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千百三十四話 仇討ち
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「そこのエルフと少年と……オーガ。ちょっといいかい」
背後から聞こえてきた声の方に振り返ると、そこには比較的長身であるミレアナよりも身長が高く、ガタイの良い女性がいた。
「えっと、俺たちに何かご用でしょうか」
「そうだよ……あんたが、リーダーのソウスケって冒険者で合ってるかい」
「あ、はい。そうです」
面倒事の予感がする。既に自身の見た目、名前を知られてしまっている。
だが……面と向かってみると、自分に負の感情をぶつけられてるわけではない事に気付く。
(あ、あれ? 俺の事が気に入らないから声を掛けて来たとか、そういう人ではない、のか?)
面倒事の予感というのは、自分の考え過ぎだったかもしれない。
そう思ったのも束の間……女性の鋭い視線がソウスケとミレアナではなく、ザハークに向けられた。
「それじゃあ、そっちのザハークが従魔のオーガが合ってるかい」
「はい。こいつは俺の従魔のザハークです……えっと、以前何処かでザハークに会ったことが?」
ザハークは自然界に生息していたオーガではなく、元はダンジョンで生まれたゴブリン。
なので、グレンゼブル帝国の冒険者が過去、ザハークに出会った事があるという可能性はほぼほぼない。
「ないよ。ただ……こいつがあのヴァレードタイガーを倒したんだろ」
「へっ……あっ、はい! そうですね。先に戦ってたのはクラン深紅に所属してるバラスタさんたちだったんですけど、途中からザハークが戦うことになって、結果的に倒したのはザハークになりました」
ソウスケも……一応ザハークも先に戦っていたのはバラスタたちだと答える。
しかし、先に戦っていたバラスタたち本人からすれば、あのヴァレードタイガーを倒したのはほぼザハークの力あっての結果だと答える。
「そう…………なら、うちと戦ってちょうだい」
「…………えっと、何故?」
自分やミレアナではなく、ザハークが絡まれている。
しかも、女性冒険者に絡まれているという、非常に珍しい状況が目の前で起こっていた。
だからこそ、ソウスケはあまり考える余裕がなかった。
少し考え込めば解った筈の答えも、この時のソウスケには本当に考える余裕がなかった。
「うちの友人が、あの傷だらけのヴァレードタイガーに殺された。あいつは、私が殺すはずだったのよ」
「あっ……なるほど。そういう、事でしたか」
答えを聞いて、ソウスケは少し後悔した。
少なくとも、通行人がいる場で答えを引き出すべきではなかった。
(…………く、空気が痛い)
なんとなく、自分がそう感じてるだけ、ただの錯覚かもしれない。
それでも、非常に居心地が悪いと感じたソウスケ。
「え、えっと、一旦そこら辺のカフェにでも移動しませんか」
ソウスケの提案に、ガタイの良い女性……ベルダは短く「分かった」と答えた。
一応本人は自分が頼み込んでいる側という自覚はあるため「なんでよ。わざわざ移動する必要なんてないでしょ」と、刺々しさ全開で返すことはなかった。
「それで、古傷? が多く刻まれていたヴァレードタイガーというのが、ベルダさんの友人の仇だったと」
「そうだよ。確かにドラゴニックバレーには他にもヴァレードタイガーの目撃情報はある。でもね、傷だらけになりながらもドラゴニックバレーに生息してる個体はあいつしかいないのよ」
「な、なるほど」
バラスタからもそれらしい話は聞いていたため、ソウスケはベルダの話が嘘だと疑う要素がなかった。
ヴァレードタイガーはBランク冒険者どころか、対戦相手がAランクの冒険者であっても噛み殺せる、裂き殺せるだけの戦闘力を有している。
「うちが殺すはずだった……けど、あんたの従魔が先に殺した…………だから、あんたの従魔、ザハークと戦わせて」
まぁまぁな暴論、無茶頼みである。
だが、ソウスケは直ぐに答えを出せなかった。
背後から聞こえてきた声の方に振り返ると、そこには比較的長身であるミレアナよりも身長が高く、ガタイの良い女性がいた。
「えっと、俺たちに何かご用でしょうか」
「そうだよ……あんたが、リーダーのソウスケって冒険者で合ってるかい」
「あ、はい。そうです」
面倒事の予感がする。既に自身の見た目、名前を知られてしまっている。
だが……面と向かってみると、自分に負の感情をぶつけられてるわけではない事に気付く。
(あ、あれ? 俺の事が気に入らないから声を掛けて来たとか、そういう人ではない、のか?)
面倒事の予感というのは、自分の考え過ぎだったかもしれない。
そう思ったのも束の間……女性の鋭い視線がソウスケとミレアナではなく、ザハークに向けられた。
「それじゃあ、そっちのザハークが従魔のオーガが合ってるかい」
「はい。こいつは俺の従魔のザハークです……えっと、以前何処かでザハークに会ったことが?」
ザハークは自然界に生息していたオーガではなく、元はダンジョンで生まれたゴブリン。
なので、グレンゼブル帝国の冒険者が過去、ザハークに出会った事があるという可能性はほぼほぼない。
「ないよ。ただ……こいつがあのヴァレードタイガーを倒したんだろ」
「へっ……あっ、はい! そうですね。先に戦ってたのはクラン深紅に所属してるバラスタさんたちだったんですけど、途中からザハークが戦うことになって、結果的に倒したのはザハークになりました」
ソウスケも……一応ザハークも先に戦っていたのはバラスタたちだと答える。
しかし、先に戦っていたバラスタたち本人からすれば、あのヴァレードタイガーを倒したのはほぼザハークの力あっての結果だと答える。
「そう…………なら、うちと戦ってちょうだい」
「…………えっと、何故?」
自分やミレアナではなく、ザハークが絡まれている。
しかも、女性冒険者に絡まれているという、非常に珍しい状況が目の前で起こっていた。
だからこそ、ソウスケはあまり考える余裕がなかった。
少し考え込めば解った筈の答えも、この時のソウスケには本当に考える余裕がなかった。
「うちの友人が、あの傷だらけのヴァレードタイガーに殺された。あいつは、私が殺すはずだったのよ」
「あっ……なるほど。そういう、事でしたか」
答えを聞いて、ソウスケは少し後悔した。
少なくとも、通行人がいる場で答えを引き出すべきではなかった。
(…………く、空気が痛い)
なんとなく、自分がそう感じてるだけ、ただの錯覚かもしれない。
それでも、非常に居心地が悪いと感じたソウスケ。
「え、えっと、一旦そこら辺のカフェにでも移動しませんか」
ソウスケの提案に、ガタイの良い女性……ベルダは短く「分かった」と答えた。
一応本人は自分が頼み込んでいる側という自覚はあるため「なんでよ。わざわざ移動する必要なんてないでしょ」と、刺々しさ全開で返すことはなかった。
「それで、古傷? が多く刻まれていたヴァレードタイガーというのが、ベルダさんの友人の仇だったと」
「そうだよ。確かにドラゴニックバレーには他にもヴァレードタイガーの目撃情報はある。でもね、傷だらけになりながらもドラゴニックバレーに生息してる個体はあいつしかいないのよ」
「な、なるほど」
バラスタからもそれらしい話は聞いていたため、ソウスケはベルダの話が嘘だと疑う要素がなかった。
ヴァレードタイガーはBランク冒険者どころか、対戦相手がAランクの冒険者であっても噛み殺せる、裂き殺せるだけの戦闘力を有している。
「うちが殺すはずだった……けど、あんたの従魔が先に殺した…………だから、あんたの従魔、ザハークと戦わせて」
まぁまぁな暴論、無茶頼みである。
だが、ソウスケは直ぐに答えを出せなかった。
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