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千五十九話 バカと理解してない

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「しかし、甘い匂いが漂っている、ですか…………それはもう、あれですよね。どうしようもないという事ですよね」

「だね~~~」

どうしようもない、という言葉にソウスケはただ頷くしかなかった。

ソウスケは既に冒険者として功績を多く積み重ねていた。
その功績は消えることはなく、今後も冒険者として活動を積み重ねていけば、その功績は増えていく。

「……雲隠れでもしない限り、落ち着くことはなさそうですね」

「あっはっは。かもしれないね……でも、もうそこに関しては今更だから、仕方ないよ」

外見に関しては、今後の成長次第で多少変わるものの、せいぜい変わるのは身長や体格程度。

ソウスケの可もなく不可もない顔まで変わることはない。

「…………ですが、あれですね。DランクやCランクの冒険者が絡んでくることは予想していましたが、まさかBランクの冒険者がソウスケさんにバカな絡み方をするとは」

ソウスケより歳上ではあるが、冒険者歴はソウスケと同じ。
そんなミレアナは、なんとなくBランク以上の冒険者たちは、あまり馬鹿な真似はしないと思っていた。

ランクが上がれば上がるほど、立場や責任が増す。
加えて……そこまで上り詰めたにもかかわらず、ソウスケの様な見た目が強そうではない相手にバカ絡みして負けたとなれば、大きく評判を落とすことになる。

「あぁ~~、そういえばそうだね。これまでバカ絡みしてきたのって……確かに、DランクとかCランクの冒険者しかいなかった気がするな」

Bランクの冒険者であっても、ソウスケに嫉妬する者はいた。

それはミレアナの様な超美女エルフと共に行動している事以外にも、超強いパーティーメンバーであるミレアナ、そして従魔であるザハークと共に行動ししている安全性に嫉妬する者もいた。

人によって様々ではあるが、ランクが上がれば上がるほど、安全性を重視する者はそれなりにいる。
そんな冒険者たちからすれば、ソウスケが共に行動しているメンバー……身に付けている装備品など、非常に羨ましい限り。

だが、単純な戦闘力だけで生き抜くのが難しい域にまで到達したからこそ、バカな真似をしなくなる。

「……でも、割と若かったからな~~」

「もしや、ソウスケさんと同じぐらいの年齢ですか」

「いや、そこまで若くなかった。でも……ん~~~~、多分二十かギリ越えてないかぐらい?」

「なるほど…………それはこう、人族的にはまだまだ無茶をするというか、バカな事をバカと理解しない年齢でしょうか」

サラッと酷い事を口にするミレアナ。

(二十歳か十九歳だと……前の世界だと、年齢的にはまだ大学生だよな。大学生の知り合いなんていないけど……バカ○ターとかは高校生とか、大学生専門生が多かった気がするし、ミレアナの言う通りバカな事をバカな事だと理解してない年齢なのかも)

肉料理を頬張りながら、その通りだなと納得するソウスケ。

「かもしれないね……もしかしたらだけど、いきなり俺に勝負しろって言ってきた点に関してはアウトだし、対価を
用意してなかったのも更にアウトだけど、大手クランに所属してるのにその名前を使わなかったところを考えれば、まだ本当のバカよりも大人しいバカなのかも」

「ふむ………………しかし、結局のところバカであることに変わりはありませんよね」

「あっはっは!!! それもそうだな。あっ、そういえばさ、俺たちが造った物をグロードさんの店で売れるかもしれない」

「?」

いきなり話が飛び、どういう事なのかと首を傾げるミレアナ。

しかし、ソウスケからしっかりと話を聞き、概ね理解した。

「では……私は自信作と言える杖を造れば良いのですね」

「そういう事。もう…………五体以上はドラゴンを討伐してるわけだし、素材は十分だよね」

「えぇ、勿論です」

十分過ぎるほど素材が揃っている為、ミレアナは久しぶりに心の炎が灯り、燃え上がっていた。
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