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二百六十一話 苦しくとも、後悔はない

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シルフィーとアッシュは無事に合格し、嬉し涙を流していた。

ちなみに、アッシュが首席で合格、
シルフィーが次席で合格した。

この結果に関して……シルフィーとしては、少々悔しい内容ではあった。
とはいえ、これぐらいの結果でめげることはない。

現在の目標であるアッシュを倒す……これを成し遂げるまで、下を向いている暇はない。

「よし、父さんに報告しないとな」

馬車に乗って直ぐに宿へ向かい、フールに合格したことを報告。

報告を聞いたフールは若干涙を流しながら、三人の合格を喜んだ。

「まずは昼食だ!!!」

フールは報告を聞いて嬉し涙を流したものの、三人なら絶対に合格すると確信していた。

そのため、先日よりも豪華な食事を頼んでいた。

三人はその豪華な食事に思いっきりかぶりついた。

(アラッドとアッシュが首席でシルフィーが次席、か……三人とも本当に頑張ったな)

既に学園に入学しているドラングに関しては、一緒に入試を受けた世代が悪かったため、主席や次席で合格できなかった。
それでも成績上位者ではあり、アラッドの高等部への入試結果と比べて、一概にどちらが優れているとは言えない。

「……ちょ、ちょっと食べ過ぎたわね」

「僕も……ちょっと、お腹に入れすぎたかな」

入試の結果にホッとしたということもあり、二人はいつも以上に食事を取り、完全に腹八分目を超えていた。

(シルフィーはともかく、アッシュがあんなに食べたのは珍しいな……普段は結構クールだけど、やっぱり納得のいく結果が出て嬉しかったんだろうな)

そういうアラッドも首席での入学が決まり、それが嬉しくてついついテーブルに置かれた料理を食べ過ぎてしまい、腹八分目を超えていた。

そして豪華な昼食を食べ終えた後、フールに連れられて王都を散策し、合格した褒美として三人とも欲しい物をフールに買ってもらった。

(父さんも太っ腹だな)

大金を持っているアラッドだが、買ってもらえるならと思い、錬金術に使える鉱石などを複数頼んだ。

そしてルンルン気分のまま場所に乗って領地に帰る。
帰り道もクロが先頭に立って歩いてくれているお陰で、基本的にモンスターがアラッドたちを襲おうとすることはなかった。

豪華そうな馬車を見つけ、良い物が取れそうだと考えた盗賊もいたが、クロの体の大きさにビビった。
加えて、悪い匂いに気付いたクロは離れた場所から獲物を探していた盗賊を睨んだ。

「ひっ!?」

普通は気付かないような場所から探していたにもかかわらず、的確に鋭い眼光を向けられた盗賊は思わず腰を抜かしてしまった。

無事屋敷に到着すると、先に合格の知らせが届いており、全員が三人の合格を祝福した。

「母さん、苦しい、です」

当然、アラッドは母親であるアリサに思いっきり抱きしめられた。

それはシルフィーとアッシュも同じであった。

時間は丁度夕食時ということもあり、シェフたち腕によりをかけて作った料理が次々に運ばれる。

(王都の宿で食べた料理も美味しかったけど……やっぱり、うちのシェフたちは最高だな!!)

食べ過ぎれば腹が膨れて苦しくなる。
そんなことは分かり切っているが、アラッドは食卓に運ばれてくる料理を次々に平らげていく。

二人も同じく、王都での昼食で学んでいそうなアッシュもシェフたちに料理をこれでもかと食べ……三人とも仲良く、食後はベッドの上で転がることになった。

「やっぱり食べ過ぎたな……まっ、いっか」

美味しい料理を食べ過ぎて後悔などする訳がない。

(後二か月後には、俺も学生になるのか……約三か月だけの話ではあるけど)

今世でも学生を体験するとは思っていなかったが、たった三か月だけの体験。
それだけの期間であれば、また学生になるのも悪くはないと思えた。

「けど……三か月以上も学生をするつもりはない」

フローレンス・カルロストを学生同士で行われる大会での勝負で勝てば、特例として卒業出来る。

しかし……仮に負けるような事があれば、その話は当然なしに……速攻で卒業することも出来なくなってしまう。

それは色々と嫌なので、翌日からアラッドはまた訓練や実戦に力を入れ、実力を高めることに時間を費やした。
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