1,049 / 1,135
千九十話 吠える暇があるなら
しおりを挟む
「ガァアアアアッ!!!!!」
「ッ、ふぅーーーー……っ」
ミレアナは動いた。
動いて動いて……動いた。
ただ、雷竜が放つ攻撃を対処するだけで、反撃はしない。
最初は強化系のスキルを使用し、旋風を纏って更に強化していた。
しかし、途中から旋風を纏わず、必要な時だけ魔力を纏って、迫る雷爪や雷尾をいなす。
(……我ながら、バカな事をしてますね)
戦いは嫌いではない。
ソウスケやザハーク程ではないが、戦いを楽しんでいる自分がいることは解っていた。
それでも……わざわざギリギリ攻めたり、相手の戦力に合わせて自身の身体能力を下げるような真似はしなかった。
(っ、雷竜もまだ全力を出しては、いませんでしたか)
ミレアナが旋風を解除してから数十秒後、誤差の範囲ではあるが、雷竜の移動速度が増した。
当れば無視出来ないダメージを食らってしまうと解っている。
それはしっかり理解しているので……把握力を高め、変わらずギリギリで回避する。
「~~~~~~~~~~ッ!!!!!」
躱され、躱され、いなされ、また躱されて……そんなミレアナの行動に苛立ちを隠せなくなった雷竜。
自分に戦いを挑んできた。
そういった意志を向けている筈なのに、何故か避ける、いなすだけで攻撃してこない。
ドラゴンである雷竜は他のモンスターと比べて大なり小なり差はあれど、知能がそれなりに高い。
自分に挑んできた人物が、結果として逃げたり避けたり防いだりといった選択肢しか取れないのと、ただ攻める気がなく避けていなしているだけの差は感じ取れる。
その差は、表情を見れば一目瞭然。
攻められるチャンスがないと感じ、避けたり防ぐことしか出来てない敵対者は、人間であろうとモンスターであろうと、表情に焦りが浮かんでいる。
だが……今現在自分と戦っているエルフは、戦意こそ感じても、表情は至って冷静。
ギリギリで雷爪を、雷尾を躱そうとも、顔に焦りが欠片も浮かぶことはない。
ミレアナは、決して雷竜を嘗めるような表情は浮かべなかった。
それでも、雷竜がそう感じるのも無理はなく……苛立ちが頂点に達した雷竜は上空に飛び上がり、雷のブレスを放とうとした。
そうすれば、逃げ場はなく倒すまではいかずとも、ダメージは与えられるだろうと。
「それはいけませんね」
「っ!!!???」
上空に移動する……その行動だけで雷竜が何をしたいのか察したミレアナ多数のウィンドアローを放った。
Aランクの領域に足を踏み入れようとしている雷竜であれば、大したダメージを食らうことはなく、ただチクチクとした痛みを感じるだけで済む。
ただ、狙われた場所が顔というのが良くなかった。
まだ雷のブレスを放つ準備が出来ておらず、顔に攻撃が飛来すれば、反射的に躱そうとするのはドラゴンも変わらなかった。
「では、そろそろ戦りましょうか」
多数の風矢を反射的に躱そうとする。
その短い動作があれば、跳躍して雷竜の上を取るのは十分。
「フッ!!!!!!!」
「がっ!!!!!?????」
いきなり背中を蹴られた雷竜は宙で止まらず、勢い良く地面に激突し、何本かの木々を破壊。
「ッ、ギィィィィイイアァアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!!」
「吠えてる暇があるなら、攻撃してください」
「っ!?」
やりたい事をやらせてもらえず更に怒りが溜まり、声を荒げることで少しでも発散しようとしたが、痛烈な言葉と共に多数の風槍が襲い掛かる。
一般的な冒険者や騎士であれば、先程の咆哮に気圧されていた。
戦意喪失とはいかずとも、圧されてほんの数瞬だけ動きが止まってしまってもおかしくない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」
「そうです。そうしてください」
ミレアナは、未だに弓や短剣を手にしてない。
それでも先程までとは違い、再び旋風を纏い、連続で攻撃魔法を発動。
アップは終わり、ミレアナにとってようやく本番の始まりだった。
「ッ、ふぅーーーー……っ」
ミレアナは動いた。
動いて動いて……動いた。
ただ、雷竜が放つ攻撃を対処するだけで、反撃はしない。
最初は強化系のスキルを使用し、旋風を纏って更に強化していた。
しかし、途中から旋風を纏わず、必要な時だけ魔力を纏って、迫る雷爪や雷尾をいなす。
(……我ながら、バカな事をしてますね)
戦いは嫌いではない。
ソウスケやザハーク程ではないが、戦いを楽しんでいる自分がいることは解っていた。
それでも……わざわざギリギリ攻めたり、相手の戦力に合わせて自身の身体能力を下げるような真似はしなかった。
(っ、雷竜もまだ全力を出しては、いませんでしたか)
ミレアナが旋風を解除してから数十秒後、誤差の範囲ではあるが、雷竜の移動速度が増した。
当れば無視出来ないダメージを食らってしまうと解っている。
それはしっかり理解しているので……把握力を高め、変わらずギリギリで回避する。
「~~~~~~~~~~ッ!!!!!」
躱され、躱され、いなされ、また躱されて……そんなミレアナの行動に苛立ちを隠せなくなった雷竜。
自分に戦いを挑んできた。
そういった意志を向けている筈なのに、何故か避ける、いなすだけで攻撃してこない。
ドラゴンである雷竜は他のモンスターと比べて大なり小なり差はあれど、知能がそれなりに高い。
自分に挑んできた人物が、結果として逃げたり避けたり防いだりといった選択肢しか取れないのと、ただ攻める気がなく避けていなしているだけの差は感じ取れる。
その差は、表情を見れば一目瞭然。
攻められるチャンスがないと感じ、避けたり防ぐことしか出来てない敵対者は、人間であろうとモンスターであろうと、表情に焦りが浮かんでいる。
だが……今現在自分と戦っているエルフは、戦意こそ感じても、表情は至って冷静。
ギリギリで雷爪を、雷尾を躱そうとも、顔に焦りが欠片も浮かぶことはない。
ミレアナは、決して雷竜を嘗めるような表情は浮かべなかった。
それでも、雷竜がそう感じるのも無理はなく……苛立ちが頂点に達した雷竜は上空に飛び上がり、雷のブレスを放とうとした。
そうすれば、逃げ場はなく倒すまではいかずとも、ダメージは与えられるだろうと。
「それはいけませんね」
「っ!!!???」
上空に移動する……その行動だけで雷竜が何をしたいのか察したミレアナ多数のウィンドアローを放った。
Aランクの領域に足を踏み入れようとしている雷竜であれば、大したダメージを食らうことはなく、ただチクチクとした痛みを感じるだけで済む。
ただ、狙われた場所が顔というのが良くなかった。
まだ雷のブレスを放つ準備が出来ておらず、顔に攻撃が飛来すれば、反射的に躱そうとするのはドラゴンも変わらなかった。
「では、そろそろ戦りましょうか」
多数の風矢を反射的に躱そうとする。
その短い動作があれば、跳躍して雷竜の上を取るのは十分。
「フッ!!!!!!!」
「がっ!!!!!?????」
いきなり背中を蹴られた雷竜は宙で止まらず、勢い良く地面に激突し、何本かの木々を破壊。
「ッ、ギィィィィイイアァアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!!」
「吠えてる暇があるなら、攻撃してください」
「っ!?」
やりたい事をやらせてもらえず更に怒りが溜まり、声を荒げることで少しでも発散しようとしたが、痛烈な言葉と共に多数の風槍が襲い掛かる。
一般的な冒険者や騎士であれば、先程の咆哮に気圧されていた。
戦意喪失とはいかずとも、圧されてほんの数瞬だけ動きが止まってしまってもおかしくない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!!」
「そうです。そうしてください」
ミレアナは、未だに弓や短剣を手にしてない。
それでも先程までとは違い、再び旋風を纏い、連続で攻撃魔法を発動。
アップは終わり、ミレアナにとってようやく本番の始まりだった。
386
お気に入りに追加
4,752
あなたにおすすめの小説
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる