268 / 1,019
二百六十八話 贔屓してるわけではない
しおりを挟む
(あの人が、担任の先生か)
教室に入ってきた一人の教師……その人の登場で、アラッド以外の全員の表情が強張った。
(強いな……鑑定は使えないけど、視なくても解る。実技試験の時戦った教師よりも強いのは確実だ)
自分が本気を出したら……勝てるのか?
そんな疑問がアラッドの頭に浮かんだ。
(おいおい……とんでもないね。まだ十五歳の学生なのに、僕にそんな目を向けるか……もう、現時点で一端の戦士……いや、一端なんて言葉は彼に失礼だね)
教室に現れたSクラスの担任教師……アレク・ランディードはアラッドの目が、戦闘者としての眼だと気付き、脳裏に学園長から伝えられた言葉を思い出した。
「すいません。こいつらが、俺がパロスト学園に入学してきた理由がどうも気に入らないようで……だから、文句があるなら掛かって来いと彼らに伝えました」
「なるほど。それで、今目の前の惨状が起きたと」
「その通りです」
「そうか……それなら仕方ないね。ただ、個人的には私闘を行う場合、決まられた場所で行ってほしい。教室は頑丈に作られてはいるけど、君レベルが本気を出すような場合があれば、壊れるてしまう可能性は十分あるからね」
アレクはアラッドの行動に対し、一切咎めることはなかった。
「あ、アレク先生!!! こいつの身勝手な行動を許しても良いのですか!!!」
「……確かに、彼は本来入学する生徒と比べて、随分珍しい理由で入学してきた。けどね、別に身勝手な行動ではないんだよ」
アイガスは、速攻で担任教師に自分の考えを否定されるとは思っておらず、衝撃で固まってしまった。
「アラッド君の入学試験は、他の生徒たちと同じく公平に行われた。実技試験なんか、最初の衝突でディート先生の木剣を折ったんだよ。凄いよね」
「先生、あの衝突では自分の木剣も折れました」
「そういばそうだね。でも、凄いことには変わりないよ」
アレクの言葉通りだった。
身体能力自慢のレイでも、入試の実技試験を行う際、担当してもらった教師の木剣を折ることなど出来なかった。
レイが入学した歳は十二歳であり、アラッドは十五歳。
歳の差を考えれば仕方ない……そう思うかもしれないが、この結果にはレイ以外も全員衝撃を受けていた。
(その噂もチラッと聞いたけど……やっぱりとんでもねぇな、アラッド。担当していた教師に、そこまで本気を出させたってことだもんな。相変わらず色々とぶっ飛んでるな)
(やっぱりアラッドは色々とおかしい……でも、そこが面白い)
リオ、ヴェーラだけではなく、他のメンバーもアラッドの凄さに感心。
ただ……アラッドという存在が気に入らない者たちにとっては、そう簡単に信じられない事実。
「とにかく、アラッド君の目的を学園長は了承している。だから、本来君たちは学園長に文句を言わなければならないんだよ」
アレクが口にした内容は、一ミリも間違っていないが……それを十五歳の子供たちが納得出来るかどうかは、別の話。
そんなことはアレクも解ってはいるが、断言しておかなければならない。
「なのに、アラッド君はわざわざ君たちの文句を吐き出し、事実を覆すチャンスをくれた……って、流れだよね」
実際に見ていた訳ではないので、確信はないため……チラッとアラッドの方に目を向ける。
ちょっと心配そうな顔をしているアレクに対し、アラッドはそうですと頷いた。
「だから本来は、チャンスをくれてありがとうございます、って言うべき立場なんだよ」
アラッドを贔屓している訳ではなく、ただただ事実だけを述べるアレク。
「そして、君たちはそのチャンスをものに出来なかった……というわけで、Sクラスの生徒じゃない者たちは自分のクラスに早く戻りなさい。今回だけは罰も何もない……今回はね」
次はないよ。
そう最後に口にしたアレクだが、この中で何人の生徒が理解出来ているだろうか……ひとまず、朝一の騒ぎはここで終了した。
教室に入ってきた一人の教師……その人の登場で、アラッド以外の全員の表情が強張った。
(強いな……鑑定は使えないけど、視なくても解る。実技試験の時戦った教師よりも強いのは確実だ)
自分が本気を出したら……勝てるのか?
そんな疑問がアラッドの頭に浮かんだ。
(おいおい……とんでもないね。まだ十五歳の学生なのに、僕にそんな目を向けるか……もう、現時点で一端の戦士……いや、一端なんて言葉は彼に失礼だね)
教室に現れたSクラスの担任教師……アレク・ランディードはアラッドの目が、戦闘者としての眼だと気付き、脳裏に学園長から伝えられた言葉を思い出した。
「すいません。こいつらが、俺がパロスト学園に入学してきた理由がどうも気に入らないようで……だから、文句があるなら掛かって来いと彼らに伝えました」
「なるほど。それで、今目の前の惨状が起きたと」
「その通りです」
「そうか……それなら仕方ないね。ただ、個人的には私闘を行う場合、決まられた場所で行ってほしい。教室は頑丈に作られてはいるけど、君レベルが本気を出すような場合があれば、壊れるてしまう可能性は十分あるからね」
アレクはアラッドの行動に対し、一切咎めることはなかった。
「あ、アレク先生!!! こいつの身勝手な行動を許しても良いのですか!!!」
「……確かに、彼は本来入学する生徒と比べて、随分珍しい理由で入学してきた。けどね、別に身勝手な行動ではないんだよ」
アイガスは、速攻で担任教師に自分の考えを否定されるとは思っておらず、衝撃で固まってしまった。
「アラッド君の入学試験は、他の生徒たちと同じく公平に行われた。実技試験なんか、最初の衝突でディート先生の木剣を折ったんだよ。凄いよね」
「先生、あの衝突では自分の木剣も折れました」
「そういばそうだね。でも、凄いことには変わりないよ」
アレクの言葉通りだった。
身体能力自慢のレイでも、入試の実技試験を行う際、担当してもらった教師の木剣を折ることなど出来なかった。
レイが入学した歳は十二歳であり、アラッドは十五歳。
歳の差を考えれば仕方ない……そう思うかもしれないが、この結果にはレイ以外も全員衝撃を受けていた。
(その噂もチラッと聞いたけど……やっぱりとんでもねぇな、アラッド。担当していた教師に、そこまで本気を出させたってことだもんな。相変わらず色々とぶっ飛んでるな)
(やっぱりアラッドは色々とおかしい……でも、そこが面白い)
リオ、ヴェーラだけではなく、他のメンバーもアラッドの凄さに感心。
ただ……アラッドという存在が気に入らない者たちにとっては、そう簡単に信じられない事実。
「とにかく、アラッド君の目的を学園長は了承している。だから、本来君たちは学園長に文句を言わなければならないんだよ」
アレクが口にした内容は、一ミリも間違っていないが……それを十五歳の子供たちが納得出来るかどうかは、別の話。
そんなことはアレクも解ってはいるが、断言しておかなければならない。
「なのに、アラッド君はわざわざ君たちの文句を吐き出し、事実を覆すチャンスをくれた……って、流れだよね」
実際に見ていた訳ではないので、確信はないため……チラッとアラッドの方に目を向ける。
ちょっと心配そうな顔をしているアレクに対し、アラッドはそうですと頷いた。
「だから本来は、チャンスをくれてありがとうございます、って言うべき立場なんだよ」
アラッドを贔屓している訳ではなく、ただただ事実だけを述べるアレク。
「そして、君たちはそのチャンスをものに出来なかった……というわけで、Sクラスの生徒じゃない者たちは自分のクラスに早く戻りなさい。今回だけは罰も何もない……今回はね」
次はないよ。
そう最後に口にしたアレクだが、この中で何人の生徒が理解出来ているだろうか……ひとまず、朝一の騒ぎはここで終了した。
228
お気に入りに追加
6,107
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる