58 / 1,006
五十八話 つまらない暴言なんて出てこない
しおりを挟む
「さて、とりあえず……バークとダイアは俺と模擬戦しようか」
約束通り、アラッドはバークたちに一瞬間に一度、訓練を行うことにした。
「まずはバークからだな」
「は、はい! よろしくお願いします!!」
言い終わると同時に駆け出し、上段から木剣を振り下ろす。
(思い切りの良い斬撃だな)
あっさり躱されてしまうが、振り下ろした勢いのまま崩れることなく、連続で木剣を振る。
時には突きを混ぜながらスタミナが続くまで永遠に振って振って突きまくる。
「ま、マジかよ……」
普段からバークと自分たちなりに素振りや模擬戦を行っているダイアにとって、信じられない光景だった。
(お、俺よりちょっとだけ強いバークの剣がか、掠りもしないなんて)
二人の表情を見ると、更にその差が分かる。
バークは何十回、百回近く木剣を振っているせいで息が上がっていが、対するアラッドは息一つ切れていない。
「ほい、終わりだ」
「はぁ、はぁ、あ、ありがとう、ございました」
木剣が地面に付いた瞬間を狙って優しく頭に剣先を乗せる。
力量差が十分過ぎるほど解かる一戦だった。
「次はダイアだな。遠慮せずに掛かって来い」
「う、うっす!!!」
手に持つ木斧に力を入れ、バークと同じく全力でアラッドに当てようと振りまくるが、当たる気配がしない。
頭を使ってフェイントを入れても全く引っ掛からない。
(す、すげぇ……本当に強ぇ)
逃げてばかりじゃねぇか!!! なんて言葉は出てこない。
仮にアラッドが本気で攻めれば、簡単に急所へ剣先が突き付けられてしまう。
そんな未来が分かってしまった。
結果、ダイアもバークと同じく何も出来ず頭に剣先を優しく置かれ、模擬戦は終了。
(二人とも戦闘系のスキルを授かっただけあって、かなり動けてるな。変な癖みたなところは我流で鍛えたからかな? それを正せばオーケー。素質はあるな……うん、多分ある筈だ)
決して神ではないので、二人に才能があって未来は明るいと断言は出来ない。
「あ、あの……私たちも模擬戦をした方が良いのでしょうか」
「え? あぁ~~……そうだなぁ。二人とも授かったスキルが魔法系だし、今は良いよ。ただ、後衛だからって全く接近戦で戦えなくて良いって訳じゃないからな。杖で突いたり払ったり……あと短剣も扱えると便利だな。他には鞭やフレイル、モーニングスターとか使えると敵に近づかれても対処出来る」
長所があるなら長所を重点的に鍛えるべき!!!
その意見が決して間違っていると思っている訳ではない。
ただ、アラッドとしては万が一を考えないと後で後悔するという思いの方が強かった。
「旅立つまでまだまだ時間はあるから、自分に合う武器を選んだら良いよ。フレイルとモーニングスターは今ないけど」
短剣の木製は大量にあり、鞭も少しだがある。
しかし当たり前だが木製ではないので、当たるとかなり痛い。
モーニングスターも使う者がいないので、発注しなければならない。
「あっ、あとバークとダイアも盾を使えるようになった方が良いな。あるとないとじゃ全然違うと思うから」
まだ盾の扱いは学んでいない。
だが、狩りの際に一緒に行動する兵士たちは偶にどれだけ盾が重要なのか力説する。
そしてその力説は決して間違っていない。
「ダイアは……大盾を持った方が良いかもな」
「タンクってやつですか?」
「あぁ、多分一番線が太くなりそうだからな。他三人を敵から守るのは一番お前が適してる」
敵から仲間を守る。
その言葉を気に入ったダイアのテンションは加速した。
「今すぐ訓練に入ろう!!!!」
「待て、盾に関して俺もペーペーだから教えられることがない。そっちはまた今度専門の騎士に頼む。今日はとりあえず基本的な攻撃方法と間合いの取り方。そこら辺を教える」
魔法に関してはあまり知識を外に漏らしたくないゆえ、アミットとエレナの指導はメイジの一人に任せた。
そしてアラッドはこのまま続ければ確実に戦えるようになる、といった素振りなどを教えて後はひたすら模擬戦をしながら注意点を伝えた。
(つまらないと思うかもしれないけど、基本的な動きができないと実戦で上手く動けないんだ……だから腐らず頑張れよ)
初めてドラングのあばらに一発入れたあの動きは、地道に反復を行ったからだと……そこは断言できた。
約束通り、アラッドはバークたちに一瞬間に一度、訓練を行うことにした。
「まずはバークからだな」
「は、はい! よろしくお願いします!!」
言い終わると同時に駆け出し、上段から木剣を振り下ろす。
(思い切りの良い斬撃だな)
あっさり躱されてしまうが、振り下ろした勢いのまま崩れることなく、連続で木剣を振る。
時には突きを混ぜながらスタミナが続くまで永遠に振って振って突きまくる。
「ま、マジかよ……」
普段からバークと自分たちなりに素振りや模擬戦を行っているダイアにとって、信じられない光景だった。
(お、俺よりちょっとだけ強いバークの剣がか、掠りもしないなんて)
二人の表情を見ると、更にその差が分かる。
バークは何十回、百回近く木剣を振っているせいで息が上がっていが、対するアラッドは息一つ切れていない。
「ほい、終わりだ」
「はぁ、はぁ、あ、ありがとう、ございました」
木剣が地面に付いた瞬間を狙って優しく頭に剣先を乗せる。
力量差が十分過ぎるほど解かる一戦だった。
「次はダイアだな。遠慮せずに掛かって来い」
