440 / 1,006
四百四十話 止まらない笑い
しおりを挟む
「そういえば、こっちにはどれぐらい居るんだ?」
「そうだね……特に決めてはいないかな」
アラッドとスティームも兄に呼ばれてラダスに来たたため、今後の予定が一切決まっていなかった。
「良かったらさ、アルバース王国にいる間、俺と一緒に旅しないか」
「………………マスター、水を一杯」
酔っているからこその利き間違いかと思い、少しでも酔いを醒ますために水を注文。
「ぷはぁ……ごめん、もう一度言ってくれないか」
一気に飲み干し、先程までと比べて少しは酔いが落ち着いたため、確認のために聞き直す。
「こっちにいる間、俺と一緒に旅でもしないかって勧誘……いや、組織じゃないから別に勧誘ではない、か? とにかく、そっちが良かったら一緒に旅でもどうだっていうお誘いだな」
「………………何故?」
再度、長い時間を置いて、ようやく言葉が零れる。
スティームとしては、ほぼランクアップが確定しているため、アラッドは一応自分と同じステージにいる。
それは理解しているが、中身は色々と違い過ぎることも理解している。
そのため……何故自分を誘ったのか、その理由が全く解らない。
光栄なお誘いということだけは理解出来るが、誘われる理由がいくら考えても思い付かない。
「何故って……あれだ、折角アルバース王国に来たのに、速攻で帰るのは勿体ないと思わないか」
「ま、まぁそれはそうだね。こっちの国でいくつか気になる場所はあるし」
「そうだろ」
そうだろそうだろと頷きながら、また一杯注文。
(ま、マティーニ……また度数がそれなりに高いのを呑むな~。それでも頬が少し赤いだけで、酔ってるようには見えないし……もしかして、ドワーフの血が混ざってたりするのかな?)
エールは美味い水だと断言する種族がドワーフ。
大抵の種族が、酒の飲み比べではドワーフに敗北するほどアルコール耐性が高く、酒を愛する種族でもある。
アラッドの吞みっぷりは平均以上だが、ドワーフの血は過去に遡ったても……一滴も入っていない。
「後はまぁ、個人的な勘というか、本能? スティームさんとなら面白い度になりそうだと思ってな」
「アラッド……」
「それともう一つ、青年二人とトップクラスの従魔二人なら、絶対に面倒な輩が絡んで来ないと思う」
「うん、それはその通りだね」
やや感動系の空気が流れそうなところで、現実的な話がぶっこまれた。
ただ、スティームとしてもその理由には非情に納得。
十八歳でCランクは……世間一般として、十分に成功している。
肉体的にもまだまだこれから全盛期であるため、同期だけではなく性格が終了しているベテラン達からも妬まれやすい。
今まで何度もそういった輩に絡まれてきたスティームだが、これまで全て己の力……もしくはブチ切れたファルが処理してきた。
(それなりに立場も上がってきたと思う今でも絡まれるからな~)
既に少年ではなく青年と言える見た目に成長した現在でも、度々絡まれては捻じ伏せるという行為を繰り返すことに……若干嫌気がさしていた。
「というか、アラッドも面倒な輩に絡まれることがあったのかい?」
「……なんだかんだで、あまりベテランたちに変な絡み方はされてない、か。でも、同じルーキーからはがっつり絡まれたな」
「へぇ~~。詳しく聞いても良いかい」
イケメンではあるが、中々圧が強い顔をしてるアラッドに絡んだルーキー。
そのルーキー……ギルの一件について詳しく聞いたスティームは酔いが入っていたこともあり、周囲に他の客がいるに関わらず、大爆笑。
「はぁ、はぁ、はぁ……お腹が痛い」
「大丈夫か? 頼むから、笑い過ぎて吐いたりしないでくれよ」
「それは、大丈夫だよ。ただ……はっはっは! ダメだ、笑いが止まらない」
まず、アラッドに喧嘩を売る時点で笑える。
そして基本的に人がイラつくポイントである、家族をバカにするという愚行。
これを行ってしまうという愚かさにも大爆笑。
スティームは自身の家の権力を振りかざす横暴坊ちゃんタイプではないが、それでも自身が貴族の令息だと理解している。
仮にスティームが本気で家族をバカにされるようなことがあれば、追放だけに留まらず、気が済むまで殴り続ける。
(このアラッドを相手に……はは!! だ、ダメだ。本当に、笑いが、止まらない……無謀にも、程がある。ある意味勇者だ!!!!!!)
決してその愚行を褒め称えようとは思わない。
仮にその場にいれば、血の気が引く自身しかない。
「まぁ、あれだよね。平民出身の冒険者たちは、やけに僕たちに対してこう……負けん気が強いよね」
「ぬくぬくと温い環境で育ってきた温室育ちのお坊ちゃんには負けられない! 的な思いが強いんだろ」
「中を何も知らなければ、そういうイメージしか持ってないのも、仕方ないかもしれないね…………アラッド君、さっきの誘い、受けるよ。アルバース王国にいる間、是非君と旅をしたい」
「こちらこそ、よろしくな」
二人はその場で握手を交わし……その光景を見ていたマスターは、二人にウィスキーフロートをご馳走した。
「そうだね……特に決めてはいないかな」
アラッドとスティームも兄に呼ばれてラダスに来たたため、今後の予定が一切決まっていなかった。
「良かったらさ、アルバース王国にいる間、俺と一緒に旅しないか」
「………………マスター、水を一杯」
酔っているからこその利き間違いかと思い、少しでも酔いを醒ますために水を注文。
「ぷはぁ……ごめん、もう一度言ってくれないか」
一気に飲み干し、先程までと比べて少しは酔いが落ち着いたため、確認のために聞き直す。
「こっちにいる間、俺と一緒に旅でもしないかって勧誘……いや、組織じゃないから別に勧誘ではない、か? とにかく、そっちが良かったら一緒に旅でもどうだっていうお誘いだな」
「………………何故?」
再度、長い時間を置いて、ようやく言葉が零れる。
スティームとしては、ほぼランクアップが確定しているため、アラッドは一応自分と同じステージにいる。
それは理解しているが、中身は色々と違い過ぎることも理解している。
そのため……何故自分を誘ったのか、その理由が全く解らない。
光栄なお誘いということだけは理解出来るが、誘われる理由がいくら考えても思い付かない。
「何故って……あれだ、折角アルバース王国に来たのに、速攻で帰るのは勿体ないと思わないか」
「ま、まぁそれはそうだね。こっちの国でいくつか気になる場所はあるし」
「そうだろ」
そうだろそうだろと頷きながら、また一杯注文。
(ま、マティーニ……また度数がそれなりに高いのを呑むな~。それでも頬が少し赤いだけで、酔ってるようには見えないし……もしかして、ドワーフの血が混ざってたりするのかな?)
エールは美味い水だと断言する種族がドワーフ。
大抵の種族が、酒の飲み比べではドワーフに敗北するほどアルコール耐性が高く、酒を愛する種族でもある。
アラッドの吞みっぷりは平均以上だが、ドワーフの血は過去に遡ったても……一滴も入っていない。
「後はまぁ、個人的な勘というか、本能? スティームさんとなら面白い度になりそうだと思ってな」
「アラッド……」
「それともう一つ、青年二人とトップクラスの従魔二人なら、絶対に面倒な輩が絡んで来ないと思う」
「うん、それはその通りだね」
やや感動系の空気が流れそうなところで、現実的な話がぶっこまれた。
ただ、スティームとしてもその理由には非情に納得。
十八歳でCランクは……世間一般として、十分に成功している。
肉体的にもまだまだこれから全盛期であるため、同期だけではなく性格が終了しているベテラン達からも妬まれやすい。
今まで何度もそういった輩に絡まれてきたスティームだが、これまで全て己の力……もしくはブチ切れたファルが処理してきた。
(それなりに立場も上がってきたと思う今でも絡まれるからな~)
既に少年ではなく青年と言える見た目に成長した現在でも、度々絡まれては捻じ伏せるという行為を繰り返すことに……若干嫌気がさしていた。
「というか、アラッドも面倒な輩に絡まれることがあったのかい?」
「……なんだかんだで、あまりベテランたちに変な絡み方はされてない、か。でも、同じルーキーからはがっつり絡まれたな」
「へぇ~~。詳しく聞いても良いかい」
イケメンではあるが、中々圧が強い顔をしてるアラッドに絡んだルーキー。
そのルーキー……ギルの一件について詳しく聞いたスティームは酔いが入っていたこともあり、周囲に他の客がいるに関わらず、大爆笑。
「はぁ、はぁ、はぁ……お腹が痛い」
「大丈夫か? 頼むから、笑い過ぎて吐いたりしないでくれよ」
「それは、大丈夫だよ。ただ……はっはっは! ダメだ、笑いが止まらない」
まず、アラッドに喧嘩を売る時点で笑える。
そして基本的に人がイラつくポイントである、家族をバカにするという愚行。
これを行ってしまうという愚かさにも大爆笑。
スティームは自身の家の権力を振りかざす横暴坊ちゃんタイプではないが、それでも自身が貴族の令息だと理解している。
仮にスティームが本気で家族をバカにされるようなことがあれば、追放だけに留まらず、気が済むまで殴り続ける。
(このアラッドを相手に……はは!! だ、ダメだ。本当に、笑いが、止まらない……無謀にも、程がある。ある意味勇者だ!!!!!!)
決してその愚行を褒め称えようとは思わない。
仮にその場にいれば、血の気が引く自身しかない。
「まぁ、あれだよね。平民出身の冒険者たちは、やけに僕たちに対してこう……負けん気が強いよね」
「ぬくぬくと温い環境で育ってきた温室育ちのお坊ちゃんには負けられない! 的な思いが強いんだろ」
「中を何も知らなければ、そういうイメージしか持ってないのも、仕方ないかもしれないね…………アラッド君、さっきの誘い、受けるよ。アルバース王国にいる間、是非君と旅をしたい」
「こちらこそ、よろしくな」
二人はその場で握手を交わし……その光景を見ていたマスターは、二人にウィスキーフロートをご馳走した。
190
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる