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千六十六話 二人の第一は……

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「ザハーク、少し残念がっていましたね」

「そうだな」

夕食時、二人は既に冒険者ギルドが他の街の高ランク冒険者に依頼を出していると知り、落ち込んでいたザハークについて話し合う二人。

「けど、少し意外だな」

「何がでしょうか」

「ザハークなら、別にそういうのを無視してもトロールシャーマンに挑んでも良くないか? って愚痴りそうだろ」

「……………そう、ですね」

ソウスケの言いたい事が解らなくはないミレアナ。

しかし、それと同時にザハークが自身の我儘を零さなかった理由も、なんとなく解っていた。

「ザハークも成長したってことか?」

「……ザハークは、ソウスケさんに迷惑を掛けたくないと思ったのでしょう」

冷静担当のミレアナ、特攻担当のザハーク……と、外から見ればそう捉えられることが多い。

だが、そんな二人の根っこは……意外にも同じであった。
主であるソウスケが第一。

既にミレアナは奴隷ではない。
ザハークはソウスケの従魔という立場ではあるが、特殊な個体ということもあり、人間に近い生活を送っている。

しかし……それでも今の生活があるのは、どう考えてもソウスケのお陰というのが二人の結論。

「そいつは嬉しいけど…………いや、うん。嬉しいんだけど、それで自分の気持ちを言わなくなるのは……嫌だな」

「大丈夫ですよ。ザハークは割と賢いですから、そこの区別ぐらいは付いている筈です。それに、いずれはドラゴニックバレーという、非常に暴れ応えがある場所に辿り着く。それを考えれば、大した我慢でもないでしょう」

「……ふふ、それもそうか」

二人の会話内容を聞けば「こいつらは何を話してるんだ?」と大半の者が首を傾げる。

現在二人が夕食を食べている場所は酒場ではなく、それなりに良いところであるため、周りには商人や貴族が多い。

グレンゼブル帝国でもソウスケとミレアナ、ザハークの名前はちらほらと広まっているが、それでも実物を見たことがない者たちが大半であるため……まさか今自分たちの目の前で夕食を食べている二人が……あのソウスケとミレアナだと気付く者は、この場にはいなかった。

「ん? …………なんだ?」

店にいる客たちの視線が、とある場所に集まる。

「やっぱ前祝いにがっつり食っておきてぇよな!!」

「明日、確実に遭遇できると確定している訳ではないというのに……」

「いずれは遭遇しなきゃダメ。それを考えれば、いつ前祝いしても同じじゃない?」

「皆、食べ過ぎないようにしてくれよ」

「食べ過ぎて、明日動けなくなったら洒落にならない」

(…………結構強いな。アマンダ団長やレガースさんには及ばない、か? けど、五人なら……あの辺りのトップクラスと渡り合える、か)

ソウスケの中で、トップクラスの実力者と言えば第四王女のアネットを守る騎士、第三騎士団団長のアネット・ファニエス。
そして轟炎流剣術の師範、レガースである。

(Bランクのモンスターなら……そこまで苦労せずに倒しそうだな)

冷静に観察しながらも、食事の手は止まらないソウスケ。

「もしかしたら、彼らがトロールシャーマンを討伐する為に、他の街からやって来た冒険者たちかもしれませんね」

「ふ~~~ん……それっぽいな…………あの人たちがトロールシャーマンと戦うって知ったらザハークの奴、どんな反応するだろうな」

「……正真正銘のバカではないので、彼らと模擬戦をしたいと申し出るかもしれませんね」

あり得そうだと思いながらも、その時止めずにあの目の前の冒険者たちに「うちの従魔と一戦してくれませんか?」と頼み込もうと思ったソウスケ。

(ん? でもそうなると、あの人たちがトロールシャーマンを討伐するまで、この街に滞在することになるのか…………結局あの人たちがトロールシャーマンと戦うのは決まってた事だし、仕方ないっちゃ仕方ないよな)

夕食後、裏で適当にメニューを注文して夕食を食べていたザハークと合流し、おそらく例の冒険者たちであろう存在を伝えると、予想通りどうせなら彼らと戦ってみたいという答えが返ってきた。
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