「う、うっす!!!」
手に持つ木斧に力を入れ、バークと同じく全力でアラッドに当てようと振りまくるが、当たる気配がしない。
頭を使ってフェイントを入れても全く引っ掛からない。
(す、すげぇ……本当に強ぇ)
逃げてばかりじゃねぇか!!! なんて言葉は出てこない。
仮にアラッドが本気で攻めれば、簡単に急所へ剣先が突き付けられてしまう。
そんな未来が分かってしまった。
結果、ダイアもバークと同じく何も出来ず頭に剣先を優しく置かれ、模擬戦は終了。
(二人とも戦闘系のスキルを授かっただけあって、かなり動けてるな。変な癖みたなところは我流で鍛えたからかな? それを正せばオーケー。素質はあるな……うん、多分ある筈だ)
決して神ではないので、二人に才能があって未来は明るいと断言は出来ない。
「あ、あの……私たちも模擬戦をした方が良いのでしょうか」
「え? あぁ~~……そうだなぁ。二人とも授かったスキルが魔法系だし、今は良いよ。ただ、後衛だからって全く接近戦で戦えなくて良いって訳じゃないからな。杖で突いたり払ったり……あと短剣も扱えると便利だな。他には鞭やフレイル、モーニングスターとか使えると敵に近づかれても対処出来る」
長所があるなら長所を重点的に鍛えるべき!!!
その意見が決して間違っていると思っている訳ではない。
ただ、アラッドとしては万が一を考えないと後で後悔するという思いの方が強かった。
「旅立つまでまだまだ時間はあるから、自分に合う武器を選んだら良いよ。フレイルとモーニングスターは今ないけど」
短剣の木製は大量にあり、鞭も少しだがある。
しかし当たり前だが木製ではないので、当たるとかなり痛い。
モーニングスターも使う者がいないので、発注しなければならない。
「あっ、あとバークとダイアも盾を使えるようになった方が良いな。あるとないとじゃ全然違うと思うから」
まだ盾の扱いは学んでいない。
だが、狩りの際に一緒に行動する兵士たちは偶にどれだけ盾が重要なのか力説する。
そしてその力説は決して間違っていない。
「ダイアは……大盾を持った方が良いかもな」
「タンクってやつですか?」
「あぁ、多分一番線が太くなりそうだからな。他三人を敵から守るのは一番お前が適してる」
敵から仲間を守る。
その言葉を気に入ったダイアのテンションは加速した。
「今すぐ訓練に入ろう!!!!」
「待て、盾に関して俺もペーペーだから教えられることがない。そっちはまた今度専門の騎士に頼む。今日はとりあえず基本的な攻撃方法と間合いの取り方。そこら辺を教える」
魔法に関してはあまり知識を外に漏らしたくないゆえ、アミットとエレナの指導はメイジの一人に任せた。
そしてアラッドはこのまま続ければ確実に戦えるようになる、といった素振りなどを教えて後はひたすら模擬戦をしながら注意点を伝えた。
(つまらないと思うかもしれないけど、基本的な動きができないと実戦で上手く動けないんだ……だから腐らず頑張れよ)
初めてドラングのあばらに一発入れたあの動きは、地道に反復を行ったからだと……そこは断言できた。
248
お気に入りに追加
6,098
あなたにおすすめの小説
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
私のスキルが、クエストってどういうこと?
地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。
十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。
スキルによって、今後の人生が決まる。
当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。
聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。
少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。
一話辺りは約三千文字前後にしております。
更新は、毎週日曜日の十六時予定です。
『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる~今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い~
平山和人
ファンタジー
主人公のカイトは、ラインハルト王太子率いる勇者パーティーの一員として参加していた。しかし、ラインハルトは彼の力を過小評価し、「結界魔法しか使えない欠陥品」と罵って、宮廷魔導師の資格を剥奪し、国外追放を命じる。
途方に暮れるカイトを救ったのは、同じ孤児院出身の幼馴染のフィーナだった。フィーナは「あなたが国を出るなら、私もついていきます」と決意し、カイトとともに故郷を後にする。
ところが、カイトが以前に張り巡らせていた強力な結界が解けたことで、国は大混乱に陥る。国民たちは、失われた最強の結界師であるカイトの力を必死に求めてやってくるようになる。
そんな中、弱体化したラインハルトがついにカイトの元に土下座して謝罪してくるが、カイトは申し出を断り、フィーナと共に新天地で新しい人生を切り開くことを決意する。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる