140 / 1,019
百四十話 再び連行
しおりを挟む
「さぁ、ゆっくり話してちょうだい」
「わ、分かりました」
アリサにお茶会で何が起こったか、どんな令嬢がいたのか。
それらについて色々と話した後、今度は姉であるルリナに連行されたアラッド。
まだ夕食の時間まで時間はあるので構わない。
構わないのだが、まさかルリナにまでお茶会について内容を尋ねられるとは予想していなかった。
(ルリナ姉さんも女の子だし、やっぱり恋バナは好きなんだな)
その通り。
今のところ気になっている令息がいないルリナだが、それでも恋バナは楽しいと感じるタイプなので、令嬢同士のそういった会話も問題無い。
そして弟の恋愛事情など、当然気になる。
「なるほどね……随分と特殊なお茶会だったみたいね」
「初めてのお茶会だったから、他がどういった内容なのかは分からないけど、多分その通りなんだと思います」
先日のあれが、初めてのお茶会だったという言葉に嘘はない。
それはルリナも知っている。
(お茶会で模擬戦が行われるなんて、一度も聞いたことがないわ)
探せば同じ例があるかもしれないが、少なくともルリナは全く聞いたことがない。
「それで、気になる子はいたの?」
「特にいませんでした」
もう全く隠すことなく、ストレートに言葉にした。
「え、嘘でしょ。アラッドが参加した令嬢たちはこう……選りすぐりの令嬢たちでしょ」
言葉に迷ったが、ルリナの考えは一ミリも間違っていない。
立場も容姿も中身もハイレベルな令嬢たちがお茶会に参加した。
並みの令息がお茶会に参加すれば、圧倒されて上手く言葉が出ない……という状況に追い込まれるかもしれない程に、レベルが高い令嬢の四人。
「そうかもしれないですけど、俺は今のところ恋愛とかあまり興味ないので」
「……はぁ~~~~、そういえばそうだったわね。すっかり忘れていたわ」
弟が普段からモンスターを狩るか錬金術の練度を高めるか。
それらに熱中していることをうっかり忘れていた。
だが、まだまあだ尋問タイムは続く。
「だとしてもよ! 一人ぐらい気になった子はいるでしょ。例えば……模擬戦を申し込んできた女のことか」
「レイ嬢ですか。気になるかどうかは置いといて、良い人だとは思います」
「アラッドの好みのタイプということね」
「え? えっと…………そ、そうかもしれませんね」
レイ・イグリシアスがどういった人物なのか思い出した結果、曖昧な言葉が零れた。
「確か自分よりも強くて、気に入った人としか婚約したくない……迫ってきた令息と戦ってボコボコにした令嬢でしょ」
「……良く知ってますね。ルリナ姉さん」
「アラッドがそういった話に興味無さ過ぎるのよ」
全くもって否定出来ない。
お茶会に関わるまでそんな話があったと知らず、一ミリも耳に入ってこなかった。
「で、アラッドはイグリシアス家の令嬢に勝ったわけだ」
「そうですね。お互いに全力ではありませんでしたけど、勝ちました」
「ふ~~~ん……それで、やっぱり強かった?」
「はい、強かったです」
アラッドはルリナの問いに即答した。
(おそらくそうであろう特異体質を抜きにしても、レイ嬢は強い。特異体質がなくとも磨いた才と積み重ねた鍛錬で、同じ様に迫る令息を倒すだろう。攻撃スタイルは違うかもしれないが)
実際の剣を交えたアラッドはレイが今まで積み重ねてきた努力、想いを確かに感じ取った。
「アラッドが即答するほど強いのね……でも、模擬戦に勝ったのはアラッドのわけでしょ。それを考えると……アラッド、惚れられたんじゃないの」
「冗談でも止めてください」
「冗談な訳ないでしょ」
真剣に返した言葉を、更に真剣な表情で返され、少しの間沈黙が続いた。
そして先にルリナが沈黙を破る。
「話を聞く限り、その子はアラッドが冒険者の道を進むにしても、レイさんなら付いてきてくれそうじゃない」
「それは……やはりご両親が許さないかと」
「むっ…………それは否定出来ないわね」
女っ気がない弟に、なるべく早く婚約者かそういった関係を見据えたパートナーができて欲しいと願う姉だが、弟の言葉通り……アラッドが我が道を貫くのであれば難しい問題が残っていた。
「わ、分かりました」
アリサにお茶会で何が起こったか、どんな令嬢がいたのか。
それらについて色々と話した後、今度は姉であるルリナに連行されたアラッド。
まだ夕食の時間まで時間はあるので構わない。
構わないのだが、まさかルリナにまでお茶会について内容を尋ねられるとは予想していなかった。
(ルリナ姉さんも女の子だし、やっぱり恋バナは好きなんだな)
その通り。
今のところ気になっている令息がいないルリナだが、それでも恋バナは楽しいと感じるタイプなので、令嬢同士のそういった会話も問題無い。
そして弟の恋愛事情など、当然気になる。
「なるほどね……随分と特殊なお茶会だったみたいね」
「初めてのお茶会だったから、他がどういった内容なのかは分からないけど、多分その通りなんだと思います」
先日のあれが、初めてのお茶会だったという言葉に嘘はない。
それはルリナも知っている。
(お茶会で模擬戦が行われるなんて、一度も聞いたことがないわ)
探せば同じ例があるかもしれないが、少なくともルリナは全く聞いたことがない。
「それで、気になる子はいたの?」
「特にいませんでした」
もう全く隠すことなく、ストレートに言葉にした。
「え、嘘でしょ。アラッドが参加した令嬢たちはこう……選りすぐりの令嬢たちでしょ」
言葉に迷ったが、ルリナの考えは一ミリも間違っていない。
立場も容姿も中身もハイレベルな令嬢たちがお茶会に参加した。
並みの令息がお茶会に参加すれば、圧倒されて上手く言葉が出ない……という状況に追い込まれるかもしれない程に、レベルが高い令嬢の四人。
「そうかもしれないですけど、俺は今のところ恋愛とかあまり興味ないので」
「……はぁ~~~~、そういえばそうだったわね。すっかり忘れていたわ」
弟が普段からモンスターを狩るか錬金術の練度を高めるか。
それらに熱中していることをうっかり忘れていた。
だが、まだまあだ尋問タイムは続く。
「だとしてもよ! 一人ぐらい気になった子はいるでしょ。例えば……模擬戦を申し込んできた女のことか」
「レイ嬢ですか。気になるかどうかは置いといて、良い人だとは思います」
「アラッドの好みのタイプということね」
「え? えっと…………そ、そうかもしれませんね」
レイ・イグリシアスがどういった人物なのか思い出した結果、曖昧な言葉が零れた。
「確か自分よりも強くて、気に入った人としか婚約したくない……迫ってきた令息と戦ってボコボコにした令嬢でしょ」
「……良く知ってますね。ルリナ姉さん」
「アラッドがそういった話に興味無さ過ぎるのよ」
全くもって否定出来ない。
お茶会に関わるまでそんな話があったと知らず、一ミリも耳に入ってこなかった。
「で、アラッドはイグリシアス家の令嬢に勝ったわけだ」
「そうですね。お互いに全力ではありませんでしたけど、勝ちました」
「ふ~~~ん……それで、やっぱり強かった?」
「はい、強かったです」
アラッドはルリナの問いに即答した。
(おそらくそうであろう特異体質を抜きにしても、レイ嬢は強い。特異体質がなくとも磨いた才と積み重ねた鍛錬で、同じ様に迫る令息を倒すだろう。攻撃スタイルは違うかもしれないが)
実際の剣を交えたアラッドはレイが今まで積み重ねてきた努力、想いを確かに感じ取った。
「アラッドが即答するほど強いのね……でも、模擬戦に勝ったのはアラッドのわけでしょ。それを考えると……アラッド、惚れられたんじゃないの」
「冗談でも止めてください」
「冗談な訳ないでしょ」
真剣に返した言葉を、更に真剣な表情で返され、少しの間沈黙が続いた。
そして先にルリナが沈黙を破る。
「話を聞く限り、その子はアラッドが冒険者の道を進むにしても、レイさんなら付いてきてくれそうじゃない」
「それは……やはりご両親が許さないかと」
「むっ…………それは否定出来ないわね」
女っ気がない弟に、なるべく早く婚約者かそういった関係を見据えたパートナーができて欲しいと願う姉だが、弟の言葉通り……アラッドが我が道を貫くのであれば難しい問題が残っていた。
235
お気に入りに追加
6,107
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる