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千百十話 早い早い

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「「ギィィィアアアアアアアアッ!!!!」」

同族が一体……一瞬で殺されてしまった。
それに関して驚きはある。思うところもあるが、残り二体は背を見せて逃げることはなく、最後までザハークを食らおうとした。

「思っていた通り、ここは良いな」

「「…………」」

しかし、一分も経たず、残り二体もザハークの手によって叩きのめされ、撃沈。

ミレアナはザハークが狩ったワイバーンの血抜きを行い、少しでも早く終わらせようと、そのまま解体に移った。

「足を踏み入れて早々、火竜一体とワイバーンが三体、か……ドラゴンの楽園だからこその、襲撃者たちだったな」

「そうですね」

「ソウスケさん、次は俺が戦っても良いか」

さっき三体のワイバーンと戦っただろ、っとツッコまず、ソウスケは笑顔で頷いた。

「あぁ。次はザハークの番だ」

リーダーから正式に許可が出たということもあり、戦る気が漲る。

だが……火竜やワイバーンの解体を終えてから約十分間……パタリと襲撃がなくなった。

「…………何故だ、どうしてだ」

絶望、するにはまだ早い。
まだドラゴニックバレーに足を踏み入れてから一日も……半日どころか、数時間も経ってない。

とはいえ、ザハークからすれば足を踏み入れてから一分も経たずに火竜が襲撃してきたこともあり、十分もあれば数体のBランクドラゴンが遅いに来るかもしれないとワクワクしていた。

だが、想定とはことなり、ぱとりと襲撃はなくなった。

「いやいやいや、そんな絶望顔するには早いって、ザハーク」

「そうですよ、ザハーク。今日の探索が終われば、二度と来ないという訳ではないのですから」

「むっ……そう、だな。二人の言う通りだな」

ミレアナの言う通り、ドラゴニックバレーを探索するのは今日だけではない。

寧ろ、ソウスケたちはドラゴニックバレーを冒険するのがメインでグレンゼブル帝国にやって来た。
最寄り街であるレイウルに数か月は滞在するつもりである。

「……だが、何故急に襲撃がピタリと止まったのだろうな」

「元々この辺りで生活しているドラゴンが少ないのか……もしくは、俺たちの戦いをしっかり観察してた個体がいたのかもな」

ドラゴンが冷静に観察? 
疑問を感じなくもない内容だが、知能が高まれば高まるほど……逆にどんな行動をとってもおかしくないと考えられる。

「単純に、火竜が三人ではなく一人の人間に倒された。それを見て警戒されたのかもしれませんね」

「なるほど……ドラゴンたちにそこまで考えられる頭があるのかは解らないが、Bランクの火竜を一人で倒せる人間がいる。その人間の傍にもう二人いる。全員で戦えば、Aランクのでも倒されかねない……と考えるかもしれないな」

「ですね。そこまで考えられずとも、本能で察するかもしれません」

仕掛けられれば……もしくは何かしらの因縁があれば、相手が強敵であろうが自分から襲い掛かってもおかしくない。

だが、一部そういったドラゴンがいるにはいるが、全てのドラゴンが人間を見つければ全力で襲い掛かってくるわけではない。

感知、察知力が高い冒険者がソウスケの不気味さに気付くのと同じく、仮に火竜とソウスケとの戦いを観ていた個体がいれば……何故あの様な外見から強さを感じさせない人間がと……強さは感じ取れなくとも、不気味さは感じ取ることが出来る。

「後は、ザハークは一人で、あっという間にワイバーンを倒してしまったからというのもあるでしょう」

「そうか……しかし、ドラゴン間の上下関係は解らないが、ワイバーンが殺されたという情報は、そこまで警戒に値するのか?」

「…………もっと言うと、ワイバーンが三体いる時に同時に放ったブレス……あれは、火竜が放つブレスと同等の火力を有していた筈です」

「確か、ザハークはそれ、一瞬で対応してたよね」

対応どころか、あっという間に両断し、そのまま三体の内一体を討伐した。
ザハークはザハークで脅威的な戦闘力を見せ付けた。

(……二人の言う通り、気長に待とう)

物欲センサーが働いていたのか、数十分後……注文通りの相手が仕掛けてきた。
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