上 下
433 / 1,019

四百三十三話 その家名は!?

しおりを挟む
アルコール耐性が高いアラッドは、最終的に十杯以上のカクテルを途中で水を飲むことなく呑み尽くし、その間ギーラスと一緒につまみの料理を食べ続けた。

結果……二人が吞んで食べた金額は、ディックスの前借した給料では届かず、その場は副団長が立て替えた。
そして後日、上司から再来月分の給料から足りない分を引くと伝えられ、その場で膝から崩れ落ちた。

「いやぁ~~、傑作傑作だね」

普段から仲が悪い……という訳ではないが、どちらの弟の方が凄いか自慢の時に白熱した記憶は残っていたため、自分の弟の方が凄いと証明できたギーラスは翌日もご機嫌。
頭に二日酔いが少々残っているが、それでも嬉しい気持ちの方が大きく、いつも通りしごとをこなす。

ちなみに、上司から来月の給料が全て消え、再来月の給料も何割か消えたと知ったディックス……あまりのショックに、膝から崩れ落ちた後……その場からショックで動かなくなり、医務室のベッドに運ばれた。

(とりあえず、一か月ぐらい滞在するか)

兄に呼ばれた用事は済んだ。
であれば、直ぐに次の目的地を探すのもなしではない。

しかし、久しぶりに兄と簡単に会える街にいるということもあり、約一か月の滞在が決定。
適当な依頼を受けながら、腕が鈍らない様に兄と模擬戦を行う日々……といった日常が続くと予想していたが、それはあっさりと裏切られる。

「盗賊団の討伐、ですか」

「はい、そうです。その……Cランクへの昇格試験も兼ねてます」

現在アラッドの冒険者ランクはD。
ルーキーの中では異例の出世スピードだが、本人の強さを考えれば、正直なところ……Cランクでも足りない。

(この人が、Aランクのモンスターを一人で……確かに雰囲気もあって、普通のルーキーたちとは違うけど……本当にそこまでの実力があるのかしら?)

全体的に、普通ではないというのは血生臭い仕事をしてない素人でも、なんとなく感じなくはない。
ただ、先日マジリストンから各冒険者ギルドに伝えられた情報は、容易に信じられる内容ではなかった。

「分かりました」

「ありがとうございます。ただ、昇格試験ですので、従魔とは別行動をしていただきます」

「別行動……というと、誰かに預ければ良いんですか?」

「えっと、ギルドの方で預かることも出来ますが、何か伝手が?」

「はい、兄がこの街にいるので」

クロはアラッドの大切な相棒ではある。
しかし、その相棒に頼りっきりの生活を送ってきていたわけではない。

ギルドからの条件を了承し、数日後に再びギルドへ訪れる。
盗賊団、山嵐の討伐にはアラッドだけではなく、他のDランク冒険者たちも参加する。

集合時間五分前に到着し、集合部屋へと案内され……中に入ると、既にアラッド以外の参加者である四人が居た。

「お前が最後の参加者か」

威嚇するように声をかけた人物は、大剣がメイン武器である鬼人族の男性冒険者。

「あぁ、そうだ。俺はアラッド・パーシバルだ。よろしくな」

「パーシバル……お、お前、もしかしてギーラスさんの、家族、なのか?」

「俺の兄さんだな」

アラッドは面倒を回避するために家名を名乗った。

だが、鬼人族の男性冒険者……ジョウブが恐れを感じた理由は、偶に周囲に迷惑を及ぼす喧嘩を行う冒険者たちを、一瞬で鎮圧してしまう騎士と同じ家名であるため。

かつてジョウブも同業者と派手な喧嘩をし、ギーラスに拳骨を叩きこまれた。
当時、まだまだ目上に対しても反抗的な態度を隠さないジョウブは、怒りの矛先を殴り合い相手からギーラスに変えたが、一発目よりも強烈な拳骨を食らい、ノックアウト。

トラウマとまではいかないが、間違いなく対面すれば恐怖を感じる相手。

「もう全員いるみたい、だ、ね……えっ」

「あっ、スティーム」

五人の行動を評価する者として同行するよう、ギルドから頼まれた人物は……先日、アラッドと模擬戦を行ったスティームだった。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...