143 / 1,006
百四十三話 それはそれで恐ろしい
しおりを挟む
「な、なぁ……なんか、サイクロプスの動きが鈍くなってないか?」
「た、確かにそうだな」
アラッドとクロがサイクロプスとの戦闘を始めてから約三分ほどが経った。
幸いにも他のモンスターが乱入することはなく、アラッドとクロはサイクロプスとの戦いに集中出来ている。
(やっぱりこうなるよな)
ある程度戦い続ければ、目の前の様な光景になる。
それは戦い始めてから直ぐに予測できた。
サイクロプスもモンスターなので、人よりもスタミナの量は遥かに多い。
だが、血の量には当然限界がある。
(判断速度が速くても、モンスターがそこまで気を付けて戦う訳ないか)
出血の量が多くなればなるほど、動きは当然鈍くなる。
「あ、アラッド様。もしかしてこうなることが解ってて戦っていたんですか」
兵士の一人が戦闘中だと分かっていながら、アラッドに真相を尋ねた。
「はい。血を流せば流すほど動きが鈍くなる……そして判断速度も遅くなって、まともに食らう攻撃も多くなる」
戦いが始まってから全く表情を崩さなかったアラッドの考えがようやく分かった。
兵士たちも死線を一つや二つ越えてきたので、血を流せば思ったように動けなくなる感覚は知っている。
だが、それ利用した作戦を実行しようとは中々思えない。
(Cランクのモンスターを相手にそこを考えて戦うのか……やっぱり頭の出来が違うな。そりゃブラックウルフのクロが一緒に戦ってるんだから、ある程度やりやすいのかもしれないけど……動きが鈍くなり出してから、アラッド様の糸も決まりやすくなってきたよな)
戦い始めた頃は少しでも体に違和感があれば全力で引き千切っていたが、今では脚に糸を引っかければ顔面から地面に転び、腕に引っかければ直ぐには振りほどけず、クロがクリティカルヒットを与える。
高速治癒の効果は未だに機能しているが、いくら高性能スキルである高速治癒であっても、失った血までは回復することは出来ない。
「血液制作、なんてスキルがあったらこんな戦法は取れませんけど、サイクロプスがそんなスキルを持っているとは思えませんし……多分、そんなスキルはヴァンパイアとかじゃないと持ってないかと」
「そう、ですね…………そういったスキルが存在するとは思いますが、特定のモンスターしか持ってなさそうですね」
実際に魔力を消費して血液をつくりだすというスキルは存在するが、兵士の言う通り特定のモンスターしか持っていない。
「そろそろ終わりそうですね……よっと」
「ッ!!?? グ、ガ……」
アラッドはマリオネットという技を使い、サイクロプスの左腕を操って自身の顔面を殴らせた。
「ガゥッ!!!!!」
おそらく主人であるアラッドが何かしたのだろうと判断し。大きな隙を逃さず魔力を纏った爪でサイクロプスの首を切断。
頭が無くなった体は力なく倒れ、戦闘は終了した。
「よし、早速解体するか」
「あ、アラッド様。あの……いったい、最後何をしたんですか」
「最後のって言うと……サイクロプスの腕を操ったやつですか?」
「そ、そうです。それです!! って、操ったんですか!!??」
アラッドから飛び出てきた言葉に思わず三人とも驚き固まった。
「ち、力の流れをコントロールしたとか、ではなく?」
「はい、文字通り操りました。マリオネットという技です。そりゃ達人みたいに相手の力をコントロールして返すなんて技術は将来的に出来るようになりたいと思ってますけど、今はまだそんなことできませんよ」
相手の力をコントロールし、そのまま敵に返す。
それはそれで恐ろしい技術だが、兵士たちにとっては敵の体を操るアラッドのマリオネットという技も十分に恐ろしいと感じた。
(最初から使わなかったのを考えると、全快の相手には使えないのかもしれないが……いやはや、糸というスキルは本当に恐ろしいな)
そのスキルを自裁に操るアラッドの力量に感服しながら、兵士たちはクロに周囲の監視を任せて解体を手伝い始めた。
「た、確かにそうだな」
アラッドとクロがサイクロプスとの戦闘を始めてから約三分ほどが経った。
幸いにも他のモンスターが乱入することはなく、アラッドとクロはサイクロプスとの戦いに集中出来ている。
(やっぱりこうなるよな)
ある程度戦い続ければ、目の前の様な光景になる。
それは戦い始めてから直ぐに予測できた。
サイクロプスもモンスターなので、人よりもスタミナの量は遥かに多い。
だが、血の量には当然限界がある。
(判断速度が速くても、モンスターがそこまで気を付けて戦う訳ないか)
出血の量が多くなればなるほど、動きは当然鈍くなる。
「あ、アラッド様。もしかしてこうなることが解ってて戦っていたんですか」
兵士の一人が戦闘中だと分かっていながら、アラッドに真相を尋ねた。
「はい。血を流せば流すほど動きが鈍くなる……そして判断速度も遅くなって、まともに食らう攻撃も多くなる」
戦いが始まってから全く表情を崩さなかったアラッドの考えがようやく分かった。
兵士たちも死線を一つや二つ越えてきたので、血を流せば思ったように動けなくなる感覚は知っている。
だが、それ利用した作戦を実行しようとは中々思えない。
(Cランクのモンスターを相手にそこを考えて戦うのか……やっぱり頭の出来が違うな。そりゃブラックウルフのクロが一緒に戦ってるんだから、ある程度やりやすいのかもしれないけど……動きが鈍くなり出してから、アラッド様の糸も決まりやすくなってきたよな)
戦い始めた頃は少しでも体に違和感があれば全力で引き千切っていたが、今では脚に糸を引っかければ顔面から地面に転び、腕に引っかければ直ぐには振りほどけず、クロがクリティカルヒットを与える。
高速治癒の効果は未だに機能しているが、いくら高性能スキルである高速治癒であっても、失った血までは回復することは出来ない。
「血液制作、なんてスキルがあったらこんな戦法は取れませんけど、サイクロプスがそんなスキルを持っているとは思えませんし……多分、そんなスキルはヴァンパイアとかじゃないと持ってないかと」
「そう、ですね…………そういったスキルが存在するとは思いますが、特定のモンスターしか持ってなさそうですね」
実際に魔力を消費して血液をつくりだすというスキルは存在するが、兵士の言う通り特定のモンスターしか持っていない。
「そろそろ終わりそうですね……よっと」
「ッ!!?? グ、ガ……」
アラッドはマリオネットという技を使い、サイクロプスの左腕を操って自身の顔面を殴らせた。
「ガゥッ!!!!!」
おそらく主人であるアラッドが何かしたのだろうと判断し。大きな隙を逃さず魔力を纏った爪でサイクロプスの首を切断。
頭が無くなった体は力なく倒れ、戦闘は終了した。
「よし、早速解体するか」
「あ、アラッド様。あの……いったい、最後何をしたんですか」
「最後のって言うと……サイクロプスの腕を操ったやつですか?」
「そ、そうです。それです!! って、操ったんですか!!??」
アラッドから飛び出てきた言葉に思わず三人とも驚き固まった。
「ち、力の流れをコントロールしたとか、ではなく?」
「はい、文字通り操りました。マリオネットという技です。そりゃ達人みたいに相手の力をコントロールして返すなんて技術は将来的に出来るようになりたいと思ってますけど、今はまだそんなことできませんよ」
相手の力をコントロールし、そのまま敵に返す。
それはそれで恐ろしい技術だが、兵士たちにとっては敵の体を操るアラッドのマリオネットという技も十分に恐ろしいと感じた。
(最初から使わなかったのを考えると、全快の相手には使えないのかもしれないが……いやはや、糸というスキルは本当に恐ろしいな)
そのスキルを自裁に操るアラッドの力量に感服しながら、兵士たちはクロに周囲の監視を任せて解体を手伝い始めた。
239
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる