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千六十八話 契約完了

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「っ、どうやら戻ってきたみたいですね」

「チっ!」

ドアが激しくノックされた。

ジブラが戻ってきたという合図であり、それに対してソウスケは一切隠すことなく舌打ちした。

「これでどうだ!!!!」

「拝借しますね」

ジブラが手に持つ書類を受け取り、男性職員は素早く目を通していく。

「……失礼します」

携帯しているアイテムバッグからモノクルを取り出し、サインされている箇所を確認。

「…………確認いたしました。こちらの書類は、ギルドで預からせていただきます。それでは、ジブラさんが所属するクランの了承も得られたことで、手続きを進めていきますね」

職員はジブラがクランハウスに向かっていた間に取り寄せていた契約書を取り出し、実際に今回の件でジブラが結ぶ契約を記していく。

(物凄く今更な話ではあるけど、今のジブラさん……ちょっと熱くなり過ぎてるんだよな)

今回の契約、勝負に関して……ジブラが勝った場合、あのソウスケに勝ったという名声は得られるかもしれないが。
その他に得られる物が一切ない。

そもそも噂だけで持ち上げられているソウスケが気に入らないジブラからすれば、それでも構わないのだが……ギルド職員の男性からすれば、ここまでの契約を交わして行うことなのかと思ってしまう。

「それでは、こちらに署名して、その後に魔力を流してください」

「おぅよ」

今のところ、レイウルでソウスケの正確な実力を知っている者は……いない。

何故なら、バラスタやベルダといった上位ランクの冒険者の中にもソウスケの実力を認めている者はいないが、両者の中で強く印象に残っているのは……ザハークの強さ。

Aランクモンスターをソロで倒し、自身の全力をぶつけても本気で対処しなかった怪物。

バラスタやベルダから視て、ソウスケがただ者ではないことは解る。
ただ、明確な戦闘光景をあまり観てないからこそ、細かい判断が出来ない。

それもあって、ジブラは頑なにソウスケが噂通りの実力者だとは思えず、噂通りの実力者だという話もあまり広まらない。

(しかし、実力勝負ではなく狩り勝負であれば…………そういえば、ソウスケさんは空間系スキルを有していて、大量に稼いでいるらしいというのを考えると……やっぱり無理そうですね)

狩りを行う際に、どういった武器やアイテムを使用してはならないというルールは定めていない。

ジブラも知人友人に即効性のある猛毒を貰う事も出来るが、ソウスケはソウスケでこれまで手に入れてきた魔剣や魔斧、その他のマジックアイテムなども使用しても問題無い。

「契約が完了しました。それでは、五日後以内に再度連絡を致しますので、それまでは街中から出ないようにお願いします」

狩り勝負の最中、二人をギルドが選んだ者たちが見張るのので無意味な事ではあるが、ズルを行えないようにするため、二人は五日間は街から出られない。

ソウスケとジブラもその意図は解るため、特に文句は言わなかった。

その後、ジブラは絡んでくることはなく、ソウスケはミレアナたちと無事合流。

「どうでしたか?」

「スムーズに進んだとは思う。ただ、ギルドから五日以内に連絡が来るから、それまでは街から出ないでくれって言われた」

「不正対策ですか」

「だろうな。だから、その期間の間は武器を造って造って造ってって感じかな」

まだまだ武器を造る材料は残っているため、これまで通り缶詰状態で武器を造り続けても問題は無い。

「では、私もそうしましょう」

「俺もそうしよう」

「二人とも、ドラゴニックバレーに行きたかったら二人で行ってきても良いんだぞ」

ソウスケという存在がいると、非常に探索しやすいのは間違いない。

しかし、ミレアナとザハークだけでも探索を行うのに不便はなく、戦力的にも不足はない。

「せっかくグロードさんから合格点を貰ったのですから、感覚が戻ってきたうちに造ろうかと」

「同じく」

それらしい理由を口にするも、二人はただ心配性なだけだった。
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