……同じスティームに負けた相手であっても、アバックの奴はどうだ? ぶっちゃけ、あの人からすればお前よりも俺が憎い筈だ。自分が手に入れ筈だった雷槍を俺が手に入れたんだからな」
アラッドがいきなりトーナメントに参加すると決めた事で、アバックの実家としてはプランが大幅に崩れた。
そしてアラッドとしては賄賂を受け取るという手段もあったのだが……それは面白くないという、非常に私情を優先した答えを出した。
それでもアラッドがアバックに恨まれる理由はないに等しいのだが……アバックの立場を考えれば、一理ぐらいはなくもないと多くの者が一応納得出来る。
「でもどうだ? あいつはエレインと一緒に俺たちの元へ来て和気あいあいと話して、仕事で戻るまで数回だけだが、軽くて手合わせもしてきた……別に俺だから意見が違うって訳じゃない」
「それはそう……だね。一番は、やっぱり心の強さということなんだね」
「おいおい、何今更解かった様な顔してるんだ」
「えっ?」
意地悪で、どこかスティームを褒める様な笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「お前がどんな状況でも諦めずに、集中力を研ぎらせずに攻め続けてきたからこそ……俺を焦らせるまで追い込んだんだろ」
「ッ!!」
スティームが赤雷を発現した瞬間、アラッドは本気で焦った。
その焦りは理性をぶち壊し、本能に呼びかけ……結果、使うと決めていなかった狂化を使用した。
「あれはお前の何が何でも俺に勝つという心の強さが魅せた結果だ……違うか?」
「いや、それは……まぁ、そうかな。正直、狂化を使わせたいと思ってた。後、欲を言えば渦雷を使わせたかった」
「はっはっは!!! そこまで本気を出してたら、終わり方は……命こそ奪ってないと思うが、腕や脚の一本は飛んでたかもしれないな」
昼過ぎの穏やかな空気に似合わない発言に、周囲の客たちはギョッとした顔になる。
「……レイピア使いからすれば、俺は当然としてスティームも理不尽な存在に見えたんだろうな。それこそ、堕ちでもしないと倒せないと」
「それは、誇っても良いことなのかな」
「向こうがそれだけこっちの実力を評価してるんだ。一応誇っても良いとは思うぞ。ただ今回の一件は、色んな意味で向こうのメンタルが脆かった。そもそもな……今回の一件を忘れて、また冒険者としての道を進めば良かったんだ。別に俺やスティームを殺せなかったからといって、あの人の人生が不幸になる訳じゃないんだ」
あれこれ考えてるうちに……レイピア使いに対してやや辛辣になり始めたアラッド。
「というか、そこはあんまりメンタル云々関係無いように思えてきたな……ただ、あの人の嫉妬とかそういう感情が爆発しただけなんじゃないかって思えてきた」
「そ、そんなことはないと思うけどな。あ、ほら。精神に作用するマジックアイテムを使われたかもしれないでしょ」
「むっ……確かにその可能性は否定出来ないな。けど、それなら……うちの弟の方が、メンタルはよっぽど強いな」
おそらく同じ関係者に誘われたであろうにも関わらず、鋼の精神で誘惑を弾き飛ばし、己の道を突き進む男、ドラング。
そんな自分に対しては辛辣な弟を思い出し、攻めて嫌われるならあぁいう感じが良いよなということについて会話内容が変わったアラッドとスティームだった。
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