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三十八話 その二つを購入

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「……店長、状態異常やデバフ系を全てレジストするマジックアイテムとかはないのか?」

「全て、ですか……あるにはありますが、色襲の警鈴と同じくダンジョン産の一品となります。そしてランクは一つ上の六となりますので、それなりのお値段となりますが……」

コレアットがアラッドの顔色を窺うのも仕方ない。
ランク六のマジックアイテムともなれば、白金貨数十枚単位の物まである。

「構わない、一先ず見せてほしい」

「かしこまりました、少々お待ちください」

商品を取ってくるために、コレアットは少しの間席を外す。

後ろで立っている護衛たちは、アラッドが儲けた金額に驚きを隠せないでいた。
コレアットの紹介でいくつかマジックアイテムを見たが、アラッドの表情は全く動揺していない。

ランク六のマジックアイテムと聞いても、その表情は崩れない。
つまり、ランク六のマジックアイテムでも余裕で買える程の財力が今のアラッドにはあるということになる。

(リバーシでかなり稼いでいるとは思っていたが、まさかここまで稼いでいるとは……しかもそれを義理の兄であるギーラス様の為に使う……本当にアラッド様は優しい方ですね)

普通は中の良い兄弟であっても、サラッと白金貨数十枚を兄や弟の為に使うことはない。
そもそも子供が自分の力でお金を稼ぐことはほぼ不可能なので、アラッドだけが例外中の例外と言えるだろう。

「お待たせしました。こちらが邪破の指輪となります。毒や麻痺などは勿論、石化やデバフ等を無効。そして精神耐性の効果も付与されています。そして先程の色襲の警鈴もですが、こちらは防犯機能が付与されています」

「防犯機能というと、最初に魔力を込めた者にしか使えないという効果か」

「その通りです。ですので、ギーラス様が魔力を込めればギーラス様を主と認識して他の者が身に着けても、効果を発揮しません。もし盗難に遭遇した場合、持ち主の頭に信号を送ります」

ダンジョン産のマジックアイテムに付与されている効果にアラッドはとても満足していた。

(防犯機能まで付いているマジックアイテムは珍しいな……俺もいずれ錬金術を使う者として、得たい技術だな)

マジックアイテムを造り出す錬金術師も道具に防犯機能を付与することは出来るが、それ相応の腕がなければ付与することができない。

「それで、お値段なのですが……こちらは白金貨二十四枚となります」

「「「ッ!!!!」」」」

後ろで待機している三人は、思わず出そうになった声を必死で抑えた
白金貨二十四枚……日本円になおせば二十四億円。

アラッドも普段であれば目玉が飛び出そうな金額ではあるが、今はギーラスの安全のためと考えると不思議と頭は冷静だった。

「……分かった。色襲の警鈴と邪破の指輪を売ってくれ。合計で白金貨二十七枚と金貨三十枚だな」

「え、えぇ。その通りですが「ほい。ちゃんと枚数通りあると思うが、一応そっちで数えてくれ」ッ!!!! か、かしこまりました!!」

アラッドはアイテムポーチの中からあっさりと白金貨二十七枚と金貨三十枚を取り出した。
コレアットは慌てて鑑定を使いながら枚数を数え、本物の白金貨が二十七枚と金貨三十枚がテーブルに置かれたのを確認した。

「丁度あります。それでは……この二つをお買い上げということで宜しいでしょうか」

「あぁ、良い買い物ができた」

「そう言って頂けると光栄です」

最初に紹介した指輪二つを買うと予想していた。
少し背伸びをして、色襲の警鈴を買うかもしれないと思っていたが、まさか結界魔法を使用して厳重に保管しているマジックアイテムのうちの一つを買うとは全く予想していなかった。

(商人としては高値の商品が売れるのは大変嬉しいことですが、まさか破邪の指輪をお買いになるとは……正直驚きでしたね)

ここ最近で一番驚いた一件と言っても過言ではなかった。

(何はともあれ、大金をサラッと支払ったのを考えると、定期的に訪れる乗客と考えても良さそうですね)

この日、コレアットの上客リストにアラッドの名前が追加された。
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