スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

二百五十六話 嘘申告は許さない

試験会場に数名の教師が訪れ、問題用紙を配り……筆記試験がスタート。

教師数人が事件が終わるまでずっと見回りをしているので、他人の回答を見ようものなら直ぐに教室から追い出されてします。

（……ちょっとやり過ぎたか？）

アラッドは問題用紙を解き始めてから、少し手が止まることはあったが、問題無く解き続けた。

（計算問題にしては、簡単過ぎるな）

日本人だったアラッド……英二からすれば、問題として出てくる計算問題はあまりにも簡単過ぎた。
本当にこんなのが試験問題で良いのか？　と思わなくもなかったが、気にせず最後まで問題を解き……試験時間は九十分もあるが、アラッドは三十分ほどで問題を解き終えた。

「…………」

会場に設置している時計を見て、思わず固まってしまったアラッド。

（……高校受験より、随分と簡単だったな）

数学、国語、英語、理科、社会と覚える科目は多くないが、それでも問題を解き終わるにはかなりの時間が必要になる。

カンニングしていると疑われるかもしれないので、大胆に周囲の様子をうかがうことは出来ない。

ただ……まだまだ受験生たちが問題を解いている音が無数に聞こえる。

（もう一度解くか）

ミスはないが、もう一度問題を解くつもりで問題用紙に目を向けるが……ニ十分で確認は終了。

まだ残額の試験時間終了まで四十分もあるが、完全に暇になってしまった。

（寝てしまいそうだな）

それは心証が良くないと思い、再度確認を行う。

アラッドが高校受験より簡単だと感じた理由は、本人が真面目に勉強しなければ必ず苦労すると知っているからこそ、前世より遥かに集中して試験に臨んだ。

その結果見事、座学の試験で発揮された。
本人は驚きを隠せないが、これは当然の結果といえた。

「そこまで！！！　速やかにペンを置け。これ以上動かしていると落とすぞ！！」

試験監督の教師から強めの言葉が飛び、最後まで粘っていた者たちは悔し気な顔でペンを置き……解答用紙と問題用紙が回収される。

「それは一時間の休憩を取った後、実技の試験に移る」

筆記試験から解放された生徒たちは一斉に溜息を吐き……直ぐに試験会場から出て食事を済ませに向かった。

本日は受験生でも学園の食堂を使用できる。
ただ、在校生が使っている場合もあるので、ダッシュで学園近くの飲食店に向かう受験生たちもいた。

そんな中、アラッドはゆったりと会場から出て……筆記試験が終わったらと待ち合わせしていたシルフィーとアッシュの二人と合流。

三人は学園のベンチに腰を下ろし、泊っている宿のシェフに作ってもらったサンドイッチを食べていた。

「二人とも、どうだった？」

「問題無く解けました」

「……満点は無理かもしれない。でも、アラッド兄さんのお陰でリラックスして試験に臨めました！！」

「それは良かった」

二人とも試験後の感想に嘘偽りはなく、筆記試験で平均点を下回ることはないと断言出来る。

「アラッド兄さんもリラックス出来ましたか？」

「誰も絡んでくる奴がいなかったから、有難い事に超リラックスした状態で問題を解けたよ」

一切ミスがなければ、満点を取れたと……そんなアラッドにしては珍しい自信があった。
前世では全く習わない知識が多いが、アラッド的にはそこまで範囲が広くないと感じることもあり、頭に詰め込むことに成功。

ここで多少の不安は完全に消え去っていた。

「次は実技試験ね……アラッド兄さんは、どちらで戦うのですか？」

実技試験は生徒の特長によって、接近戦での試験を選ぶのか……遠距離戦での試験かを選べる。

ただし、接近戦での試験を選ぶのであれば、必ず前衛の武器であるロングソードや槍、斧を使って戦わなければならない。
攻撃魔法の使用は基本的に減点対象となる。

それは遠距離戦の実技試験でも同じだった。

「俺は当然、接近戦の試験を選ぶ」

攻撃魔法も並以上に仕えるが、何年も実戦経験を積んでいれば、自分はどちら側なのか自然と解ってくる。

三人は昼食を食べ終えてから……時間まで吐かない程度に体を動かし、実技試験に臨んだ。