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二百五十八話 言ってはいけないが……
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「えっ……」
「むっ」
お互いに全力に近い状態で木剣を振った結果、大きな音が試験会場に響き渡り……アラッドとディートの木剣が折れた。
「「ッ!?」」
まさかの状況に二人は驚き、一旦距離を取った。
(やり過ぎたか。でも、それなら体技で戦えば良い)
直ぐに両腕を上げて構え、ディートとの距離を詰めようとするアラッドだが、二人の戦闘光景を観察していた試験監督が止めに入った。
「ストップ!!! 二人とも一回止まってくれ!!」
試験監督の声に反応し、アラッドとディートも動きを完全に止めた。
「えっとだな……」
一端二人の模擬戦を止めたまでは良かった。
だが、両者の木剣が折れるなど緊急事態に他ならない。
試験監督はほんの数秒だけ悩み、結論を言い渡した。
「アラッド君。問題無いと思うけど……どうする?」
予備の木剣はまだまだあるので、続行することは出来る。
「……一応、続行します」
「そうか、分かった」
直ぐに二人に予備の木剣が渡された。
(? 先程までの戦意や闘争心が収まった……まぁ、先程の件を考えれば当然か)
二人の模擬戦を観察し、採点していた試験監督は先程、既にアラッドに対して実技の試験に関しては合格ラインを超えていると宣言していた。
それをアラッドも理解しているが、さすがにあの一撃だけで終わりというのはモヤモヤが残る。
とはいえ、ディートがかなり本気で迎え撃ったという要因もあっての現象だが、普通は両者の木剣が折れるということはあり得ない。
この時点で採点を行っていた試験監督は、アラッドに満点を送っていた。
「ふぅーー、よろしくお願いします」
「あぁ」
お互いに先程までとは違い、とてもリラックスした状態。
戦意やらなんやらが迸ってはおらず、本当に模擬戦らしい空気が生まれた。
そして両者がほぼ同時に飛び出すことなどはなく、アラッドが先に飛び出して斬りかかった。
先程は身体強化や脚力強化などの強化アビリティ全開で使っていたが、今回は素の状態でのダッシュ。
それでもアラッドの体質は普通ではなく、他の受験生と比べてレベルが高い。
「は、速過ぎるだろ」
一人の受験生が、他の受験生の想いを代弁した。
彼ら彼女たちも実家に仕える兵士、騎士たちの動きを見ているので、目で追うことは……出来なくはない。
だが、アラッドの連撃に耐えられるかと問われれば、直ぐに頷くことは出来ない。
(軽く振るっているようにみえるが、気を抜けば簡単に押されてしまうな)
ディートも先程とは違い、強化系のスキルは使っていない。
それでもアラッドの斬撃を受け止め、弾き逸らすたびにその重さが身に染みる。
防御するだけではなく、攻勢にもでるが……アラッドはあっさりとディートの剣筋を見切る。
(ちっ……その歳でここまで戦えるのか。認めたくないが、嫉妬しちまうな)
元騎士であり、まだ全盛期を過ぎていないディートにそう思わせるほどアラッドの実力は高く……そして時間制限である三分が経った。
「そこまで!!」
採点を行っていた試験監督の言葉が飛び、両者は動きをぴたりと止めた。
「ありがとうございました」
「おう、お疲れさん。緊張せずに結果を待ってな」
ディートはアラッドの実力を評価する人間ではないが、体感……どう考えても満点だった。
今回の試験では基本的に攻撃魔法の使用はなしだが、強化系のスキルを使うのは問題無い。
アラッドよりも前に実技試験を受けた生徒たちもバリバリ使っていた。
だが、アラッドは最初の一合以降は全く強化スキルを使っていなかった。
その状態であそこまで自分と渡り合えれば、間違いなく満点……そう確信するのが当然。
(ったく、そういう事を受験生に言うなよ……まぁ、どう考えても合格するとは思うけどよ)
あれほどの模擬戦を行った受験生を落とすなど、愚の骨頂だった。
「むっ」
お互いに全力に近い状態で木剣を振った結果、大きな音が試験会場に響き渡り……アラッドとディートの木剣が折れた。
「「ッ!?」」
まさかの状況に二人は驚き、一旦距離を取った。
(やり過ぎたか。でも、それなら体技で戦えば良い)
直ぐに両腕を上げて構え、ディートとの距離を詰めようとするアラッドだが、二人の戦闘光景を観察していた試験監督が止めに入った。
「ストップ!!! 二人とも一回止まってくれ!!」
試験監督の声に反応し、アラッドとディートも動きを完全に止めた。
「えっとだな……」
一端二人の模擬戦を止めたまでは良かった。
だが、両者の木剣が折れるなど緊急事態に他ならない。
試験監督はほんの数秒だけ悩み、結論を言い渡した。
「アラッド君。問題無いと思うけど……どうする?」
予備の木剣はまだまだあるので、続行することは出来る。
「……一応、続行します」
「そうか、分かった」
直ぐに二人に予備の木剣が渡された。
(? 先程までの戦意や闘争心が収まった……まぁ、先程の件を考えれば当然か)
二人の模擬戦を観察し、採点していた試験監督は先程、既にアラッドに対して実技の試験に関しては合格ラインを超えていると宣言していた。
それをアラッドも理解しているが、さすがにあの一撃だけで終わりというのはモヤモヤが残る。
とはいえ、ディートがかなり本気で迎え撃ったという要因もあっての現象だが、普通は両者の木剣が折れるということはあり得ない。
この時点で採点を行っていた試験監督は、アラッドに満点を送っていた。
「ふぅーー、よろしくお願いします」
「あぁ」
お互いに先程までとは違い、とてもリラックスした状態。
戦意やらなんやらが迸ってはおらず、本当に模擬戦らしい空気が生まれた。
そして両者がほぼ同時に飛び出すことなどはなく、アラッドが先に飛び出して斬りかかった。
先程は身体強化や脚力強化などの強化アビリティ全開で使っていたが、今回は素の状態でのダッシュ。
それでもアラッドの体質は普通ではなく、他の受験生と比べてレベルが高い。
「は、速過ぎるだろ」
一人の受験生が、他の受験生の想いを代弁した。
彼ら彼女たちも実家に仕える兵士、騎士たちの動きを見ているので、目で追うことは……出来なくはない。
だが、アラッドの連撃に耐えられるかと問われれば、直ぐに頷くことは出来ない。
(軽く振るっているようにみえるが、気を抜けば簡単に押されてしまうな)
ディートも先程とは違い、強化系のスキルは使っていない。
それでもアラッドの斬撃を受け止め、弾き逸らすたびにその重さが身に染みる。
防御するだけではなく、攻勢にもでるが……アラッドはあっさりとディートの剣筋を見切る。
(ちっ……その歳でここまで戦えるのか。認めたくないが、嫉妬しちまうな)
元騎士であり、まだ全盛期を過ぎていないディートにそう思わせるほどアラッドの実力は高く……そして時間制限である三分が経った。
「そこまで!!」
採点を行っていた試験監督の言葉が飛び、両者は動きをぴたりと止めた。
「ありがとうございました」
「おう、お疲れさん。緊張せずに結果を待ってな」
ディートはアラッドの実力を評価する人間ではないが、体感……どう考えても満点だった。
今回の試験では基本的に攻撃魔法の使用はなしだが、強化系のスキルを使うのは問題無い。
アラッドよりも前に実技試験を受けた生徒たちもバリバリ使っていた。
だが、アラッドは最初の一合以降は全く強化スキルを使っていなかった。
その状態であそこまで自分と渡り合えれば、間違いなく満点……そう確信するのが当然。
(ったく、そういう事を受験生に言うなよ……まぁ、どう考えても合格するとは思うけどよ)
あれほどの模擬戦を行った受験生を落とすなど、愚の骨頂だった。
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