30 / 1,019
三十話 それだけで構わない
しおりを挟む
「商品として売る、か……そうだね。確かにこのゲーム……リバーシは売れる。ナダックはどう思う?」
「自分もこれは売れると思います。アラッド様、これは木と塗料だけで作ったんですよね」
「はい。木と塗料だけで作りました。貴族や豪商から要望があれば鉱石や宝石を使った特注品を作ればいい……けど、一般人が使うぶんには木と塗料だけで問題無いかと」
「……フール様、これは絶対に商品として売るべきです!! 現時点で財政難という訳ではありませんが、アラッド様はお作りになったリバーシを懇意にしている商会から売れば懐か暖かくなるのは確実かと」
ナダックはざっと……本当にざっとリバーシを商品として売り、パーシブル家に入ってくる利益を考えると頭が沸騰しそうになった。
「そうだね……是非ともそうしよう。だが、商品として売り出す前に決めないといけないことがある。これを作ったのはアラッドだ。売ることによって発生する金額のうち、何割を権利として受け取るのか」
この世界にも著作権に近いものが存在する。
故に、もしかしたらフールに恩を返せるかもしれないと思って作ったリバーシの売り上げによっては、子供で億万長者になることも不可能ではない。
「えっと……その権利というのは一般的に何割ぐらいなんですか?」
「こういった物に関しては大体四割から五割が相場だね」
リバーシを売れば大金が入ってくるのは容易に想像できる。
だが、フールはパーシブル家がそれを受け取っても良いのか迷っていた。
商品として売り出すまでは大人であるフールたちの力が必要だ。
ただ……フールはこの一時間近くでリバーシにどっぷりとハマった。
こんな面白いゲームと自分たちが商品にするまでの労力……それが釣り合っているとは思えなかった。
しかしアラッドも同じようなことを考えていた。
今回リバーシを作ったのはフールに対する恩を返すため。
だが、今後のことを考えると多少なりともお金は欲しい。
「それでは、三割を権利として主張します。そのうち、二割はパーシブル家に入れてください」
それがアラッドの答えだった。
「あ、アラッド様。もう少し自分の権利を主張しても良いのですよ。このリバーシというのは素晴らしい娯楽です」
「その通りだよ、アラッド様。これは絶対に売れる確証できる。権利として五割を主張しても通るよ」
二人の言う通りではあるのだが、アラッドの考えは変わらなかった。
「いえ、それで十分ですよ」
「……そうか。アラッドがそういうなら、言う通りにしよう。しかし、パーシブル家の取り分が二割でいいのかい?」
「えぇ、勿論です。元々パーシブル家に利益をもたらすかと思って作った娯楽なので」
「君は、本当に大人びてるね……有難う。その気持ち、大事にさせてもらうよ。このリバーシは少し預からせてもらっても良いかい?」
「はい、大丈夫です」
伝えたい事を伝え、上手くことが進んだアラッドは上機嫌な様子で執務室から出た。
「……まだ時間はあるし、いくつか作るか」
まだまだ木も塗料もあるので、庭に戻ったアラッドは五台ほどリバーシを作ってから訓練に戻った。
そして夕食を食べ終えたあと、第一夫人であるエリア。第二夫人であるリーナ。血の繋がった母であるアリサに一台ずつリバーシを渡した。
既にこれがどのような娯楽なのか聞いているので、三人は早速側近のメイドたちを相手にゲームを始めた。
「グラストさん、これ」
「……アラッド様。これはいったいどのような物なのでしょうか」
騎士や兵士たち用に一台渡すが、グラストはまだリバーシがどのような娯楽なのか聞いていなかった。
なのでサラッと遊び方を教え、実際に一ゲーム行う。
結果、当然アラッドが勝利した。
「こんな感じで、最後の色が多い方が勝ちって感じ」
「これは……実に面白い娯楽ですね」
「そう言ってもらえると嬉しいです。父さんにも渡しているので、後日商品として売り出されます。ただ、現時点はこの家の人しか持っていません」
「な、なるほど。そのような物を……有難く頂戴します」
「順番を守って遊んでくださいね」
グラストと別れたアラッドは最後にギーラスの部屋へと向かった。
「自分もこれは売れると思います。アラッド様、これは木と塗料だけで作ったんですよね」
「はい。木と塗料だけで作りました。貴族や豪商から要望があれば鉱石や宝石を使った特注品を作ればいい……けど、一般人が使うぶんには木と塗料だけで問題無いかと」
「……フール様、これは絶対に商品として売るべきです!! 現時点で財政難という訳ではありませんが、アラッド様はお作りになったリバーシを懇意にしている商会から売れば懐か暖かくなるのは確実かと」
ナダックはざっと……本当にざっとリバーシを商品として売り、パーシブル家に入ってくる利益を考えると頭が沸騰しそうになった。
「そうだね……是非ともそうしよう。だが、商品として売り出す前に決めないといけないことがある。これを作ったのはアラッドだ。売ることによって発生する金額のうち、何割を権利として受け取るのか」
この世界にも著作権に近いものが存在する。
故に、もしかしたらフールに恩を返せるかもしれないと思って作ったリバーシの売り上げによっては、子供で億万長者になることも不可能ではない。
「えっと……その権利というのは一般的に何割ぐらいなんですか?」
「こういった物に関しては大体四割から五割が相場だね」
リバーシを売れば大金が入ってくるのは容易に想像できる。
だが、フールはパーシブル家がそれを受け取っても良いのか迷っていた。
商品として売り出すまでは大人であるフールたちの力が必要だ。
ただ……フールはこの一時間近くでリバーシにどっぷりとハマった。
こんな面白いゲームと自分たちが商品にするまでの労力……それが釣り合っているとは思えなかった。
しかしアラッドも同じようなことを考えていた。
今回リバーシを作ったのはフールに対する恩を返すため。
だが、今後のことを考えると多少なりともお金は欲しい。
「それでは、三割を権利として主張します。そのうち、二割はパーシブル家に入れてください」
それがアラッドの答えだった。
「あ、アラッド様。もう少し自分の権利を主張しても良いのですよ。このリバーシというのは素晴らしい娯楽です」
「その通りだよ、アラッド様。これは絶対に売れる確証できる。権利として五割を主張しても通るよ」
二人の言う通りではあるのだが、アラッドの考えは変わらなかった。
「いえ、それで十分ですよ」
「……そうか。アラッドがそういうなら、言う通りにしよう。しかし、パーシブル家の取り分が二割でいいのかい?」
「えぇ、勿論です。元々パーシブル家に利益をもたらすかと思って作った娯楽なので」
「君は、本当に大人びてるね……有難う。その気持ち、大事にさせてもらうよ。このリバーシは少し預からせてもらっても良いかい?」
「はい、大丈夫です」
伝えたい事を伝え、上手くことが進んだアラッドは上機嫌な様子で執務室から出た。
「……まだ時間はあるし、いくつか作るか」
まだまだ木も塗料もあるので、庭に戻ったアラッドは五台ほどリバーシを作ってから訓練に戻った。
そして夕食を食べ終えたあと、第一夫人であるエリア。第二夫人であるリーナ。血の繋がった母であるアリサに一台ずつリバーシを渡した。
既にこれがどのような娯楽なのか聞いているので、三人は早速側近のメイドたちを相手にゲームを始めた。
「グラストさん、これ」
「……アラッド様。これはいったいどのような物なのでしょうか」
騎士や兵士たち用に一台渡すが、グラストはまだリバーシがどのような娯楽なのか聞いていなかった。
なのでサラッと遊び方を教え、実際に一ゲーム行う。
結果、当然アラッドが勝利した。
「こんな感じで、最後の色が多い方が勝ちって感じ」
「これは……実に面白い娯楽ですね」
「そう言ってもらえると嬉しいです。父さんにも渡しているので、後日商品として売り出されます。ただ、現時点はこの家の人しか持っていません」
「な、なるほど。そのような物を……有難く頂戴します」
「順番を守って遊んでくださいね」
グラストと別れたアラッドは最後にギーラスの部屋へと向かった。
295
お気に入りに追加
6,107
あなたにおすすめの小説
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
殿下、恋はデスゲームの後でお願いします
真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた!
いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。
自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。
そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!!
王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!?
短編なのでさらっと読んで頂けます!
いつか長編にリメイクします!
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる