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百八十四話 剣が選ぶ?
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アラッドがレイ嬢に髪留めをプレゼントした後、二人はレナルトの武器屋と向かった。
デートの場所に武器屋とは、中々にアウトな場所かもしれないが……二人とも武器に感心があるので、全く問題はなかった。
寧ろ、今のレイ嬢はアラッドからプレゼントを貰ったことで、非常に上機嫌。
故にアラッドが何処に向かおうと、その態度が変わることはない……かもしれない。
そして通行人にレナルトに存在する有名どころの武器屋を教えてもらい、二人で武器屋巡り。
アラッドの愛剣は変わらず、フールから誕生日のプレゼントとして貰った鋼鉄の剛剣。
今でもその斬れ味が衰えることはないが、鋼鉄の剛剣はフールがアラッドに合うように、鍛冶師に特注で造ってもらった一品。
いずれ体格的に合わなくなる日が来てもおかしくない。
(今日、ここで買うのも悪くはない、か……だが、リンが造ってくれる武器も悪くはない……それを考えると、次の愛剣はリンが渾身の一作が出来上がるまで待つべきか?)
ハーフドワーフであるリンは、アラッドの狩りに同行する時以外は作ってもらった鍛冶場で何かしらの武器や防具を
使っている。
素材はアラッドが狩って倒すモンスターの牙や爪、骨があり……鉱石に関してはアラッドが定期的に購入しているので問題無い。
リンが造り上げた武器はアラッドではなく、同じ奴隷のメンバーであるガルシアやレオナも使用している。
ただ、それでも今日武器屋を見て回り、気になる武器があれば買おうと思っている。
それは事実だった。
(ここには、なさそうだな)
しかし、アラッドが気に入る武器などそう簡単に見つかるものではない。
男女の子供が店に入ってきた時点で、店員……店主としては冷やかしかと思ってしまう。
それでもアラッドとレイ嬢が身に着けている服装を見て、貴族の令息や令嬢だと見抜けぬほど目は腐っていない。
なので二人が落胆するような眼をしても、怒鳴って追い返すことは出来ない。
二人としてはなるべく失礼な態度を取らない様に心がけているつもりだが、ところどころで落胆の目が出てしまう。
そして客商売を何年もしていれば、そういった目の変化で客がどういった心境なのか気付いてしまう。
「アラッド、中々お目当ての武器は見つからないか?」
「そうですね。まぁ、自分の体がまだまだ大きくないので、体に見合う武器がないというのが正しいですが」
アラッドが視た武器たちが、全て宜しくない出来だったというわけではない。
ただ単純にアラッドの今すぐにでも買いたいという直感が動くことはなかった。
しかし二人が五店舗目の店を訪れると……樽の中に入った一つの剣がアラッドの目に留まった。
「……」
何か驚きの言葉を発することはなく、無言で剣が入った樽へと近づき……一本の剣を手に取った。
「ほぅ……坊主、中々腕力があるな」
「ど、どうも」
「先に言っておくが、買う気がないならその剣に自分の魔力を込めるなよ」
「……人の魔力を餌とする魔剣、ということですか?」
カウンターの中に座る店主の言葉通り、剣に魔力は込めない。
ただ、魔力を込めればどうなるのかは気になる。
「餌って表現は違うな……その剣が、魔力を込めた者を主と認めるんだよ」
「なるほど。であれば、迂闊に魔力を込められませんね」
「まぁ、そんな簡単な話じゃないんだけどな」
「それは……いったいどういうことですか」
店主の話が気になり、レイ嬢も店に置かれてる武器を眺めるのを一旦止め、店主の話を集中して聞き始めた。
「そいつは、持ち主を選ぶ剣なんだよ。ダンジョンの宝箱から手に入った品だ。俺が冒険者をやってた時代に手に入れたんだが、仲間の剣士はどうやら持ち主にふさわしくないって認定されちまったんでな」
「店を構えるようになって、相応しい持ち主が現れるまで持っている……ということで合っていますか」
「あぁ、その通りだよ。冷やかしが嫌なんで……買う前に、魔力を込められるのが試したいなら、先に金貨十枚を払ってもらうぜ」
ちょっと高くないか?
と思ったアラッドだが、それでも興味がある一品ということもあり、素直に店主に金貨十枚を渡した。
デートの場所に武器屋とは、中々にアウトな場所かもしれないが……二人とも武器に感心があるので、全く問題はなかった。
寧ろ、今のレイ嬢はアラッドからプレゼントを貰ったことで、非常に上機嫌。
故にアラッドが何処に向かおうと、その態度が変わることはない……かもしれない。
そして通行人にレナルトに存在する有名どころの武器屋を教えてもらい、二人で武器屋巡り。
アラッドの愛剣は変わらず、フールから誕生日のプレゼントとして貰った鋼鉄の剛剣。
今でもその斬れ味が衰えることはないが、鋼鉄の剛剣はフールがアラッドに合うように、鍛冶師に特注で造ってもらった一品。
いずれ体格的に合わなくなる日が来てもおかしくない。
(今日、ここで買うのも悪くはない、か……だが、リンが造ってくれる武器も悪くはない……それを考えると、次の愛剣はリンが渾身の一作が出来上がるまで待つべきか?)
ハーフドワーフであるリンは、アラッドの狩りに同行する時以外は作ってもらった鍛冶場で何かしらの武器や防具を
使っている。
素材はアラッドが狩って倒すモンスターの牙や爪、骨があり……鉱石に関してはアラッドが定期的に購入しているので問題無い。
リンが造り上げた武器はアラッドではなく、同じ奴隷のメンバーであるガルシアやレオナも使用している。
ただ、それでも今日武器屋を見て回り、気になる武器があれば買おうと思っている。
それは事実だった。
(ここには、なさそうだな)
しかし、アラッドが気に入る武器などそう簡単に見つかるものではない。
男女の子供が店に入ってきた時点で、店員……店主としては冷やかしかと思ってしまう。
それでもアラッドとレイ嬢が身に着けている服装を見て、貴族の令息や令嬢だと見抜けぬほど目は腐っていない。
なので二人が落胆するような眼をしても、怒鳴って追い返すことは出来ない。
二人としてはなるべく失礼な態度を取らない様に心がけているつもりだが、ところどころで落胆の目が出てしまう。
そして客商売を何年もしていれば、そういった目の変化で客がどういった心境なのか気付いてしまう。
「アラッド、中々お目当ての武器は見つからないか?」
「そうですね。まぁ、自分の体がまだまだ大きくないので、体に見合う武器がないというのが正しいですが」
アラッドが視た武器たちが、全て宜しくない出来だったというわけではない。
ただ単純にアラッドの今すぐにでも買いたいという直感が動くことはなかった。
しかし二人が五店舗目の店を訪れると……樽の中に入った一つの剣がアラッドの目に留まった。
「……」
何か驚きの言葉を発することはなく、無言で剣が入った樽へと近づき……一本の剣を手に取った。
「ほぅ……坊主、中々腕力があるな」
「ど、どうも」
「先に言っておくが、買う気がないならその剣に自分の魔力を込めるなよ」
「……人の魔力を餌とする魔剣、ということですか?」
カウンターの中に座る店主の言葉通り、剣に魔力は込めない。
ただ、魔力を込めればどうなるのかは気になる。
「餌って表現は違うな……その剣が、魔力を込めた者を主と認めるんだよ」
「なるほど。であれば、迂闊に魔力を込められませんね」
「まぁ、そんな簡単な話じゃないんだけどな」
「それは……いったいどういうことですか」
店主の話が気になり、レイ嬢も店に置かれてる武器を眺めるのを一旦止め、店主の話を集中して聞き始めた。
「そいつは、持ち主を選ぶ剣なんだよ。ダンジョンの宝箱から手に入った品だ。俺が冒険者をやってた時代に手に入れたんだが、仲間の剣士はどうやら持ち主にふさわしくないって認定されちまったんでな」
「店を構えるようになって、相応しい持ち主が現れるまで持っている……ということで合っていますか」
「あぁ、その通りだよ。冷やかしが嫌なんで……買う前に、魔力を込められるのが試したいなら、先に金貨十枚を払ってもらうぜ」
ちょっと高くないか?
と思ったアラッドだが、それでも興味がある一品ということもあり、素直に店主に金貨十枚を渡した。
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